魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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第09話 その心は誰の為に……

 ここは喫茶店『Imagine Breaker』。しかし店は既に閉まっており、店内では上条と泉が何やら話し込んでいるのが聞こえてきた。

「前衛は俺、泉は長谷川と一緒に後方から攻撃してくれ。キノが帰ってきてないのがきついが……使えそうか?」

「うん。前々から、置いていってくれた武器は私達でも使えるように調整しているから。……上条君も持てばいいのに」

「知ってんだろ、俺は武器が持てないの。持ったら持ったで失敗する未来しか見えないよ」

 それでも上条は特殊加工を施した対衝撃用グローブを両手に填め、軍用のタクティカルベストに着替えていた。

 泉も同様の装備をし、さらに銃器とその弾倉をホルスターごと装着していく。最後にプラスチック爆薬の一種であるハンドアックスを専用の鞄に仕舞って背負うと、車のキーを片手に持って店の裏の方を向いた。

「じゃあ行こうか。時間は?」

「えっと――がふっ!?」

 時計を確認しようとした上条の頭を掴んで、床に叩きつけたものがいた。泉は車のキーを捨て、右腿のホルスターに付けたシグ・ザウエルP228を抜いて構えるが、目の前にいた人物に硬直してしまう。

「貴様等――」

 影からの転移で現れたエヴァンジェリンは、ボロボロになった身体を再生させつつ、上条の頭を押さえつけながら、泉に怒鳴った。

 

 

 

「何故時間通り(・・・・)に来なかったっ!?」

「ちょっ、ちょっと待って!! どういうこと!?」

 

 

 

 突然の話に、泉は混乱した。

 ただし上条は事情を察したのか、押さえつけられながらも携帯を取り出し、画面に千雨から(・・・・)送られてきたメールを表示する。

「原因はこれだ……」

「ん? ……あいつっ!?」

 事情を把握したエヴァンジェリンは上条の上から退き、再度影を動かし始めた。

「私は援軍を連れてくる!! お前達はそのまま向かえっ!!」

「援軍、ってそしたら事情を話す羽目に「知るかっ!! あいつを死なせて奴をのさばらせるよりずっと良いっ!!」――……ああ、行っちゃった」

 シグ・ザウエルP228をホルスターに仕舞い、泉は上条に手を貸した。

「ねえ、一体どういうこと?」

「長谷川の野郎、最初から一人で片を付けるつもりだ!」

 起きあがると同時に駆け出す上条に、泉も車のキーを拾ってから、慌てて追走する。店の裏に停めてあるスバルのステラカスタムに乗り込み、泉の運転で店を後にした。

「本来よりも遅い(・・)時間をこっちに教えてきたんだ。だから長谷川は最初から来ないと知ってて、無理矢理ついていったエヴァンジェリンに適当な口実を与えて別行動。後はこの様だ」

「……私のせいだ」

 車を運転しながら、泉は心中を吐露した。

「私、長谷川さんと話している時に少し、昔のことを思い出しちゃったんだ。多分それを気にして……」

「……気にしても仕方ない。早く向かおう、エヴァンジェリンが場所を訂正しなかったってことは、そこは嘘じゃないってことだ」

 徐々に暗くなる中、上条は落ち着かな気に何度もグローブを引っ張っていた。

(いくらボッチだったからって……全部一人で背負うんじゃねえよ!!)

 

 

 

 奇しくも、千雨達が『植木耕助』なる人物を襲撃しようとした日は、ネギ達がレセプションに参加する日でもあった。

 場所は学園都市の外れにある雪広財団の所有する大型ホテルの一室。

 上条達がステラカスタムで千雨の元へと向かおうとしている中、ネギは明日菜、あやか、フェイトと今日の打ち合わせをしていた。何故か和美も混じっているが、特に気にすることなく話は進行していく。

「こんなところかな……じゃあ、まずは雪広あやかが開会の挨拶をしてから、ネギ君はスピーチをお願い。後は質問コーナーだけど、専門的な回答になりそうだったら概略だけ話して切り上げてくれるかい? 後日HPに回答を載せるからと言って」

「そして私が賓客の方々を座談会の会場へご案内差し上げればよろしいのですわね」

「うん。キリの良いところで閉会の挨拶もしてもらえれば助かるけど、時間は気にしなくて良いよ。ネギ君が対応可能な範囲で十分だからさ」

 元々小規模な企画で目的もはっきりしている為、打ち合わせは最小限で済んだ。レセプションまでまだ時間があるので、ネギ達は用意された飲み物を喉に流しながらそれぞれ雑談に移っている。

「そういえばネギ君……」

「はい?」

 そんな中、ネギの座っている椅子の横に和美は立ち、話しかけてきた。

「この前は千雨ちゃんからのお誘いを受けていたけどさ、自分から誘う気はあった?」

「ボフォッ!?」

 突然の質問に咳き込んでしまったネギの背中を、和美は慌ててさすった。周囲も何事かと近寄ってくるが、何でもないと手を振って誤魔化していく。

 でないとネギがますます口を閉ざすと考えてのことだ。

「大丈夫、ネギ君?」

「ゴホッ、ゴホッ。ええ……何とか」

 ネギは軽く深呼吸し、再び喉を潤してから和美の方を向いた。

「えっと、どうして……」

「いやぁ、ネギ君が今でも本気なのかと思ってね。……で、どうなの?」

「……少なくとも、もう一度会いたいと思っていました」

 和美から視線を離し、ネギは床を見下ろしながらポツポツと話し始めた。

「直接会って、ゆっくり話してみたいと思いました。今でも本気なのかはまだ分かりませんが、少なくとも――」

 ネギの言葉が途切れた。

 突然影から現れたエヴァンジェリンに気を取られた為に。

「ぼーや! 今すぐ来いっ!!」

「えっ、マ、マスター!?」

 突然の事態に驚くネギの横から、慌てて明日菜達が割り込んできた。

「ちょちょちょっと、エヴァちゃん!?」

「一体どういうことですの!?」

「どうもこうもあるかっ!!」

 ようやく再生の終わった身体を軽く動かしてから、エヴァンジェリンは壁に凭れながら口を開いた。

 

 

 

「千雨の奴がレセプションを襲撃しようとした奴を止めようとして、逆に襲われてるんだ!! 早くしろっ!!」

 

 

 

「え……」

 その一言に、ネギは呆けてしまった。周囲が事情を知ろうと詰め寄る中、エヴァンジェリンはネギでなければならない(・・・・・・・・・・・)理由で言い押している。

「他の魔法教師は――」

「駄目だ!! 魔法使いでは逆に(・・)勝てない!! ラカンもアルビレオも不利になる。ナギが本調子ならまだ何とかなったが、今は使い物にならん!! そうなるとすぐに動けるのは――」

「でもそれではレセプションが――」

 ネギが口を挟む間もなく、話は進行していく。

 そんな中、彼に話しかけるものがいた。

「ネギ君。さっきの話の続きだけどさ……」

 返事はないが、和美は構うことなく話を進めていく。

 

 

 

「……ネギ君は何の為に、誰の為になら頑張れるの?」

 

 

 

「何の、誰の……?」

 言われたことを理解するのに少しの時間を要したが、それでも、やるべきことは見えてきた。

 一度目を閉じ、考えを整理したネギは、決断を下した。

「……フェイト。会場にクウネルさんかルーナさんは来ている?」

「二人共いるけど……ネギ君、まさか」

 影武者(・・・)ができる人がいると知り、ネギは立ち上がるや懐から封筒を取り出し、フェイトの胸に突き出した。

「質問の時間はなし。スピーチの後体調を崩して僕は欠席。スピーチもどちらかに読んでもらう。何かあった時の為に英語と日本語の両方で書いておいたから、後は読むだけで事足りる筈だよ」

「……万が一バレたら、今までの努力が水の泡だよ」

「ごめん、フェイト。でも、多分、僕にとってはこのままじゃ、意味がないんだ……」

 

 

 

 腹は決まった。

「……千雨さんがいない成功なんて、僕にはきっと、何の意味もないんだよ」

 

 

 

 あやかが急いで二人を呼びにいく中、フェイトはエヴァンジェリンに問いかけた。

「そもそも、なんでネギ君じゃないと駄目なんだい?」

「お前達も噂位は聞いたことがあるだろう……」

 エヴァンジェリンは忌々しげに、その理由を口にした。

「AMF、『Anti Magi-link Field』。効果範囲内の魔法を無効化する、対魔法使い用の兵器もしくは防御魔法の一種。その中では魔法はおろか、魔力稼働の仕組みは全てダウンしてしまう。それはフェイト、お前とて例外ではない」

「ちょっと待ってよエヴァちゃん!! 確かにそんな噂はあるけど、実用に至ったって話は「現に私はさっきまで再生力を奪われていた!!」――そんな……」

 あまりの出来事に、和美は閉口してしまう。

「それ以前に気づかないか? 私は転移(・・)してここ(・・)に来たんだぞ」

「転移って……ああっ!?」

「そう、完全かどうかは知らんが『登校地獄(インフェルヌス・スコラスティクス)』が解けているんだよ。学園都市からはまだ出られなかった筈なのに!!」

 憤るも、結果は変わらない。

「……事情は分かった。ネギ君、早く行ってくれ。こっちはどうにか誤魔化してみるよ」

「頼むよ、フェイト」

 素手だけよりかはましだろうと、杖を携えたネギはエヴァンジェリンの元に近寄った。そこに明日菜も、壁の近くに飾ってある鎧から剣を引き抜いてくる。

「じゃあ行きましょうか」

「……おいコラ」

 しれっと混ざってくる明日菜に、流石のエヴァンジェリンも指を突きつけてくる。

「お前まで行ってどうする!?」

「大丈夫よ、二人共いるんだし。戦力が足りないんでしょう? ……それに」

 ネギの肩を叩き、明日菜は笑いかけた。

「千雨ちゃんがいないと、ネギはますます駄目になっちゃうしね」

「あうう……」

「本当、ネギ君もまだまだ子供だよね~」

 和美も腹を決めたかの様に、傍に寄ってくる。

「エヴァちゃん、二人を届けたら連れていって欲しい場所があるんだけど……」

「……あそこだろ、分かってる。……ったく、人をタクシー扱いしおって」

 ブツクサ言いながらも、エヴァンジェリンはネギ達を連れて転移していった。それを見送ってから、フェイトは封筒の中身を取り出し、広げて内容を流し見ていく。

「よし、何とかなりそうだな。……頑張ってね」

 丁度入ってきたあやか達を近くに呼び集め、フェイトはレセプションの進行予定の変更を煮詰めていった。

 

 

 

 学園都市内にある周囲に人気のない、正面の拓けた大型倉庫の一つの前に車を止め、上条達は身体を動かしながら中に入っていった。

「……やっぱりガジェットか」

「なんとかの一つ覚えだけど、この世界じゃ有効だから困っちゃうよね~」

 ガジェット・ドローンと呼ばれる、円錐型と球体型の機械群が、工場の周辺を多い尽くしていた。本来ならば誰かが気づくだろうが、元から人気がないからか、上条達には感知できない結界か何かで隠蔽しているのか、他に来ている人間はいない。

「バイクは入り口にあった。ってことは、中に入った途端にこいつらが出てきた、って所かな?」

「だろうな。ただ中ってのは敷地内(・・・)ってことだろ?」

 上条が地面のある一点を指差した。そこの地面が焦げ、二人分の足跡が対称的に縦に伸びているのが辛うじて見える。

「そして魔法て転移して俺達を呼びに行ったエヴァンジェリンと反対に、長谷川の奴は倉庫の中に入っていった、ってところだな」

「そうなると、今日のことも罠臭いね。襲撃する振りをして、本当の狙いは私達かな?」

「となると、貧乏くじは特攻かまそうとした長谷川か。やれやれ……それじゃあ、行くか」

 拳を鳴らす上条と右手を突き出す泉に、ガジェットの群が襲いかかってきた。魔法も使えない中、二人は散ってそれぞれで倉庫へと向かっていく。

 相手の攻撃よりも早く接近し、上条は左手(・・)のグローブを操作して掌を露出させ、ガジェットに触れさせる。同時に泉も右手の薬指を立て、先端に球の付いた鎖を具現化(・・・)させ伸ばして操った。

 

 

 

時計屋(ウォッチメイカー)!!」

導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)!!」

 

 

 

 上条はガジェットを瞬時に分解し、泉は鎖の先端にある球を操ってガジェットを貫いた。

 攻撃を繰り返しながらも、二人は倉庫へと駆けていくのをやめなかった。しかし、ガジェットの群が減ることも叶っていない。

「やっぱり人手が足りないか……ああもう、『HUNTERxHUNTER』の続きを見るまで負けるもんかぁ!!」

「……この世界にもジャンプがあって良かったよ。先生、完結まで連載頑張って」

 AMFを意に介することなく、二人の攻撃が止むことはなかった。

 

 

 

 




(注)能力一覧のようなものを作成しようとしましたが、若干ネタバレが早まるので、ある程度進むか本シリーズが完結してから掲載しようと考えています。ご了承下さい。
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