魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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第32話 After Story アスナの冒険Vol.1-3

 そして集合時間になった集合場所にて。

「ヘイ!!」

 エヴァンジェリンがノリノリで騒いでいた。

 一緒に居たアスナと共によくある探検ファッション(ショートパンツのアレ)に身を包み、何処から持ち出したのか革の鞭片手に叫んでいるのを他の面々が眺めている。

「……なんでノリノリなんだこいつ?」

「着替えててテンション上がったとかじゃないかと……(ボソッ)私も経験あるしな…………」

 そのまま来たのか、先程と変わらない格好で佇むナギの疑問に、千雨は答えた。他人の振りができないことに頭を抱えながら。

「というか、男子全員格好変わらないね?」

「必要ないからな。元々動きやすい服装だし」

 そうこなたとシオンが話した通り、着替えたのは女性陣だけで、男性陣は一切着替えていなかった。

 ナギはラカンと共に家に帰って弁当(夕飯の余り物)を持ってきただけだし、シオンに至っては寝床の寮から丈夫なロープを肩に掛け、ライトとフックを腰のベルトにぶら提げてきただけなのだから。

 対して女性陣は全員着替えていた。千雨とこなたは以前『植木耕助』がいた倉庫を攻めた時と同じ格好で、更に装備を増やしているのか、千雨は身の丈より少し小さいバックパックを担いでいる。アスナも前述の通りエヴァンジェリンから借りた服に着替えていた。変わってないのはアスナのリュックとそこから飛び出しているミミッキュの頭位なものだろう。

「じゃあ皆揃ったし行こうか「ちょっと待て」――どうした、エヴァ?」

 ナギが先導しようとしたのを、エヴァンジェリンが待ったをかけて止めた。

「ここから先は私が指示する。以降私のことは『隊長』もしくは『インディ』と呼べ!!」

「誰だこの吸血鬼(バカ)に『インディ・ジョーンズ』なんて見せたのはっ!?」

 千雨が叫ぶもその犯人が誰かは、ここにいる面々は知らなかった。そして犯人は鳴滝ツインズであったことも。

「……でもインディって、そんな話だったっけ?」

「俺『ヤング・インディ』しか読んでないからな……」

 こなたが疑問を口にするも、見ていない面々がほとんど、辛うじてシオンが関連小説を読んでいたのでそう返答した。これが世代格差か。

「まあいいや、今度『地球(ほし)の本棚』で調べとこ♪」

「いやDVD見た方が早くね?」

 等と話しつつも、さっさと進むエヴァンジェリンに他の面々は仕方なく後に続くことにしたのであった。軽く雑談しながら。

「にしてもさっきのエヴァにゃんの台詞さ~『サイボーグクロちゃん』のお話と同じだったな~」

「どんな話だよ、それ?」

 こなたの発言に、千雨が疑問を抱く。この世界にもあるかは不明だが、少なくとも今はこなたに聞いた方が早いと判断してのことだろう。

「面白いよ。小学生向け少年誌特有の若干強引なストーリー展開があるけど、それに目を(つぶ)れば大人でも楽しめるし」

「だから、ストーリーを話せよ、お前」

「千雨、やめたほうがいい」

 前を歩いていたアスナの方を向く千雨。相手は前を向いていたので、必然的にミミッキュのぬいぐるみと目が合ってしまう。

 アスナは前を向いて歩きながら、口を開いた。

「……それ、絶対フラグ」

「よし、橋だ!!」

 そうこうしている内に、いつの間にか山の中腹に辿り着いていたらしい。

 地図上にあった橋の位置を確認してから、全員で周囲を確認していく。

「高音先輩に聞いてきたんだが、ここに来た魔法使いが引き返したのは橋を渡ろうとした時らしい」

「アレ? 千雨って、高音さんと仲良いの?」

「昔、映画を撮る機会があって、その時からちょっとな」

「ああ、『魔法反「ちょっと待て。なんで知ってる!?」――……ごめん、隠れて見ちゃった♪」

 こなたは笑顔を振りまいた。しかし、千雨に効果はなかったようだ。

「橋は古びてるが、頑丈だな」

「しかし所々腐ってるな。渡る時気を付けないとまずいぞ」

 板張りの吊橋をラカンとシオンが調べ、結果を口にしている。

「まあ、いざとなったら飛べるから関係ないだろ」

 と、魔法使い染みたことをエヴァンジェリンが口にしながら、後ろで暴れている二人に振り返って声を掛けた。

「ほら、じゃれてないで行くぞ。まったく」

「くそ、鬱だ、死のう……」

「別に気にすることないって。えげつないのを除けば、結構面白かったし」

 適当にじゃれ合ってから落ち込む千雨に、こなたは肩を叩いて慰めた。

「まあ、でも……『2』はないよね。あれで調子に乗るから『3』以降の続編がないんだし」

「いや、企画はあったよ……脚本家とスポンサーに見放されてポシャったけど」

 ついでに当時の作者も初めての社会人でいきなり潰されるなんて思いもよらなかったんです……世の中真っ黒だよ。

「まあ、その話はいいや。とりあえず……」

 千雨は橋の近くに近寄り、コン、と近くの石を蹴り落とした。

 その石はいつまでも落下音を響かせてから、固い音を数度鳴らして崖の外へと消えて行く。

「……深い、っつうかほとんど奈落じゃねえかよ」

「灯りも届かないな。これじゃあ」

 試しに、とナギが魔法の射手(サギタ・マギカ)を一発崖の下に放つも、雷の矢は闇の中に消えて見えなくなった。

「……あれ?」

「どうかした、千雨ちゃん?」

 ナギと一緒に崖の下を覗き込んでいた千雨は、魔法の射手(サギタ・マギカ)の消失までを眺めていてふと、違和感を覚えたように首を傾げる。

「いや、何か「いいから行くぞお前ら」――……少しは考えさせろよこら」

 エヴァンジェリンが急かす為、千雨は仕方なく思考を中断し、崖から目を背けた。

「とにかく、橋はあるしいざとなったら飛べばいい。安全であることに変わりは「橋渡ってる途中で魔法が使えなくなる可能性は?」――……あ~」

 そう、橋を渡ろうとした魔法使いが杖の不調を訴えて引き返した理由は未だに判明していない。

 つまり原因不明のまま橋から落ちて還らぬ人となる可能性も……

「取りあえず重量を考慮して少人数で様子見しながら渡るとしよう……誰から行く?」

 周囲に意見を求めるエヴァンジェリン隊長。しかし、隊員達は無情だった。

 

 

 

「いや……先行けよ、インディ」

 

 

 

 千雨の発言に、周囲も同調して手拍子を始める。

『インディ! インディ! インディ! インディ「あ、やっぱやめよう。こっちそれトラウマなんだわ」――』

「……じゃあじゃんけん?」

 若干涙目になりかけたエヴァンジェリンを見て、千雨は昔を思い出したのか周囲の手拍子を抑える。そこでこなたがじゃんけんを提案する。

「……きっ、」

 が、一歩遅かったらしく、

「貴様らの同情なんかいるかーっ!?」

 エヴァンジェリンは短距離ランナーの如く見事なフォームで橋の上を走り抜けてしまった。

「おい、待てよエヴァ!!」

 仕方なく千雨も橋を渡り切り、それを確認してからナギとシオンも後に続いた。

「とりあえずそこのちびっ子「こなただよ」――じゃあこなた嬢ちゃん、先に行け。なんかあった時の為に、俺アスナを抱えてゆっくり行くから」

「おっけ~」

 思ったより橋が頑丈だったのでこなたが半分以上渡ってから、ラカンもアスナを肩車して橋を渡り始めた。

「お~」

「いい見晴らしだろう。下見るなよ~」

 床板を踏み抜かないようにゆっくりと歩きながら、橋の半ばまで歩いていくラカン。

「……あ、あれ?」

 しかし、そこでラカンの動きが止まる。

「らか、ん、あ、あぇ……」

「どうしたの?」

 あと少しで渡り切るところだったこなたは、ラカン達の声に違和感を感じて足を止めて振り返った。

 

 

 

 その瞬間だった。

 

 

 

「だめ、だ。から、だが……」

「うご、か、な……」

 ラカンとアスナの身体はゆっくりと倒れていく。

「二人共っ、だいじょ――」

 こなたが慌てて引き返そうとするも、かえって悪手となってしまった。

 

 ――ビシッ!! ビシビシッ……!!

 

 軽いとはいえ人間三人分の重さ。おまけにラカンが橋の中央で派手に倒れ込んでしまった為に、頑強に作られていたとはいえ古びていた橋に亀裂が走り、縄が切れようとする。

「橋が切れるぞっ!!」

「シオン、縄貸せっ!!」

 シオンからロープの端を受け取った千雨はこなた達の方へと駆け出す。エヴァンジェリンも後ろに続いて浮遊術を試みようとしているが、飛行どころかマントですら顕現できていない。

「駄目だ千雨っ!! 魔法が使えない「だったら来るなよ役立たずロリータ!!」――貴様本気で縊るぞっ!!」

 しかし引き返す暇もなく、とうとう橋が切れてしまった。千雨達は一瞬重力から解放されるも、すぐさま奈落へと引き寄せられてしまう。

「全員一ヶ所に固まれっ!! 泉、鎖は出せるかっ!?」

「やってみるっ!!」

 どうにかアスナを掴んだこなたは右手を千雨の方に伸ばして叫んだ。

導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)!!」

 鎖は出せた。

 魔法が使えない理屈は未だに分からないが、それでも助かる手段を得たのは大きい。

 鎖はロープの長さまでしか降りれない千雨に巻き付く。左腕を使ってアスナを抱えたこなたの横からエヴァンジェリンがさらに抱き着いてきた。

「はいーっ!!」

 エヴァンジェリンの一声の後に伸ばされた鞭が、ラカンの身体を拘束する。

「……んげっ!?」

 訂正、ラカンの首を拘束した。

「ちょっと待ってろ!! すぐ引き上げる!!」

「というか重っ!! 何故か気も使えないしくっそ……」

「つーかラカンが一番重いっ!!」

 悪態を吐きながらも、ナギとシオンは力を合わせてどうにか千雨達を引き上げていく。

「ところでさ、千雨……」

「なん、だよ、泉。こ、んな時に……と、いう、か癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)っ、て確、か治癒、力の強、化だよ、な。て、ことは、身、体強化と、かもでき、る、んじゃあ…………?」

 四人分の重さを一人で支える羽目になっている千雨が、息を途切れさせながら悶えていると、そこにさらに鎖が一本巻き付く。

「……だからさ、私的にはこなた(・・・)って呼んで欲しいんだよね~」

 その先端には十字架が取り付けられていた。

「ハア……脈絡なく話すんじゃねえよ」

 身体を強化され、漸く余裕ができた千雨は、軽く息を吐き出してから自らの足元に向けて悪態を吐く。

「そんなのはTPOを弁えて話せばいいだろうが、こなた(・・・)

 とまあ、女の友情が深まる中、

(俺……死ぬんじゃね?)

 エヴァンジェリンの鞭でぶら下がったままのラカンは、内心呟いた。

 

 

 

 

 

 全員の回収が終わり、崖から少し離れた高台で倒れ込んでから、互いの無事を確かめ合った。

「とりあえずまずいのはこの二人か……」

 地面の上に寝転がるアスナとラカンを見下ろしながら、シオンが呟く。

治癒(クーラ)……駄目だな、魔法が使えねぇ」

「こっちは使えるけど……駄目、全然効果がない」

 ナギとこなたが傍にしゃがみ込んで治療を施してみるも、効果は見られない。おまけにナギは魔法が使えないときている。

「ちょっとどいてくれ」

 するとアスナに癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)を伸ばしていたこなたの横に千雨が腕輪の様なものを一つ持ってしゃがみ込んだ。

「千雨、何それ?」

「ちょっとした小道具だよ。もし私の考え通りなら……」

 千雨がアスナの手首に腕輪を付けると、仰向けになっている少女の顔を軽く叩いて声を掛けた。

「杖に魔力流す感じで、腕輪に魔力を流し込んでみろ。できるか?」

 すると、腕輪が軽く変色すると同時にアスナの身体がゆっくりと、しかし力強く起き上がった。

「……復活」

「やっぱりか……親父(ナギ)さん、ラカンのおっさんにも腕輪を付けてくれ」

「はいよ」

 千雨から投げ渡された腕輪をラカンに取り付けるナギ。するとラカンも、こちらは勢いよく立ち上がった。

「はっはっは……俺様復活!!」

「るっせえよタコ助!!」

 そしてナギに速攻で蹴飛ばされた。

「……それで、これどうなってんの千雨ちゃん?」

「ナギさんは知ってるんじゃないですか……ケルベラス渓谷と同じ現象ですよ」

 思うところがあるのだろう、ナギとラカンは僅かに顔を顰める。千雨も気付いているが、そこは流して話を続ける。

「AMFの噂を聞いた時に真っ先にこれが浮かんだんで、葉加瀬に対抗策を研究してもらったんですよ。で、魔力を流している間だけ中和できる腕輪ができた、ってことです」

「それがうまく働いた、って訳か……」

 地面に腰掛けたまま、ラカンに付けた腕輪を見つめるナギ。考えているのは腕輪のことだろうか、それともケルベラス渓谷での思い出なのだろうか。

「まあ、AMFとは理屈が違ったので、結局は今日まで埃被ってたんですけどね」

「ということは、葉加瀬さんも転移者のこと最初から知ってたの?」

「いや、AMFのことを知ったのはネギ先生達が宇宙に上がる前だ。元々噂を聞いたのは日本じゃなくてロンドンだしな」

「二年前にロンドンで?」

 その言葉に、こなたは首を傾げる。

 ネギ先生達が宇宙に上がる前、ということは自分達がスカリエッティに襲撃される前だ。その段階で噂が流れていたということは、少なくともネギがナギ=ヨルダとの決戦に挑む前にロンドンで何かをしていたということになる。

(二年前にロンドンで何を……聖地巡礼?)

「それで当時は魔法世界(ムンドゥス・マギクス)関連かと思って、葉加瀬に研究を頼んでた、ってだけだよ。まあ、その時は奴さんの噂は聞かなかったから、今迄話さなかったんだけどな」

「そっか……でも」

(ちょっと、気になるな……)

 スカリエッティが何を企んでるのか、未だに不明だが少し手掛かりを得たことには違いない。

「まあ、そっちは知り合いに頼んで調べて貰ってる。今のところ手掛かりはないけれどな」

「そう……何か分かったら教えて。前回みたいのは無しだからね」

 軽く手を振って応える千雨。それに呆れながらも、こなたは思考を切り替える為に一度頭を振った。

「それで……これからどうするの、エヴァにゃん」

「にゃんやめろっ!!」

 軽く怒鳴ってから、エヴァンジェリンは腕を組んで顎に手を当てる。

「この状況では行くも戻るも変わらん。千雨、脱出手段の当てはあるか?」

「定時になっても連絡がなければ、高音先輩が様子を見に来てくれる手筈になっている。念の為葉加瀬経由で偵察用ドローンを飛ばしてもらう予定だから、少なくとも私達の二の舞にはならない筈だ」

「というか携帯は?」

 シオンが投げかけた問いに、千雨もエヴァンジェリンも、自らの携帯に目を落とした。

「圏外だな」

「こっちもだ。とりあえず旗か何か目立つものを置いて、その横に手紙でも書いておくか」

 シオンに適当な棒を探してきてもらうように頼んでから、千雨は懐から取り出した手帳にメッセージを書き込んでいく。

「じゃあ千雨が書き終わり次第、予定通り遺跡まで移動するぞ。その後のことは昼飯を食いながら考えればいい」

 そうエヴァンジェリンが締めくくり、話は一旦終わった。

 

 

 

「おい、ナギ……」

「分かってるよ。向こうの状況は分かんねえが……当たりっぽいな」

 千雨達から少し離れた二人は、声を潜めて話し込んでいた。

「最悪中止になっても、俺は行く。お前はどうする?」

「付き合うに決まってんだろ、馬鹿」

 互いに拳をぶつけあう二人、その背中にエヴァンジェリンの声か掛かった。

「おいそこの馬鹿二人、早く行くぞ!!」

「はいはい、ちょっと待てって」

「ったく、急かすなよな……」

 やれやれと、仕方ないかのように振る舞う二人だがその眼には何処かしら、何かの決意が宿っている様に見えた。




 アンケート回答ありがとうございます。徐々にアンケート結果が増えてうれしい限りです。
 ますます増えることを期待しつつ書いていきますので、これからも宜しくお願い致します。

 しかし、ここでネギ×エヴァ派が来るとは……いっそ交互にやるか?

シャーリー「……いつ終わるんだよ」

 下手したら十年単位か……まあ元々小説自体は書き続ける予定なので、のんびりやっていきますよ。

(さて、昔書いていた続きを発掘してくるか……)
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