魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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 アカシは怠惰な重戦士の噂を聞き、ヨウセンの街へと向かう。

 次回、勇者アカシとキセキの仲間達
 第二話 要塞戦士、ムラサキバラ

 赤司「見なければ、親でも殺す」



注:再掲載の為、予告等に多少の矛盾があるかもしれません。御了承下さい。


第01話 漸く出てきた仮契約と新たな敵?

 ザッ! ザッ!

 

        ~UA9000突破、合計文字数25万字突破~

 

 ザッ! ザッ!

 

        ~作者:朝来終夜、スポンサー:ブログ『銀狼の寝床』~

 

 ザッ! ザッ!

 

 キイィィ……

 酒場にいた者達は、見慣れない闖入者に興味を示して視線を入口に向けた。

 その少女は深紅のコートを身に纏い、眼鏡を掛けて長い髪を首筋で纏めている。彼女はカウンター席に腰掛けると、

「……ジュース、味は何でもいい」

「ここは酒場なんだがね……」

 愚痴るマスターからオレンジジュースの入ったグラスを受け取り、ゆっくりと口に付けた。しかしその瞳は、グラスに映る他の客達に向けられている。

「……よぉ、嬢ちゃん」

「この辺りは物騒だぜ。俺達と一緒に行かないかぁ?」

「何ならイイコトもサービスにつけるぜぇ」

 厭らしく顔を歪めるゴロツキ達が近寄ってくるが、少女は構うことなく左手で頬杖をついた。

「おい無視すんじゃ――っ!?」

 ダンダンダンッ!!

 三発の銃声。彼女の右手に握られた白銀の回転式拳銃(リボルバー)が火を吹いたのだ。彼らの武器一つ一つに弾丸がめり込み、その一部が砕けて床を転がっていく。

「……ナンパなら他当たれっての」

 そう言って千雨は苛立たしげに、銃を右腿のホルスターに納めた。

 

 

 

             魔法反徒ネギま 四人の逃亡者達

                 ~魔法世界残業編~

 

 

 

 あれは三月の頭頃。

「……契約違反、じゃないんですか?」

「スマナイ。まさかここまで使えないとは思わなくて……」

 神戸にある貸し物件の一つ。喫茶『MINORITY』経営のために準備しているところを、クルトが訪ねて来たのだ。途轍もなく面倒な厄介事を携えて。

「君クラスの魔法研究者がほとんどいないんだ。事情を世間に明かして志願者を募ったが、悪用しようと企んできた者達ですら理解できない始末。なんとかアリアドネーの方で数名を確保したが、全体的な確認を行える人物は……」

「製作した僕だけ、ってことですか」

 ネギはしな垂れかかってくるエヴァンジェリンの頭を撫でつつ、クルトに呆れた眼差しを向けている。彼女は目を閉じ、静かに眠りについていた。

「結界そのものは基幹部分だけだが転写済みだ。どうか起動確認を手伝って貰えないだろうか?」

「……つまり魔法世界に行けと?」

「また面倒なことになったな」

 問屋から届いた食器類を焔と一緒に並べていた千雨が、口を挟んで話に割り込む。

「というか、ネギの論文を読んで取引を持ちかけたんなら、それ相応の準備が事前にできてたんじゃないのか?」

「……それは仕方ないよ、千雨さん」

 カウンターで業者ごとのコーヒー豆を見比べていたフェイトが、顔を上げないまま千雨の疑問に答えた。

「僕達はどういう理論かは知っていたが、その仕組みまでは理解していなかった。その時になれば研究者に任せようと考えていたんだからね」

「……人任せだな」

 千雨が呆れて肩を竦めると同時に、買出しに行ってきた茶々丸、調、栞が帰って来た。彼女達の手には小物等の装飾品が詰められている。

「ただいま戻りました。皆さん」

 お帰りー、と店にいた皆に返されながら入って来た彼女達は、荷物をカウンターの上に並べて行った。

「……それで、引き受けてくれるかね?」

「はあ……魔法世界への旅行だと思って引き受け(諦め)ますよ」

 ネギは眠ってしまっているエヴァンジェリンの肢体を優しく揺らし、そっと覚醒を促した。

「終わりましたよ、エヴァさん。ちょっと仕事がありますが、開店前に皆で旅行に行きましょう」

「……二人きりでデートしたい」

「ちゃんと時間を作りますよ。エヴァさん」

 二人の世界に入ってしまうネギ達にやってらんね、と考えた面々は各々作業に戻る。しかしクルトは違い、感激で思わず余計なことまで口にしてしまう。

「いや助かる! 手間賃は迷惑料を含めて色を付ける!!」

「……迷惑料?」

 クルトの発言に千雨は手を止め、眉を潜めた。しかも嫌な予感が店の外からぷんぷんと漂ってきている。

「……一体どういう――」

 詳しく聞こうとすると、同時に外から魔法の射手が扉や窓ガラスを突き破って雪崩れ込んできた。全員そこらのテーブルやカウンターを盾にして、降り注ぐ攻撃から身を隠している。

「おい総督さんよ!! これは一体どういうことだ!?」

「言っただろ!! 悪用しようと考えている連中が居るって!!」

「……これだから魔法関係者は信用できないんだ」

 千雨はぼやきつつも腰のホルスターからSIGP230を引き抜いて、スライドを引いた。

「それで!! これからどうすりゃいいんだ!?」

「護衛と合流しつつ、何手かに分かれて大阪へ!! 関西国際空港で落ち合おう!!」

「それじゃあ皆さん、行きますよ!!」

 ネギが外に投げた魔力球の閃光を合図に、店にいた全員がその場からバラバラに離脱した。

 

「ああ、もうめんどくせぇ!!」

 裏路地を突っ切っていると、後ろから数名が追いかけてきた。御丁寧にも魔法の射手つきでだ。けれども千雨は、事前に把握していた通りに歩を進め、隠していたヤマハのトリッカーに跨り、素早くエンジンを掛ける。

「……茶々丸からバイクの操縦を習っといて正解だったな」

 ヘルメットを被り、アクセルを捻ってトリッカーを発進させると、片手だけハンドルから放したまま、SIGP230を立て続けに発砲した。すれ違いざまに追って達が足を撃たれて地に伏せるのを、バックミラー越しに確認する。

「緊急用の指輪も持ってるし、このまま空港に行くか」

 千雨はSIGP230をホルスターに仕舞い、トリッカーのギアを上げた。そのバイクは誰よりも早く、大阪へと向かっていく。

 

「Guard Skill――Hand Sonic」

 店に残った茶々丸は両手の仕込み刃を展開すると、襲撃者達の前に躍り出た。一人一人の魔法発動媒体を切り裂き、武装を剥いでいく。

「Guard Skill――Howling」

 次いで繰り出した超高音波で相手が全て昏倒したのを確認すると、茶々丸は仕込み刃を仕舞い、カウンターの奥に隠れていたフェイトに声を掛けた。

「それで、貴方方はどうなさいますか?」

「……僕達も行くよ。流石にこれ以上契約違反すると、ネギ君辺りが怒りそうだしね」

 耳を塞いでいた手を下ろし、フェイトは立ちあがった。

「でも全員は無理かな。……この店の修理もあるし」

「分かりました。では後程」

 カウンターから引っ張り出した武器満載のスーツケースを抱えて、茶々丸は店の出口へと向かった。

「ところで、先程は何故手を出さなかったのですか?」

「出していたよ。……裏手の方に」

 フェイトが親指で示した先には、両手足を石化されて呻いている襲撃者達がいた。

 

「結構人が来ますね、エヴァさん!!」

「……もう少し優雅に出立したかったがな。ドタバタ騒ぎは麻帆良で懲りた」

 エヴァンジェリンの身体を抱えつつも、ネギは足を止めることなく、千雨とは違う裏路地を突っ切っていった。後ろからは未だに襲撃者達が、人目を気にすることなく攻撃を繰り出している。

「修理代も嵩むし、あの陰険総督からたっぷり元取らないと、話にならな……っ!?」

「ネギ、どうした?」

 抱えられたままのエヴァンジェリンがネギの顔を覗きこむと、その頬からは一筋の血が流れていた。

「大丈夫です。掠っただけですから!」

「……ネギを傷付けたのか? あいつ等がぁ!!」

 今まで大人しくしていたエヴァンジェリンに、憤怒の感情が刻まれていく。首に回していた右手を放すと、部分的に魔力供給を施し、自らの影に突っ込んでジャッカルを引き抜いた。

「ただで帰れると思うなよ貴様らぁ!!」

 ジャッカルの銃口は追手共に向けられ、立て続けに放たれる銃弾は、彼らを健常者から重症患者へと変えてしまう。

「ちょっ!? エヴァさんエヴァさん!! 耳元で銃ぶっ放さないで!!」

「あっ、ああ! あ!? すまん!!」

 スライドが下がり切ったジャッカルを下ろし、エヴァンジェリンはネギの耳を擦る。

「すまない。……大丈夫か?」

「大丈夫ですよ。エヴァさんは僕のために怒ってくれたんだよね。嬉しかったよ、エヴァさん」

「ネギ……」

 ネギの足は止まらないが、それでも二人は静かに見つめ合っていた。

「クルトの依頼で来たんだけど……もしかして、邪魔だったかい?」

「失せろトリプルT、縊るぞ」

「エヴァまでそういうこと……いや、言われても仕方ないのかな」

 いつの間にか表通りに出ていたネギ達の横を、クルトから連絡を受けて駆けつけたタカミチの車が並走していた。

「とにかく乗って、このまま大阪に送るから」

「それはいいんだけどトリプルT、他の皆は大丈夫かな?」

「悪いけどネギ君、代わりに僕の携帯でクルトに電話を掛けてくれるかい? 多分、全員の安否を把握している筈だから」

 並走しながらネギ達を乗せると、タカミチは携帯を渡して、アクセルを強く踏みしめた。

「ところでネギ君、僕はいつまでトリプルTと呼ばれ続けるのかな?」

「気の向くまま風の向くまま、かな……」

 適当に返しつつ、ネギはエヴァンジェリンを抱えたまま、携帯を操作してクルトに掛けた。

 

 チン……!

「はあ……最近デスクワークが多かったから、結構疲れるな」

「おやクルトさん。こんなところにおられたのですか?」

 店のあるビルの地下駐車場にて戦闘をこなしていたクルトは、得物である刀をぶら下げて通りかかった茶々丸に話しかけた。

「僕は車で行こうと思ってね。幸い、ここに来るのに使ったレンタカーが……」

 口を開けて声を絶やすクルトに首を傾げ、茶々丸が彼の視線の先を向くと、そこには一台の車がスクラップ同然の状態で黒い煙を吹いていた。おそらく彼らの魔法の射手が流れ弾となってレンタカーを貫いたのだろう。

「……宜しければ、私の車に乗りますか?」

「……お願いします」

 茶々丸の提案に乗り、クルトは肩を落としてついて行く。

 

「関西国際空港までよろしく」

 千雨は大阪一歩手前の適当な駅にトリッカーを停車し、エヴァンジェリン製格納マジックアイテムである指輪を操作して衣類を詰めたトランク(市販品)と交換すると、その足でタクシーを捕まえて空港に向かった。

 偽造免許があるとはいえ、流石に交通ルールまで把握しておらず、しかも空港までの道を知らないのだ。ならばと途中でバイクからタクシーに乗り換えて、千雨は空港に向かうことにしたのである。ちなみに荷物を交換したのは、手ぶらであることで不信感を抱かせないためであり、またトリッカーを収容する分は先程のトランクで半端に塞がれていたためだったりする。

「お客さん、旅行ですか? 一人の割には若すぎる気が「家庭の事情だ。一応連れは空港で合流する予定」――……まあ、家出じゃないならいいんですけどね」

 千雨を家出少女と警戒してくる運転手におざなりに返し、彼女はぼんやりと窓の外に目を向けた。

「……あいつら逃げ切ったかな?」

 運転手には聞こえない位の呟きを漏らす千雨。

 しかし数分後に並走するタカミチの車を見かけて、ネギとエヴァのいちゃつき具合に思わず窓を開けたくなったのはご愛嬌である。

 

「……お、着いたようだな」

 受付手前の待合所に居た龍宮は、こちらに向かってくるネギ、エヴァンジェリン、千雨、タカミチに手を振って呼び止めた。しかし彼らはピッタリ二つに分かれたような反応を返してくる。具体的に言えば、未だにエヴァンジェリンを抱き上げているネギに、その二人に対して呆れている千雨とタカミチ、といった具合だ。

「君達が一番だ。とはいえ他はまだかかるだろうから、少し休むといい。高畑先生はどうするんだい?」

「……僕はまだ仕事があるから帰るよ。向こうへ行く前に襲撃者達の拠点を潰さないといけないからね」

 そうタカミチは告げると、後のことは龍宮に任せて、この場を辞した。懐にタクシーの領収書(宛名書きはクルト・ゲーテルと書かれている)を携えて。

「さて、荷物はどうする? 税関を通れない類の物品はこちらで対処するが?」

「いや、大丈夫だ。エヴァの指輪に全部入れてあるからな」

 そう言って指輪を掲げて見せる千雨。龍宮も納得したのか、懐からある物を出して、直ぐに別の話題にシフトさせた。

「じゃあ次はこれだ。申請している時間はないし、面倒な連中から逃れるためにも、君達にはこのパスポートを使って貰う」

「はいよ。……ってなんで偽名が思いっきり外人なんだよ!?」

 徐に広げてみたパスポートの一つには、千雨の写真が張られていた。それだけならばいいのだが、名前欄には堂々とメリル・ストライフと書かれていたのだ。しかも日本国籍のままで。

「ああすまない、これは手違いでできた方だ。ジョークにどうかと思って持ってきたんだ」

「余計な荷物増やさせるなよ……」

 今度は本物らしく、写真に国籍、氏名も日本人名だと確認できた。他に問題はないかとネギ達の分も捲り、直ぐに彼らに手渡す。

「あの、龍宮さん、ですよね? ……一応、もう一つ(ウェイバー・ベルベット)のパスポートもあるんですが、そっちも不味いんですか?」

「そちらも完全にマークされている。だから使わない方がいい」

 ネギはそれを聞いて、漸くパスポートを受け取った。まだ来ていない茶々丸の分のパスポートを仕舞うと、千雨は適当なベンチにどかっと腰かけた。

「後はチケットか、ちなみに席は?」

「エコノミーが六件、ビジネスが三にファーストクラスが一つだけ。どれも人数分ごとに席を取っている」

「ならファーストクラスだ!! 流石に連中も堂々とそんな席に座っているとは思わないだろうからな!!」

 等と今までネギの腕の中で大人しくしていた筈のエヴァンジェリン。けれども慣れたものか、千雨ははいはい、と軽く流していた。ついでに言えばネギも乗り気らしく、目が完全に期待で輝いている。

「楽しみなところ悪いんだが……ファーストクラスは次の便なんだ。だから直ぐに手続しないと間に合わない」

 そして茶々丸の乗った車はガス欠でGSに寄っていたがために大幅に遅れ、エヴァンジェリンはファーストクラスに乗れなかった悔しさを、伴だって歩いていたクルトにぶつけたのであった。

 漸く役者が揃うと、彼らは夜行便のビジネスクラスでエヴァンジェリンを宥めつつ、一路ロンドンのヒースロー空港へと向かう。

 

 




千雨とエヴァの次回予告(以下編集せず)
千雨「……とうとう始まったな、今日から」
エヴァ「適当に間隔を開けねば、また更新に焦り出すらしい。故に執筆作業で他の時間が圧迫されると」
千雨「いや、だとしても別に週一でよくね? 鍛冶日々(鍛冶屋の日々を何となく略したモノ)もそうだし」
エヴァ「……ブログを見ろ。無駄に間隔開けすぎたせいで、〆切ギリギリで書いていたから、二期はこれでもかというくらいにグダグダ「すみませんでした」――というわけで次回『サブタイトルと自己愛者ほど、当てにならないものはない』を楽しみにしろ!」
千雨「ホント当てになんねえよなどっちも!?」

一言「漸く見つけ――ブベラッパ!?」

千雨「……言葉を選ぶ基準が分からん」
エヴァ「そんなものは適当でよい!!」
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