魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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第16話 両手を握る覚悟 Vol.03

 上条は必死になって近づき、右手をぶつけようとする。

 彼の右手に宿る力は幻想殺し(イマジンブレイカー)、触れてしまえば相手は能力を使えなくなる。原作でもそれで拳を叩き込んでいた。

 けれども、その知識は相手も持ち合わせている。一方通行(アクセラレータ)は軽く地面を蹴るだけであっさりと距離を置いてしまう。そしてさらに蹴りを叩き込み、地面をめくり上げた。

「すげェよなァベクトル操作って……こンなこともできるンだからよォ!!」

 襲い掛かる土の腕に、上条は右手を当てて打ち消そうとする。

 しかし、上条の持つ力は右手だけじゃなかった。

「どォしたァ、土は幻想じゃねェぜ」

 実際には初めて使う、原作と違ってオンオフできるようにしてあるとはいえ、この能力は凶悪過ぎてあまり使う機会がなかった。いや、覚悟がなくて試しに使うことすらしてこなかった。

(……るかよ)

 それでも上条は使うと決め、右手でベクトル操作の支配を解いた土塊に左手を触れた。

(……こんなところで、死ねるかよぉおおおお!!)

時計屋(ウォッチメイカー)!!」

 その左手は、土塊を一撃で分解した。

「なっ!!」

 その能力(チート)の名は『時計屋(ウォッチメイカー)』、『AREA D 異能領域』の登場人物、飯田悟(いいださとる)が持つ、左手で触れた物を瞬時に分解する能力だ。

 実際は触れるだけで分解する凶暴な能力だが、上条は左手で直接触れてから念じることで分解できるようにしてある。

「ぅううらああああああああああ…………!!」

 その力を持って、上条は突き進む。

 土塊を分解しながら突き進んだ先に、一方通行(アクセラレータ)が立ち尽くしていた。それに構わず、上条は右手を握って振りかぶる。

「なめンじゃ「うらぁ!!」――がふっ!?」

 原作通りに、上条当麻(主人公)一方通行(悪役)を殴り倒した。しかし、そこからは彼らの物語だった。

「……やれよ」

「っ……!!」

 右手は一方通行(アクセラレータ)の首を掴んでいる。力を入れれば相手を窒息に追い込めるだろう。いや、左手を使えば一発で終わるはずだ。

 殺すだけならば。

 上条は内心で葛藤する。このまま殺していいのか、と。

 殺さなければならないのか?

 殺さなくてもいいのではないのか?

 今迄人を殺すという発想がなかったために、上条の行動はそこで停止してしまう。

「なァ、知ってっかァ? 戦場で二番目に死にやすい奴はなァ……」

 だからこそ気付かなかった。

 

 

 

「『殺すかどォか迷う奴』なンだって――」

 ダァン!!

「よ、ォ……」

 

 

 

 学園都市の能力者第一位に転移(憑依)した人間が後ろ腰に隠した自動拳銃を握ったことや、

「よく知ってるよ……そんなことは」

 今生での妹が容赦なく、自らが抑えていた襲撃者の頭蓋を撃ち抜く為に銃口を向けていたことに。

「兄さん、大丈夫?」

「…………」

 硝煙が残る『カノン』を一度振り、煙を絶ってからホルスターに戻したキノは、その右手を上条に伸ばした。手を貸すつもりだったが、一向に相手から手が伸びる気配はない。

「……兄さん?」

「……んで、」

 上条が呟く。

「何でお前は、簡単に……人を殺せるんだ?」

 見上げる眼差し、上条に冷めた眼を向けられながらも、キノは平然と答えた。

「それは……前世で人を殺したことがあるからだよ」

 上条が見つめる中、キノはしゃがんで目線を合わせながら話していく。

「家庭内暴力が絶えない家でさ、ある日母さんに暴力をふるっていた父さんの背中を、包丁で刺したんだ。一応は情状酌量とかで放免にはなったけど、殺しの罪は消えなかった……」

 視線が交わる中、二人は顔を逸らさずにいた。

「いつまで経っても、人殺しの過去は消えなかった。向けられるのは過去に対する憐憫か、過去を責めたてる批難か。どっちにしても、前科のある人間に対して、他人の目は冷たいんだ」

「……それでも、お前は生きたいのか?」

「生きたいよ。人間だからね」

 キノの即答に、上条は漸く顔を上げる。

「兄さんは違うの?」

「……そうだな。悪い、助かった」

「いいよ。人殺しには変わりないんだし」

 漸く立ち上がり、一方通行(アクセラレータ)の死体から離れた二人は互いの状況を話し合った。

「うわ、見たかったおっぱ「兄さん」――……ゴホン、まあ二人共無事で良かった。うん」

 キノのジト目に対して、上条は咳払いして誤魔化す。事情は分からないが、状況は大体飲み込めてきた。

「にしても憑依系の転生者か。完全に転移する為に俺達を殺そうとするなんて、どんな事情だか……」

「そうだよね。なんでボク達を殺すとそうなるんだろう……って、兄さん?」

 腕を組んで悩んでいると、ふと上条の顔が青ざめていくのを見て、キノは不思議そうに問いかけた。

「どうしたの?」

「……なあ、狙いは俺達(・・)って、言ってたよな」

 上条が首を振る。見つめている方角を見て、キノも漸く事情を飲み込めた。

 

 

 

「もしかして、俺達転生者(兄妹)だけじゃなく、転移者(泉達)も含まれているんじゃ……!!」

 

 

 

 時は戻り、上条が運営する喫茶店では泉達が店内の掃除をしていた。

「……というか、せっかくの休日に何やってるんだろうね、私達」

「そういうのは掃除してから言えっ!!」

 モップ掛けをする(かがみ)のツッコミにもめげず、泉はスマホ片手にアプリゲームをしていた。そんな様子を(つかさ)と高良は食器を片付けながら微笑ましげに見ている。

 春ではないとはいえ、陽だまりが心地よい店内では穏やかに時が過ぎていた。

「そう言えばこなちゃん」

「ん~なに~?」

 食器を片付けた(つかさ)が泉に近寄り、テーブル席の向かいに着く。

「最近上条君とよくそのゲームしてるけど、面白いのそれ?」

「面白いかもね~若干頭使うけど、運に左右される要素少ないし」

「そうなんだ~私もやってみようかな~」

 片付け終えた高良も興味を持ったのか、泉達の元へと向かっていく。どうやら何のゲームか聞こうとしているらしい。

「……いやちょっと待て。なんか今一瞬ありえないところからラブ臭が――」

 等と(かがみ)が反応した時だった。カラン、という呼び鈴と共に誰かが店に入ってきたのは。

「あ、すみません。今日は定休日でして……」

 手早く対応しようとするも、その外見に圧倒されてしまう。

 褐色の肌にサングラス、特に目立つのは顔に刻まれた×字の傷跡だった。

「……傷の男(スカー)?」

 それは、錬金術師を狩る者だった。故郷を壊され、家族を殺された恨みを晴らさんが為に、自ら修羅と化した男と同一の存在だった。

 突然の来訪者、それも予想外の人物に思わず呟く(かがみ)だったが、振り上げられた右腕を見た途端、視界が突如反転した。

「……って、なにすんのよっ!?」

「いやかがみん床見てっ!!」

 スマホを捨て、席から跳ね降りた泉が勢いのまま(かがみ)の肩を掴んで引き戻したのだ。そうしなければ、掌底で貫かれた床板の様に彼女も砕けていただろう。

「錬成痕があります。本物の錬金術……まさか、私達と同じ――」

「じゃあなんで私達が襲われなきゃいけないのよっ!?」

 突然の訪問者、しかも転生者らしき人物の襲撃に誰もが委縮した。

「――ヒュッ!!」

 傷の男(スカー)の攻撃に唯一反応できた泉以外は。

 (かがみ)から離れた泉は元々座っていた椅子の足を掴んで傷の男(スカー)に投げつけた。その椅子の陰に隠れながら身を低くして駆け抜ける。

「……フン」

 軽く息を吐いた傷の男(スカー)は右手を振って投げつけられた椅子を、右腕に刻まれた錬成陣を作動させて分解した。その分解された残骸に紛れながら、泉は相手の脛に容赦なくスライディングキックをぶつける。

「……って固っ!!」

「こなちゃんっ!?」

 何か仕込んでいるのか、それとも筋肉量の違いか。

 泉の蹴りは効果を見せず、逆に体勢を崩してしまい、身動きが取れなくなった。そこへ容赦なく、傷の男(スカー)が繰り出してくる。

「死ねっ!!」

「直接的すぎるっ!!」

 腕(ひし)ぎの要領で右手から逃れた泉だったが、そのまま腕にしがみつく前に振り解かれてしまう。

「ぎゃふっ!?」

『(こなた・こなちゃん・泉さん)っ!?』

 背中から叩きつけられてしまい、泉は目を回しながら床に崩れ落ちてしまった。追撃する為か、傷の男(スカー)がゆっくりと近づいてくる。

「こなちゃん逃げて~!!」

 (つかさ)が叫ぶも、泉は目をしばたかせている以外は、一切の身動きを取っていない。先程の衝突で脳が揺れてしまったのだろう。

 まともに動けない泉目掛けて、傷の男(スカー)は右手を構えた。

「死ねっ!!」

 降り降ろされる破壊の右手を見て、(つかさ)は目を瞑るが、一向に泉の断末魔は聞こえない。代わりに聞こえてきたのは、金属が擦れる金切り音で……。

「……こなたにっ、私の大事な友達にっ!」

 (つかさ)が目を開けると、前世でも双子の姉だった(かがみ)が、自らの右手から伸ばした、先端に鉤爪の付いた鎖で傷の男(スカー)の右腕を拘束していた。

 更に(かがみ)は、伸ばしていた右中指の隣の薬指も立て、もう一本、先端に球が付いた鎖を具現化(・・・)させる。

 

 

 

「――手を出すんじゃないわよっ!!」

 

 

 

 その球は迷わず傷の男(スカー)の顔面にぶつけられた。

 よろける傷の男(スカー)に構わず、(かがみ)は叫ぶ。

「みゆき、そいつ吹っ飛ばしてっ!!」

 (かがみ)の声に硬直が解けた様に、高良は一度両手を合わせてから、しゃがんで床に触れた。

「錬金術を使えるのは、あなただけではありませんっ!!」

 錬成反応の光と煙が発生し、中から飛び出した角柱が傷の男(スカー)の腹に激突し、その勢いのまま壁を突き破って店の外へと吹き飛ばした。

 傷の男(スカー)が店の外に出たのを確認してから、(かがみ)は鎖を一端戻し、(つかさ)に駆け寄ってその手を引く。

「もう大丈夫だから、つかさ。……こなた、無事!?」

 二人して駆け寄ると、丁度泉も回復したのか、軽く頭を振りながら、上半身だけを起こした状態で返事をする。

「いやぁ、助かったよかがみん。まさしくツンデレの「うるさいわっ!!」――オォウ、まだ響く~」

 泉の無事を確認してから、(かがみ)は店の壁に開いた穴を、その向こうで伸びている傷の男(スカー)を見つめる。

「それにしても何なの、あいつ」

「まったくだよね。あそこはせめて『神に祈る間をやろう……』って言って欲しかったかな……」

「死に掛けといて何をのんきなっ!!」

 そうこうしている内に、傷の男(スカー)の方でも動きがあった。どうやら気絶しなかったらしい。すぐに起き上がる気配がする。

「ああそうこうしている間に!!」

「みゆきさん、ショットガン!!」

 頭を抱えて叫ぶ(かがみ)の横で、泉は高良に指示を飛ばした。高良は厨房スペースに置いてある上条のウィンチェスターM1897(ゴム弾装填済み)を手に取る。

「泉さんっ!!」

「ほいさっ!!」

 投げ渡されるショットガン。

 泉はポンプアクションで弾丸を薬室に送り、銃口を傷の男(スカー)へと向ける。

「……一発だ」

「それ『アリソン』の方!!」

 (かがみ)のツッコミを合図に、泉は引き金を引いた。吐き出されたゴム弾は狙い違わず傷の男(スカー)の脳天に激突し、再度吹き飛ばしてしまう。

「……やっぱりショットガンは散弾(スラッグ)じゃないと気分でないね」

「だから言ってる場合かっての」

「かがみ的には嬉しくないの? 種類は違えど、相良君と同じショットガンなのに」

「……言わないで。最初アーム・スレイブ(アーバレスト)頼もうとしたのに、断られた記憶が蘇るから……」

 とりあえずとばかりに、四人は店の外へと出た。無論、傷の男(スカー)は高良の錬金術で遠隔で地面を伸ばし、固めて拘束した上でだが。

「……で、こいつどうするのよ?」

「目的が分からないと、なんとも言えませんね……」

 とはいえ、このままにしておけば、また襲われるかもしれない。

「しょうがない。とりあえずかがみ、律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)でも打ち込んで……つかさ後ろっ!!」

 泉が(かがみ)の方を向いた時、傷の男(スカー)に怯えて距離を取っていた(つかさ)が視界に入った。

 同時に、(つかさ)の背後の空間が光るのも見え、思わず叫んだのだ。

「えっ、どうしたのこなちゃん?」

 後ろを向く(つかさ)

 

 

 

「――頂いたよ。その能力(ちから)

 

 

 

 そして、光の中から現れた男が手を伸ばし、(つかさ)の顔に指を差し込んできた。




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 感想欄に【質問】と入れてから、書かれた質問に関しましては内容を問わず必ず返信します。ユーザーも通りすがりも問いません。それどころか問答無用で、最新話の後書きに質問と回答をコピペして掲載していきます。
皆さん、どしどし応ボッ!?

シャーリー「……いいから勉強しろ」

 ちょっとした気晴らしなのに……

シャーリー「……後騙されるな。こいつは昔、自称『読者の敵』を気取ってた馬鹿だぞ。つまり面倒臭い質問に対しては全部『ざまぁ』って返すに決まってる」

 失礼な。まともな質問には必ず丁寧に返しますよ。ふざけた内容に関してしか言いません!!

シャーリー「……やっぱり言うんだなおい」

 メッセージや活動報告のコメントでも問題ありませんが、確認が遅れる場合もあることをご了承ください。
 というか、活動報告もコメント返しした方がいいのでしょうか?
 あそこまで来るとは思ってなかったので、気が付いたら三件もあったんですが。

 まあなんにしても、もう少し余裕ができれば他の小説也書きたいと考えていますので。これからも拙作を宜しくお願い致します。では







(……ネタバレに関しては『今後の活躍に期待して下さい』と返そうとしていたのはセーフだよな?)
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