ど田舎だけど、ギルドの運営、頑張ります!   作:saga14

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2話 営業活動頑張るぞ

「ジル爺、また明日ね~」

 

夕日が辺りを照らし始めた頃合い、本日唯一の来店客であり、お客さんは、ゆっくりとした動作で、家に帰って行った。とは言っても、何かを依頼しに来たわけではない。単純に、私の入れたお茶をを飲みに来ただけなのだ。ここは何屋だ?! 喫茶店か?!

 

それにしても、と、私は一伸びしながら考える。

なんだかんだ私は、ジジイから受け継いだ、このギルドが好きではある。何もない場所ではあるが、住み慣れたこの村も、個性が激しい住民も、大好きなのである。

ジジイにハメられた気持ちは残っているものの、そこを差し引いても、辛うじて、辛うじて良い思い出が詰まっている、私の大切な場所なのだ。

子供の頃は、王国の有名なギルドで働きたいという夢を抱いていた時もあった。

幼少時の自分の志を踏まえると、年頃の女性がこんなに毎日「仕事がない~」なんて呻いてちゃダメなんだと思う! いや、ダメなのだろう。ダメに決まっている!

よし、私、どうにかして、ここのギルドを盛り上げて見せる! 一週間もしない内に諦める可能性が高いけど、なるべく、頑張ってみる!

 

あ し た か ら 頑 張 る !

 

私はいそいそと、両開きの扉の横に立ててある看板を店内にしまい、扉にカギをかけた。

まだ夕方だけど、ここに来るお客さんは存在しない。そもそも、村の住民は寝るのが早いのだ。それ故に、夕食の時間も、早いのだ。それでは本日は閉店になりましたので、自室に戻らせて頂きます。今日も一日、お疲れ様でした。

トタトタと、階段を二階に上がれば、そこから先は私だけのプライベート空間。

元々は、宿泊施設も兼ねていたはずなんだけど、村の人達は自宅で寝るからね!

四部屋ほど余ってるけど、使い道がないので、全部、私の部屋にしちゃいました!

ギルド住宅! 最高だぜ!

私は寝室に入り、ベッドに飛び込み、すやすやと仮眠をとる。夕ご飯は、起きたら作ろうかな。

 

 

小鳥の(さえず)りが聞こえてくる。窓から差す朝日の眩しさに私は顔を(しか)めながら、目を覚ました。背伸びをしてから一息。今日も一日がんばるぞ。

世の中には、一日の計は朝にあり、という言葉があるらしい。朝から何やらしっかりと計画を立てた方が良い、という言葉らしいが、朝からきっちり頑張る人もいるもんだね。自分には到底真似が出来そうにない。まったく、感心しちゃうよ。

 

階段を下りて、受付の奥に向かう。そこには台所があるのだ。

桶に汲んでおいた水で顔を洗い、横の(かまど)の前にしゃがみ込む。両手に火打石を持ち、カシカシと打ち合わせ、火を起こす。麻で火種を包み、息を吹きかければ、点火完了だ。

米を研ぎ、(かまど)に置いてある釜に入れて、炊く。今日の朝食はごはんですよ。

 

炊ける間の時間を使って、店内の掃除をちゃっちゃと済ませる。

テーブルの上を拭いて、窓を拭く。毎日しっかり磨いているから、汚れ一つありません!

その後は、飾ってある植物に水を差したり、何処からか入り込んだ、猫ちゃんに餌を上げたり。毎朝のルーチンワークを、そつなくこなせば、今日の一日の仕事はお終いです!

いやー、今日も頑張った。あとは朝ご飯を食べて昼ご飯を食べて、夜ご飯を食べればお終いだ。

 

「って違うよぉおおおお! 今日は営業がんばるぞ!」

 

誰もいない店内に、私のノリツッコミが響き渡る。

今日の私、キレッキレだね。

 

 

ゆっくりと朝食を食べた後、服装を整え、店の外に出てみる。

そう、来ない依頼を何時までも待っててもダメなんだよ。来ないなら、自分から探すくらいの気概がないと、この世界では生き残れないのだ。この、ギルド界ってやつはよぉ。 

トコトコと、ギルド周辺をお散歩気分で歩いてみる。心地良い日光が私の身体を暖める。なんだか良い気持ちになってきた。私の奥底に封印した眠気が、早くも解放されそうである。ダメよ、アリー! 今寝たら、二度寝になっちゃう! 挫けそうな心を叱責しながら、何かないかと、散歩を続ける。そんな時、近所の畑でアマタお婆ちゃんが畑仕事をしているのを発見しました。まだまだ朝は早いのだが、精が出ますなぁ。

 

「おばあちゃ~ん、何か困ってる事な~い~?」

「おやおや、アリーちゃん、おはよう。今日も良い天気だねぇ」

「おはよ~う! 畑仕事頑張ってね~!」

 

アマタお婆ちゃんは特に困ってる事が、無い、と。

一働きしたような気持ちになってしまうが、本当に今のは一働きにカウントして良いのだろうか? いや、厳しく判定しすぎると、私のやる気が萎んでしまう可能性が高いのだ。これくらいでも、お天道様は許してくれるはずだ。だが、もう少しやる気がある所を見てほしい気持ちもある。道すがら、通りがかった村長の家を訪ねてみた。

 

「村長ー、あーけーてー!」

 

扉をどんどん叩いていると、迷惑そうな顔をした村長が私を出迎えてくれる。

 

「なんだなんだ、アリーじゃないか。まだまだ村長の座は譲らんよ」

「そんな座いらねーよ?! っていうか何か困ってる事ない? 今なら安くしとくよ?」

 

私の唐突な発言に、村長は両腕を組んで、ぐむむ、と呻き声をあげる。

 

「難しい質問だが、あえて言うなら、最近肩こりが酷くてなぁ」

「肩こりねぇ……。まあ、良いや、サンキュー」

 

その後も、私は住人に声を掛け続けた。

声を掛け続けたって言っても、少子高齢化で仕事も子供も何もないこの村の総人口は、三十人もいねーんだけどな!

 

 

「よし、ちょっとは形になったかな!」

 

私は、壁に掛けられたコルクボードの出来に満足していた。

今日のコルクボードには、使いまわしの羊皮紙が数枚、貼られている。

内容は「肩が痛い 村長」「腰が痛くてカブの収穫が大変 ジーン」「魚が食べたい ベル」などである。どう見ても冒険者ギルドに相応しい内容ではないが、そんな事は気にしてられない。もう、何も貼られていないコルクボードを見るのは嫌なんだ! 華やかだった昔の思い出と無意識的に比較しちゃって、結構心に刺さるんだぜ、へへっ。

 

依頼は集めた。それなら次は、今度は解決してくれそうな冒険者を探そう!

私はギルドの出入り口から勢い良く飛び出し、村の入り口まで駆け抜けて行った。

村の入り口、なんていうけど、単にちょろっと柵があって、看板が立っているだけだ。長年の雨風に晒されたそれに書いてあっただろう文字は、掠れてしまって、もう読めない。そのうち書き直すかなぁ。

 

村の外に出た私は、辺りを見渡す。一面の大草原だ! 吹き抜ける風が頬を撫で、とても気持ち良い! そして当たり前だけど、誰もいない! そうだよ! 知ってたよ! わざわざこんな、ど田舎までくる物好きなんていねーよ! 冒険者探し、終了!

 

とぼとぼとギルドに戻って、コルクボードを見上げる。

しゃーない。自分でやるか。

 

 

「村長! 肩揉んであげる!」

 

 

「ジーン爺さん! カブ、引っこ抜いて来てあげる!」

 

 

「ベル婆! リリィ婆さんから魚の干物、貰ってきたよ!」

 

 

 

お昼が終わり、オヤツの時間になりそうな頃合、小腹が減ってきた私は、ギルドに戻ってきた。両手には、成功報酬として貰った食料が抱えられているわけだが、どうしたことだろう。心の奥底で、私の良心が何かを叫んでいる?!

 

(……アリー! 時々やっているお手伝いなのに、何で報酬なんて貰っちゃったのよ?!)

「えっ、だって依頼には報酬が付き物だし……ギルドは掲載料として報酬の20%貰える……」

(……そんなのダメよ! 今までコツコツと築き上げてきたご近所付き合いが、崩壊するわ! 今まで可愛がってもらっていたのに、何を考えているの?!)

「えっ……えっ……」

(……そもそも、無理やり依頼を作って、報酬を貰うなんて、やってる事は、単なるゴロツキよ! ……この、悪しき心にその身を汚された、非情の犯罪者! ゴロツキ娘!)

 

私は、良心の呵責に苛まれた。悩んだ末に、成功報酬のお返しの品として、干していた大根を配りに回る事を決めた。何というか、ただのお手伝いをして、物々交換をした一日でした。

依頼なんて、無かった。今日は皆の為に、頑張った。それで、良いじゃないか。

 

その後、私は階段を上って、寝室に入り、頭の中を空っぽにし、ベッドに飛び込んだ。




登場人物

アリー:自分の歳が気になり始める
村長:村の長
ジル爺:夕方にお茶を飲みに来る
アマタ婆:耳が遠い
ジーン爺:腰が痛い
ベル婆:好物は酢の物
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