次回、勇者アカシとキセキの仲間達
第十二話 聖剣眠りし洞窟へ
赤司「見なければ、親でも殺す」
「だとしたらどうします? 少なくとも僕はこんなところで、エヴァさんの傍で暴走させるつもりはありませんよ」
ネギは脅すように目の前の悪魔にそう吐き捨てる。しかしセバスチャンは関係ないとばかりに本題を切り出した。
「別に暴走させたいわけではありません。……ただ私に、いえ我が主に
「……返却?」
その言葉にネギは首を傾げた。エヴァンジェリンも同じなのか、不思議そうにセバスチャンを見つめている。
「ええ。そもそもスタークリスタルは、私が仕えるファントムハイヴ家の財産の一つなのです」
「……聞いたことがあります。然るイギリス貴族の一門が、所有する財を対価に魔法世界、ヘラス帝国への亡命を所望したとか。……魔女狩りから逃れるために」
「そうです。……そこで投げ出された対価の一つがスタークリスタルなのです」
それが何の因果か、メルディアナ魔法学校に流れ着いてしまったのだ。そしてファントムハイヴ家がスタークリスタルの所在を掴んだ時には、既にネギの手中に納められていたのだ。
「幸か不幸か、貴方は追われる身。ならば、と賊に扮して争いの最中奪おうと画策したはいいものの、肝心の宝が未だに暴走していると聞き及び、主に報告しました」
「で、その主はなんて答えたんです?」
セバスチャンはもったいぶることなく、言葉を続けた。
「ただ一言、『スタークリスタルの現状を聞いてこい』と。さしもの主も、むざむざと禍には手を出せないでいるのです」
「……そう、ですか」
それを聞いて、ネギは安堵すると同時に落胆してしまった。ただでさえ厄介ごとが多いのに、少しでも減らせる可能性が出てきたかと思えば、向こうはただ欲していただけでなんの力もないのだ。これではふりだしである。
「正直僕自身も、封印が手一杯です。
ネギの問いかけは当然のものだ。スタークリスタルは悪用すればそれこそ世界に害を及ぼしかねない程のマジックアイテムだ。正直使い勝手さえよければ、
そしてセバスチャンは、ネギの問いにただ一言、こう答えた。
「ただ保管し、管理するだけです。必要となれば使うこともありましょうが、基本的には屋敷の奥深くに閉じ込めておくだけです。それは我が主の名誉に対して誓います」
「簡単には信じられない。……それこそ詭弁である可能性もある」
人は人を陥れる。だからこそ、今のネギ達が居るのだ。故に悪魔の戯言等、詭弁にしか聞こえてこない。
「でしょうね。……まあ我が主も、手に入りさえすればいつになっても構わないとのこと。もし貴方方か我々か、そのスタークリスタルを封じ込めることに成功したならば、その封印場所に主の屋敷をお選び下さい」
「……暴走した時も、お前達が責任を持って回収していくなら構わない」
「エヴァさん!?」
今まで黙っていたエヴァンジェリンが口を開いて言ったのがこの言葉だ。ネギの意識が、本来は警戒すべき悪魔から外されてしまう程の、彼は驚いていた。
「念のために聞きたい。……ファントムハイヴは女王の何だ?」
「“番犬”でございます。今は領民の番犬でございますがね」
それを聞いて満足したのか、エヴァンジェリンはネギの首筋に手を回し、自らの胸の内に抱え込んだ。
「なら信用を足るに十分だが……主に会わせ、
「畏まりました。現状ではそれで十分かと」
セバスチャンは一礼すると、そのまま部屋から出て行った。彼が去るのを見届けると、ネギはエヴァンジェリンに詰め寄る。
「どうしてそんなことを「お前の悩みを減らすためだ」――……知ってたんですか? スタークリスタルのことを」
エヴァンジェリンは頷き、そのままソファの上に寝転がった。手を引き、倒れ込むネギと一緒に。
「
「エヴァさん……」
倒れ込んだまま、エヴァンジェリンはネギの頭を優しく、愛おしげに撫でていく。
「奴らはかつて、女王の憂いを晴らすために裏社会に君臨していた闇の貴族、その末裔だ。仕える相手が変わろうとも、その
なにせ、私自身が殺されかけたのだからな。
エヴァンジェリンはそう告げた。下手な味方よりも、明確な意思を持つ敵こそ信頼に値すると。
「だからネギ、封印に成功したらどこへなりと捨ててしまえばいい。連中ならまだマシってだけで、結局は誰でもいい。無論悪用される恐れもあるし、それで私達に危害が加わるかもしれないが、お前の命には代えられないんだ」
「…………」
黙り込むネギを促し、エヴァンジェリンは起き上がってテーブル席の方を指差した。
「食事にしよう。……悩み等全部飲み込んでしまえ」
「……はい!」
見つめ合うこと数刻、思わず伸びてしまう腕を抑え、そのまま電話の受話器を手に取った。
「気分転換も兼ねて、外に行きましょう。レストランの席を押さえさせますね」
「そうしてくれ。腹が減って仕方がない」
暗い空気が薄れ、部屋は二人の笑い声で満たされていた。
「……このままオスティアに向かう?」
「ああ、その方が安全だと私は判断している」
今にも崩れ落ちそうな外観をしている安宿の一室。気を失って床の上に伸びている茶々丸に腰掛けた千雨は、向かいの壁にもたれている龍宮とこれからについて話していた。
「というよりも、絡繰の暴走までは連中も予想できなかったらしい。敵勢力は皆メガロメゼンブリアに留まっている。戻って下手に刺激するよりも、オスティアに居る者達に保護してもらう方が警護上確実なんだ」
「それは分かるが……ここからオスティアまでの距離は結構あるんじゃないのか?」
「そこは心配ない。デュナミスがいるし、いざとなればフェイトをこっちに回して貰えばどうとでもなる」
ちなみにデュナミスは夜通し空を飛んで、千雨達の居る安宿を警護することになっていたりする。
「オーケー、それで足は?」
「夜明けと共にデュナミスに頼んで転移してもらう。とはいえその前に若干移動しなければならないがな」
「……どういうことだ?」
龍宮は指を一本立てると、あるアイテムについて語った。
「流石に全員となると、グランドマスターキーを用いた方が早いらしい。なので夜明け前に町を出て、なるべく人気のないところに潜伏しつつ待機し、そいつを使って纏めて転移した方がいいようだ。何より一回の転移で済むのがいい」
「んな便利なものがあるなら、最初から持ってくればよかったじゃねえか」
「……本人曰く『まさか必要になるとは思わなかった』らしい」
空中にいたデュナミスがくしゃみをしたりしなかったりする中、千雨達の居る安宿の数軒隣に、ある男が立っていた。彼は近くに居る娘三人に話しかけると、そのまま去って行った。そして残された女の子達、すらむぃ、あめ子、ぷりんは人間型から不定形なスライムになると、下水道を伝ってある建物へと忍び寄っていった。
彼女達は雨樋の中を移動しつつ、目当ての部屋を見つけ、その前で止まり、聞き耳を立てた。
『では夜明けと共に……ん?』
「やばっ」
すらむぃ達が魔力を抑えて水と同じ状態になると、部屋の中に居る龍宮が視線を逸らすまでじっと固まる。
『どうした?』
『いや……どうやら気のせいらしい』
千雨の問いに答え、龍宮は視線を部屋の中に戻した。そのことにスライム娘達は音をたてないように息を吐く。
『夜明け前に迎えに来るから、それまで仮眠をとるといい。……また後で』
『おう。……茶々丸、寝るならベッドに――』
茶々丸が譫言でドア・ノッカーだとか鬼火だとかを口にしているが、すらむぃ達は関係ないとばかりに移動し、壁に張り付いて窓から侵入――
「そこまでだ」
彼女達が振り返ると、そこには空中で警護している筈のデュナミスが居た。
「グランドマスターキーを取りに行く前に見つけられたのは僥倖、先に害虫を駆除して「総員撤収!!」――逃がすかっ!!」
デュナミスは龍宮に念話を入れて一時的に持ち場を離れることを報告し、直ぐに逃げ出したスライム娘達を追いかける。しかし流石はスライム、街の下水道やら通風孔を巧みに使って町の外へと逃げ出していく。しかしデュナミスは魔力探査を用いて、空から追いかけているために撒かれることはなかった。
しかし、宿から一定以上離れすぎたと判断すると、追跡を断念して、その場に浮遊した。
「なっ!?」
瞬間、足元に突如魔法陣が生まれ、デュナミスを包み込んでしまう。そして彼はこの街から姿を消した。
「……やはり罠か」
おそらくは囮だったのだろうと、龍宮はデザートイーグルを構えつつ思考した。
先程の窓の外が気になり、デュナミスに確認させたまではよかったのだが、それは彼とこちらを分断するために行われた策略だったのだ。安宿のボロボロな廊下を駆ける龍宮。しかし正面にいきなり、見慣れぬ黒装束を纏う男達が立ち塞がってきた。
「悪いが急いでいるんだ。そこをどけ!!」
デザートイーグルの銃口を向けるも、男達は意に介することなく各々懐から小刀を抜き、龍宮に向けて投擲してきた。
「……なんか、やな予感がするな」
「どうしました、千雨さん?」
ベッドに横になりながらドア・ノッカーの点検をしている茶々丸に振り返ることなく、千雨は机に並べた弾丸を逐一、アーティファクトの銃の輪胴弾倉やスピードローダーに装填しつつ、部屋の外を見つめていた。
「神戸で襲われる前にも、同じ感覚を覚えたんだ。その結果は分かってるよな?」
「また、襲撃されると?」
部屋の灯りは千雨の傍にある蝋燭立てだけだったが、部屋全体を照らすのには十分すぎた。安宿だから、部屋自体が狭いと言うのもあるが。
「分からんが……索敵頼めるか?」
「お待ちを…………」
茶々丸は静かに目を閉じると、事前に千雨に充電してもらっていた魔力を用いて索敵機能を稼働させ、辺りを調べ始めた。そして銃声と、龍宮が何者かに襲われていることを知ることとなる。
「龍宮さんが襲われています。デュナミスさんにも連絡を取っていますが、繋がりません。どうしますか?」
「逃げるか助けに行くかだが……どうやら前者一択しか選べなさそうだな」
フッ!
蝋燭の火を消すと、千雨はアーティファクトのコートを着込み、机の上に並べていた弾丸類を全て片付けていった。茶々丸も、二手に分かれる前にエヴァンジェリンに返してもらった弾丸をドア・ノッカーに装填すると、銃身を固定してベッドから起き上がった。
二人は静かに銃を握り、扉の左右に分かれて襲撃者を待ち伏せたが、
――ガシャァアアン……!!
「窓から入ってくんじゃねえよ!!」
襲撃者に対して発砲する二人。けれども男は弾丸を回避し、再び窓枠を潜って外に出て行った。
「千雨さん、他にも――!?」
「分かって――!?」
銃の
千雨とエヴァの次回予告
千雨「……これってカリオストロ?」
エヴァ「唯一の違いは、弾丸が効く理屈が違うといったところか。向こうはアーマー着けてたし」
千雨「……単に使える襲撃ネタがなかっただけだろうに。やはりモンキー・パンチは偉大ということか」
エヴァ「あれの監督は宮崎駿だろ? 次回『真夜中の追跡者』を楽しみにしろ! ……ってパクリもここまで来ると拙くないか?」
千雨「二次創作ならば問題無いってことで一つ」
一言「……ホントあいつ等に関わると退屈しないな」
千雨「そう言えば龍宮が残ってたな」
エヴァ「次回からはリセットする予定だ!!」