魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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 伝説の聖剣を求め、妖精モモイはある人物の下へと導いた。

 次回、勇者アカシとキセキの仲間達
 第七話 武闘家アオミネの葛藤

 赤司「見なければ、親でも殺す」


第06話 悪魔対吸血鬼(未遂)

「お前もこいつのお仲間(悪魔)かよっ!?」

「ええ……何しろ、悪魔で執事ですから」

 銀のカトラリーを向けてくるセバスチャンに、千雨は現状の把握に努めようと、周囲を見渡した。

(さっきの一撃で、単発銃を落としてしまった。SIGやイングラムは弾切れのまま地面の上。他の武器もあるが、全部この状況では役に立たない)

 それは茶々丸とて同じこと。仕込み武器の中身は製作者の趣味で満載とはいえ、全て物理兵器。対悪魔装備どころか、魔導兵器すら搭載されていないのだ。

「おい、オコジョ。……現状を打破できる魔法(もん)持ってるか?」

「人間相手なら、幾らでもやりようがあるんすけどね……」

 実際、カモにとって逃げるという手段は常に使ってきたものだ。彼にとって自分だけならば、例え悪魔を相手にしても、逃げ出すことは赤子の手を捻るよりも簡単なことである。

「今度は悪魔が二人掛かり……姐さん達見捨てても逃げられないどころか、例え成功しても兄貴達に殺されちまう!!」

「……だったら諦めて、時間稼ぎの方法でも考えろ」

 それでも千雨の瞳が諦めの色に染まらないのは、ネギ達を信頼しているからだ。いつか必ず来てくれる。だから自分達は、それまで生き残ればいいと。

「では我が主からの招待を、受けて頂けますか?」

「個人的には、あまり傷つけたくはなかったんだがね……」

 カトラリーを構えるセバスチャンに、鎖を強引に引き千切ったヘルマン。二体の悪魔に睨まれながらも、彼女達は諦めることなく時間稼ぎの算段を立て始める。

「茶々丸、ドア・ノッカーであいつ等吹き飛ばせないか?」

「残念ながら、ドア・ノッカー用に届いた弾丸は全て――」

 

 ドガドガドガドガドガドガッ!!

 

「――ジャッカルと口径が一緒だという理由で、マスターに盗られてしまいました」

 ジャッカルの超高圧縮魔力弾頭で悪魔達が吹き飛ぶ中、千雨達の影からネギ達が姿を見せた。

「はっはぁ!! 人の身内に手を出すとどうなるか――ヘブッ!?」

 気が付けば、千雨の足はエヴァンジェリンの頭に伸びていた。

「その身内のもん盗ってんじゃねえよ!!」

「何のことかは知らんがいいではないか!! 間に合ったんだから!!」

 足を降ろす千雨に涙目を向けるエヴァンジェリンを置いて、ネギと龍宮は襲撃者達を警戒しつつ、傍に近寄ってしゃがんできた。

「すまない! 気づくのが遅れた!!」

「千雨さん、大丈夫ですか!?」

 エヴァンジェリンも傍に寄って来たので、千雨は自らの傷よりも敵の方に意識を向けるように伝える。急ぐべきは治療ではなく、敵への警戒だった。

「こっちは大丈夫だ。……相手は悪魔だ。とっとと逃げるぞ!!」

「悪魔ですって!?」

 過去に襲われたことがあるからか、人一倍敏感に反応したネギは、件の悪魔達の方を向いた。ヘルマンは打ち所が悪かったのか気を失っているが、セバスチャンは健在であることを誇示するように、手放した分とは別のカトラリーを各指の間に挟んで構えている。

「おやおや、本命であるミスタがここに居るとは僥倖。……早速ですが、我が主は貴方様を招待したいと申しております。宜しければご同行を――」

 返事は銃弾だった。

「お前の主に伝えろ。……次はない、と」

「それは残念。……確かに、お伝えしましょう」

 ネギのグロック17から放たれた弾丸が顔面を掠っても、セバスチャンは気にも留めずに礼を持って返してくる。

「では皆様。……後日また、お目に掛かりましょう」

 その後腰を上げると、ヘルマンを肩で担ぎ、踵を返して去って行った。

「助かった……で、いいのか?」

「フン! あの程度の悪魔等、私に掛かれば大したことはないわ」

 腰に手を当て、鼻を鳴らすエヴァンジェリン。彼女は油断なく視線を巡らせ、もう既に刺客がいないことを確認した。龍宮も問題ないと判断し、懐から手を抜いている。

「しかし、護衛がやられたのが痛いな。……悪いが移動するぞ。このままだとホテルも拙そうだ」

「賛成……そんじゃ行くか」

 ある程度治療を終えて痛みも引いたのか、千雨は自力で立ちあがることができた。そしてエヴァンジェリンに近づくと、ポンと右手を頭の上に乗せる。

「助かったよ、エヴァ」

「……子供扱いするな」

 不貞腐れたのか照れたのか、エヴァンジェリンは千雨の手を払い、俯いたままネギの方へと駆け寄っていった。互いに視線を合わせていたわけではないが、どちらも安堵の声を漏らしていたとか……。

 

「そうか、拒否されたのか」

「はい。……次はない、とのことです」

 魔法世界にある一つの屋敷。その執務室にセバスチャンがいた。どのような手法をもってして旧世界から魔法世界に移動したのかは分からない。けれども彼は魔法世界に現れ、恭しく主である年若き男、いや少年に一礼した。名をシエル・ファントムハイヴといい、魔法世界の南、ヘラス帝国に属する貴族の頭首に当たる。彼はネギの固有時制御については半信半疑であり、またMM元老院も信じてはいない。けれども問題がないのであれば、彼は日和見を決め込むつもりだった。

 だが奴らがあれ(・・)を持っている以上、シエルは彼らに手を伸ばさなければならない。

「まあいい。……どうせ可能なら知りたいと思って、命じただけだからな。……それよりも、もう一つの方はどうなった?」

「抜かりなく……彼ら(・・)が隠したものの所在は確認しました。どうしましょう? 命令とあらば、取引も強奪も行う所存ですが「なら命令だ。セバスチャン」――はい」

 シエルは腰かけていた椅子から立ち上がると、膝をつく執事に向けて命じた。

「あの秘密を知られるわけにはいかない。……固有時制御の秘密を探る者として装い、奴らからあれを奪い取れ。手段は問わない!」

 セバスチャンはただ頷き、主の命を守るべく、口を開いた。

「――Yes, My Lord」

 

「荷物はこれで全部です」

「車はもう少しかかるってさ。先に飯にしよう」

 あれからは二手に分かれ、エヴァンジェリンと茶々丸はホテルの荷物を回収、残りは今後の移動手段を講じ、最終的に車での移動と決まったので龍宮が取りに行ったのだ。

「これからウェールズ、か」

「本当なら護衛の方で転移して向かう手筈だったんだが、人数が足りなくなったから無理だってさ」

 ならばエヴァンジェリンの拘束制御術式を解除するという方法も考えられたが、追っ手に掛かるというリスクを考えると、行うにしても魔法世界へと発つ直前の方がいいと結論付けている。つまり追い詰められない限りは、足で移動した方が安全なのだ。

「しかし……悪魔とは聞いてないぞ」

「向こうも必死だってことですかね……?」

 エヴァンジェリンはネギの傍によると、静かに片腕を抱いた。ネギも彼女を受け入れると、他に何か分からないかと、千雨に目で問いかける。

「向こうの目的は分からんが……ネギ、もしかしたらお前の村を襲うように指示した連中が、後ろにいるかもしれないぞ」

「どういう……ことですか?」

 無意識に力の入る腕。カモはそれに気付くことなく、彼らの話に割って入った。

「俺っちが奴らに追われている時に聞いたんすよ。『まさか、またネギ少年を襲うことになるなんて』って。……俺っちが知る限り、兄貴が悪魔に襲われたのって、ウェールズの村での一件だけっすよね?」

「……うん、それは間違いない」

 他に悪魔が関わるなんて、精々が闇の魔法(マギア・エレベア)で自らを魔に変えたこと位だ。そもそも通常では、一生のうちに悪魔に出逢うこと自体が稀である。

「ホントあのくそ親父、見つけたらぶん殴ってやる!」

「……落ち着け、ネギ」

 片腕だけ解いたエヴァンジェリンはネギの背中を擦り、高ぶる気持ちを宥めようとする。そんな二人から視線を離し、千雨は手近な店が近くにないか、茶々丸の方を向いて問いかけた。

「この辺りに、なんかいい店あるか?」

「ディナーならともかく、昼食となるとカフェテリアの方がいいですよ。時間が時間ですので、下手な店だともうオーダーストップをかけている頃ですし」

 あの戦いで場所の移動や逃亡準備に時間を取られてしまい、時刻は既に14時に差し掛かっている。昼食というよりも、午後のティータイムの方が相応しい時間帯だ。

「ですので、ベーカリーで見繕ってから、車で摂る方が望ましいのではと思いますが……」

「それは良いんだが……飲み物のテイクアウトってやってるかな?」

 その辺りの事情は分からないので、千雨は仕方なくカモの方に話を振ってみる。

「んで、飲み物のテイクアウトとは期待できるのか?」

「……そんなに不安なら、あそこにしたらどうっすか?」

 そう言ってカモが指差した方を向くと、そこにはアメリカに本店を持つ某コーヒーチェーン店が、緑色のロゴを掲げて営業していた。千雨は徐にオコジョの胴体を掴むと、雑巾の如く絞り出した。

「なんで態々イギリスに来てまで、アメリカチェーンのコーヒー屋に行かなきゃならねえんだよ!!」

「小動物虐待~!!」

 結局、飲み物のテイクアウトは注文を受け付けてくれる店を探すことで決まった。

 

「……で、飲み物だけは丁度売り切れてたから、仕方なくアメリカチェーンのコーヒー屋(そこ)にしたと?」

「笑いたきゃ笑え……なんでイギリスに来てまで…………」

 千雨はぼやきつつも、どうにか購入できたパンを一つ掴み、口に持っていった。現在は龍宮が運転する車の中、一行はウェールズへと向かっている。幸いにも追手が掛かることはなく、漸く旅行らしくのんびりできていた。目的は仕事(ビジネス)だが、その辺りは気にしてはならない。

「しかし、私が運転しなくて宜しいのですか?」

「君達の方が客人(ゲスト)なんだ。むしろこれくらいさせてもらえないと、こちらの立場がない」

 護衛の人員補充は不可能だった。現状、ネギ達の方についていた者達で警護体制を敷いてはいるものの、人材不足は否めない。何よりも、護衛よりも客人達の方が襲撃者を撃退しているとなると、ここへ何をしに来たという話になる。

「幸い、フェイト・アーウェルンクスと連絡が取れた。また店を襲撃されたらしく、結局彼一人になってしまったが、既にロンドンに着いたとのことだ。ウェールズで合流するとさ」

「最悪だな、おい……」

 とはいえ、彼の実力を知っているためか、千雨は若干安堵の息を吐いていた。なんで一番弱いのにも拘らず、悪魔等とやりあわなければならないんだ、と心中で呟きつつ。

「……そういや、ヘボ総督(クルト)はどうした?」

「護衛の件も含めて、一度メルディアナ魔法学校に向かうそうだ。……ネギ君の作った魔法薬が、確かそこにあるんだよね?」

「正確にはスタンさん、というおじいさんに製法を記した羊皮紙を渡しました。その後どうなったかは知りませんが、他の人の石化をそこで解いているのなら、薬自体余っているかもしれませんね」

 後部座席でエヴァンジェリンと茶々丸に挟まれた形で、ネギがクロワッサンを齧りつつ答えた。隣では茶々丸がスコーンを口に含み、反対ではエヴァンジェリンがジュースの入ったカップから伸びるストローを咥えている。

「食べ終わったら、少し寝るといい。……まだまだ時間がかかるからね」

「いつ襲われるか分かんない状況で、寝られるわけないだろうが」

 食べ終えてからも不安が残るのか、千雨は先程回収したSIGP230を抜き、指輪から弾薬の入ったケースを取り出して、空の弾倉を埋め始めた。

「一応認識阻害の処理を施してはいるが……警察が来たら直ぐに仕舞ってくれよ」

「じゃあお前の免許はどうなるんだ? 確かイギリスって、日本より交通道徳に厳しい筈だろ?」

 龍宮はハンドルを握ったまま肩を竦め、何でもないかのように呟いた。

「その辺りは大丈夫だ。……ある程度成長してから身分証をでっち上げて、英国(ここ)の自動車学校に通っていたからな」

「……そこまでするか、おい」

 呆れつつも、千雨の手は休むことなく弾丸を込めていき、最後に銃把に叩き込んだ。




千雨とエヴァの次回予告
千雨「エヴァ、実はお前に言いたいことがあるんだ」
エヴァ「何だ? 藪から棒に」
千雨「ドア・ノッカーの弾丸……ジャッカルじゃ撃てないぞ」
エヴァ「何だとっ!? 口径が同じではないか!?」
千雨「弾丸の薬莢、つまり装薬を詰める部分だが、そこも合わないと使えないんだ。特に自動拳銃(オートマチック)はその辺りがシビアだから、弾倉に装弾できないならまだいいが、下手すると装弾不良(ジャム)を起こすぞ」
エヴァ「そんなのありかーっ!?」
千雨「……次回『観光会社『完全なる世界』』をお楽しみに~」

一言「して……その秘宝とは?」

千雨「ついでに言うと、その逆はOKだぞ。口径さえ合えば薬莢の長さは関係ない、単発銃の強みだな」
エヴァ「なんだそれはーっ!!」
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