魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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 ミドリマの誤解は解け、七人の一党として聖剣を求める旅に出る彼らを見守る存在がいた。

 次回、勇者アカシとキセキの仲間達
 第十話 黒装束の賢者、一党を見守る

 赤司「見なければ、親でも殺す」


第09話 そして前章よりも長くなるのは人のせいにしたい

「不快な思いをさせて大変申し訳なかった! あの者に代わって全面的に謝罪する!!」

 あれから入れられた部屋の中で、リカードは平身低頭、ネギとエヴァンジェリンに対して謝罪していた。まさか未だに勘違いしている人間が居るとは思わずに、適当な人員を配置してしまったことでネギ達が帰ってしまえば、今後の魔法世界は混迷の一途を辿ってしまう。ぶっちゃけると燻ってた争いの火種に火が点いてしまう。

「もういいですよ。……エヴァさんも銃を降ろして」

 しかしこのままでは話が進まないと思い、ネギが先に折れて、隣でジャッカルを構えつつ威嚇していたエヴァンジェリンを宥めだした。

「いや、本当に済まなか「ところで僕達、昼食が未だなんですよ。もしそちらも未だのようでしたら、宜しければ皆さんも一緒にどうですか?」――……今すぐ手配してきます」

 強かなネギの要求を受け、リカードは一旦部屋を出て行った。その間に自己紹介を済ませようと思ったのか、部屋に居た二人のうち一人が、先にネギ達の前にやってきた。

「テオドラ・バシレイア・ヘラス・デ・ヴェスペリスジミアと申す。ヘラス帝国の第三王女じゃ。この度は御足労願い、誠に申し訳なく思っとる」

「……ネギ・スプリングフィールドです」

 若干お座成りになりつつも、ネギはテオドラに紹介を返し、互いに握手する。しかし、次いで現れた彼女に対しては、さしものネギも畏まらざるを得なかった。

「アリアドネー魔法騎士団総長にして、魔法学校教師のセラスと申します。……ウェイバー・ベルベットさん」

「アリアドネーの……!?」

 セラスの紹介に際して、ネギは思わず頭を下げていた。かつて留学しようと努力し、その手前で白紙にしてしまったのだから。

「あの時は申し訳ございませんでした! せっかくの話を不意にしてしまい――」

「……いいえ、こちらの対応にも非はあります。正直、今からでも受け入れたいくらいですが……メルディアナ魔法学校での一件で、魔法自体を嫌悪していると聞き及んでおります。この度は、こちらの力不足で貴方の手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」

 互いに頭を下げ合う中、事情を知りつつも面白くないのか、テオドラはネギの後ろに控えていたラカンに声を掛けていた。

「のぅ、ラカン。……妾の時と対応が違いすぎるように思えるのじゃが……」

「……まあ、ああなるのは分からんでもないよ」

 実際、奴隷剣闘士だったラカンにとって、今のネギの気持ちに共感できるものがあった。周囲に張られたレッテルを剥がすために努力したのは、自分自身も同じだったのだから。けれどもラカンは剥がせたが、ネギは剥がせなかった。それだけ周囲の壁が厚かったのだろう。

 ふと気づくと、手配を終えたのかリカードが部屋に戻ってきていた。

「もうすぐ昼食が届きますので、食事をしながら話を進めましょう。皆さん席についてください」

 一応は公の場なのか、リカードはあまり砕けた口調を使わずに皆を促した。

 

 けれどもそれが適用されたのは、しょっぱなからへまをしたリカードだけである。

「つまり妾達ヘラス族のように、人間の成長速度を遅らせることができると?」

「実際僕自身の成長も遅延できていますし、エヴァさんの肉体を成長させようとしているので、それさえ叶えば実用化できますよ。ただし平均寿命は変わりませんし、肉体への負荷を考えない上での話ですが」

「やはり人間や亜人の肉体では限界があるということですね。ウェイバーさん、魔法陣の東側の術式なのですが……」

 現在、ネギもある程度はリラックスできているのか、テオドラやセラスと固有時制御の術式概要について討議し、

「しかしお前も結構砕けてきてるな。お前らのご先祖様なんて――」

「あまりそういう話はしたくないんだけどね。特に一つ前の自己中さには、僕自身思わず自我が芽生えてしまったよ」

「ハン! それは単なる自慢だぞ。『自分の方が心を理解している』と公言しているようなものだからな」

 エヴァンジェリンはフェイトやラカンと昔話からの派生を話題に上げている。その中で唯一話に入れられないでいるリカードは、

「お、お代わりはいかがですか!?」

 罰ゲーム的に給仕に徹していた。外交というのは、先に弱みを見せたものが下に行くのが鉄則なのだ。

 

 一方その頃千雨達は、

「茶々丸ー!! 茶々丸何処だー!?」

「姐さん、こっちには居なかったっす!」

「こっちにも居ないぞ長谷川。向こうへ回ってみよう!」

 偶然近くで転倒した食料運搬用の飛行艇から降り注いだ魚の群れに暴走して、遥か彼方へと駆けて行った茶々丸を捜索していた。そして彼女達を見守る一つの影。

「……私は何をしに来たのだろう」

 護衛として派遣されたデュナミスは、頬を掻きつつ空から見下ろしていた。とはいえ仕事はきっちりするのか、彼女達の所在を把握しつつ、入れ違いになった茶々丸捜索のため、街の上を飛び回って探し回ったとか何とか。

 

「それじゃあ今日は魔法陣の確認だけで、起動実験は後日人員が揃ってからにしましょう」

「助かります。場所はここから少し離れた荒野ですので、飛行艇を使えば直ぐに戻ってこられます」

 食事を終えたネギ達は、今後の打ち合わせを済ませると直ぐにホテルを後にし、待機している飛行艇へと向かっていた。セラスとテオドラが先頭に立ち、後ろにフェイト、続いてネギとその腕を組んでいるエヴァンジェリン、殿にラカンとリカードといった配置である。

「ではお乗り下さい。全員が搭乗次第、出航しますので」

 セラスの先導で乗り込む面々。飛行艇の出航に合わせて、周囲を囲んでいるアリアドネー騎士団も箒に跨って浮遊していった。

「三十分もしないうちに到着しますが、中でお待ちになりますか?」

「ああ、いえ……すみませんが外で景色を眺めていても構いませんか? 魔法陣の外郭も見ておきたいので」

 分かりましたと、セラスは飛行艇の中へと入り、船員に指示を出しに行った。残りの面々も外の方がいいのか、中へ入る様子がない。

「一応狙撃も考えられるから、できるだけ身を乗り出さないようにね」

「分かってるよフェイト。その辺りは気を付けるからさ」

 フェイトの言葉にネギも背中越しに返し、今はエヴァンジェリンと二人並んで、外の景色を眺めている。他の者達も散り、各々適当にくつろいでいた。それでも警戒を解かないのは流石だと思うが。

「……エヴァさん、あれはなんでしょう?」

「ん?」

 ネギが指差す先には、廃都と化した遺跡のような場所がある。エヴァンジェリンも詳しくは知らないのか、一緒になって首を傾げていると、後ろからラカンの声が聞こえてきた。

「あそこは旧オスティアだ。そういやエヴァはこの辺りには来たことなかったっけ?」

「当たり前だ。前に魔法世界(こっち)に来た時なんて、メガロの方で博打と酒飲みだけで時間が潰れただろ――」

 エヴァンジェリンは口に手を当て、思わずネギの方を向いた。……思い出したのだ。ネギの母親のことを。

 ネギの母、災厄の魔女アリカ・アナルキア・エンテオフュシアは自らの国、ウェスペルタティア王国を犠牲にして世界を救うも、その元凶として罪人の罪を着せられ、処刑されたのだ。実際は処刑寸前に救出されるも、未だにその罪は歴史に刻まれたまま、変わることはない。

「あそこで……母さんは…………」

 エヴァンジェリンは静かに、ネギの傍でその呟きを聞いていた。

「もしかして……既に知ってんの?」

「クルト・ゲーテルが彼に手紙を書いたんだよ。その時一緒に記していたらしい」

 ラカンはフェイトの傍により、ネギが母親について知っているのかを聞いた。元々、赤き翼(アラルブラ)内で、ネギが一人前になってから伝えようとしていただけに、ラカンは頬を掻いてどうしたものかと考えだし……どうでもいいかとアホ面を浮かべだす。

「ま、世界を救う手だてを生み出したんなら、一人前ってことでいいよな?」

「少なくとも総督殿は、そう考えているだろうね」

 フェイトの後押しもあってか、ラカンはどうでもよさげにネギ達の背中を見つめだす。

「……強いかな、あいつ」

 既にラカンの目には、ネギは戦友の息子だという意識が薄れだしていた。

 

「……マジデ?」

「まずは落ち着け、すごい顔になってるぞ」

 デュナミスは茶々丸を見つけると、直ぐに千雨達を集めて、向かった先を告げた。場所はメガロメゼンブリアの西、賞金稼ぎ達が集まる小さな町だった。

「また面倒になったな……そこから先は分かるか?」

「どうも魔力切れらしく、そこからは辿れなかった」

 龍宮が詳細を尋ねるも、デュナミスの返答は芳しくない。それにカモが慌てだして千雨の方を向く。

「拙いんじゃないすか姐さん!? 魔力切れってことはもう活動してないって――」

「落ち着け、茶々丸なら問題ない」

 千雨はカモを掴んで黙らせると、茶々丸の動力源について説明した。

「元々あいつは魔力と食事から生まれるエネルギーのハイブリットなんだ。魔力に関する機能、つまり念話や索敵機能は封じられるが、活動機能や仕込み刃(Hand Sonic)とかには何の影響もない」

「でもそれって……地道に探すしかないってことじゃないっすか?」

 カモの呟きに一同は思わず肩を落としてしまった。茶々丸の生存を信じるも、捜索の大変さには流石に辟易してしまうのだろう。

「私……あいつ捕まえたら魚嫌い、治させるわ」

「……そうしてくれ。一々護衛対象を探し出すのは面倒なのでな」

「では、行こうか……」

 デュナミスの先導で一行は茶々丸がいると思われる町へと向かった。彼女達に纏わる空気は、どこまでもどんよりとしたままだったことを追記しておく。

 

「……あそこをもう少し平らにしてください。じゃないと魔力が循環しません」

「分かりました」

 ネギからの指示をセラスは周りの者に伝えて、早速作業に入らせていた。

 彼らを乗せた飛行艇は、ゆっくりと魔法陣の端に設置された、作業所の前に着陸していく。地に降り立つと、フェイトとラカンを先頭に、ネギ達はプレハブ小屋の中へと入っていった。

「こちらが、現在の作業状況を記したものです。映像を」

 セラスの声に従い、作業員の一人が映像を映す水晶を操作し、空中に転写した。ネギは適当な指揮棒を近くの者から受け取り、エヴァンジェリンを侍らせたまま作業状況を確認していった。

「もう2,3か所、平らにして欲しい場所がありますね。魔力循環テストは未だのようですけど、指摘したところを直せば問題は無い筈です。後は造物主の掟(コード・オブ・ザ・ライフメーカー)とのリンクですけど……それはもう届いているんですか?」

「先日設置しました。起動テストは魔力循環と一緒に行う予定です。何か注意点等は――」

 段々と専門的な話になって来たのか、ネギとセラス以外の面々はチンプンカンプンだとばかりに首を傾げている。まったくもって理解できないのだ。

「フェイト、お前さん分かるか?」

「さっぱりだね」

「俺にも何が何だか……」

 特にフェイト、ラカン、リカードの三人はついてこれずに、ここに居ても仕方ないかと外を見張る態で小屋を後にした。

「……以上ですね。全ての作業を終えるのはいつになりますか?」

「明日の朝までには魔力循環テストを終了させられるでしょう。ウェイバーさんの協力が必要となるのは、正午からです」

「分かりました。では明日の日暮れ前までに全て片付けましょう。そこさえクリアできれば問題無い筈です」

 セラス達が頭を下げる中、ネギはエヴァンジェリンを伴って、小屋の外に向かった。

「明日の仕事が終わったら、二人でディナーに行きましょう。元老院に高級レストランを押さえさせて」

「それはいい。茶々丸達との合流は、別に明後日でもいいしな」

 等と茶々丸の暴走を知らない彼らは、呑気にデートプランを立てていた。




千雨とエヴァの次回予告
千雨「仕事終わったんならとっとと帰ってこいよ!! こっちはそれどころじゃないってのによ!?」
エヴァ「無茶言うな!! いくらなんでもお前達の事情等常に把握しておけるわけないだろうが!?」
千雨「……茶々丸との定時連絡はどうした?」
エヴァ「次回『とうとう二桁だこんちくしょう!!』を楽しみにしろ!!」
千雨「誤魔化すなーっ!! それといい加減そのネタから離れろーっ!!」

一言「――えっと……おはようございます」

千雨「……これって、一言って言えるのか?」
エヴァ「知らん! 後言っておくが、茶々丸の生存だけは常に確認しているぞ!!」
千雨「連絡も取りやがれ!!」
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