ど田舎だけど、ギルドの運営、頑張ります!   作:saga14

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一章 ほぼ村編
1話 依頼が無い


「いやー……。今日も平和だなぁー……」

 

受付に乗せた両手に顎を乗せた姿勢で、店内の様子を見渡す。

お客さん用の大きめの円形テーブルには、椅子が三脚。それが七組も置いてある。

もちろん誰も座っていません。

 

ぼんやりと視線を壁に掛けられたコルクボードに向ける。

一番上には日焼けで薄くなった字で「本日の依頼!」と書いてある。

もちろん何も貼っていません。

 

「ちくしょう……。こんな生活やめたい……。私も王国で暮らせば良かった……」

 

私の何度も繰り返してきた独り言に「にゃあ」と返事をしてくれるのは、膝の上の猫ちゃん。

別にここで飼っているわけじゃないんだけど、居付いてるんだから、仕方がない。

背中を撫でてやると、気持ち良さそうに身を預けてくる。

 

 

そもそも、何で私がこんな生活をしているか皆様にお伝えしようと思う。

事の始まりは、私が子供の頃。その美しさに将来を嘱望されていた美少女だった時代の話である。

あっ、今は成長してすっかり美女だからね? うん、たぶん、きっと。

 

「親父、そろそろこんなギルド辞めて、一緒に暮らさないか?」

「そうよ、もう歳も歳だし……、こんな田舎じゃ不便でしょう?」

 

あの頃は両親が、ベッドに横になっている私のお爺ちゃんに、同居の話を持ちかけていたのだ。だが、お爺ちゃんは決して首を縦には振らなかった。皆の夢が詰まっている場所、思い出の場所。その時を回想するかのように、目を瞑りながら、静かに口を開くお爺ちゃんの姿に、私はお爺ちゃんの味方をしてあげようと、子供ながらに思ったものである。

 

「そうは言っても、ここが栄えていたのはもう数十年前の話じゃないか。近くの炭鉱が崩落で潰れてしまった今じゃ、ここに来るのは近所の茶飲み友達だけ。もう、ここに夢を求めていた時代は終わってしまったんだよ。考え直してくれないかな、親父」

「じいじー、ここ、なくなっちゃうの? みんないなくなっちゃうの?」

「いや、無くならないよ。じいじが守っていくからね。アリーはここ、大好きだもんな?」

「すき! ここも、じいじも、大好き!」

「ほら、可愛い孫もこう言っているじゃないか。なんなら、儂はアリーとここで暮らす! 王国にはお前たち二人で暮らせば良いじゃないか!」

「そんな! アリーは私達の子ですよ! アリー、お父さんとお母さんと、王国に行きましょう?」

「そうだぞ、王国にはアリーの大好きなお菓子屋さんが、いっぱいあるんだぞ」

 

あの時の両親の誘いに、頷いていれば良かったのだ。だが、当時の無垢で他人を疑う事を知らなかった、純白なお姫様のような私は、お爺ちゃんが私だけに見える様にチラ見せしていた玩具に目を奪われ、正常な思考が出来なくなっていたのだ。

 

「おじいちゃんと、ここで暮らそうな」

「じいじと、暮らすー!!!」

 

 

そんなこんなで、過去の私はジジイと暮らす事を選択した。

最初の頃は、良かったよ。私は可愛い孫だったから、村の皆が甘やかしてくれたんだ。

でも、私と暮らし始めたジジイが村中の皆に、来る日も来る日も「儂のギルドの後継者が決まったぞ! アリーがここを継いでくれるんじゃ! 後継者問題、大解決!」と触れ回ってくれたおかげで、私は数年後、気が付いたら村公認のギルドの看板娘になっていたのだ。

 

そりゃ、私も色々楽しかった。村の皆も、いろんな依頼をギルドに持ってきてくれた。

「薬草探し」とか「害獣の駆除」とか、そりゃもう活気に溢れていたよ。

ジジイと一緒にギルドを運営してた、あの頃の記憶は、今でも輝いている。

皆が笑顔で笑い合っていた。

 

でも、ここは大陸の辺境地。ど田舎村の、ど田舎ギルド!

気付いたら、友達連中全員王国に出稼ぎに行ってしまってな。

村に残ったのは、お爺ちゃん、お婆ちゃんばっかり!

こりゃ、仕事の依頼が来なくなるのも、当然だよ。あっはっは、あっはっはっはっは。

そもそも依頼が来ても、解決してくれる人がいないんだぜ。あっはっは、あっはっはっはっは。

それでもジジイは「依頼は、絶対に来る。ここを閉めるわけには、イカン!」と頑なだった。

 

本当は、ギルドを辞めて、王国の両親の元へ行こうと思った事は、何度もあった。

でも、それはどうしても出来なかった。原因は、ジジイにある。私にとっての疫病神のようなジジイのせいで、私はこの村に縛り付けられているのだ。

私が十六歳になる辺り、ジジイの体調が急変して、数日後に亡くなった。

亡くなる前に、ジジイは村の皆を集めて、こう言ったんだ。

 

「儂は死ぬ……。だが、この村のギルドは、アリーが盛り上げてくれる。命に代えてもな!」

 

元々、ギルドの看板娘として可愛がられていたもんだから、もう一大事だよ。

村のお爺ちゃん、お婆ちゃんたちは、期待に満ち溢れている視線で、私を見つめてくるんだ。

村ですれ違う度に「応援してるよ!」なんて言われてたら、もうね、ここを離れるなんて、出来ないのだよ!

 

 

それでずるずるとね……、何も無い村で、変わり映えの無い生活を……、何年してきたんだろう。

婚期、逃しそう……。




2015年に書いてた文章が発掘されたので、修正しながら投稿
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