魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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 聖剣を求めてセイリンの村に辿り着いた一党だが、村長のアイダに「『予言の八人』に一人たんねえわ!!」と怒鳴られてしまう。

 次回、勇者アカシとキセキの仲間達
 第十一話 クロコを探せ!!

 赤司「見なければ親でも殺す!!」


第10話 とうとう二桁だこんちくしょう!!

 ――もしもし……もしもし…………

「……ん?」

 茶々丸が目を開けると、そこには亜人と言っても差し支えない程の体格を持つ大男がいた。彼は静かに膝を折ると、目の高さを合わせて話しかけてくる。

 ――えっと……おはようございます

「おはようございます。……貴方は?」

 茶々丸も起き上がって顔を向けると、男は身に纏っているコートを捲くって、肩掛けのホルスターに納められている一丁の銃を見せた。

「それは――」

 ――はい……初めまして…………ドア・ノッカーの精です

「そうですか。未だ使用していませんが、これからお世話になる予定の絡繰茶々丸と申します。以後良しなに」

 ――はい……よろしくお願いします

 互いに頷き合うシュールな光景ではあるが、止める者は一人としていない。

「それで、何か私に用でしょうか?」

 ――ええ……今すぐ起きないと大変なことになります

「……と、言いますと?」

 流石に茶々丸も、これが夢だと気付いていたので、そう言われることに不信感は抱かなかった。むしろガイノイドが夢を見ているので、若干珍しく感じているのだ。

 ――早く起きないと……溶けます

「はい? ………………な、ななな……………………」

 あまりの言葉に茶々丸の顔は変わらずとも、身体は左右に腕を振り振り、混乱を示している。次いでとばかりにドア・ノッカーの精は徐に銃を抜くと、その眉間に突き付けてきた。

 ――では…………ハヤクオキロ

 眉間をドア・ノッカーで撃たれた茶々丸の目には、青いランタンの光に包まれていた。

 

「……ハッ!?」

 茶々丸が目を覚ますと、視界は黒と緑に覆われていた。何が起こったのかを冷静に思い出そうと目を閉じて視界に過去の映像を映し出す。そして暴走中何かにぶつかり、そのまま弾かれること無く飲み込まれたのだと脳内記録を再生させて分かった。

「困りましたね……まさか食虫植物に囚われてしまうとは」

 自らを覆っているのは酸で間違いないだろう。実際、身に纏っていた筈の衣服はほとんど溶けてしまい、用途を成していないのだから。

「まあ……流石に私のボディを溶かすのには、時間が掛かるようですね」

 茶々丸は剥き出しになった右腕を持ち上げ、植物の腹に掌を当てた。

「Guard Skill――Hand Sonic」

 展開した仕込み刃で植物の腹(?)を裂き、酸の溜まり場から躍り出る茶々丸。とはいえ流石は魔法世界なのか、食虫植物は切り裂かれても、未だに触手を操って捕えようとしてくる。

「と、とっ……」

 メタリックな肢体を晒しながらも、茶々丸は後ろに跳んで距離を取った。そしてある程度離れてから膝をつき、立ててある右膝の仕込みを操作する。

「稼働試験は未だですが……ここで試しておくのも悪くないですね」

 すると膝頭が割れ、中から小型ミサイルの頭が飛び出てきた。

「Guard Skill――Micro Missile」

 

 シュボボボボ……ボン!

 

「……酸がいけなかったのでしょうか?」

 ミサイルは不発に終わった。着火はしたのだが中の燃料が使い物にならなくなったのか、それとも元から不良品だったのか、ミサイルは発射されることなく膝頭に収まっている。

「……捨てましょう」

 とはいえただ捨てるのももったいないと茶々丸はミサイルを掴んで抜き取ると、

「とぉ」

 展開したままだった仕込み刃の腹で打ち、追いついてきた食虫植物のどてっぱらに叩きつけたのだ。その時の衝撃で、ミサイルは爆発し、植物を焼き払っていく。

「さて……」

 茶々丸は腕を組むと、思案するように首を傾げた。

「……これからどうしましょう?」

 ところでガイノイドとはいえ、肢体を晒したままというのはどうなのだろうか。まあ、空中で先行していたデュナミスが茶々丸を見つけて保護する前に、辛うじて壊れずに済んだ指輪から衣服を取り出して着込んでいたので、一先ずは無問題と言えるだろう。

 

「茶々丸が見つかった!?」

 黄昏時、街に着いた面々は散開して茶々丸を捜索していたが、先行していたデュナミスが確保したと聞き、千雨は安堵した。次いで携帯から聞こえる龍宮の声に従い、一先ずは合流場所に指定された酒場まで向かうことにする。

『カモミールにも後程連絡する。直ぐに向うから、そこで落ち合おう』

「了解。……ところで、護衛の方は問題ないだろうな」

『安心しろ。ピンチになればデュナミスが駆け付ける手筈になっている』

 頼りになることで。そう呟きつつ電話を切り、もたれていたトリッカーを町の入口に居る守衛に預け、千雨はその酒場へと歩を進めた。

 小さな町とはいえ、ここには賞金稼ぎがわんさといる。千雨はアーティファクトであるコートを羽織り、右太腿に銃の納まったホルスターをつけていた。

 砂埃に紛れつつも、コートの前を閉じて歩き、少しして目当ての酒場を見つけたので、そのままウェスタンドアを押し開いて店に入る。中に居た者達からは好奇の目を向けられるも、千雨は一切を無視してカウンター席に着いた。

「……ジュース、味は何でもいい」

「ここは酒場なんだがね……」

 そう言われても、未成年なのだから仕方がない。

 グラスを受け取って口元に持っていくと、背中越しに近寄ってくる男達が見えた。

「……よぉ、嬢ちゃん」

(……うぜぇ)

 おそらくはナンパの類だろうが、連中の顔が余りにも厭らしく、千雨は内心で辟易としている。

「この辺りは物騒だぜ。俺達と一緒に行かないかぁ?」

「何ならイイコトもサービスにつけるぜぇ」

 とはいえ、口じゃあ何を言っても頭の悪い返ししか来ないだろうと、千雨は左手で頬杖をつきつつ、右手を右太腿の銃に伸ばした。

「おい無視すんじゃ――っ!?」

 ダンダンダンッ!!

 千雨は素早く銃を抜き、連中を近づけないように相手の得物を撃ち抜いて牽制した。

「……ナンパなら他当たれっての」

 転がっていく武器の破片に構うことなく、銃をホルスターに戻す千雨。しかし彼らは感情的になり、素手で襲いかかろうとしたが……ダンッ!

「ストップだ。……命が惜しければとっとと失せろ」

 丁度店に入ってきた龍宮が放った弾が男達の足元を穿ち、その場で地団太を踏ませた。デザートイーグルを連中に向けたまま、彼女は千雨の下に近寄っていく。

「ちょっとした疑問なんだが……もし私が間に合わなければ、どうするつもりだったんだ?」

「……逃げるに決まってんだろ」

 そう言って、千雨は左の耳元に隠していた閃光の魔力球を翳して見せる。

「あいつ等ん中じゃ一番弱いのに、出鱈目人間の万国びっくりショーに出たって無駄死にが精々だろうが」

「まあ、生き残る上では普通なんだが……そう言われると魔法使い全般が出鱈目人間と取れるんだが」

 違うのかよ、と目で問いかけてくる千雨にノーコメントで返す龍宮。気が付けば男達は逃げ出しており、他の客も警戒しつつも、無暗に突っかかってはこない。

 千雨は再度銃を抜くと、中折れにして輪胴弾倉から空薬莢を掴みとりながら、龍宮に声を掛ける。

「んで、茶々丸達はいつ着くんだ?」

「今着きました」

 しかしいきなり聞こえてきた茶々丸の声に、千雨は思わずずっこけ、銃に装填されていた弾丸を使用・未使用を問わずにばら撒いてしまった。

「どうしました、千雨さん?」

「……お前、後で絶対魚嫌いを治させる」

 空になったままなのにも拘らず、手首を振って元に戻すと、ホルスターに納めつつそう呟く。

「……ジュースのお代わりはいかがですか?」

「……くれ。できるだけ甘いのを」

 今はとにかく糖分が欲しい。千雨はそれ以外の思考を遮断した。

 

「魔法世界の夜空って、星座の違い以外にないんですね。……綺麗だ」

「月が見えないのは残念だがな。……まあ、火星だと地球と見え方も違うから、もしかしたら滞在中には拝めないかもしれんし、別にいいか」

 元老院の用意した高級ホテル(支払いはリカードのポケットマネー)の一室。備え付けのソファに並んで腰かけている二人は、部屋の外から見える夜空を眺めていた。その間中、茶々丸が拘束された状態で千雨に魚を押し付けられているとも知らずに。

 ネギとエヴァンジェリンは互いに身を寄せ合い、部屋に流しているクラシックに耳を傾けながらも、視線を下げることはなかった。

「こういう場合、大抵は『この夜空よりも、君の方が綺麗だよ』って言うんでしょうけど、僕はあまり言いたくありませんね」

「ほう、それは何故だ?」

 面白そうにネギに目を向けるエヴァンジェリン。彼も視線を降ろして見つめ返すと、静かに返した。

「だってそう言ってしまったら、貴女の美しさと比較できるものがあるって言っているようなものじゃないですか。……貴女以外に美しいものが存在するとでも?」

「実に気分がいい言葉だが……先程夜空に対して『綺麗』と言わなかったか? ネギ」

 そう言えばそうでした、と照れ隠しに頬を掻くネギの右手を取り、エヴァンジェリンはゆっくり顔を近づけ……

「駄目ですよ。エヴァさん」

「……お前のそういうところが気に食わんよ、ネギ」

 口元に抑えられたネギの左手を払い、エヴァンジェリンは不貞腐れてそっぽを向いてしまう。その姿にネギも慌てて、彼女を包み込むように抱き寄せた。

「ごめんなさい。……でも大事だからこそ、ちゃんと向き合いたいんです」

「……分かってるよ」

 K(キティ)の名前の如く、猫のようにしなだれかかってくるエヴァンジェリンを受け止めたまま、ネギは目を閉じる。この至福の時を終わらせたくない、と願いつつも……。

「そろそろ夕飯にしましょう。……もし急ぎでないのなら、食事が終わるまで待って頂けませんか?」

 その願いは儚く消えていった。

 

「いえいえ。そこまで時間は掛かりませんので、先に私の話を聞いて頂けませんか?」

 

 悪魔の来訪、という最悪の終わりをもってして。

 

「……それで、次はないと申し上げた筈なのに、一体どの面下げてここまで来たんですか?」

「こちらも少し、事情が変わりましたもので……下手に強奪を企てるよりも先に聞かなければならないことがあるのです」

 先程とは別のソファに並んで腰かけるネギ達の前には、ファントムハイブ家の執事、セバスチャンが控えていた。けれども戦闘の意思がないのか、先日とは違い、カトラリーの類は握られていない。

「おい、ネギ……」

「大丈夫ですよ、エヴァさん。戦う気があるのなら、最初からホテルに向けて大規模な殲滅魔法を撃ってくる筈です。態々警備を抜けてくる理由はありませんよ」

「さすがに……そこまで乱暴な手段を用いるつもりはありませんよ」

 さしものセバスチャンも、頬に冷や汗が流れていた。しかも内心では、ネギがそこらの悪魔よりも悪魔らしいとさえ考えている。

「で、話ってなんですか? 手短に済ませて下さい」

「ゴホン! ……実は私、貴方の身柄を狙う組織に紛れつつ、その身に封印されたマジックアイテムを回収するよう、主に命じられていたのです」

「……スタークリスタル」

 ネギの口から零れた一言に、セバスチャンは頷いて肯定した。

「その際、とある悪魔からスタークリスタルについてある情報を得ました。どうやら彼も、魔法学校に襲撃したメンバーの一人だったらしく、大変興味深い事柄を伺ったのです」

「何です?」

 ネギにも、大凡の見当がついていた。いやむしろ、そのことを知らなければ(・・・・・・)、このような話の場を設けるわけがない。

 

「貴方の体内に眠るスタークリスタル……今も、いえ未だに(・・・)暴走の一途を辿っていますね?」

 

 セバスチャンの指摘に、隣に居たエヴァンジェリンは無意識にネギの手を強く握っていた。

 

 




千雨とエヴァの次回予告
千雨「不公平すぎる!! なんでお前らが高級ホテルで、こっちはボロッちい安宿なんだよ!?」
エヴァ「……じゃあ、お前悪魔の相手をするか?」
千雨「……マジ?」
エヴァ「マジだ」
千雨「……それでも私は、今よりもましな部屋に泊まりたいんだと思う」
エヴァ「パロにしては最悪なセリフだな。というわけで次回『契約の数は男の勲章?』を楽しみにしろ!」
千雨「ってさらっと流すなよ!!」

一言「……ただ私に、いえ我が主に返却して欲しいだけなのです」

千雨「……そろそろ一周しないか? 一言の人選」
エヴァ「もう数ヶ月経ったし、それもまた一興か」
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