ど田舎だけど、ギルドの運営、頑張ります!   作:saga14

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22話 住民登録

「と、言うわけでオークをトーン村の住民にしてあげたいんだけど、ダメかなぁ?」

「ダメな事は無いと思うが……亜人種とは言えモンスターだからなあ……」

 

うららかな午後の一場面、私は村長とテーブルを挟んで相談をしていた。

事の発端はそう難しくはない。ほぼ毎日のようにトーン村に来て、私の手助けをしてくれるオークを住民として認めてあげたくなったのだ。もちろん住民登録をしなくても村に住まわせる事は可能だ。でも、そういう便利な距離感ってのがちょっと気分的に宜しくないと言うか。

例えば、この村が将来的に賑わって(私のギルドのおかげでね!)様々な国の人々が訪れたとして、もしもオークが住んでいたとしたらどう思うだろう? もちろん、冒険者の中には気にしない人もいると思うけど、モンスターを毛嫌いしている人間も中にはいると思う。「ヒト」じゃないという理由だけで、オークの身に危険が迫る可能性もあり得る話だよね? そして、仮に…………殺されちゃったとしても「モンスターだからね」の一言で済まされてしまうに違いない。そんなの可哀相すぎるし、絶対に許せない事だ!

 

でも、住民登録をしていれば話は変わる。国家に承認されれば「そこに居られる権利」を得られるのだ。

そうなれば、オークが無為に襲われる危険性はなくなるはずだし何か色んな権利も受けられるようになるんだぞ。だから、私は今後の為にどうしても住民登録したかったんだけど…………話はなかなか上手く進まないようですなぁ……。

 

「そもそも、前例をあまり聞いた事がなくてな……。仮に申請した後にそれを認められなかったら、どうなると思う? 村にオークが忍び込んでいると思われて、善意の騎士が討伐しに来てしまうかもしれないな」

「そ、そしたら皆で庇ってあげれば良いじゃん! それなら大丈夫だよ……ね?」

「分からん。『脅されて、そう言わされている』と判断されたら、オーク君の為にはならないだろう……」

「ううっ……何という事だ……。モンスターに人権はないのか……」

「え? それはギャグ?」

 

私の真剣な悩みを村長がボケだと勘違いしてるよ! なんだこいつ!

ニヤニヤしてる村長は置いといて、私のあまり良くない頭が悲鳴を上げ始めている! うーん、わざわざ現状を壊してまで、オークを危険にさらす必要性はあるのだろうか。でも、やっぱり将来の事を考えると今のうちにやっといた方が良いと思うんだよなぁ。

どうしても、森に棲んでいるモンスターは人々にとっては「討伐対象」になってしまう。

もしかしたら、明日にでも気まぐれな猟人(ハンター)があの森に来てしまうかもしれない。

それなら、考えるまでもない。村長に力ずくにでもお願いするべきだ! もう、天に運を任せてみよう!

 

「……わかった。他ならぬ次期村長の頼みじゃ。私に任せておけ!!!」

 

聞き捨てならない事が聞こえた気もするけど、あえてスルー。記入用紙と村長がペンを握っているその右腕に熱の籠った視線を送り、私は思いを天に願った。今後を左右する、とても大事な事なんだから。

 

 

◇住民登録変更手続き

 

オーク様 1人

男女80歳以上 26人

男性20代 1人

女性20代 1人

 

 

「よし……これで、」

「…………ちょ、ちょっと待った!!! おい待て!!! こ、こんなの絶対に討伐隊が編成されるよ!!!! 村長はオークに恨みでもあるの?! あんなに親し気に挨拶してたじゃん! あれは偽りの関係だったの?! こんなの絶対おかしいよ!!!」

「ちょっとした冗談じゃないか……。今度はちゃんと書くから安心してくれ」

「ふ、ふざけるな……!」

 

村長のシャレにならない冗談を目の当たりにして、ついついツッコミを入れてしまった。

まったく、村長の悪ふざけにも困ってしまうなぁ。私はこんなに真剣なのに、いっつも茶化して……。

 

 

◇住民登録変更手続き

 

アリー 1人

オーク 1人

―――――――

男女80歳以上 26人

男性20代(行方不明) 1人

 

 

「ま……待った! なんでそこを線で区切った!!! そしてその書き方だとまるで…………い、いや私の思い込みか? 先入観を持たずにフラットな気持ちで……ダメだ! やっぱり私が支配者に見える! そもそも、何で私だけ名前なんだ! わ、私は別にオークを従えてこの村を支配しに来たわけじゃない! 皆を支配しているように書くのはやめろ!!! これは辛うじて届いた王国への救難信号か!!?! 私もわざわざ名乗りをあげない!! しかも、ルシファーが行方不明なのは事実だけど……なんで書くの! まるで私が『青年? 邪魔だな……殺せ!』ってやったみたいじゃないか! なんだ村長は! 私に恨みでもあるのか!」

「………………アリーに村長の座を奪われると、私の存在価値がな?」

「あった! 恨み買ってた! でも、そんな座はいらないって言ってるじゃない! こんなの八つ当たりみたいなもんじゃないか!!!」

「……ふふっ。……冗談、冗談だから、気にするんじゃあ、ない」

 

村長が全然冗談に聞こえない様子でそんな事を呟いた……って言うか、目が怖い!

そ、村長は本当に村長の座を渡したいのか渡したくないのかどっちなんだ! ううっ……高齢者の考えが分からなくて怖い……。これが世代間格差(ジェネレーションギャップ)ってやつなのかなぁ……。それとも村落特有の若者苛めってやつなのかなぁ……。

 

 

◇住民登録変更手続き

 

男女80歳以上 26人

男性20代 1人

女性20代 1人

おーーく 1人

 

 

「か……可愛い! これなら……通るような気が……して来た! でも正式な書類にこんな事を書いても……いや、良い! これなら絶対に通る! なんかご当地でお馴染みのゆるいキャラクターみたい!」

「モンスターがダメそうなら……愛されキャラで行こうじゃないか!」

「すごい! これが逆転の発想って奴だな……! こんな機転が利くなんて……やっぱりトーン村の村長は村長じゃないとね!」

 

住民登録変更手続きをおもちゃに、私と村長は大いに盛り上がってしまった。

そう、人間は知恵のある生き物だ。正攻法でダメそうなら、ちょっとした奇襲作戦で攻めれば良いんだ!

これなら、オークも無事に私達の村の一員になれるはず。書類上はゆるい愛されキャラクターみたいだけど、そんなの関係ない。むしろ、人目を引いて良いかもしれない! ちょっとした話題にでもなれば、このトーン村も再び日の目を浴びる事が出来るかもしれない。私のギルドよりも先に結果を出すかもしれないオークにはちょっと嫉妬しちゃうけど、それでも良いんだ。オークは、私が胸を張って誇れる友人だ。友人の成功をお祝いできなくて、どうする私! それじゃあ、村の看板娘失格だぞ☆

 

 

 

 

「って感じで申請しといたから、オークは安心して良いからね!」

「ちょ、ちょっと待つぶひぃ! オークはオークぶひぃ! オデは自分の種族に誇りを持っているぶひぃ! そんな可愛く認知されるのは流石に勘弁ならないぶひぃ! 訂正を求めるぶひぃ!」

「でも、もう行商に頼んで王国に届けて貰っちゃったからなぁ……」

「よ……喜びきれないぶひぃ! 二人の純粋な善意だというのは理解できるぶひぃ……。でも、オデは誇り高きオークぶひぃ! ゆるい愛されキャラクターじゃないぶひぃ!」

 

 

 

 

数日後、王国の方から偉い人と白衣を着た……研究者と名乗る人がトーン村を訪れた。

住民登録の件で確認したい事があるだのなんだの言ってたみたいだけど、対応をしたのは村長だったので私はあんまり話が分からなかった。というか……勝手に話が進んでいったというか……。

その人たちは、たまたま私と一緒にいたオークと他愛もない会話をした後、何かテスト? のようなもの? をオークにさせていた。あとでオークに内容を聞いてみたら「ただの一般常識だったぶひぃ。五分で終わったぶひぃ」と教えてくれた。

偉い人は淡々と書類を書いたりして、仕事? をしていたように見えたんだけど、一緒にいた研究職の人が「久々の人語を話すモンスターか……」「こいつらより見つけるのが早ければ……実験材料に出来たのに……」みたいな事を呟いていたから、ちょっと怖かった。もしかしたらオークが連れて行かれちゃうのかと心配したけど、特に何事も無く、その二人はすぐに帰って行った。一体、何しに来たんだろうね? 登録通りに本当にゆるいか確認しに来たのかなぁ……?

 

 

 

 

そして、その数日後に結果が届きました。オシャレな事に、鳥が持ってきてくれたんだよね。伝書鳩って言うんだけど、鳥のくせに賢いよねぇ。私だったらこんな遠い所、道に迷って届けられないと思うんだけどなぁ。

 

「それで村長、手紙にはなんて書いてあったの?」

「ああ、モンスターの住民登録は時々あるみたいでな。もちろん『人間と問題なくコミュニケーションが取れる』などの規約はあったみたいだが……」

「それで? オークは?」

「うむ、めでたい事に、住民として認められたよ。これで、オーク君には権利が与えられた。オーク君を傷つけたら罰せられる事になるから……まあ、無為に命を狙われる事は避けられそうだな」

「おお……やったぁ! これでオークも安心して生活できるね!」

「だが……やはり外見はモンスター。なるべく単独での行動は避けて……そうだな、村や国の外では尚更じゃ。アリー、外ではお前さんがオークを守ってやるんだぞ?」

「おう! ガッテンだぜ!」

 

待ち望んだこの吉報に、私の胸はドキドキのワクワクが止まらないぜ!




登場人物

アリー:住民が増えるよ! やったね村長!
おーーく:伸ばし棒も多いぶひぃ!
村長:住民が増えるとな、還付金が出るんだぞ
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