ど田舎だけど、ギルドの運営、頑張ります!   作:saga14

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6話 ギルド運営! 一歩前進!

ルシファーが宿に住み着いてから、一週間が経ちました。

ルシファーもすっかりこの村に慣れたようで、時には畑仕事を手伝ったり、アマタ婆の為に森に入って薬草を取って来たり、どう見ても村の住民状態です。この調子なら、ルシファーがこの村に永住するとしても、きっと誰も反対しないだろう。

今も爺や婆に囲まれながら楽しそうに笑うルシファーを見て、畑の横に腰掛けてお茶を飲んでいる村長が私に話しかけてくる。

 

「彼が来てくれてから、なんだか毎日が楽しいな。そう思わないか、アリー?」

「うん……、まあ、最初は変な奴だと思ったけど、面白い物持ってるし、なんか強いし、格好良いと思うよ」

 

私がちょっと恥ずかしそうに言葉を返すと、村長は満足そうな顔をした。

 

「うんうん、彼になら村長の座を渡しても良いかなぁ。隠居を始めても、二人の子供が生まれるまでは、元気でやっていくつもりだけどなぁ!」

「おおおおおおお、おい! さらっと変な事を言うな!」

 

私がバシバシと村長の背中を叩いていると、楽しそうに話をしていたルシファーがこっちに近付いてきた。村長が変な事を言ったから、なんか恥ずかしくなってしまったぞ? 彼の顔をしっかりと見られない。そうなんだよ、なかなか良い男なんだよな、うんうん。

 

「アリーさん、村長、お待たせしました。これから昼食ですか?」

「ああ、いや、良いんだよ。急に手伝いをしてもらって悪かったな。その詫びとして、なんだ。アリーが昼食をご馳走してくれるから、まあ、期待して待ってやってくれ。ほら、それまで二人で今後の話でもしようじゃないか」

 

村長がニヤニヤした顔をこちらに向けながら、ルシファーと共にギルドの中に入って行ってしまった。こっそりと私に向けてハンドサインを見せ付けてくるが、くっそ! 急ぎ過ぎなんだよ! くっそ!! 若者の恋愛くらい放っておいてくれよ!!!!

怒りとも遠からず、ぶつけ様の無い感情に身を任せながら二人の後を追い、受付奥の台所に向かう。今日の昼食はパンとスープなんですよ! ぷんぷんぷん!

 

 

「実は……冒険者になろうと思っているんです」

 

湯気の立っているスープを口に運びながら、ルシファーがぼそりと呟いた。

突然の告白に、私はパンを齧っていた手を止めるのだけど、村長は聞こえていないのか、兎肉のソテーを夢中で齧っている。空気を読め。空気を。

 

……最近の食事事情は、ルシファーのおかげで劇的に進化しています。今までは畑で作った米や野菜など、穀物と野菜が中心だった。料理のレパートリーも少なくて、炊き込んだり、煮込んだり、村々しい質素な食事ばかりだったのだ。稀に、村長が捕まえてきたラビットを食べる事もあったけど、ラビットを捕まえるには細やかな罠を仕掛けた上で、運任せな部分が大きく、運良く捕まえたとしても、そのほとんどを祭事用として保存していたので、皆が満足する量を食べる事は出来なかったのだ。

そんなラビットを、ルシファーは易々と捕まえてきてくれた。あまりにも易々と捕まえてくるので秘伝の業をこっそり聞いてみたのだけど、「えっ? 普通に首根っこ捻って……終わりですけど……」などと、誤魔化されてしまった。ラビットの首を捻るなんて、私の命がいくつあっても足りないよ?! 仮に本当だとしても、絶対に真似しちゃいけない方法だよね!

 

「なんで急に? やっぱり、この村はつまんないのかな……?」

「いえ、そういうわけじゃないんです。でも、ちょっとこの世界に来てから、やりたい事も増えてきたので、そろそろかなーと思っているだけで……」

 

情を引くために、語尾を弱めていき、寂し気で弱弱しい女性像を試しに演出してみせる。

そしたら案の定、ルシファーの顔に迷いが浮かんできた! こいつ、ちょろいな!

私は、そっと村長の方を見る。村長は私と同じ気持ちだ。首を縦に振る。

 

「なあ、この村は見ての通り、寂れていたんじゃ。君が来てくれて、どんなに救われたか……」

「うん。私も、久々に年齢が近い人と話せて、凄い嬉しかったし……楽しかった……。それで、あの、こんなタイミングで言うのは卑怯だと思うんだけど……、あのね……」

 

私が、さも愛を告げるかのような貞淑な女性を演出して見せたら、すっかりルシファーったら視線を外し、頭をポリポリ掻きながら「くそう、どうしようかな……みんな優しいしな……」なんて小声で呟き始めた。村長! 効果は抜群であります! もうひと押し、もうひと押しでございます!

 

「なぁ、無理に、とは言わん。だが、村の為、アリーの為に、君の住民登録をここにしておいて欲しいんだ。な? 世界は広い。旅をして疲れる事もある。そんな時、私たちは、君を癒してあげたいんだ」

 

おいおいクソ村長、そんな言い方じゃなくて、定住方向に進めろよ! と私は思ったけど、口には出しません。それより、私だって何気に必死だ! せっかくの婿候補、こんなに易々と手放すわけにはいきませんからね!!!!

 

「……よし、分かりました。冒険者になるとしても、まずはこのギルドから始めてみたいと思います。ここで色々始めて、自信をつけたら、外の世界に行ってみたいと思います。住民の登録……ってやつも、村長さんにはお手数をおかけしますが、ここでお願いします」

 

ルシファーが真剣な眼差しで、私たち二人に自分の決意を告げてくる。

そんなルシファーの内面を慮る事は出来ないけど、私と村長はお互いの狙い通りに事が進んでしまった事に、こっそりとほくそ笑むのであった……。

 

 

住民の登録は大事なものなのだ。

特に、こんな高齢者だらけの田舎では、何にも代えがたい大事なものである。

なぜなら、移民を募集する際の詳細欄に、住民人数を書かないといけないわけだけど、

 

男女80歳以上 26人

女性20代 1人

 

なんて書かれている村に移民を希望するトンチキなんて、存在しないのだ!

それならまだ、

 

男女80歳以上 26人

男性20代 1人

女性20代 1人

 

となっていた方が、何倍も期待が持てるのだ!

やはり、農村。力仕事の出来る男の有無は、実に死活問題なのである。

 

 

「さて、Lucifer君の為に、ギルドで依頼を頼もうかな。アリー、これ貼ってくれ」

 

村長が、ぺらぺらの羊皮紙に何かを書き込んでいる。その内容を覗きこむと、「とても大きな肉が食べたい。ミディアムで」と書かれていた。依頼が漠然過ぎるが、まあ、仕方がない。

私は椅子に乗っかり、コルクボードの一番目立つ場所に貼ってみる。

 

「さあ、ルシファー! ここが始まりの冒険者ギルドよ! 好きなように、やってみなさい!」

 

流れでギルドの仕事が始まってしまったが、とても久しぶりで、とっても楽しい!

やっぱりギルドはこうあるべきね! 自分で依頼を探して、自分で解決するなんて、違うもんね!

私はニコニコしながら、ルシファーが動くのを待った。一挙一動に、全神経を集中させる。

 

「…………よし、じゃあ、すいません! 初心者ですけど、何か依頼、ありますか?」

「はい、お待ちしておりました! 用意したての、あちらをどうぞ!」

 

ビシッとコルクボードの方を指さす。彼も場の雰囲気を読んだのか、笑顔になった。

 

「よし。じゃあ、あの依頼を解決しようかな。成功報酬は、どれくらいですか?」

「えーっと、えーっと……。村長、どれくらい?」

 

椅子に座って私たちの様子を見ていた村長が、うーんと頭を捻り上げる。

 

「じゃあ銅貨5枚でお願いしようかな。Lucifer君、銅貨5枚と言ったら、生半可な肉じゃ許さんぞ。しっかりと、銅貨5枚分の働きを期待しているからな?」

 

本当は内容が内容だけに、銅貨なんて2枚でも良かったんだと思うけど、私への家計の助けになるように、わざと高めに設定してくれたようだ。村長のその優しさが、心に染みるね。だから私も、村長の作戦だとは分かっているのだけど……村を出辛いんだよね………………。

そんな村長の答えに満足したのか、ルシファーが頷きながら「じゃあ、凄いの持ってきますから、期待しててくださいね」と笑い、私たちに手を振りながら扉の外に出て行ってしまった。

 

「……ルシファー、ずっとここにいてくれれば良いんだけどなぁ」

「はっはっは、なるべく難しい依頼を出して、困らせてやろうかな」

 

村長が私を慰める為なのか、笑いながら返事をする。

……でも、そうだよなぁ。ルシファーも『自信をつけたら』って言ってたし、もし依頼を達成する難しさに心が折れたのなら、ここでずっと暮らしてくれるかもしれないんだ!

自分の心の中に、素直にルシファーの夢を応援したい気持ちと、ルシファーにここに残って欲しい気持ちが揺らいでいるのが分かるんだけど、それにしても、男は夢を追うのが好きな生き物だよなぁ。心の天秤がフラフラと揺れているけど、宙ぶらりんの気持ちのまま、私は目の前のコルクボードを見つけ続けてしまったのだった。

…………本当は、残って欲しいが9割なんだけどね。嫌われない程度になんか文句付けて、依頼失敗扱いにしちゃおうかな。へへ、へっへっへ。へっへっへ。




登場人物

アリー:久々の仕事、楽しい
蒼穹のルシファー:冒険者の始まり、楽しい
村長:肉、美味しい
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