高坂さん達の話が終わった後、僕は副会長に学院を案内してもらっていた。
教室、体育館、図書館……と、次々と訪れ、そこで活動している生徒達を眺めていると不思議と暖かさと懐かしさを感じた。
まるで僕が以前、どこかで学校生活を送っていたかのような……
記憶を無くし倒れていた僕が、神楽耶さんに保護された時、僕はこの地域では見慣れない黒い学生服を着ていたそうだ。
おそらく記憶を失う前、僕はどこかの学校に通っていたのだろう……
また、この学院は女子校であるため当然、男子用の学生服は用意されていない。だから僕はこの学院にいる間はすでに着ていた学生服を着用し、この学院に通うことになっている。
一通り学院を回ると、副会長が僕に尋ねた。
「ここまで一緒に回ってみて、何か思ったことある?面白かった場所やとか」
「アルパカ……ですね。中庭にいた」
僕は咄嗟に適当なことを答えたが、本心では違った。
印象に残ったことといえば、この学院で楽しそうにすごしている生徒達だった。
彼女達を見ていると、不思議な気持ちになった……
健全な男子が女子生徒しかいない空間でこんなことを堂々と口にしようものなら、変態扱いされかねないので、口には出さなかったが……
無論、彼女達をそういう目で見ていたわけでは無く、どちらかと言うと僕が感じていたのは『懐かしい』という気持ちだった。
やはり、記憶を失う前、僕はどこかの学校に通っていたのだろう。
なにか証拠があるとしたら今、僕が着ている制服だと思うが、この制服を採用している学校はこの国には無いので、ただのコスプレ衣装である可能性もある。
あるいはどこかの外国の学校か……
「まあ、アルパカを飼う学校も珍しいよなぁ」
僕が考え事をしていると、副会長は僕が咄嗟に口にした感想に反応したようだ。
僕は先ほどの問い対し適当に返事をしたことを少し申し訳なく感じた……
次に音楽室の前までくると副会長が何か思いついたように僕に話しかけた。
「ごめんな?ウチちょっと用事を思い出したから、少しここで待っててもらってもええかな?」
「はい、構いませんよ。ではこちらで待機していますね」
「ほんとごめんな。なるべく急ぐからそこで待っててな」
僕は音楽室の近くで待機することになった。
すると音楽室から綺麗な歌声が聞こえてきた。
その歌声は、耳に心地よく感じ、不思議と心を動かされる。
しかし、よく分からない感覚が僕の心の中を刺激する……
僕は音楽室の扉の前まで近づいた。
扉の前まで近づくとその少女が僕に気づいた。
僕は思い切って音楽室の中に入ってみた……
その室内には赤毛とツリ目が特徴的な少女がこちらをどこか不審そうな目で見てきた。
とりあえず、誤解も解きたいので僕はその少女に、自分の事情を話した。
・・・・・・
「女子校に男子が入学だなんて、意味がわからないわ」
「それは、そうだな」
僕は同意するしかなかった……
「それで、貴方はどうして音楽室の前で突っ立っていたんですか?」
「副会長に学院を案内してもらっていたのだが、途中で用事を思い出したそうなんだ。それで音楽室の近くで待機していたら、ここから綺麗な歌声が聴こえたから、僕はここに来た。理由としてはそんなところだ」
「何ですかそれ?意味がわからないです……」
その少女は不機嫌そうに答えながら、その顔はなぜか少し赤く染まっていた。
「あの先輩も貴方も、私が歌うとなんでこっちへ来るのかしら」
「あの先輩?」
「2年生のとある先輩のことです。その人も最初、私が歌ってるところに来て感動したとか、歌とピアノが上手とか……アイドルみたいにか、可愛いとか言ってきて……」
僕はその2年生の先輩に心当たりは無かったが、その人もまた、彼女の綺麗な歌声に惹かれたのだろう。
「そしてその先輩は突然、私にアイドルをやってみないかって意味わかんないこと言うんです。もちろんお断りしましたけど……」
「それは、どうしてだい?」
僕はその理由が少し気になったので聞いてみた。
「軽いからです。アイドルって何か薄っぺらくて、ただ遊んでるみたいで……」
彼女にとってアイドルとは、そういう風に見えるのだろう。
だけどもしこの子がアイドルを始めるのなら、それはきっと薄っぺらいものなんかじゃなく、後の歴史に名を残すような素敵な存在になっているのだろう。
それは、彼女の暖かさを感じさせる歌と、どこか高貴にも見えるその容姿、そして彼女を一番最初に見染めたその先輩が証明してくれるだろう。
僕は彼女が不満そうに語る中、何故かそんなことを考えた。
それはそうと、僕は先ほどの感覚が気になったので、思い切って彼女にお願いしてみた。
「迷惑はかけないから、先ほどの歌の続きを聴いてみたい。いいかな?」
最も彼女の場合、僕がこの教室にいること自体が迷惑なのだろうけど……
「す、好きにすればいいじゃないですかっ!」
彼女は素っ気なく答えつつも、拒否はしないでくれた。
そして彼女は歌を披露してくれた。
やはり、彼女の歌声は素敵だった。
その歌声はまるで、母親の温もりのような暖かさを感じさせた。先ほどの感覚の正体はそういうものだったのかもしれない。
失くしたはずの記憶が僕に対し、何かをうったえているような……そんな感覚があった。
そして彼女の歌が終わる頃、廊下から聞き覚えのある声が聴こえてきた。
「皇くーん!どこにおるん?」
声の正体は副会長だった。そう言えば僕は廊下で待機すると言っていたのだ。
「副会長も呼んでるみたいだし、僕はこれで失礼するよ。それじゃあ……」
「ちょっと待って。貴方、名前は?」
「皇ライだ。ライで構わない……そういう君は?」
「私は……西木野真姫」
「西木野さん……また、君の歌を聴きたい。西木野さんが良ければだけど」
「何それ、意味わかんない……好きにすればいいじゃないですか」
「ありがとう」
僕は音楽室を後にした……
・・・・・・
その後、副会長と廊下を歩いていると、その中に1箇所、不自然に勉強机が置かれていた。
その近くに視線を注目すると『初ライブのお知らせ!』と書いてある1枚の張り紙が貼ってあった。
また、その張り紙にはグループ名募集とも書いていた。
張り紙には3人の少女の絵が描かれていた。先ほど生徒会室に来た3人に似ている。
そして机の上に視線を移すと投票箱と思しきものが置いてあった。
「皇くん?どうしたん。そんなところで……」
僕が掲示板の張り紙を見ているとふいに副会長が声をかけてきた。
「いえ、あの張り紙と箱が少し気になりまして」
僕がそう言うと、副会長が1枚の紙を取り出した。
「ふ〜ん。グループ名募集なぁ……皇くん。ちょっとペン借りてもええかな?」
「良いですよ」
僕はペンを手渡し、副会長はその紙に何かを書き始めた。
「何を書いたんですか?」
少し気になったので、その紙を見てみる。するとその紙には『μ's』と書かれていた。
μ's(ミューズ)とはおそらく、文芸の女神……音楽、詩歌、舞部、学問などの女神のことだ。
そして、スクールアイドルとしてライブを行うこのグループに対して名付けるその名前の意味としてはおそらく……
「音楽……歌の女神ということか」
「流石やね、一発で意味を当てるなんて。てっきり石鹸って言うかと思っとったのに」
「石鹸?何のことです?」
「あー、分からないならいいんよ」
μ'sと石鹸に一体何の関係が……
これに関しては、あまり考えなくても良い気がした。
・・・・・・
翌日、講堂に生徒が集められ、僕はその中で自己紹介をした。
女子校に入学する男なんて、前代未聞のことをする僕に最悪、非難の視線を向けられることは覚悟していたのだが……
不思議そうにこちらを見ている人、何故かこちらを見て頬を赤く染めている人など、様々な反応をする人達がいた。
しかし、不思議と僕に非難や敵意を向けるような視線は存在しなかった。
理由はよく分からないが、こんな僕を歓迎してくれるのなら幸いだ。
ここから音ノ木坂学院の一員として、僕の新しい生活が始まる……
このssは、ラブライブのアニメを見ながら勢いだけで書いているところがありますので結構、粗があると思います。
何か気になったことがありましたら、感想欄などで教えていただけると嬉しいです。