次回、勇者アカシとキセキの仲間達
第八話 聖剣カガミンの在処
赤司「見なければ、親でも殺す」
注)新年あけましておめでとうございます。年末年始に何か更新したかったのですが、執筆しては別に移るを繰り返していた為、対応できませんでした。申し訳ありません。それでも現在、『雨葱』の続編も執筆中です。
こんな調子ですが、今年もどうかよろしくお願い致します。
(2019年01月03日記載)
この光景を見て、ネギ達は思わず絶句してしまった。何故なら目の前にフェイトが居たからだ。それだけならば特段驚くことではないが、彼の右手に握られている物を一瞬でも見てしまえば、声も枯れてしまうことだろう。
だからこそ、素で返せる龍宮を尊敬してしまうのは、致し方ないのかもしれない。
「随分ウィットに富んでいるな。……あまり目立ちたくはないのだがね」
「その辺りは心配なく。これは一応、周囲に敵がいないかを探るための
そう言ってフェイトは、右手に持っていた『ウェールズ観光ツアー 迎:ベルベット御一行様』の旗を懐に仕舞った。重ねて言うが、ベルベットはネギの偽名であるウェイバー・ベルベットのことなのであしからず。
「と言うわけで、ホテルは僕の方で取っておいたよ。安宿だけどワンフロアを貸し切ったから、警護のしやすさは保証するよ」
「そうか……なら端の部屋を
龍宮と簡単に打ち合わせると、フェイトは後ろの方で固まっているネギ達に声をかけて、先頭に立ってホテルへと案内した。宿はこぢんまりとはしているものの、あまり目立った汚れ等はなく、最近経営を始めたことが窺える。
「部屋はツインだけだけど、二部屋毎に繋がっているらしいから、一応は四人部屋になるよ。但し繋ぎの扉を開ける際は、事前に係員に伝えておかなければならないけどね」
フェイトから簡単に部屋の説明を聞くと、もうどうでもいいのかネギとエヴァンジェリン、千雨と茶々丸で一室ずつに分かれてルームキーを受け取っていく。よっぽど疲れているのか、それとも彼が旗を掲げて待ち受けていたことで気が滅入ったのか、
「……あ、夜明け前には迎えに行くから、それまでに準備しておいてね」
とっととベッドに潜りたいという、欲求に埋め尽くされた彼らの思考回路では、判断がつかなかったとさ。
そして深夜のこと。ネギの母校でもあるメルディアナ魔法学校では、校長とクルトが校長室で静かに密談をしていた。
「では、彼が狙われる理由は固有時制御だけではないと?」
「そうじゃ。……あまり公にはしたくないのじゃが、ネギの体内にはあるものが埋め込まれておってのぅ。おそらくそれが目的じゃろうて」
ここだけの話だと、校長は念を押してから、クルトに事情を告げた。
そもそも、魔法学校の教師達が『サウザントマスター』の名前だけで、ネギを優遇していたわけではないのだ。彼らがネギを『英雄の息子』だと強く認識したのには、一つの切っ掛けがあったのだ。それこそがネギに降りかかる厄災を増加させ、彼の道を閉ざす羽目になった。そして今も、厄災は止まることなくネギ達に降りかからんとしている。
「あれは丁度、ネギが修行のために拘束制御術式を完成させた時のことじゃった。実は
その時は自らを含む教師陣が立ち上がるも、防ぐことはままらなかった。それでも被害を最小限にできたのは、ネギと彼に助言した金髪の少女のおかげだった。しかし代償は大きく、その秘宝は未だ彼の中に封印されている。
「して……その秘宝とは?」
クルトの問いかけに校長は答えるのを渋るも、先に進めないと口を開いた。
「かつて、ネギの父であるサウザントマスター、ナギ・スプリングフィールドでも使いこなすことが叶わなかった秘宝…………」
――スタークリスタル
『……どうにかはなったな』
『でもどうします、これ?』
魔法学校近くにある丘の上に、彼らは並んで腰かけていた。けれども話題はほのぼのしたものではなく、昨夜の騒ぎの元凶となった代物をどうするかについてだった。
『そのまま封印していろ。現状、他に封じておく術がないのだからな』
『でも、父さんでも使いこなせないものを持っているのは危険すぎますよ』
『封印しておくだけならば、問題はないだろう』
ライラックの少女は、暁の空を眺めて提言する。
『決して使うな。……それこそ、我が本体でも抑えられるかは分からないんだ。だからいつか、誰にも見つからない場所に封印してしまえ』
『……分かりました。これは僕が、責任を持って封印しておきます』
いつか、必ず暴走を抑えて封印する。そう静かに誓いを立てたネギは、エヴァンジェリンを連れて魔法学校へと戻っていった。……この先に待ち受ける未来を予想できないまま。
「……ん?」
未だ月明かりが差し込む部屋で、ネギは目を覚ました。夜明けまで時間はあるが、目が冴えてしまったネギは、隣で眠るエヴァンジェリンを起こさないように、静かにベッドから降りる。
「……そういえば、すっかり忘れていたな」
「どうする……?」
ネギは無意識に、安らかな寝息を立てているエヴァンジェリンの寝顔に目を向けた。彼が一人の異性として恋慕する少女。そして今は別室に居る、家族とも呼べる仲間達。
「どうすれば…………?」
彼女達に危険が降り注ぐ可能性を持つ少年は、唯一人悩みを抱えていた。
「……準備はいいかい?」
朝靄に包まれた草原を、フードを被った面々が移動していた。彼らはストーンヘンジが並ぶ広場の中心に位置し、魔法世界へと向かうゲートが作動するのを待っている。
「……時間だ」
龍宮が腕時計を見下ろして呟くと、同時に周囲が光に包まれた。少しして、フードを降ろしたネギは、景色が一望できる場所まで移動し、期待に目を輝かせている。
「すごい。……これが魔法世界」
「相変わらず景色だけは、褒められたものだな」
「というか、いい加減ファンタジーとはおさらばしたいんだがな……」
ネギの後ろを追いかけてきたエヴァンジェリンと千雨が言葉を発するも、彼女達も外の光景に見とれていた。地球とは違う空、建造物、そして宙に浮く、
「魚ぁ――――!!!!????!!!!????」
魚型の飛行戦艦に戦慄が走り、近くの物陰に隠れる茶々丸。
「……そういえば、あいつ魚類は見るのも駄目だったな」
千雨の言葉に頷くネギとエヴァンジェリン。流石に目立つので、どうにかしようと龍宮が呼びかけているが、効果はない。
「向こうは時間がかかりそうだし……先に手続きを済ませてしまおうか?」
フェイトの提案に一同は従い、受付へと歩を進めた。係員が数名、茶々丸達の方へと向かっていったが、龍宮が事情を説明してことを荒立てないようにしている。
「ところで……なんで彼女は怯えだしたんだい?」
「昔……ちょっとな」
事情をよく理解している千雨とエヴァンジェリンは、互いに視線を合わせつつ、同時に溜息を吐いた。
あれはそう、麻帆良学園から逃亡する大体半年位前のこと。茶々丸はエヴァンジェリンと共に自らの開発者である葉加瀬を訪ねていた。目的は茶々丸の主装備、別名Angel Playerの調整のためだった。しかし、それこそが悲劇の始まりである。
調整が一段落し、三人は夕食を共に摂ったのだが、そこで出てきた魚が曲者だった。茶々丸が魚を食すと、偶然にも調整中のために保護板を外していた箇所に骨が刺さったのだ。それこそ万に一つも刺さることのない場所にも拘らず、刺さってしまったがために茶々丸は分解整備行きとなり、三日三晩をバラバラのまま過ごす羽目になったのだ。以来、彼女は魚を見るたびに自らがバラバラに分解される錯覚に襲われ、マクダウェル家の食卓には魚類が並ぶことはなかったという。
「魚が食いたくなったらいつも寮に来てたよな、お前」
「いくらなんでも肉や野菜ばかりだと栄養が偏るだろうが。封印時は結構病弱だったんだぞ、私は」
だからエヴァンジェリンは時折、茶々丸に所要があると言って食事を辞退しては、千雨の部屋に転がり込んで魚類を口にしていたのだ。正直二人の友情は、そこで培われたのが大半を占めている。
そんなこんなで受付に着いた彼らは、早速偽名を用いて手続きを済ませ、茶々丸達に声をかけてから外へと向かっていった。
「向こうからの迎えももうすぐ来る筈だよ。……一応政府の船だから、魚型ってことはないと思うけど」
そう茶々丸に伝えてから、フェイトはネギ達をゲート付近に構えられているカフェに案内した。待ち合わせ場所はここらしく、皆は各々席について、遅めの朝食を注文していく。
「ちょっと連絡をつけてくるけど、認識阻害のペンダントは失くさないようにね」
そう念押しして去っていくフェイトを見送ると、千雨達はフードを降ろしていった。いくら認識されないとはいえ、あまり顔をじろじろと見られたくないと思っていた彼女達は漸く安堵の息を吐いている。約一名を除いて。
「ほら絡繰、早く朝食にしよう」
「そうだよ茶々丸。とっとと食わねえと、迎えが来ちまうぞ」
千雨と龍宮に諭されて、やっとフードを降ろした茶々丸は、おどおどとしたまま通りかかったウェイトレスに自らの希望を告げた。
しばらくして、全員の注文した品が揃った時にフェイトが戻ってきて、とんでもないことを口にしだした。
「迎えに寄越される筈の飛行艇が撃墜されたらしい。だから直接、結界の基盤を刻み付けているオスティアまで来て欲しいとのことだ」
「……随分、自分勝手な話ですね」
苛立ちまぎれにテーブルを小突くネギに申し訳なく思いつつも、フェイトは今後の予定を説明した。
「とりあえず僕達は、移動手段を変えつつオスティアに向かうよ。向こうも到着自体はいつになっても構わないってさ」
「……んなわけにはいかねえだろ」
その会話に、突然千雨が口を挟んできた。彼女は右手に持っているコーヒーの入ったカップを煽りつつ、ネギ達に急ぐよう進言する。
「こっちは転校の準備が控えているんだ。できるだけ早い手段で片付けて貰いたいところだっての」
「……まあ追っ手がかからなければ、そこまで時間がかかるわけでもないんだけどね」
そう肩を竦めて見せるフェイトだが、実際はそれ以上に掛かるだろうな、と踏んでいる。ここは魔法世界の一国、メガロメゼンブリアなのだ。つまりは政府のお膝元であるのにも拘らず、現状は敵勢力が多すぎるのだ。
「というかちょっと考えたんだけどさ、僕が転移魔法を使って必要最低限、つまりネギ君だけを連れてオスティアを往復した方が早いんじゃないかと思うんだけど、どう?」
「……つまり何か、二手に分かれると?」
つまりは電撃戦である。そもそも襲われる理由が固有時制御の悪用ならば、先に問題を解決し、とっとと帰って直接ネギ達から聞き出そうとする連中を返り討ちにする準備を整えた方がいいという提案だ。確かに、速さだけで言えばその提案は魅力的だが……。
「その間護衛は? 特にこの面子で一番弱い私は!? また悪魔が出てきたらどうしろっつぅんだよ!?」
「……いや、ちゃんと護衛はつけるよ。それに、僕の上司もこっちに居るから、なんなら彼に頼めばいいしね」
とはいえ、悪魔相手だとちゃんとした装備も必要となるのは事実だ。というわけで漸く出番が来たと、直感したカモが二人の間に割って入る。
「というわけで千雨の姐さん、仮契約しちゃいましょうぜ!」
「……そういやあったな、そんなの」
千雨は腰に手を当て、カモを見下ろして訪ねる。
「……んで、その方法は?」
「もちろん兄貴とのキッスゥラボロス!?」
事前知識でなんとなくそう言うだろうと予想のついていた千雨は、冷静にカモを蹴り飛ばしていた。
千雨とエヴァの次回予告
千雨「漸く仮契約か……私の逃げ出した意味が思いっきり揺らぐな」
エヴァ「一々気にするな。魔法も道具だと思えばいいんだ。使い捨てろ」
千雨「……魔法が人生の連中には堪える台詞だな」
エヴァ「気にしてやるだけ時間の無駄だ。というわけで次回『世の中(尺含めて)思い通りにいかないことが多すぎる』を楽しみにしろ!」
千雨「いろいろ詰め込み過ぎて、ここまで長くなるとはな……」
一言「流石に殺人者にするのは拙いから……適当なところで止めようか」
千雨「おいどういうことだエヴァ!? また面倒を起こしたのか!?」
エヴァ「うるさいっ!! 全てはあいつが悪いんだ!!」