前書き少なめでいきます!
今回も最後までお付き合い下さい!
芸能界なんて俺にとっては遠い遠い存在…。俺なんかが踏み入ってはいけない場所だ。
「じゃあ名刺だけでも貰っていいですか?」
父は俺に変わって言う。
「嗚呼、いつでも頼ってくれ。本気で支援するぞ。」
熊さん監督は大きなお腹をポヨンと揺らした。
「あと…瀬名さんにお願いが……」
父は女性マネージャーの方を見る。瀬名さんっていう名前だったんだ…。俺はやっと名前を知る。
「なんでしょう?私に出来ることならなんでも!」
父は瀬名さんの手をとる。
「君が欲しい…。」
俺は自分の耳を疑った。ん?なんて言った?君が欲しい…?何言ってるの?周りもシーンとしていて、瀬名さんも顔を真っ赤にしているが、当の本人はケロっとしている。
「ダメなの?」
出た……父の上目遣い。息子の俺が言うのもあれだが父はイケメンだ。特に上目遣いは凄くカッコイイ。
「え……あの………その……。」
瀬名さんは噴火直前。
「ねぇ君の名刺が欲しい!ダメなの?」
……………。その場は違う意味で静まり返る。名刺って…。
「え?め……名刺………ですか?」
瀬名さんもとても困惑している。
「あ……名刺ですね!は…い。」
そう言って名刺を差し出す。
「やった!ありがとうございます!」
父は貰った名刺に口付けをするように口元に当てて、お礼を言った。正直言って父はチャラいのか天然なのか不思議に思う。父は俺の方を見て言った。
「はい、これは涼が持っててね。」
そう言って父は名刺を俺に渡した。
「なんで?」
「そのうち分かるよ。きっと役に立つから。」
父は珍しく真面目な表情で言った。でもすぐいつもの表情に戻った。そしてスタッフさんの方を向いて言った。
「よし!じゃあ帰りまーす!」
そう言って父は俺の手を握って帰ろうとする。ほんとにマイペースだな。
「えっ?!あの、お金……」
「いらなーい。楽しかったもん!」
そう言って走り出した…。俺にはよく分からないな…。
「ふぅ…」
俺は父さんに手をひかれて駅までダッシュした。
「父さん、なんか俺…悪いことした気分…。なんていうか撮られ逃げ?っていうか……。」
「ははっ!!」
急に笑い出した…。
「どうしたの?」
「いやぁ…。だって涼が可愛いんだもん!」
いや、いや、いや。どこが?思わず口に出して聞きたくなったが長くなりそうなので聞かなかった。
「でもさ、ほんとに役に立つと思う。」
「嗚呼。」
その会話を最後に帰りの電車では沈黙だった。ふと、電車の外に目をやる。空は美しい茜色。トワイライト…………。この空を見ていると心にポッカリ小さな穴が空いたような、忘れたらいけない何かを忘れたような、寂しいような、懐かしいような不思議な気持ちに陥る。太陽が地平線の下にあるのに光線が地上の大気に反射して空から散光している。美しい以外に言葉があるのだとしたら儚く脆い。だってもう太陽の姿は見えないのだから間もなく暗くなるだけ。その間の時間だけこんな空になる。それはいつ暗くなってもおかしくない。逆にいつ明るくなってもおかしくない、不安定な空。
今の俺の心を空にするとこんな空なのかもしれない。だとしたらこの空より汚く、黒いだろう。母という月、春菜という太陽を失った空はどんな色をしているのだろう。父、明、オーナー達はどこにいるのだろう。例え星だとしても俺の黒より少し明るい紺色のような空では目立たないだろう。誰か俺の空を青色してくれないか、その願いは叶うのか…………。電車に乗って揺られる体と共に心も揺れていた…。
ありがとうございました!
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