ヒナちゃんのお母さん。リョーコさんが亡くなって、殺した捜査官をトーカが殺して三日が経った。
最近、トーカと金木くんが一緒に行動するようになった。それはこの間のリョーコさん絡みの捜査官殺しでお互いに協力してとのことだった。一方で取り残され事情をほぼ知らない状態だった私はせめてもの弔いにきていた。
「すみません。こんなことくらいしか出来なくて」
そこには小さな墓石に、萎れた花が供えられた――――ヒナちゃんのお父さんの墓がある。
多少掘り返された形跡があったのでそれよりもっと奥深くまで穴を掘り進めると、そこにリョーコさんの遺体の一部である結婚指輪の嵌まった手を指輪を外した状態で入れ土を被せ平らにならし、固めた。
そして萎れた花と新しく持ってきた花を交換し、供え手を合わせる。
「貴方方のおかげでヒナちゃんは無事に生きています。どうか安らかに―――――」
願わくば、リョーコさんがあの世で旦那さんと再会できますように。そんな風に願った後、私はその場を後にし、あんていくへと急いだ。
*****
「え、ヒナちゃんここにいないんですか?」
「ああ、今はトーカちゃんの家にいるよ。金木くんも向かったから今は3人一緒にいるんじゃないかな」
「そっか、あ、店長。申し訳ないんですけどこれ、ヒナちゃんに返しておいていただけませんか」
そう言って店長に差し出したのはリョーコさんの指輪だった。これはヒナちゃんが持つべきものだし、今回何もしていない私が当事者で一番つらい思いをしたヒナちゃんに渡すのはちょっと気が引けるのだ。
しかし店長は差し出された私の手から指輪を受け取ろうとはせずに首を横に振った。
「それは君が直接ヒナミちゃんに返しなさい」
「でも、私はあの二人と違って今回何もしてませんでしたから、そんな私がこの事を持ち出すのも、図々しい、気がして」
「あの子もリョーコさんも君が弔ってくれたと知ったら喜ぶよ、そんな風に思うような子じゃないことは君も分かっているはずだ」
「はい・・・行ってきます」
「いってらっしゃい」
私は店長に見送られて店を後にした。
*****
チャイムを鳴らすと不機嫌かつ顔色の悪いトーカが出迎えてくれた。
「・・・トーカ、また無茶したの?」
「・・・・うるさい。で、そういうあんたは何の用」
「ヒナちゃんに渡したいものがあってね」
「ヒナミに・・・?」
「ヒナちゃん、手出して」
ヒナちゃんを手招きしてこっちに来てもらい広げられた手にリョーコさんの指輪を乗せた。
「おねえちゃ、これって」
「うん。ヒナちゃんのお母さんの。ヒナちゃんが持ってた手からそれを外してヒナちゃんのお父さんのお墓のところに埋めてきたの。それはもうヒナちゃんのだから大事に持っておきなさいね。」
「ゔん、ありがと、おねえちゃん」
「あー、ほらほら。泣かないのー。できるだけ笑顔で、ね?そしたらきっとお母さんたちも安心できるよ」
泣き出すヒナちゃんを慰めながら、ほんの少し両親に愛されたこの子を羨ましいと感じたのだった。