魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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第35話 After Story アスナの冒険Vol.1-6

「『キケン、ヒトツメチテイジン』って書かれてるな」

「ということは、ここから先がまずいのか……」

「うん、原作でもそこの柱の仕掛けを動かしたら、一つ目の地底人が出てきていたよ」

 ここが遺跡の地下だからか、もしくは部屋の中だけ崩壊する仕掛けだったのか、千雨達は無事次の広間に着いていた。しかし瓦礫を押しのけてきたようなものなので疲労が濃くなり、少し休んでいる状況である。

「もう後戻りできない以上、進むしかないか……」

「進退は疑うことなかれ。この世は前進あるのみ。イケイケどんどん」

「……アスナちゃん、忍たま乱太郎も好きでしょ?」

 膝に抱えていたアスナが千雨の言葉に反応して返しているのを、こなたはほんわり聞いていた。

「でもその地底人が曲者なんだよね」

「本当は人間だったとかか?」

「ううん、宇宙人」

 その一言で、千雨は頭を抱えてしまう。

「またこんなのばっかかよ、転移者(お前ら)はほんと……」

「いや、出所違うだけで、半分獣の食人生物に変わりはないからね」

「物騒なことをさらりと言うな」

 エヴァンジェリンがこなたの頭を引っ叩く。

「まあ、どっちにしても……」

 呟くナギが見つめる先には、風化した躯が転がっていた。しかし、死体の肉片が周囲に飛び散った形跡も投げれば、人骨の一片に至るまで汚れがほとんどない。完全な白骨死体である。

「人間相手に友好的な奴はいない、って考えといた方がいいなこりゃ」

「つまり、遠慮なしだな」

 ガン、と両拳をぶつけ合わせたラカンが前に出る。

「やれやれ……こっちでまともに働きだしてから、喧嘩とか(そういうの)は遠慮してたんだけどな」

 肩に掛けたロープを腰に付けたフックで一度纏め、両手を自由に使えるようにしたシオンがラカンに並んで立つ。

「退路はないし、魔法も使えない。エヴァにゃん大丈夫?」

「舐めるな。私とて準備はしてきている。あとにゃんはやめろというに」

 こなたとエヴァンジェリンも、それぞれの銃を抜いて先に並んだ男性陣の後ろに立った。

「アスナ、なるべく誰かにくっついてろ。危なくなったら一人でも生き残るために隠れているんだ」

「心配ご無用、ラカンと違って気は使える」

 発言の証拠にと、アスナが軽くジャンプしただけで一度天井に手を触れる。ラカンの背後に立つと同時に、千雨もイングラムM10を構えて銃口を向けた。

「じゃあ、お前ら……覚悟はいいな?」

 ナギが仕掛けに触れる。

 他に道がない以上、この仕掛けを動かすしかない。

「行くぞ……らぁっ!!」

 部屋の壁近くに建てられた柱、その頂きに取り付けられた目玉の様なオブジェクトに触れ、ナギはその仕掛けを動かした。

 

 

 

 ガ、ガガ……ガゴゴゴ……OOOOB…………

 

 

 

 咆哮と共に何かが出てくる。そこにいたのは……

「GOBOOOGOB!!」

 小人のような風貌、しかし凶暴な呻き声を発し、夜目の効く身体で得物を持ち、突進してくる。

 その生き物こそ、ファンタジーでは知る人ぞ知る――

「ゴブリンだっ!?」

「よりにもよってとんでもないのが出てきやがったな!!」

 千雨がイングラムM10を連射してゴブリンの群れの出鼻を挫く。その間にナギとラカンは使えそうな瓦礫(がれき)を探しては相手に勢いよく投げつけていた。

「数が多いぞ!!」

「つうか、こいつらやばいのかっ!?」

物語(はなし)にもよるけど……もし『ゴブリンスレイヤー』とかだったら最悪」

 既に部屋の中は乱戦の様相を呈していた。

 シグ・ザウエルP228を撃つだけでは(らち)が明かないと、導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)を振り回しながらこなたが答えた。

「徹底的に人間を敵視して、殺すわ犯すわ奪うわやりたい放題。しかも和解や共存の類は一切なし。分かりやすく言うとテラフォーマー!!」

「そっちの方が分かんねえよ!!」

 こなたにツッコミながら、シオンは近付いてきたゴブリンをまとめて蹴り飛ばした。一体ずつ相手にしている暇がないのだ。

「つまりゴキブリ!!」

「なるほど分かった」

「分かったのかよ……」

 こなたとシオンの会話にツッコミながら、千雨はイングラムM10の弾倉を取り替えて再度発砲した。

「というかお前も撃てよエヴァ、キリがない!!」

「いや、そうしたいんだがな……」

 合気柔術を駆使してゴブリンの攻撃を捌きながら、エヴァンジェリンは手に持っていたワルサーP5の引き金を引こうとしては、首を傾げて視線を落としていた。

「さっきから弾が出ん、何故「いつ整備した?」――……そういえば、買ってからずっと放置していたような「アホかっ!!」――あぶっ!?」

 エヴァンジェリンを蹴飛ばしてゴブリンの群れにぶつけた千雨。

「完全に発条(パーツ)死んでんじゃねえかワルサーP5(それ)!!」

「千雨ちゃん、口より手を動かさないとやばいってこの数は」

 ゴブリンから奪ったのだろう、骨みたいな(謎の)棒でできた石斧で敵を殴り飛ばしながらナギが近づいてきた。一ヶ所に固まった方がいいと見たのか、ラカンもゴブリンを肉の棒(股間の紳士ではない)にして周囲を薙ぎ払いながら移動してきている。

「ああ鬱陶(うっとう)しい……って、おいアスナは?」

「お前と一緒じゃなかったのかよ?」

 イングラムM10の弾倉を地面に落としながら、SIGP230を抜いた千雨が二人の話す時間を作ろうと銃弾を途切れさせないようにする。その間に、ナギとラカンは背中合わせになって目を合わせず会話していた。

「さっきまで一緒に居たんだが、目を離した隙に「へるぷ~」――んなっ!?」

 しかし、会話は長く続かなかった。声のした方を向くと、目に青(あざ)を作ったゴブリンの一部がアスナを簀巻(すま)きにして掲げ運んでいた。

「すまん、捕まった『だから帰れって言っただろお前!!』――……いつから私だけが捕まったと錯覚していた?」

『は?』

 呆けている千雨、ナギ、ラカンの三人だが、シオンの一言で状況を把握する。

「おい、他にも捕まってるぞ!!」

「たぁすけてぇ~!!」

「離せこら(くび)るぞ!!」

 気付けばエヴァンジェリンとこなたも捕まっていたのだ。アスナと同じく簀巻きにされている為、逃げることもかなわず運ばれていく。

『…………B』

「おい、早くこいつら蹴散らすぞ!!」

「おらあっ!!」

 銃声が響く中、打撃も音と化してゴブリンを飛ばしていく。

「らぁっ!!」

「っつ……あれ、そういえばなんで長谷川だけ無事なんだ?」

「どうせ火力の違いだろ!!」

 弾倉の再装填を終えたSIGP230を戻し、こなたの落としたシグ・ザウエルP228を拾い上げながら千雨は答えるが、エヴァンジェリン達を抱えたゴブリンの群れが残した返答は違った。

 ゴブリン達は叫びながら部屋の奥に向かって駆け抜けていく。

 (いわ)く、

 

 

 

『YES LOLITA LET'S EAT!!』

 

 

 

 それを聞いて、全員が一瞬言葉を失った。

「……これって、怒っていいのかな?」

 思わず漏れる千雨の声に、返事をする者はいない。

『そんなのいいからたすけて~!!』

『微妙に滑舌いいのがなんか腹立つ!!』

『例えアスナ()を倒しても、また明日菜()がお前達に挑みかかるだろう……』

 しかし今は人命優先、千雨は残りの男性陣(若干視線が外れていた)を引き連れて、エヴァンジェリン達が運ばれていった橋の前に立つ。橋というより、部屋の一部を奈落に変えて中心を通路にして残したかのような場所だった。

「ナギさん先に行って下さい!! ここは食い止めますから!!」

「シオン、お前も行け!!」

 返事はないが、二人が駆けていくのは感じていた。

「おい、千雨嬢ちゃん。橋壊せるもの持ってないか?」

「一応、手榴弾ならあるけど……」

 一先ず言う通りにするか、と千雨は目測で(・・・)橋の長さ(・・・・)()測ってから(・・・・・)、取り出した手榴弾のピンを抜き、橋の上に転がる様にして投げた。

「右」

「左」

 と声を掛け合ってから、同時に言った方向に避ける二人。それに合わせて、ゴブリン達も三手に分かれた。

 一方は千雨の持つイングラムM10に一掃され、もう一方はラカンの拳に纏めて吹き飛ばされていく。そして最後の一方、千雨達の間を抜けて橋を渡ろうとするゴブリン達は手榴弾の転がる個所まで前進したところで、

 

 

 

 ―――ドォン!!

 

 

 

 まとめて吹き飛ばされてしまう。

 橋ごと奈落に落とされていくゴブリン達。本来なら周囲に手榴弾の破片が飛び散るのだが、橋を渡ろうとしていた者達が盾となったため、千雨達に被害はない。

「よし、これでナギ達に追手はかからない。こいつら片付けてからゆっくり渡「おっさん、ごめん……」――……すっげぇ嫌な予感がする」

 ゴブリンのうち一匹を投げつけてから、ラカンはゆっくりと千雨の方を向く。

 その視線を感じ、千雨も右手に握るイングラムM10を掲げて見せた。

サブマシンガン(イングラム)弾倉(マガジン)、もうなくなった……」

「マジか……」

 その証拠かは分からないが、千雨は遺跡に入る前に投げていたシースナイフと腰から抜いたアーミーナイフに換装してゴブリンと交戦していた。拳銃の方の弾は残っているかもしれないが、それでも数で押すゴブリン相手には心許ないだろう。

「予定より早いが脱出……別に私達が橋を渡ってから爆破すれば良かったんじゃね?」

「いや、だって……渡ったら俺、何の役にも立たねえぜ? 向こう、瓦礫ほとんどないし」

 その(手前勝手な)一言で、(振り回されていた)千雨の方針が決まった。

「よし、逃げるぞ」

「どうやって「こうやってだよっ!!」――げふっ!?」

 千雨に蹴飛ばされるラカン。慌てて手をまっすぐ伸ばし、どうにか橋が崩れた跡地を塞ぐようにして宙にぶら下がっていた。

「お先っ!!」

「ぐぉほっ!?」

 千雨は即席ラカンブリッジを渡り切り、そのままナギ達を追いかけて行く。

「おい、坊主……」

 崖の端に引っ掛けていた足を外し、ラカンは指の力だけで向こう岸に移った。

「あの嬢ちゃん、お前の母親以上に過激なんだけど……一体どこに惚れたわけ?」

 そのまま千雨に続こうとして落ちていくゴブリン達の悲鳴を背に、独り言を呟きながらも足を進める。

「前から思ってたけど……マゾなんじゃねえの、あのガキ」

 本人が聞いたら真っ先に否定しそうだが、残念ながら後ろで喚いているゴブリンすら聞いていなかったので陰口は成立してしまうのであった。

 

 

 

 

 

 しかし噂は千里をも超える。

「ぶぁっくしょん!?」

「あれ、ネギ風邪?」

 ウェールズへの移動中、ネギと明日菜は滞在中のホテルで朝食を摂っていた。

 ホテル内にあるカフェテラスの一席で向かい合ってモーニングを食べていたのだが、突如ネギがくしゃみをしたのだった。

「いえ、誰か噂しているんですかね……?」

「意外と千雨ちゃんだったりして」

「い、いやそんなまさか……」

 とは言いつつも、若干顔を赤らめるネギをからかいつつも、明日菜は携帯を取り出す様に手振りで指示した。

「せっかくだし、メールしちゃいなさいよ。こういうのは回数よ回数」

「いや、でも……」

 ネギは頬をポリポリと掻きながら、明日菜の提案を拒否した。

「昨夜電話したばかりなんで止めておきます。転移者関連で少し打ち合わせすることがあったので」

「……意外と話しているのね、あんた達」

 仕事関係とはいえ、これで何故進展しないのか。

 明日菜は若干本気で悩んでしまった。

 

 

 

 

 

 一方その頃、エヴァンジェリン達を追いかけているナギ達はどうなったかというと。

「駄目だ壁で塞がってる!!」

「くそっ、手遅れか!!」

 二人が駆け付けた時には、既に遺跡の仕掛けで通路が塞がれていた。

 壁を殴ったり蹴ったりするも、厚すぎてビクともしない。

「向こうが心配だ。遺跡の仕掛けを探そうにも、そんな暇は……」

「こうなったら……仕方ない」

 ナギは懐に手を伸ばし、あるものを取り出した。




時間が、時間が欲しい……時間があれば何でもできるのに!!

次回、朝来終夜の旅路『Frustration Overflow』絶対見てくれよな!!

シャーリー「……嘘付け、ストレスで参ってるだけだろうが」

……次回、『第36話 After Story アスナの冒険Vol.1-7』
10月18日に更新すると思いますが、次も読んで頂ければ幸いです。では。
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