ラブライブ! LOSTCOLORS   作:isizu8

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STAGE13 花 の 決意

「みんな……少しいいかな?」

 

あの後、僕はμ’sが練習場として使っている屋上に訪れた。

ちなみに、小泉さんたちには屋上の入り口付近で待機してもらっている。

 

「ライ君? 今日はどうしたの」

 

3人は休憩の途中だった。穂乃果が不思議そうに尋ねる。

 

「実は……入部希望者を連れてきた」

 

「本当!?」

 

「どなたでしょうか?」

 

「今から紹介するよ。きっと気に入ると思う」

 

僕が合図をすると屋上の扉から、3人が出てきた。

 

 

 

 

 

 

「花陽ちゃん! 来てくれたんだね!!」

 

「は、はい……」

 

小泉さんは穂乃果の勢いに少し押されていた。

 

「え、えっと……その……」

 

すると小泉さんの隣に並び立つ形で西木野さん、星空さんの2人がそれぞれ彼女を励ます。

 

「さっきも言ったでしょ? 声を出すなんて簡単だって。大丈夫よ。貴女なら出来るわ」

 

「そうだよ! それに凛は知ってるよ。かよちんが今までずっと、アイドルになりたいって思ってたこと!」

 

「西木野さん……凜ちゃん……」

 

僕も2人に続いて彼女に言葉を送った。

 

「今の気持ちを正直に話してみて。きっとその気持ちは伝わるから……」

 

「先輩……」

 

僕たちに言えることはこれで終わり……後は彼女次第だ。

 

その場にいる全員が彼女の言葉を待つ……

やがて小泉さんは自身の想いを言葉にした。

 

「私、小泉花陽と言います! 1年生で、声も小さくて、声も小さくて、人見知りで得意なものは何も無いです……」

 

「かよちん……」

 

星空さんが心配そうに様子を伺おうとするが、その直後に小泉さんが声を発した。

 

「でもっ! アイドルへの想いは誰にも負けないつもりです! だから……私をμ'sのメンバーにしてください!!」

 

小泉さんは少し涙ぐみながら、一生懸命に言葉を発して懇願した。

その場はしばらく沈黙した……

 

やがて、穂乃果が彼女に手を差し伸べ……

 

「こちらこそ……よろしく!!」

 

穂乃果たちは満面の笑みで小泉さんを歓迎した。

 

みんなが小泉さんの入部を喜んでいる。

僕はその光景を見て何かを感じていた。

僕は、この感覚を知っている……

 

 

 

 

 

 

「それで2人はどうするの?」

 

「「え?」」

 

小泉さんの入部が承諾された後ことりがそう聞くと、星空さん、西木野さんの2人は不意を付かれ、少し驚いていた。

 

「まだまだ、メンバーは募集中ですよ!」

 

海未、ことりはそう言って2人に手を伸ばし歓迎の合図を向ける。

2人は少し戸惑っていた様子だったが、やがてその手を取るように一歩踏み出した。

 

……こうして、μ'sのメンバーは6人になった。

 

 

 

 

 

 

小泉さんがμ'sに加入した後の帰り道、

もうすぐ日は沈み外は危険なので、僕は小泉さんを彼女の自宅まで送っていた。

その道中、小泉さんが一言呟いた。

 

「皇先輩ってお兄ちゃんに似ている気がします」

 

「え?」

 

彼女に兄がいることは初耳だったが、それ以上にその兄に似ていると言われたことに僕は驚いた。

 

「どういうところが似ているのかな?」

 

「私のお兄ちゃんって無愛想で無口なところがありますけど、それでも人を気遣ったりする優しいところがあるんです」

 

なるほど……

無愛想で無口な所は認める。この学院に来てからも穂乃果たちに散々言われてきたことだから。

だが……

 

「あっ!えっと、先輩が無愛想で無口だって言う訳じゃないですよ……!」

 

「いや、それは良いんだけど……」

 

「えっとつまり……私が言いたいのは、先輩は優しい人だなぁってことで、その……」

 

小泉さんと、そのお兄さんのような優しさが果たして本当に僕にあるのかどうか、ふと考えてみた。

しかし、何故かそうは思えなかった。

どうしてそう思うのだろう……

理由として考えられることは、おそらく先ほど浮かんだあのイメージ。

 

小泉さんよりも幼い見た目の、肩まで髪をおろした少女の姿……

その少女を見ていると、愛おしいと感じると共に酷い罪悪感、そして僕自身に対しての憎しみにも近い感情が湧き上がる。

 

僕はきっと、その少女に何か……酷いことを……

 

「皇先輩……大丈夫、ですか?」

 

よほど酷い顔をしていたのか、小泉さんは僕に対して気遣うような視線を向けて声をかけてくる。

 

「小泉さん、僕は……」

 

こんなことを彼女に伝えても仕方がないのかもしれない。だが……

 

こんな僕を優しいと言ってくれた小泉さんの言葉を否定するのは心苦しいが、ここは正直に話してみよう。

 

「花陽って呼んでもらえませんか?」

 

「えっ?」

 

しかし、僕が話を続ける前に彼女は咄嗟にその言葉を口にした。

 

「先輩ってお兄ちゃんに似ているので、苗字だとなんだか落ち着かなくて……ご迷惑、ですか?」

 

「いや! そんなことは……その、それなら僕のこともライでいい」

 

「は、はい! ライ、先輩……」

 

小泉さんが僕に、お兄さんの面影を重ねているように、もしかしたら僕も彼女のことを『妹』のように見ていたのかもしれない。

だからこそ僕は彼女を放っておくことができなかったのだろう。

 

そして先ほど記憶の中に浮かんだ少女に対する、兄妹に向けるような親愛の感情……

その子の正体は、おそらく……

 

「えっと、花陽……さっき僕のことを『優しい』って言ってくれたことはすごく嬉しい。だけど、僕自身はそうは思えなかったんだ」

 

「どうして、ですか……?」

 

「これは先ほど思い出したことなんだが、もしかしたら僕には『妹』がいたかもしれないんだ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「ああ。だけど僕はその『妹』のことを思うと、言い知れぬ罪悪感を感じて、自分自身を許せないような……そんな気持ちになってしまうんだ」

 

僕の言葉を小泉さんは静かに聞いていた。

 

「その……つまり、僕はきっと……」

 

『優しい人間では無い』……そう言おうとした。

しかし、僕がそう話す前に花陽がそれを遮った。

 

「そんなことないです……!」

 

「花陽……?」

 

花陽が突然普段より大きめな声を出したので、僕は少し驚いた。

 

「ライ先輩は優しいです……飼育小屋で話をした時の事、覚えてますか?」

 

あの時は確か、アルパカの対応に困っていたところを花陽に助けられて……

そして彼女のアイドル好きを知ったきっかけにもなった。

 

「ああ。覚えている」

 

「私、あの時つい暴走しちゃって……アイドルについて数十分くらい語り続けて……だけど先輩は、そんな私の話を真剣に聞いてくれて、また聞きたいって言われた時はすごく嬉しかったんです」

 

「……」

 

「今日だって凛ちゃんと西木野さんと一緒に私を励ましてくれて……そんな先輩が優しくないわけないです」

 

花陽は一生懸命に言葉を紡ぎ、僕にそう伝えてくる。

 

「だから先輩も、自分に『自信』を持ってください」

 

先程、僕たちが花陽に対して放った言葉を今度は僕に向けてきた。

彼女に対し『自信を持ってほしい』などと言った僕にそれが出来ないのは、格好がつかないだろう。

 

「分かった。花陽がそこまでいうなら、僕は信じるよ」

 

もっとも、僕自身を信用するのではない。

こんな僕に対してそう言ってくれた、花陽を信じるんだ。

きっとそれが、いつか自分の自信に繋がるはずだ。

 

「良かったです。では約束しませんか?」

 

花陽はそう言って小指を僕に向けてきた……

何かの合図だろうか?

 

「ライ先輩って『ゆびきり』は知ってますか?」

 

「ああ」

 

ゆびきり……確か日本の、約束の合図の1つだったか?

僕はそれをどこで知ったのだろう……?

自然な動作で彼女の小指を自分のと絡め、そしてそれをまじないの言葉と共に上下に振る。

 

「……怖いな。約束を破ったら針を千本飲まなくてはいけないのか」

 

僕は少し苦笑しつつ答えた。

その僕の様子を見て花陽も微笑んだ。

 

「ふふっ、そうですよ。だから……約束ですよ? ライ先輩」

 

「分かったよ……花陽」

 

僕にいたはずの『妹』に対する罪悪感などは気になったが、今はこんな僕を信じてくれている花陽を信じることにしよう。

 

その後、花陽を自宅まで送ってから、少し寄り道しつつ帰宅した……

 

 

 

 

 

 

ライ先輩に家まで送ってもらった後の夜……

疲れて眠っていた私は、なんだか妙な夢を見ていた。

 

その夢では、綺麗なお部屋の中心で、車椅子に乗っていて両目を閉じている女の子が1人で折り紙を折っていた。

しばらくして、そのお部屋に1人の男の人が入ってきた。

 

その人はライ先輩に似ていた……

というより、先輩と瓜二つだった。

綺麗な銀色の髪、そして先輩の着ている制服も全く同じものだった。

 

「一生懸命折ってみたんです。きちんと折れていますか?」

 

女の子が作り終わった折り紙を大事そうに胸元に抱えていた。

そして先輩は、その姿をどこか寂しそうな表情で見つめていた。

 

「あの……何かあったんですか? いつもと雰囲気が違いますけれど、何か心配ごとですか?」

 

女の子は当たり前のように、先輩の気持ちに気付いて声をかけた。

その言葉を聞いて、先輩はとても悲しそうな顔をする。

どうして、そんなに悲しそうなんだろう……?

 

「正夢、だったのでしょうか……とても大切な人が急にいなくなってしまう……そんな夢を見たのです」

 

「……!?」

 

先輩は声には出さなかったけど、女の子の言葉にすごく驚いていた。

 

「夢……ですよね?」

 

「……」

 

女の子がとても悲しそうにそう呟いた。

先輩はその子の言葉に、何も答えられないでいた。

 

その子の白く小さな指は、何かを求めるように宙をさまよっている……

先輩はその子の手を自分の手で優しく握った。

その子はその温もりを感じると、安心してその手をぎゅっと握り返す。

だけど、先輩の表情はどこか曇っていて……

 

「記憶が戻った。だから僕は、ここを出ていかないといけない」

 

その言葉を聞いた瞬間、女の子の表情が曇った。

 

「戻ってきて……くれますよね?」

 

女の子の小さな手がまた震えだしたけど、先輩はその手を優しく包み込んで精一杯の笑顔で答えた。

 

「ああ、もちろんだ」

 

「よかった……」

 

その瞬間、女の子は手の震えを止めて嬉しそうに微笑んだ。

 

「精一杯、折り紙を練習しておきます。戻ってきた時、びっくりしてもらうの」

 

「ああ。期待しているよ」

 

それから先輩とその子は、一緒に折り紙を始めた。

2人はとても楽しそうだった。

だけど、先輩の方を見てみると、とても悲しそうに、だけどそれを目の前の女の子に気づかれないように、さっきの帰り道の時と同じくらい優しそうな表情で接していた。

 

2人が一緒に過ごせる日は、たぶんこの日が最後なんだろう……

先輩の姿を見ていると、そう思えてしまうのが辛かった。

 

ライ先輩は記憶喪失だって聞いたけど、この夢での先輩は記憶を取り戻しているみたいだった。

この夢の先輩は自分が求めていた記憶を取り戻しているはずなのに、そんな先輩の姿はとても寂しそうで、そして悲しそうに見えた。

 

ライ先輩は今は音ノ木坂にいて、記憶を失くしちゃってるけど……

それって何か事故にあって、また記憶を失くしちゃったのかな……?

そして、もしも記憶が全部戻ったら前に通っていた学校に帰っちゃうのかな?

 

もしもそうだったら、ちょっと……寂しいな……

 

翌日、私は目が覚めると、その記憶の内容を忘れていた。




最後に花陽ちゃん視点でライ君と、とあるキャラとの回想シーンを書いてみましたが、きちんと書けていましたでしょうか?

普段はライ君の視点で話を進めておりますので、違うキャラ(特に女の子)の視点が、とても難しく感じました。

それと、花陽ちゃんには初期設定で兄がいる設定がありましたので、今作では勝手ながら、その設定を使わせていただきました。
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