魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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誤字脱字を確認した場合を除き、前回と同じ内容で投稿しています。新作はまだ先になりますので、気長にお待ちいただければ幸いです。


魔法反徒ネギま 四人の逃亡者達 1.麻帆良学園逃亡編
第01話 現在逃亡中につき、詳細は後日に


 某日の麻帆良学園。登校中の生徒に紛れて、逆走する路面電車が存在していた。

 その電車は事前に改造されていたのか、線路を外れても走行を続け、一路学園と外を繋ぐ橋へと向かっている。

「もうすぐ学園結界の端です。ネギさん、マスターの呪いは?」

「それが予想以上にがんじがらめに掛けられてて! 今一部だけ破壊して、外に出られるようにしているところです!!」

「おい! 何か追っかけてくるぞ!?」

 路面電車内は混乱で埋め尽くされていた。ガイノイドの茶々丸が路面電車を動かし、座席の一つではネギがエヴァンジェリンの『登校地獄』を解除しようと躍起になり、後部座席で後ろを見ていた千雨が追走してくる魔法教師達に驚いて怒鳴っていた。

「うぉいっ! 全部解除できないのか!?」

「今は時間がないんですよ!! 恨むならあのクソ親父に「攻撃回避のため、揺れます」――うわわっ!?」

 向こうは電車を止めるためか、人気が無くなった途端に魔法を行使してきた。攻撃は基礎的な『魔法の射手』だが、如何せん数が違う。茶々丸が咄嗟に機転を働かせて回避行動に移らなければ、今頃ハチの巣になっていたほどだ。

「あと20メートルです。お急ぎを」

「もう少し……よし、外れた!!」

 展開していた魔法陣を閉じて、ネギは後ろへと向かった。その後ろでは一部とはいえ呪いが解け、追われている状況なのにも拘らず狂喜乱舞しているエヴァンジェリンがいた。

「はっはぁ!! 見ろ茶々丸!! とうとう呪いが「回避行動に移ります」――へぶうっ!?」

 電車の揺れに耐えられずに座席に頭をぶつけて涙目になるエヴァンジェリン。だが彼女を見ていたのは荷物に紛れて埋まっていたチャチャゼロだけだったりする。

「止まるんだネギ君!! 君は今、何をやっているのか理解しているのか!?」

「ちゃんと退学届も退職願も提出したよトリプルT!!」

「だから変なあだ名で呼ばないでよ!!」

 トリプルTことタカミチも追走に加わるが、未だに電車と魔法教師との距離に開きがあった。

「千雨さん! そこの鞄から緑色の缶をありったけ出して下さい!!」

「これか!?」

 そう言って千雨が持ってきたのは緑色の缶、――スモークグレネードだった。

「ピンを全部抜いて外に放り投げて!!」

「おうっ!!」

 片っ端から電車外に投げられる缶が爆発的に煙を生み、魔法先生を包み込んでいた。

「茶々丸さん! 加速!!」

「了解、加速します」

 ネギの指示に従い、電車の速度を上げる茶々丸。魔法教師達は煙に巻かれ、誰かが風魔法で吹き飛ばすまでの間にその距離は決定的にまで開き切ってしまう。

 そして、ネギ達を乗せた路面電車は橋を渡り切り、無事とはいかないまでも麻帆良学園からの脱出を成功させたのだ。

「エヴァさん、呪いは!?」

「未だに魔力は封じられているが、問題はない! 成功だ!!」

 エヴァンジェリンの哄笑を残し、路面電車は麻帆良学園を後にした。

 

「ネギ君……」

 既に視界から消えた路面電車が去った方を、タカミチは悲しげな瞳で見つめていた。近くに居る魔法教師達は力尽きたのかその場で頽れ、今は無き英雄の息子へと思いを馳せている。

「……何故、君は…………?」

 誰もがこの現状に理解できていないまま、徐々にその場から人気が無くなっていった。

 

「もうすぐ港です」

「千雨さん、船の方は――」

「既に連絡済みだ。いつでも乗り込めるってさ」

 千雨が携帯電話を閉じると同時に、田舎道を抜けた路面電車は港へと躍り出た。桟橋に向かって進むと同時に、海の方から80フィート級の魚雷艇が向かってきている。

「うおいっ! 長谷川様ご一行かぁ!?」

 先に停泊した魚雷艇から出てきた女性からの怒鳴り声に千雨は窓から身を乗り出して手を振り、肯定と指示した。

 電車が桟橋手前で停止すると共にネギ達は荷物を持って船へと駆けだした。

「他にも荷物があるから手伝ってくれ!」

「おうっ!」

 千雨の声に従ってラグーン号の船員(クルー)であるレヴィと社長のダッチが桟橋に降り立って、入れ違いに路面電車へと向かっていた。

 船の前にはロックが立ち、ネギ達を船に収容した後に書類の挟まったバインダーを差し出した。

「えっと、契約事項の確認と書類に了承のサインが欲しいんだけど……代表者の長谷川千雨さんってのは――」

「私だ。ちょっと貸してくれ」

 ロックからバインダーを受け取り、契約内容に齟齬がないかを確認してサインを記す後ろでは、レヴィ達が運び込んだ荷物をネギと茶々丸が確認していた。

「千雨さん! 荷物は全部揃ってます!」

「不備はありません」

 それに手を挙げて返すと、走り気味にサインしてバインダーをロックに返した。

「これで契約は完了だね」

 同じく署名を確認したロックの返事を聞いて、ネギはあるものをレヴィに投げ渡した。

「じゃあ最後にこれを路面電車に置いて、てっぺんの赤いボタンを押してください。その後すぐに出航を」

「人使いがちと荒くないか、チビすけ」

「レヴィ、いいから行って来い。そういう内容の仕事なんだからよ」

 へいへい、とダッチに返してレヴィは路面電車に時限爆弾を設置し、ネギの指示通りに赤いボタンを押した。

 レヴィが乗り込んだのを確認すると、ダッチは操舵席について操縦桿を握った。

「では紳士淑女諸君、出航だ」

 ダッチの掛け声と共に、魚雷艇ラグーン号は桟橋を後にした。

 

 ――ドォン!!

 

 逃亡に使った路面電車の爆破時の轟音を背にして。

 

 

 

 その数時間後。

「では失礼します。学園長」

 ガンドルフィーニの退室を確認して、学園長である近衛近衛門は隣に立っているタカミチに目を向けた。

「今の報告を聞いて、タカミチ君はどう思ったね」

「随分前から、計画していたのでしょう。路面電車の改造といい、先程の爆破事件といい」

 ネギ達の乗った路面電車が麻帆良を後にすると同時に、学園都市内で小規模とはいえ爆破事件が連続して発生した。しかも爆破されたのは路面電車に乗っていたと思われる女子生徒、絡繰茶々丸、長谷川千雨、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの居住先であったことからも、そう推測できた。おそらく逃亡先の情報を可能な限り消し去るための処置だったのだろう。

「ふぅむ……向こうからは問題がないように連絡されていたが、もしかしたら何かあったのかもしれないのぅ」

「とは言っても学園長、このことが公になれば麻帆良学園(こちら)にも批判が集まりますよ? ただでさえ、魔法世界ではこの学園に問題があると考えているみたいですから」

 学園長は顎に手を当て、思案するように瞑目しつつ、顎髭を撫でた。

「じゃが彼が逃走した原因を探らねば、彼もこちらの話を聞くとは思えん。すまんがウェールズまで飛んで、その原因を探ってきてもらえぬかのぉ。儂は魔法関係者達と共にネギ君達の捜索を行うのでな」

「分かりました」

 一礼して、タカミチも学園長室から退室した。その背中の方を向き、学園長はただ顎髭を撫でている。

「……逃亡に転移魔法ではなく路面電車を使ったのはおそらくエヴァンジェリンの解呪の時間を稼ぐため。爆破は足取りを消し去るためじゃろう。……であっても、未だに腑に落ちん点がある」

 どうやって彼らは知り合い、ここまでの計画を立てたのか?

 逃亡に使用した改造路面電車やスモークグレネードを準備した経路は?

 そしていつから、この計画は立てられていたのか?

「ここまで計画的じゃと、彼らはどう……いかんっ!?」

 今までの判断材料で、彼らは何処へ逃げるのかを思案していたが、一か所だけ、こちらが不利になる場所に思い当たって、机の上にある電話の受話器を手に取り、急いで操作した。

 ――prrr……

「……おお婿殿! 実「すみませんお義父さん! 今取り込んでで時間がないんです!!」婿殿!? ……切れてしまいおった。遅かったようじゃな」

 学園長はゆっくり受話器を置き、予想した逃亡先が当たりだったことに気づいた。

「まずいのぅ……」

 彼らの逃亡先はおそらく関西、広く見積もっても西日本だと、学園長は確信した。おそらく西に位置している関西呪術協会を隠れ蓑にしただろう。ちょっとした既成事実でも、向こうで内乱を起こすのはそう難しくはない。特に関西呪術協会の長でもある近衛詠春との繋がりでもつつけば、疑心暗鬼な者たちがこぞって反逆を企てるであろうことは、日本の魔法関係者ならば誰もが知っていること。

「そして、関東魔法教会でもある我々が手を出すには時間が掛かりすぎる」

 協力は取れないどころか、下手にでしゃばればただでさえ仲の悪い二つの協会は必ずや争いだす。そして様々な問題をクリアにして彼らを追うために魔法教師を派遣する頃には、既に逃げ切るなり隠れ蓑を万全にするなりしているだろう。

「やられたのぅ……」

 これで後は、自分達が魔法使いだと周りに気付かせないだけで全てが片付いてしまう。完全にこちらは出遅れていたのだ。

 

「もうすぐ目的地だ! 船賃と降りる準備をしな」

 ダッチの言に従い、ネギ達はそれぞれ荷物を抱えた。ただ一人、エヴァンジェリンは船賃代わりの宝石を点検しながら布の上に乗せて手に持っていたが。

「それじゃあ到着だ。船賃置いて船を出な」

 適当なベイに係留ロープを巻いて船を岸に寄せ、レヴィは彼らを見据えながらそう告げる。

「荷物を降ろすの手伝ってくれ。岸に置いといてくれたらそれでいい。……エヴァ、降りる前に宝石を持ってこい」

「フン! 言われんでも正当な報酬はちゃんと払う」

 近くに居たベニーに宝石を渡し、エヴァは千雨と共に船を降りた。ロックやダッチも、荷卸しを終えて船に戻り、

「それじゃあ御客人! 今後もラグーン商会を御贔屓に!!」

 そのまま振り返ることなく港を去って行った。

 彼らは近くに寄り集まると、誰からか笑い声が漏れ出し、次第に伝染してところ構わず笑い出した。

「はっはぁ! うまくいったではないか、おい!!」

「まったくだ。これでようやく下らないファンタジーともおさらばできるってもんだ!」

「でも焦りましたよ。あのくそ親父が残していった呪いが予想以上にがんじがらめだったんですから……」

 茶々丸を除く三人はその場に座り込んで、今日の脱走劇に思いを馳せていた。

「……で、ネギよ。これからのことはちゃんと考えてあるんだろうな?」

「もちろんですよエヴァさん。事前に人伝に購入した家が数件、宝塚にありますので、しばらくはローテーションで移り住んで相手の様子を伺います。問題ないと判断したら、本命である神戸へと引っ越して計画は完了です」

「パーフェクトだ!! ネギ・スプリングフィールド」

 プップー!

 いつの間にか姿を消していた茶々丸が、事前にネギが手配していた黒のワゴン車を運転して近寄ってきていた。

「車を持ってきました。そろそろ行きましょう」

「おっ、来たな」

 全員で荷物を全て車に収容し、そのまま座席に深く座り込んだ。助手席に座った千雨が後ろを向き、後部座席に並んで座っているネギとエヴァに話しかけた。

「後はエヴァの呪いだけだな。解けるまでどれくらいかかるんだ?」

「結構掛かりますね。解けるまで家には向かわず、適当に走って下さい」

「では京都へ行こう! せっかくだから西の連中を挑発しようではないか!!」

 等と言ってはいるが、実際は京都観光に行きたいんだと、エヴァンジェリン以外の三人は理解していた。

「ソレヨリゴシュジン~オレハイツマデニモツノナカナンダ~」

「呪いが解けたら出してやる。今は黙ってろ!」

「では行きましょう」

 茶々丸がアクセルを踏んで車を動かしていく中、ネギは胸中で呟いた。

(ざまあみろ……立派な魔法使い(マギステル・マギ)




登場人物
ネギ・スプリングフィールド
 魔法学校在籍時に起きた事件をきっかけに魔法使いをやめることを決意。ネットゲームで知り合った千雨と意気投合し逃走計画を立案。その後エヴァンジェリンの存在を知り、卒業前に麻帆良学園へ向かうことを知ったために逃亡計画に茶々丸共々加えることを決めた。魔法に関しては原作通りだけでなく、他原作魔法(オリジナルスペル)を開発・使用している。サウザントマスターに関しては、「出会い頭にぶん殴りたい男」と思っている。

長谷川千雨
 耐魔体質なのか偶々なのか、世界樹の強制認識が効きづらいために、常識と現実の狭間で苦しんでいた。ネトゲで知り合ったネギと話をして魔法の存在を知り、自らが構築した特殊回線でネギと共に逃亡計画を練ることとなった。魔法の才能は不明だが、ハッキング能力はそこそこ高い。エヴァンジェリンの情報源。原作程コスプレはしていないが、現実逃避のためにネトゲにはまり中毒となる。

エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル
 麻帆良学園で登校地獄の呪いを受けたまま日々を過ごしていたが、千雨経由でネギの存在を知り、ネット回線越しだが会話をするようになった。呪いを破壊する手段を持っていたネギを信じて逃亡計画に加担(解呪に失敗したら血を一滴残らず吸うつもりだった)、後にナギをすっぱり忘れてネギに走る。ネギの開発魔法を一部習い、応用して身体年齢を上げようと考えている(解呪に成功したら)。

絡繰茶々丸
 エヴァンジェリンとロボット工学部の共同で生み出されたガイノイド(この世界に超は存在しない)。原作以上の特殊機能を満載し、エネルギー供給源はネジと食事のハイブリットである。知識的記憶は豊富だが、精神的記憶、エピソード記憶には疎く、感情的に分からないことだとどんな質問でも躊躇いなく口にし、周り(特にエヴァ)を混乱の渦へと放り込んでしまう。千雨とは仲がいい。
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