「……とまあ、紆余曲折あったが。キノが一人で
「この間を除けば、長谷川さんと出会った一件しか関わってないけどね。しかも今回と同じ捨て駒」
上条達の過去話を聞き、妄想等と称せないレベルの凄惨な内容に、ネギと和美は、いつの間にか各々の得物から手を放している。
唯一構えていなかった明日菜が、上条達に詰め寄って話しかけていた。
「なんなのよ、それ。私達が
「より正確に言うと、『魔法先生ネギま』っていう『ネギ=スプリングフィールド』が主人公の漫画が、だね」
「それってつまり……どゆこと?」
途中で話がややこしくなり、明日菜がネギ達の方を向く。それに和美が分かりやすく解説した。
「要するに『ネギ君の人生』を中心とした物語を前世で見ていたって話。ネギ君から見たら、程度は違っても他の人間は『周辺のモブキャラ』でしょ?」
和美は再びカップを傾けてから、軽く身体の凝りを解きつつ、説明を続けた。
「だから簡潔に言うと……この世界という漫画を読んだ人達は漏れなく、ネギ君の人生の一部を覗き見してたってことだったんだよ!!」
『なっ、なんだってーっ!!』
叫ぶ和美。驚く明日菜達!!
「……お前も一緒に驚いてどうするよ」
「いや~、ここは乗っておくべきかと」
明日菜と一緒になって驚いていた泉に上条がツッコむ。そしてネギは、若干顔を青ざめつつ上条達に問いかけた。
「それってつまり、僕の恥ずかしい秘密とかも……」
「ああ……」
上条は立ち上がり、再びカウンターの裏に戻りながら、おもむろに言葉を放った。
「神楽坂がパ○パンだったりくまパンだったり、他にもクラスの面々がクシャミ喰らう度に脱げ女になってたり……生前は大変お世話になり『このスケベッ!!』――ぶばっ!?」
明日菜、和美、泉のトリプルキックを受け、上条は吹っ飛ばされた。唯一の救いは、厨房スペースに入りきる前だったことだろう。調理器具が並んでいて危なかったので。
「いやだって男だからね上条さんも。そりゃ少年雑誌のファンタジー漫画とは言え、ラブエロコメコミコミの漫画読んでたらそんな感情持ってもおかしくないよね!? 実際同人誌とかじゃ「話が拗れるから上条君は口閉じてっ!!」――……すみませんでした」
泉が制裁代わりにと顔面に再度蹴りを噛ましてから、同じく立ち上がっていた二人とネギに振り返って話しかけた。
「いや大丈夫だから!! もう原作終わってるから!! イベントだって後は『誰々が結婚した』って結果報告だけだから『えっ、誰が誰と結婚したか分かるのっ!?』――……流石にノーコメントでお願いします。というかもう、当てにならないからね」
詰め寄る明日菜と和美を押し退け、泉は腕を組んで溜息を吐いた。
「どういうこと?」
「漫画原作が完結してるってのもあるけど、この世界は完全に別物の『平行世界』かもしれない、って話」
泉が顎をしゃくらせて、とある壁の一面を指す。ネギ達がその方向に目を向けると、コルク製のボードが壁に掛けられており、そこには写真が幾つか張られていた。
「この世界には、別の『原作』も混ざってるんだよね……」
それは、この店の歴史だった。
スタンガンを突きつけられた男が、向かいに座る女性とハート型ストローで一つのドリンクを飲んでいた。
煙草をくわえている千雨が、赤みがかった茶髪のあくび女や柔らかい茶髪だが雰囲気が怖い女、異常に胸が大きいが反比例してビビり気味の黒髪眼鏡の女達と雀卓を囲んでいた。
金髪アロハと鼻輪ピアスの男達が上条を挟んで何かを叫んでいた。
外見ギャルっぽい女性の膝に座らせられた泉が、そこから逃れようと暴れていた。
店の前でエルメスを洗車していた筈のキノが、何故か水の出ているホースを片手に相棒を蹴り倒していた。
他にもたくさんの写真があり、そして最後の一枚には、ケーキを前にした千雨を中心に、女性陣が固まって写っていた。
「最後のは長谷川さんの誕生日の時のね。そして……私はこの人達が『別の原作の登場人物』であることも、『平行世界の異次元同意体』であることも知っている。本当の原作なら『存在しない人達』である筈なんだよ」
「つまりもう、『原作以上の出来事が混ざっている』ってこと?」
和美の問いかけに、泉は首肯した。
「後、決定打になったのは『魔法反徒ネギま』だよ。少なくとも、あんな映画を撮っていたなんて知らなかったし。……というか長谷川さんに隠れて見たけど、よく作る気になったね。あんなえげつない映画」
「それに関しては同意見だ」
今迄黙って本を読んでいたエヴァンジェリンも、流石にこの話題に関しては会話を挟んできた。
「何言ってるのよ。あれこそ歴史に残る名作じゃない!!」
「『迷作』、ね。明日菜」
「『迷走』じゃなくて『迷惑』の方の『迷』だからな」
エヴァンジェリンの言と共に、若干落ち込む明日菜の肩を叩く和美。ふと視界の端でネギが立ち上がり、コルクボードの写真を眺めているのを見つけた。
「千雨さん……笑ってますね」
千雨が写っている写真は幾つかあった。中には呆れていたりする写真もあったが、それ以上に、切り取られた風景の彼女は、どこか楽しげだった。
「
ネギが視線を降ろすと、上条が床に腰掛けながら話しかけてきた。
「もし引き籠もったままだったら……こんな人生、歩めなかったってさ」
「そう、ですか……」
「ついでに言うと、事情を知っている俺や泉達の前だと、ネギ先生達との話を延々と聞かされるな。俺達が原作読んでるって言っても、酒が入る度にさらに細かく解説した上でさ。
言ったろ? あいつの昔話の大半は、あんたのことだって」
前に言った通りだと告げながら、上条は立ち上がった。
「その上で、ってのも若干卑怯だが、それでも聞くぞ。敵について、俺達を殺そうとした奴について聞きたいか?」
「はい」
「即答かよ……」
呆れる上条だが、逆に納得してしまう。
(むしろ、
同じ物語でも、人によっては見方が違う。人が千差万別で、同じ存在がないように。例え別の世界であっても、同じ在り様で生きていくように。
だからこそ、物語の主人公達は何処かが違う。その力が、姿が、言葉が、生き方そのものが、善悪を問わず人々を魅了する。それだけの存在だから……
だから上条も、話すことに決めた。
「その男の名前は『ジェイル・スカリエッティ』……俺達と同じ転生者だ。転移か転生か迄は……もういいや、この世界に『転がり移って来た』ってことで、全部転移者で括ろう」
「また適当な……でもいっか、多分
メタ発言自重!!
「あるアニメで『
「そして、ここからは仮説だが……俺達を襲った三人は多分、あいつが生み出した
上条はカウンターの裏から取り出した写真を三枚、表にして広げた。
一人はアホ毛の目立つ幼女に引っ張られながらも杖を突いていた。もう一人は眼鏡を掛けた、よく似た人物と並んで買い物袋を抱えていた。そして最後の女性は――
「って!! まだ持ってたかっ!!」
「しまぎゃふっ!!」
泉が上条の腹を蹴飛ばし、内容を察した和美が素早くその一枚だけを抜いて明日菜にだけ見えるようにした。それを見た明日菜も、ネギを睨んで近づけさせない様に牽制している。
「もっとまともな写真があったでしょ。友達と風船で遊んでいるところとかさ」
「いや、土御門の奴がこっそり売ってくれて……」
「はっはっは~これは盗撮ですお巡りさ~ん」
「ISSDAの神楽坂です。ご同行願えますか?」
身分証を掲げる明日菜にガチ土下座をかます上条を無視して、事情をなんとなくだが察したネギは和美に問いかけた。
「もしかしてそれ、盗撮写真なんですか?」
「うん。温泉の写真なんだけど、丁度身体を洗っているところで、色々と不味いところが丸見え」
パンパン、と手を叩いで話を中断させる和美。というかこの手の中断、あと何回すればいいんだよ、教えてくれ五飛。
「というか明日菜、ISSDAに警察的な権限なんてないでしょう。その手の担当は
「いや、一回言ってみたかったのよね。後別口で権限持ってるわよ。緊急時しか使えないけど」
「じゃあ常に権限持ってる人に突き出してよ。一回捕まった方がいいって、この人は……」
呆れ果てたまま指を差してくる泉のジト目に耐えられず、上条は蹲ってしまう。それに構わず、話を再開した。
「手掛かりになるかと思って調べたんだけどね。その当日は全員アリバイがあった。それ以前に、私達が住んでいた地域に入った形跡すらない」
「それって、植木耕助の時と同じ……」
「その通り」
和美の発言を肯定し、泉は(残り二枚の)写真を指差した。
「スカリエッティが関与していたのは間違いないよ。複製方法は違うんだろうけど、植木耕助自体は長谷川さんと出会った一件で出てきた転移者と同じ様に消えたし」
その最後を泉は思い出したが、すぐに頭を振って忘れた。
「違うのは自我の希薄さかな。前の時は
その一言を自らが呟いた時、泉は吠えた。
「そうだ思い出した!! 原作は雑誌も掲載時期も一緒じゃん!! なんで気付かなかったんだろう!!」
「おい、どうした泉?」
「どうしたの、こなちゃん?」
あまりの変貌ぶりに、上条と和美は恐る恐る話し掛けるが、泉は気にせず捲し立てた。
「あれだよ上条君!! あいつが最後に見せた『
――ドドォォオオオオンン!!!!
「『――ガ・』……ってあれ?」
しかし、そのセリフは遮られてしまう。
「一体何?」
「外の方ですよ。何か大きな爆発が起きたような……」
ネギと明日菜が店を出て、先程の轟音が生まれたであろう方角を見る。
その方向にはマンション等の高層建築が立ち並び、店の前からでも視認出来る程の黒煙が立ち込めていた。
「あれって「大変だ……」――……ネギ?」
ネギから漏れ出た言葉を聞き返そうとするも、先に走り去ってしまう。慌てて止めようとするが、明日菜の手から逃れてしまい、茫然としたまま行かせてしまった。
「ちょっと、ネギ!!」
「明日菜、話は中断!!」
「車取ってくる!! 動ける人は先に行って!!」
次々と店から出て、事情を理解した者達はすぐに動いた。
エヴァンジェリンは素早く影に潜り、そのまま転移した。それを見た和美は、千雨から借りていた原付に跨り、ヘルメットも御座なりに被ってから発進していく。
話についていけてない明日菜の横で、泉の車を待つ上条は状況を説明した。
「あそこなんだよ」
「……何、どういうこと」
上条は、未だに黒煙が生まれているマンションを指差し、こう告げた。
「……長谷川の住んでいるマンション、あそこなんだよ」
「ぼーやっ!!」
「あっ、マスター!!」
先に到着していたネギに続いて、転移を繰り返して来たエヴァンジェリンが並んでマンションを見上げる。黒煙は未だに巻き上がり、周囲にも消防隊や野次馬が集まっていた。
その少し離れたところで、二人は話し出した。
「千雨さんの携帯に掛けているのですが、未だ出てくれません。マスターは千雨さんの部屋をご存知ですか?」
「残念だがあの辺りなのは間違いない。別の部屋ならまだいいんだが……」
こっそりマンションの中へ転移するか考えていると、丁度原付と車に乗ってきた明日菜達が近づいてきたので、少し離れた場所へと誘導した。
続々と降りてくる面々とも向き合い、把握している内容を説明しつつ纏めていく。
「問題はマンションにあいつがいるかか。朝倉和美、分かるか?」
「少なくとも、私が出る時はいたのは間違いないよ。その後は流石に……」
さてどうするか、と誰かが意見を出そうという雰囲気の時に、携帯の着信音が鳴り響いた。
『首置いてけ!!』
「あっ、メールだ」
「もしかして千雨さんですかっ!?」
「いやその物騒な着信音スルーしていいの!?」
明日菜のツッコミを無視して、泉は自らの携帯を取り出した。ネギや隣にいた上条も肩越しに覗き込む。すると、画面を開く前に、どこかボロボロな、ネズミのような精霊が泉の携帯から姿を現した。
それは千雨のである『
「しらたきさんっ!?」
「いやだいこでしょ!?」
「何言ってるの明日菜、ねぎだって!!」
「いやちくわふだろこいつ」
「皆何言ってるの!! どう見てもこんにゃじゃん!!」
「ふっふっふ、上条さんには分かりましたよ。ずばり、あなたははんぺさんだっ!!」
『きんちゃ、っす……』
全員外れたからか、何故か一斉に指を鳴らした。
『丁度良かったです……PCに届ける予定でしたが、近くにいたのでそのまま携帯におい、テ…………全員外すなんてヒドイン』
『きんちゃーっ!!』
そして全員が叫ぶ中、電子精霊のきんちゃは、粒子となって消え去った。
「ねえ、ちょっと。まさか、死んだんじゃ……」
「いえ大丈夫です。恐らくカードに戻っただけかと……」
「くそっ。せめてっ、せめてキノさえいてくれたら「一人は当てられたのに、とか場違いなこと言わないでよ」――……いや言わないよっ!! 上条さんはちゃんと空気の読める子っ!!」
それでも若干理不尽に女性陣に回し蹴られる上条をそのままにして、ネギはパートナー達の
「カードは死んでいない……千雨さんはまだ無事です!!」
「後は行先と相手の目的……目的の方は長谷川さんからのメールで少し分かったよ」
上条に足を乗せながら、泉は携帯を操作してメールの中身を流し読みして状況を把握していた。今日はハーフパンツなのでラッキースケベな展開もなく、速やかに説明が行われる。
「相手の目的はとある人物のDNAに近しい人を探すこと。そして該当者の中で一番近いのは……長谷川さんだった。だから狙われたんだよ」
「DNA? さっき話していた
「いや、私の考えが正しければ……元のDNA情報の持ち主の名前は『ココ』、って言うはずだよ」
足を下ろし、泉は説明を続けた。
「そして……犯人の名前は『ゾフィス』」
「人の心を操る、卑劣で残虐な…………
今回のきんちゃのネタですが、今迄見たことないので使いましたが、他でも使ってそうな気がするんですよね。というか、似たようなネタをどこかでやってた気がするんですが……あ、ウマゴンか。
ともあれ、盗作の類だと認識はしていませんので、もし既にあれば、それを踏まえた上で注意して頂ければ幸いです。