魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

48 / 100
第34話 After Story アスナの冒険Vol.1-5

 とっとっと……

「……牛、ってこれ?」

「そうそう、サソリの絵を逆さまにして嵌めるの」

 牛の絵を探しているアスナをこなたが見守っている中、他の面々は横の壁を調べていた。

「この壁、やっぱり見た目より新しいな。遺跡そのものは古かったのに」

 携帯に差した簡易放射性炭素年代測定装置(オプションパーツ)を外した千雨が呟く中、壁に付いた粉末を指で確かめていたシオンが応えてきた。

「といっても、この風化具合だと十年位は経っていないか?」

「だとしても、遺跡の外と中で風化具合がずれているなんておかしくないか? まるで元からあった遺跡を、誰かが改築したみたいじゃないか」

 その内容を後ろで聞いていたナギとラカンは、腕を組みながら互いの顔を見ていた。

「一体何やってんだ、あいつ?」

「ここを改造した連中と何かあったんじゃねえのか?」

「変なトラブルじゃなければいいが……」

 そんな中、エヴァンジェリンは一人、反対の壁に(もた)れながら何かを(いじく)っていた。遺跡に入る前に半数からリンチを受けたから拗ねているのだろうと思っていたが、こなたが彼女の手に持っている物を見て思わず声を上げてしまった。

「……どっから持ってきたの、その銃?」

「家だ」

 そう言ってエヴァンジェリンは、ワルサーP5を弾倉に叩きこんでいた。

「昔、映画の撮影用に購入していたんだがお蔵入りになってな。魔法が使えない可能性があったから、記念に家に置いていたのを持ってきたんだ」

 腰にワルサーP5を差し、鞭を片手にアスナ達がいる壁の前に立つ。そこでふと、こなたは疑問に思った。

「……あれ、ジャッカルは?」

「流石に架空だ、あれは……」

 こなたに呆れつつも、鞭の具合を確かめているエヴァンジェリンに千雨が話しかけた。

「どうかしたのか? 急に武装を始めて」

「……お前達、気付かないのか?」

 逆に問い返されて、千雨は首を傾げる。しかし歴戦の経験からか、ナギとラカンがその答えに気付いた。

「足元だ……」

「ん?」

 ナギの呟きを聞き、シオンが地面に伏せて耳を当てる。当てた鼓膜には、地面の下からくる振動に対して震えていた。

「何か聞こえてくる……何かがいる?」

「流石に暗闇でも生きる特異な生物か、未だに動く絡繰(からく)りの類かは分からないが、この手の遺跡にありがちなのは何だ?」

「対侵入者用の仕掛けか……」

 それを聞いて千雨とこなたも銃を抜いて残弾を確かめた。

「どうする、アスナだけでも帰すか?」

「私も行く」

「いやいや、アスナちゃん。危ないからね……」

 SIGP230の残弾を確認してから戻した千雨は、イングラムM10を片手に持って言ったが、当の本人が拒絶してしまった。

「いや、やっぱりお前ら帰れ」

「ここは俺とナギだけで行く。遊びはおしまいだ」

「ハア……やはりか」

 エヴァンジェリンが空いた手にワルサーP5を構える。

「貴様ら何を隠して「ちょっと待て」――……なんだ、ラカン?」

「お前、なんでそこ(・・)に銃口向けてんだ?」

 

 

 

 その銃口はラカンの下半身に向けられていた。

 

 

 

「……ついでに去勢しとこうかと「ふざけんな!! まだ結婚すらしてねえのに!?」――まあ、ただのノリだ。気にするな」

「はあ……なんか気が削がれたな」

 咄嗟に向けようとしたイングラムM10の銃口を下ろす千雨。それに釣られて空気が弛緩してしまい、強引に返すことができなくなってしまった。

 だからこそか、完全に部外者に近いシオンが会話を切り出したのは。

「それで、おっさん達は何考えてたんだよ?」

「……アリカだ」

「おいナギ「もういいよ。ここまで来たら話す」――……あっそ」

 後ろ頭をボリボリ掻きながら下がるラカンと入れ替わりに前に立ち、ナギはことの仔細を話し始めた。

「エヴァに届いた手紙だが、あれ書いたのは多分、俺のカミさんなんだわ」

「カミさん……ってアリカ王女!?」

「ちょっと待ってよ!! それ『魔法先生ネギま(原作)』にも書いてなかったけど、生きていたの!?」

 その言葉に、全員の視線がこなたに集中した。

「……どういうことだ?」

「私が読んでいた原作でも、ネギ先生のお母さんであるアリカ王女がどうなったかは触れられてなかったんだよ。だから生きているのかすら未だに分からなくて……」

「まあ、原作(そっち)は知らねえが……」

 千雨とこなたの会話を聞いて一つ頷くと、ナギは一度最初から説明を始めようと指を立てる。

「……少なくとも、この世界でのアリカは生きている。俺がヨルダに身体を乗っ取られる迄は一緒に居たんだが、その後はあいつを巻き込まない為にこっちから距離を置いたんだ」

「そんで、元居た場所にも京都の住処にもいなかったから暇を見て探してたんだよ」

 ラカンも壁に凭れながら、腕を組んでナギの説明を補足した。

「そしたらこの手紙だ。差出人のイニシャルがアリカ(A)スプリングフィールド(S)だったからまさかと思っていたが……」

「少なくとも、トラブルの種は見つけたわけか……」

 エヴァンジェリンが床を足で軽く叩く。

 未だに蠢く有象無象を若干気味悪がるも、ここにいる限り止める手段はない。

 そんな中、無邪気に歩を進める者がいた

 

 

 

「じゃあ行こう」

『ちょっと待て、コラ!!』

 

 

 

 暢気に進もうとするアスナを全員で止めにかかる。しかし回答を知っている為に、手をサソリの絵が刻まれた石板に伸ばされた。

「駄目だって!! 下手に抜いたら遺跡が崩れるから!!」

「……崩れる?」

「お前、それを先に言えよ!!」

 おっかない事実を今更口にしたこなたにツッコミながら、アスナを拘束した千雨は彼女を持ち上げて、じりじりと後退した。

「遺跡が崩れる前にダミーと差し替えれば大丈夫、だから安易に抜かないで」

「大丈夫、こう見えても私は差し替えの達人だから」

「嘘付けっ!!」

 未だに足掻こうとするアスナを下がらせる千雨に代わり、ナギとラカン、シオンが壁の前に立った。

 そしてエヴァンジェリンとこなたは後ろに控えていた。

「……カルシウムでさ、背が小さい呪い、解けないかな?」

「……幻術覚えるか?」

 背が足りないから石板に手が届かない。そんな理由で固く抱き合う二人に構うことなく、シオンは壁の中心に嵌められていた絵のないダミーをゆっくりと引き抜く。中心の石板には別の仕掛けがあるらしく、抜ききっても遺跡に異変はなかった。

「ちょっと崩れやすいな……サソリの石板(そっち)も気を付けた方がいいかもしれない」

「となると……ラカンは最初から駄目じゃねえか」

「馬鹿にするな。俺に不可能はない」

 そう言い、ラカンはサソリの絵が描かれた石板の持ち手を掴んだ。その隣でシオンが先程抜いた石板を手に構える。

「おっさん、タイミング間違うなよ」

「お前こそとちるなよ……いくぞ。いち、に、の」

 

 

 

『さん!!』

 ガココン!!

 

 

 

 子気味良い音を立てて、石板は無事に入れ替えられた。

「……なんともないな?」

「上手くいった、みたいだな……」

 安全を確認した面々は、一度サソリの石板を上下入れ替えて牛の頭に見える様にしてから、ダミーの石板が嵌っていた場所に嵌め直した。そして再びもう一つの石板を外し、今度は人間の描かれた石板の方へと移動する。

「これで扉が開くのか……」

「ミノタウロスができたらだろう……引き返すなら今だぞ?」

「それこそ今更だ」

 すでに覚悟を決めたのか、女性陣はじっと動かない。正直アスナだけでも引き返させようとしたのだが、説得に応じない以上仕方がないと諦めたのだ。

「問題は魔法だな……」

 ガココン!! とラカンとシオンが石板を入れ替えるのを眺めていたナギが呟く。

「……千雨ちゃん、腕輪の予備って、まだある?」

「すみません、あれだけです。製造自体はできるんですけど、他に作ってなくて」

「おまけに魔法も使えないっぽいしな」

 今度はダミーを差し込む側だったので手ぶらになったラカンが、腕輪の着いた腕を振った。

「一度に別々の呪文を唱えられりゃ別だが、微量とはいえ魔力を流し続けている以上、ある意味常時詠唱状態だ。咸卦法の要領で気だけなら使えるかもしれんが」

「じゃあ、あっても駄目か……」

「一応エヴァやネギ先生なら闇の魔法(マギア・エレベア)の応用で使えるみたいなんですけどね……」

 魔法が使えないと分かると、ナギは軽く肩を回した。

「そんじゃ、久々の肉弾戦だな。まったく……」

 シオンが最後の石板を嵌め込む。牛の頭と人間の胴体が合わさり、ガコン、と遺跡に施された仕掛けが作動する音が響いた。

「……あいつと関わるとこんなのばっかだな」

 ゴゴゴ……と重量ある音を響かせ、扉が徐々に開いた。

「じゃあ、行きますか」

「さてさて、何が出るやら――」

 

 

 

 ビシッ!!

『……ん?』

 

 

 

 誰かが気付いたか迄は分からなかったが、石板に亀裂が入るを見て誰かが叫んだのは間違いない。

「崩れるぞ急げ!!」

「おっさんが馬鹿力で突っ込むからっ!?」

「言ってる場合かさっさと動け!!」

 ラカンの叫びに慌てて駆けこむ面々、しかし石板が砕けかけたことで遺跡の仕掛けが再度起動してしまった。

「扉が閉まるぞっ!?」

「おっさん、これをつっかえ棒に!!」

 千雨が担いでいたバックパックを降ろし、ラカンに投げ渡した。

 受け取るや閉まりかけた扉に横にしてつっかえ棒にし、完全に閉まり切る前に後ろの方にいた女性陣が駆け込んで行く。

 

 

 

 ミシッ、ミシシッ……バンッ!!

 

 

 

 ラカンが倒れる様に奥に飛び込むのを最後に、バックパック内の機械類を撒き散らして、扉は再び閉ざされた。

 

 

 

 

 

 シュボッ!!

「生存確認、生きてる奴は?」

「生きてるよ、不思議なことに」

 千雨が灯したライターの灯りを頼りに、埃を払いながらシオンが近寄ってきた。片手でアスナを抱えているが、彼女は降ろしたリュックから顔を出しているミミッキュのぬいぐるみに付いた汚れを払っている。

「こっちも無事だよ~」

「まったく、酷い目に遭った」

 導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)の鎖を重ねて傘代わりに頭上を守っていたこなたと、それに便乗して岩宿りをしていたエヴァンジェリンも、こなたのライトを点けながら近付いてくる。

「よっ、と……お前ら、無事か?」

 ナギも歩み寄って来ていた。片手に幾つかの鉄製品を持ちながら。

「落としてたぞ。これで全部か?」

 ナギが差し出してきたのは、千雨とこなたの銃器だった。

「ありがとうございます」

「良かった~なくしたかと思った」

 武装がなければ心許(こころもと)ない。千雨とこなたはそれぞれの銃の動作確認をしてから元に戻していく。

「向こうの奥に通路みたいなのがあった。一先ずそこに移動しよう」

 千雨から受け取ったライトを点け、ナギが先頭に立って先導を始めた。入ってきた扉が閉ざされた以上、引き返すことが難しいからだ。

「ところで千雨、さっきの何だったの?」

「AMFの対抗手段の試作品だ。どうせここじゃ使えないしデータ自体は残っているから、今更なくてもいいだろう」

 千雨とこなたが話す中、後ろについていたアスナは、

「……よし、戻れ」

 ミミッキュの頭をリュックの奥に押し込んでファスナーを締め切った。そしてしんがりを務めていたエヴァンジェリンとシオンだが、ふと一人欠けていることに気付き、一度歩みを止める。

「……そういえばラカンのおっさんは?」

「……あ」

 こなたのライトを持っていたエヴァンジェリンは、後ろの方を照らした。しかし見えるのは崩れた岩片だけで、その姿は見えない。

「あいつ、死んだか?」

「一番死ななそうな顔をしてたんだけどな……あのおっさん」

 一度ナギ達と合流して再度探そう、とエヴァンジェリンが一歩前に踏み出すと、岩と違う感触が帰ってくるのを感じて足元を見下ろした。

「……生きてたな」

「腕輪が外れたっぽいけどな」

 近くに転がっていた腕輪をシオンが拾い上げ、エヴァンジェリンに投げ渡した。

「……よし、腕輪を嵌めてやろう。その代わり私に永遠の忠誠を誓うのだ。理解したか、筋肉ダルマ」

(腕輪つけたら覚えとけよ、ロリババア……!!)

 

 

 

 喧嘩の結果は次回やりません。勝手に終わってます。

 

 

 

 




 すみません、来週も休みます。
 いっそのこと、アスナの冒険中は隔週掲載にしておこうかと思います。

 少なくとも再掲載に入れれば、また週一掲載に戻せるのですが……おのれ資格試験め。

 シャーリー「……いや、オリジナル新作書いているのが原因だろうが」

 本当にすみません、ではまた再来週によろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。