次回、勇者アカシとキセキの仲間達
第九話 狩人ミドリマの勘違い
赤司「見なければ、親でも殺す」
「これを飲めばいいのか?」
「そうだよ。ケルベラス渓谷からとれる、魔力を吸収する特殊な鉱石に、互いの魔力を流し込んで飲み込むんだ」
カモが描いた仮契約の陣の中、千雨とネギは互いの魔力(千雨にも魔力があった)を鉱石に込め、交換して口元へと持っていく二人。皆が見守る中、各々が鉱石を飲み込んだ瞬間、魔力が繋がって仮契約が成立する。
「
カモが叫ぶ中、仮契約の証であるカードが生まれ、主であるネギの手の上に落ちた。
「んで、これが姐さんの分」
「おう」
カモから従者用のコピーカードを受け取ると、千雨は印刷されている内容に目を通していく。カードには白銀の
「『現実的な拳銃使い』、ね……アーティファクトとかはどうすれば見れるんだ?」
「
カモにそう言われたので、半信半疑になりつつも、千雨はカードを構えて呟くように唱えた。
「……
現れたのはカードに描かれた銃とコートだった。銃を目の前に居るネギに預け、試しにコートを羽織ってみるも、何の変哲もないコートだと千雨は思うが、それは周囲の声に否定される。
「見たことはないけど……随分不思議な効果だね」
「ああ……私もこんなコートを見るのは初めてだ」
フェイトとエヴァンジェリンが関心するように頷いているも、ネギ共々理由が分からない千雨は、同じく頷いていたカモに目で問いかけた。
「そのコート、着ている間だけは
「……つまり何か、やろうと思えば延々と戦い続けられるってことか?」
「どちらかというと、逃げる割合の方が強いみたいですよ」
カモの話を聞き、なら銃は攻撃用かと考えたネギは、千雨から預かった
「要するに……コートは防具として当たりだが、銃は武器として外れだと?」
「まだそうとは決まってませんが……少なくともこの武器について何も知らない現状だと、そう判断するしかないですね。そもそもアーティファクト名が結構ふざけてますし」
どんな名前なのか気になる面々の視線を浴びつつ、ネギはアーティファクトの名前を読み上げた。
「えっと、コートが『愛という陽炎を追い続ける平和の狩人』で、銃の方が『
「コートの名前もツッコみどころ満載だが……銃の方はいくらなんでも名前負けしてねぇか、おい!」
そうツッコみつつ弾丸を戻した
「……まあ、
「よし、次は私だな!」
なにやら自信満々気にネギと交代して陣の中に入ってくるエヴァンジェリン。どうやら若干、どんなアーティファクトが出るのか楽しみで仕方がないらしい。使うのは千雨なのにも拘らず。
「その前に、これってどうやって戻すんだ?」
「
去れ、と唱えてコートと銃を仕舞ってから、千雨は陣の外に居るフェイトから鉱石を受け取り、エヴァンジェリンと分け合った。
「残念ながら鉱石はそれで最後だよ。茶々丸さんは結ばなくていいのかい?」
「私はマスターとドール契約をしているので、現状は必要ないかと」
「それでもアーティファクトというのは面白い。……機会があれば茶々丸用に鉱石を買い求めて仮契約に変えてみるか」
エヴァンジェリンはそう提案しつつ、千雨と鉱石を取り換え、そのまま飲み込んだ。
「
再びカモが叫び、エヴァンジェリンとの契約も無事結ばれた。出てきたカードを受け取ると、千雨そっちのけで内容を読み耽る。
「どれどれ……何だこれは!?」
「おい、どうした!?」
エヴァンジェリンからカードを奪う千雨。覗き込んでくる面々と共に内容を確認すると、黒い修道服を身に纏う千雨が描かれ、称号欄には主とは真逆なことが記されていた。
「『仮初の代行者』、代行者ってまさか……!?」
「そのまさかのようだ。よもや、私との契約でそのようなカードが生まれるとは……」
代行者。その名の如き教会に所属し、神罰を代行する者達を意味する言葉。そして、代行者の敵は……人の道を外れた存在や、人外の化物だ。つまりは、エヴァンジェリンのような存在の敵とも取れる者達である。
千雨はカードを返すと、カモから複製カードを受け取り、
「……
アーティファクトである黒鍵を呼び出した。数はいくらでも量産でき、その一本一本には特化された干渉力が秘めてあるらしく、生半可な悪魔や魔性の類ならば、これ一本で消し去ることができる代物だ。もし数を増やせば……
「……ま、悪魔相手の装備が手に入ったと思えばいいさ」
「千雨、分かってるだろうが――」
千雨はアーティファクトを仕舞うと、若干怯えた眼差しを向けてくるエヴァンジェリンの頭の上に手を置いた。
「大丈夫だよ。……お前が馬鹿やらない限りは、絶対に向けないよ?」
そもそもまともに使えなさそうだしな。そう言って笑いかけてくる千雨に、エヴァンジェリンは安堵しつつも、
「子ども扱いするなと言ってるだろうがぁ!!」
照れくささと憤りで誤魔化してしまうのである。
「それじゃあ行ってきます。直ぐに戻りますからね」
「あまり派手に動くんじゃないぞ?」
「その言葉をバットで叩き返してやる」
あれから少しして、一通りの準備を終えたネギ、エヴァンジェリン、フェイトの三人はオスティアへと向かおうとしていた。残る面々は彼らが戻ってくるまで、この街でのんびりする手筈になっている。
尚、エヴァンジェリンが参加しているのは、彼女がフェイトにごり押ししたためである。
「じゃあ行くよ。いざとなれば僕が囮になる予定だから、基本的には封印状態のままでいてね」
フェイトの指示もあり、大人しくされるがままとなっている二人はそのまま水に飲まれ、転移していった。
「……しかし、本当にマスターが付き添っていって宜しかったのでしょうか? 『
「そこらへんはネギがエヴァを宥めている間に、フェイトがとりなせば問題ないだろう。……問題は、仕事が終わった後もこっちほったらかしてデートしだした時だ。流石にその時は、叩きに行くぞ」
「まあ、何だかんだであの三人が揃えば敵う相手なんていないさ」
龍宮が締めくくり、千雨達は近くのホテルへと戻っていった。……紐で繋いだカモを連れて。
「千雨の姐さん、どうして俺っちは
「ただでさえ吸血鬼のエヴァが行ってるのに、さらに
それに、他にもやっておくことがあるしな。そう千雨は心の中で付け足した。
数時間後。
「流石に離れすぎてるから……ここまで転移するだけで、もうお昼過ぎだな」
オスティアに着いた彼らは、先に昼食を取ろうと適当なレストランを探そうと周囲を探るも、ある人物の登場で、それは遮られてしまう。
「ようエヴァ、久しぶりぃ!!」
「なぁああ……!!」
エヴァンジェリンが指差した先に居たのはなんか馬鹿そうな筋肉達磨もとい、
「何故貴様がここに居るぅ!?」
「ん、バイト♪」
「バイトじゃなぁい!!」
ところ構わず叫びまくるエヴァンジェリンを宥めつつ、ネギは目の前に居るラカンを観察していた。
(明らかな戦士タイプ。……真正面からは危険か)
「そこまで警戒しなくていいぜ。小僧」
しかしラカンはネギの観察眼をものともせず、自然体で近寄ってくる。
「それからアーウェルンクス、だったな? とりあえずそう呼べばいいのか?」
「フェイト・アーウェルンクスだ。好きに呼んでくれて構わないよ、ジャック・ラカン」
とは言いつつも、なんとなく苦手意識を抱いてしまうラカンに対して、フェイトはお座成りに返してしまう。
「……ジャック・ラカン?」
「そう、お前がナギのガキだってな? 見た目はあいつそっくりだな」
英雄の息子、というよりは友人の息子という目で見られていると感じたネギは、どうしたものかと呆然としてしまう。けれども生来の気質か、思わず畏まって挨拶してしまった。
「……ネギ・スプリングフィールドです」
「おう、よろしく!!」
豪快に返すラカンに翻弄されつつも、一行は彼の案内で、ある場所へと連れられていく。
「ところでラカン。バイトとは何だ?」
「護衛だよ護衛、クルトの奴が
「……相変わらずの馬鹿だな」
面白くなさそうにしているネギの手を握りつつ、エヴァンジェリンはそう返すも、ラカンはどこ吹く風とばかりに目の前のホテルへと入っていった。奥へと進み、彼らは一つの部屋の前に立っている人物の前に出る。
「客人を連れてきたぜ。入れてくれ」
「確認のために認識阻害を解除してください。……ああ、このホテルは外側に別種の認識阻害を掛けてあるので大丈夫ですよ」
そう言われて、ネギ達は認識阻害用のアクセサリーを外し、懐に仕舞った。ネギ達の顔を確認するや、彼は扉に手を掛けて挨拶してくる。
「確認しました。英雄の息子様に出会えてこうえ『ドカッ!!』――ひぃっ!?」
一瞬の早業だった。見張りの顔の横すれすれを、エヴァンジェリンのジャッカルから放たれた弾丸が突っ切り、後ろの壁を穿ったのだ。
「お前……ネギの現状を知りつつそうほざくのか? …………ぶち殺すぞ人間!!」
エヴァンジェリンの怒りももっともだ。ネギは周囲の人間が英雄の息子等というレッテルを張られたために未来を閉ざされたのだ。それを知ってか知らずか、未だに『英雄の息子』という色眼鏡で見てくる奴をネギ以上に、彼女が許す道理はない。
「俺、一応
「流石に殺人者にするのは拙いから……適当なところで止めようか」
等とフェイトとラカンは傍観者の態でいる。ネギも傍観しているので、この場で止められるのは彼らしかいないにも拘らずに。
「いいから止めろお前ら! いくらこちらに非があっても、殺人は立派な犯罪だろうが!!」
丁度トイレから戻ってきたジャン=リュック・リカードが、これから行われる殺戮を止めるためにフェイト達に声を掛けていた。
千雨とエヴァの次回予告
エヴァ「フシュー!! フシュー!!」
千雨「落ち着け馬鹿!! ……ここでも感情的になりやがって」
エヴァ「ふしゅぅ……というか、あればっかりは無理矢理だぞ」
千雨「……は?」
エヴァ「ほら、カトリックとプロテスタントが邂逅した話があったろ? そのシーンの劣化再現をやりたかったんだと」
千雨「見張りも可哀想に……」
エヴァ「というわけで次回『そして前章よりも長くなるのは人のせいにしたい』を楽しみにしろ!」
千雨「……これって二度ネタじゃね?」
一言「お、お代わりはいかがですか!?」
エヴァ「ところで『HELLSING』の世界では、『ドラキュラ』はブラム・ストーカーの創作として書かれたのか? それとも実際に見た上で執筆した設定なのか?」
千雨「んなことより上の一言どういう状況で出てくんだよ!?」