ど田舎だけど、ギルドの運営、頑張ります!   作:saga14

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23話 変わった? 私?

住民登録が認められたという一報を少しでも早くオークに伝えたかった私は、村長の家の椅子に座ったり立ったり、家の前の道を右に左に行ったり来たりと、とっても落ち着きを無くしてしまっていた。

そんな私の様子を見た村長が「それなら村の入り口に皆を集めて、ちょっとしたサプライズをしてあげようじゃないか。顔見せで一人ずつ回るのも面倒くさいしな。オーク君もしょっちゅうこの村に来てくれていたから、抵抗なく皆、受け入れてくれるはずだ。だからアリー、オーク君が村に来る前に、急いで皆を呼び集めなさい。そして、オーク君に感動の涙を流させてあげるんだ。さぁ、アリー! HURRY!」と言葉を掛けてきたので、私は颯爽と村中を駆け回り、村に仲間が増える事を告げて、皆で迎え入れてあげようという村長の作戦を伝えて回った。

そんなイベントを皆が拒否するわけもなく、思い思いのおめかしをして、村の入り口に集まったのはだいたいお昼頃。そろそろオークが来る頃合いだなぁと思っていたら、何も知らないオークがのそのそと村に来てくれた。よし! 皆で拍手を浴びせてあげよう!

 

突然の拍手の嵐に「な、なんだぶひぃ? 今日は誰かの誕生日ぶひぃ?」と戸惑っていたオークだったが、一歩前に出た村長からの「オーク君、王国から正式に君をトーン村の住民として認める旨が届いたんだ。アリーから少しは聞いていたと思うが、これからはこの村を自分の家だと思って過ごしてくれて構わない。まあ、無理にこの村に住んでくれとは言わないが、君の安全だけは保障されるようになったという事実は伝えとかなくちゃな? さぁ、今日はトーン村に住民が増えた記念日だ! オーク君、これからもよろしくなぁ」

 

突然の言葉にオークは目を白黒させていたが、その内容を徐々に理解したのか、オークは恐縮した態度になって、皆に向かって頭を下げ始めた。もう、そんな事しなくても良いのに!

 

「ぶひぃ。村長さんもアリーさんも、他の皆さんもありがとうございますぶひぃ。この恩は、忘れないぶひぃ。オデも早く村の一員に認められるように、全力を尽くすぶひぃ!」

 

オークの感謝の言葉の終わりと同時に、オークを囲んでいた皆からまたもや拍手が響き渡った。

その音を聞きながらオークはニコニコ顔で頭を下げている。アマタ婆が一歩前に進みオークの手を取ると、それに続くように皆もオークとの握手を求めに行った。「おおきぃ手だねぇ」「何もない村じゃが、こうやって新しい仲間が増えるのは嬉しいのぅ」「オデ、いっぱい畑を耕すぶひぃ!」「それで、アリーちゃんとはいつ結婚するんじゃ? 早く孫の顔が見たいのぅ」「オークちゃん、ときどきお魚持ってきてくれたでしょ? とっても嬉しかったんだからねぇ」「オデ、これからも頑張るぶひぃ!」

 

私たちによるサプライズは、大成功したようです。あんなに喜んでくれて、嬉しい!

 

 

 

 

挨拶もほどほどになり、皆と雑談を始めていたオークに私は近寄った。

 

「じゃあ、オークの家を決めなきゃね。どの辺が良い? 肥溜の近く?」

「オデはどこでも良いぶひぃ! それにしても今日は幸せな日ぶひぃ……。まさかオデにこんなオーク生が待っていたとは思ってもいなかったぶひぃ。本当に、アリーさんを始め、皆さんには頭が上がらないぶひぃ……」

「そ……そんなに畏まらなくても良いから! まったくもう! そんなつもりじゃないんだから、むしろ私たちが恐縮しちゃうよ……まったく……」

 

私はオークの手を取って、村の中をずんずんと進んで行った。オークに数件の空き家を見せてあげて、一番しっくりくる所に住ませてあげるんだ。ぼやぼやなんかしていられない!

 

 

 

 

数件の空き家を回った結果、最初に回った村の入り口に一番近い空き家に住む事に決めたようだった。とはいえ、一階建ての質素なそこは、あまり広くもないわけで……。

 

「ねぇ、本当にここで良いの? もっと広いところもあったのに……」

「ぶひぃ。ここなら村に怪しい奴が来てもオデが一番に気付けるぶひぃ。それにアマタお婆ちゃんとアリーさんの家にも近いぶひぃ。オデ、ここが良いぶひぃ。ミレダさんにも頼まれてるから、皆の事を守る壁になるぶひぃ」

「ううっ……村の仲間になったその日に村の事を考えてくれるなんて……やっぱりオークは私の自慢だよぉ……。こんな寂れた村を大事に思ってくれて、住民としては感謝の気持ちで胸がいっぱい……」

「な、なんでアリーさんが感動してるぶひぃ?!」

 

オークの心遣いにホロっと来てしまった私は、恥ずかしながら涙目になってしまったよ!

そんな私にオークは「新しい住居が決まったぶひぃ。だから、オデは荷物を取りに戻るぶひぃ」と声を掛けて村の入り口に向かってしまった。おっと涙目でなんかいられない、荷物がどれくらいあるかは分からないけど、私も手伝ってあげなきゃね! オークの後ろを小走りで追いかけ、私たちは森へと向かって行ったのだった。

 

 

 

 

「……アリーさん、モンスター怖くなくなったぶひぃ?」

 

森へ入った私は、オークが住んでいたという洞穴を目指して歩いていた。道案内をしてくれるオークを前にして歩いていたのだが、そんな私にオークは声を掛けてきた。

 

「……? モンスターは怖いよ? どうしたの、急に?」

「いや……なんか今日のアリーさんはいつもと様子が違うぶひぃ。ちょっと前のアリーさんだったら、森に入っただけでビクビクして、周りをキョロキョロしながら、すぐに及び腰になって歩いてたぶひぃ。それなのに……今日はどうしたぶひぃ? なんか堂々としてて、アリーさんらしく……無いぶひぃ?」

 

オークに言われて、私は客観的に自分を見てみた。確かに今日の私は歩き方がしっかりしている気がするし、視界も広く見えてると思う。ちょっと前までだったら、すぐにオークにくっ付いて、不安げに周りを見渡しながら歩いていたはずだ。無意識での行動だったけど……私はすぐに心当たりに思い当たって、それを正直にオークに話してみた。

 

「……この前、湖に行ったでしょ? あの時のスライムに会ってから……なんか、他のモンスターがあんまり気にならなくなったというか……。怖いのはあるよ? でも、逃げれば平気だなぁと思うし……オークもいるから、大丈夫かなぁ、って」

「……アリーさん、何か持ってきてるぶひぃ? あの笛とか……」

「えっ……ううん? 別に何も……」

 

言われて気付いたが、今日の私は手ぶらである。自分の身を守ってくれる笛も短剣も無いのに、こんなに平然としていられるのは何でだろう? モンスターが怖い気持ちはあるけど、それよりも「何とかなるよなぁ」と言う気持ちの方が強い気もする。別に油断しているわけじゃないんだけど……。もちろん未知のモンスターに会ったら逃げる準備はしているけど、スライムとかラビットくらいだったら……。

 

「……アリーさん、強くなったぶひぃ。オデ、あの一件でアリーさんにトラウマを作っちゃったかと思ってずっと反省したぶひぃ。でも、そんな事無いみたいぶひぃ……本当に安心したぶひぃ」

「強く……なったのかなぁ?」

 

私は自分の両手を見てみる。その後に、身体をぺたぺたと触ってみるが、何の変わりも無い気がする。

 

「に、肉体的な話じゃないぶひぃ。精神的な話ぶひぃ。あの存在は……この森にいるどのモンスターよりも強いと思うぶひぃ。この森だけじゃないぶひぃ、世界単位で見ても、遜色ない存在だと思うぶひぃ。そんな相手の殺意を図らずも……アリーさんは浴びてしまったぶひぃ。それに比べたら、そこら辺のモンスターの敵意なんて、微々たるものぶひぃ」

「……そんなもんなのかなぁ」

「だからと言って、油断しちゃダメぶひぃ! アリーさんに比べて強いモンスターはたくさんいるぶひぃ! 規格外の殺意に慣れたからと言って、恐怖心を鈍らせたら死ぬぶひぃ!」

「わ……分かってるよぉ。別に、この森はオークと何度も来てるから平気なだけであって……」

 

小姑みたいに私に向かって注意を続けるオークと歩いていたら、何かの唸り声と共に草陰からガサガサと物音が聞こえてきた。私とオークはすぐさまその物音の方へと身体を向ける。この辺りはオークとモンスター観察で来たことがある場所なので、何が出ても、平気なはずだ。

棍棒を手に構え、じりじりと草陰にオークが近付いて行く。私も、周囲を警戒しながらその様子を見守っていた。挟み撃ちなんかされていたら、危ないからね。

 

物音が無くなり周囲が鎮まったかと思った瞬間、草陰から急に飛び出てきたのは狼のような獣だった。

 

「ウルフぶひぃ! こいつは動きが俊敏で危ないぶひぃ! アリーさん、逃げるぶひぃ!」

 

オークに飛び掛かるウルフを見つめながら、私は考えた。

私が逃げたらウルフは追いかけてくるかもしれない。そしたら、オークは私を助けに来てくれるはずだけど、たぶん追いつくよりも早く私はウルフに襲われて怪我をしてしまう可能性の方が高い気がする。

だからと言って、ここでぼんやり立ち止まっているだけじゃあダメだと思う。

ウルフは、牙を剥いてオークに対して唸り声を上げている。そんなウルフに対してオークは棍棒を振るうが、ウルフは身体を移動させてそれを難なく回避していた。ウルフはオークに狙いを定めていてくれているが……気が変わって狙いを私に切り替えたらどうなるだろう。

 

「……オーク、ちょっとだけ耐えてて!」

 

私はオークにそう声を掛けると、周辺を見渡し、大き目の木を探す。

あれは細い、あれは木の皮が滑らかすぎる、あれは……太くてゴツゴツしてるし、葉が茂っていて良いかもしれない!

ウルフに気付かれないように静かに急いでそちらに移動し、木の前に立ち、飛びつく。

そんな私の様子にオークは何かを言いかけたようだけど、首元に噛み付こうとするウルフの攻撃を防ぐのに手いっぱいのようだ。オーク頑張って、もう少しだからね!

 

私は一生懸命に木に登った。普段そんな事はしていなかったから、手は痛いし肌にも擦り傷はできちゃうし、服は汚れるしで最悪な気分だったけど、オークを助ける為には仕方がない!

地面から3mと少しくらい離れたくらいで、私は木登りを中断し、オークの方を見る。ウルフは未だに俊敏に移動してオークに襲い掛かっている。オークの方はと言うと、腕やお腹に切り傷ができてしまったのか、赤い線が見える。血がそんなに出ている感じはしないけど、時間の問題かも知れない。次の瞬間には、ウルフの鋭い牙がオークに突き刺さってるかも知れないんだ。その前に、終わらせる!

 

「やいやい! これでも食らえ!」

 

私は木になっていたこぶし大の実をウルフに向かって投げつけた。別にこれで倒せるなんて思ってなかったし、当てるつもりもなかった。それでも私は、ウルフに向かってどんどん実を投げつけていった。

オークに向かっていたウルフだったが、足元に跳ねる違う方向からの突然の攻撃に気付き、その身を鈍らせた。そして、いったん跳躍しオークから離れたかと思うと、唸り声を上げながら身を低くし、オークと私の方を吟味するかのように見比べ始めた。

私がチャンスとばかりに、落ちないように気を付けながらも木の上でしゃがみ、右足を垂らした。まるで餌だとばかりにウルフを誘うように足をぶらぶらさせていたら、オークと比べて組み易しと判断したのか、ウルフがこちらに向かって猛スピードで突っ込んで来て、木の前で大きく跳躍した。

私は寸での所で右足を上げたのだが、想像以上にウルフは飛び掛かって来たので、ちょっと驚いてしまった。ウルフが2m近くも跳べるなんて知らなかったよ……。ううっ、危なかった……。

地面からこちらに吠えるウルフをフラフラと落ちそうな演技で引きつけていると、私の意図に気付いたのか、オークが足音を殺しながらも早足でこちらの方に近付いて来た。そして、走り寄った勢いをそのままに振りかぶった棍棒を、完全に気を逸らしていたウルフの背中に向かって降り下ろした。

鈍い打撃音と「ギャン!」というウルフの悲鳴のような鳴き声が起きたのは同時。オークの方に視線を戻したウルフだったが、もうオークは次の攻撃に移っていた。今度はウルフの頭に向かって棍棒を振り下ろし、ウルフが動かなくなるまで、その鈍い音は続いた。

 

 

 

 

「……ふぅ、お疲れ様でした。オーク、切り傷大丈夫? 村に戻ったらアマタお婆ちゃんに薬塗ってもらおう?」

「……アリーさんの咄嗟の機転のおかげで難なく勝てたぶひぃ。オデは鈍重、ウルフは俊敏。相性は悪かったぶひぃ。腕を噛ませて動きを止めようと思ってたぶひぃ……アリーさんのおかげで軽傷で勝てたぶひぃ。助かったぶひぃ」

「そ……そんな、助けられたのは私の方だよ! オークがいなかったら、私も食べられちゃってたと思うし……」

「オデ、アリーさんを逃がすのに必死だったぶひぃ。でも、ウルフの前で逃げろは禁句ぶひぃ。ウルフは動く者を優先的に襲うぶひぃ。オデの言葉の通りにアリーさんが逃げてたら、オデ、一生後悔する事になってたぶひぃ。アリーさん、本当にごめんなさいぶひぃ……。それにしても、アリーさんの行動は完璧だったぶひぃ。ウルフの気を引き留めて、オデが不意を打つ。いつの間に、こんな作戦を考えていたぶひぃ?」

「……たぶん逃げたら襲われちゃうかなって思って。でも、オークを助けようにも私じゃ足手まといになるから、それなら気を引いてる隙にオークが倒してくれるかなぁ、って」

 

私の言葉に、オークは驚いた顔をした。なんだなんだ、私だって考えられるんだからな!

それにしても、私も多少驚いている部分はある。初めて見る凶暴そうなモンスターが相手だったのに、あんなに冷静に行動できたなんて、私じゃないみたいだ。もちろん、自分が死なないように振る舞ったつもりなんだけど、オークだけが危険なのも嫌だったし……。うーん……。

 

 

 

 

オークはさっきのウルフを「村へのお土産にするぶひぃ」と言って、背負った。

そのままオークと先ほどの話をしながら移動していたら、あっという間にオークの住処であった洞穴に到着した。オークが言うには「ここは森の三割ほどの場所ぶひぃねぇ。あの湖で半分くらいぶひぃ」らしい。

私を入り口で待たせてオークは洞穴に入って行ったが、すぐに戻って来た。

その手にはミレダから貰った盾だけが握られており、他に荷物は見当たらなかった。

 

「オーク、荷物これだけなの? 他に大事な物、ないの?」

「さっきのアリーさんを見て、ここら辺まではすぐに来られるって分かったぶひぃ。特別大事な物もないぶひぃ。だから、アリーさんとの勉強の休憩地点として、ここに多少の荷物は残しておくぶひぃ」

 

私の為に完全にもぬけの殻(・・・・・)にしないでくれるだなんて、それにしても親切だ。私はその心意気に感謝をして頭を撫でてやろうと思ったのだが、背伸びをしてもどうしても頭に手が届くとは思えなかったので、黙って背中をさすってあげた。オークは「別に背中は、痛くないぶひぃ?」と言って不思議そうな顔をしてきたが、まあ、うん、良いの良いの!

 

 

 

 

私とオークは来た道を戻り、そのまま森の外に出る。村の入り口で出迎えてくれた村長にオークがウルフを渡すと、村長は「おお、ウルフじゃないか! あの森にウルフもいるなんてなぁ……」と言いながら嬉しそうに持って帰った。きっと、切り分けて皆に配ってくれるのだろう。

今夜のご飯のおかずは、決まりだね!




登場人物

アリー:そういえば、オークと結婚とか言ってたの、誰?
オーク:お、オデは知らないぶひぃ……
村長:そ、村長も気付かなかったなぁ……
アマタ婆:犯人
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