魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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 ようやく予言の8人となり、一党は魔王の城へと乗り込んだ。

 次回、勇者アカシとキセキの仲間達
 第十六話 魔王の名はリジチョウ・テイコウ

 赤司「見なければ、親でも殺す」


第15話 拘束制御術式第壱号――解放

 そして翌日。

「……なあ、ネギ。前言撤回して私があの馬鹿の相手をしていいか? 正直直ぐにでもぶち殺したい」

「ま、まあ落ち着いて下さい、エヴァさん。……向こうも多分、悪気があってやったわけじゃないと思うんですよ」

「悪気というか…………馬鹿丸出しじゃねえか」

 ネギ達が話題にしているのは、政府によって貸し切られた闘技場、その正面入り口に書かれた垂れ幕のためである。

『魔法世界救出記念ラカン(カップ) ~ジャック・ラカンVSネギ・スプリングフィールド~』

「しかもここ、この垂れ幕含めて妙な認識阻害が掛かっているのか、関係者以外だと僕のことを、別の名前や人物で認識するみたいですよ」

「んなご都合主義、どうやったらできるんだよ」

「気合いだ。全ては気合でなんとかなる」

 背後から突如現れたラカンに一同はビビッて距離を置いた。けれども向こうは我関せずとばかりに笑いながらネギの背中を激しく叩いてくる。

「いやあ天気にも恵まれて絶好の喧嘩日和だな。今日は楽しくやろうぜ!!」

「あ、はぁ……」

 呆然としてしまうネギを促し、ラカンは会場へと入っていく。皆もそれに従い、後を追いかけた。中には受付があり、既に何人かが入場チケットを買い求めている。

「ちなみにここで得る純利益は、全て勝者のものだからな」

「成程、そっちが目的か……選手交代だこいつは私が殺す!!」

「だから落ち着けってエヴァ!!」

 エヴァンジェリンを取り押さえている千雨を背に、ネギはラカンを見つめていた。何を考えているのか、分からない英雄に問いかけるように。

「……これくらい派手な方が、お前も楽しめると思ったんだがね」

「楽しむ? 戦いは楽しむものじゃないでしょう?」

「はあ……お前、それは駄目だぜ」

 二人は並んで立っていた。近くには茶々丸が控え、千雨とエヴァンジェリンは隅の方で未だに取っ組みあっている。

「もうチョイ過程も楽しめよ。結果だけ求めたって、それじゃあお前を吹き飛ばした連中と変わんねえぜ」

「何故、そう思うのですか?」

 互いの視線は交わっていない。けれどもその会話が途切れることはない。

「『英雄になる』結果しか見えてないから、過程を蔑ろにしたんだろ?」

「…………!!」

 驚きで振り向こうとするネギを、ラカンは頭を押さえて強引に下を向かせた。

「だから楽しめよ。過去も未来も、そんなもん生きてく上じゃあ何の関係もねえだろうが」

「だから今を楽しめ、ですか?」

 分かってんじゃねえか!

 背中を思いっきり引っ叩かれて思わずのけぞるネギ。若干涙目で振り返ると、ラカンはただ笑っていた。

「ちゃんと見せてみろ。ナギの息子じゃなく、お前自身の強さをな」

「……まるで父親みたいですね」

「ハッハッハ!! そういうことはあの馬鹿に……期待するだけ無駄だから母ちゃんに頼みなさい」

 ネギはずっこけた。おまけに真顔で返されたのだから、余計性質が悪い。

「だってよぉ、あの馬鹿やりたい放題やってた末に英雄だぜ。世界平和(やりたいこと)云々はともかく、思いっきり過程を楽しんでたからなぁ……」

「それで後始末はつけずに自分は雲隠れ……ホント父親失格ですねあのくそ親父」

 忌々しげに呟くも、ネギの口元は知らず知らずのうちに綻んでいた。心の何処かでは、親としての彼らを知れたのを嬉しく思っているのかもしれない。

「戦いが終わったら、母親のことも込みで話してやるよ。……但し俺に勝ったらだ」

「知りませんよ……死にかけても」

 ネギに殺気の籠った眼差しを向けられるも、ラカンは飄々として背を向けた。

「全力で来い。お前が殴りたい奴の格を教えてやるよ」

 ラカンが視界から消えるまで、ネギはその背中を見つめていた。

 

 ゴトッ!

「……おいエヴァ。なんでジャッカルをこれ見よがしに床に落とした?」

「……誰か暴走して奴に「撃つわけねえだろ!! てかお前以外撃てねえよ!!」――……だよなぁ」

 ネギの控室に居る面々。開始まで少しあるので(ネギ以外)のんびりしていたら物音がした。それがジャッカルの落下音だったから性質が悪い。

「しかし、本当に大丈夫かネギ? 私ならいつでも変わってやれるぞ?」

「いい加減にしろエヴァ。てかお前過保護すぎやしねえか?」

 未だにネギの腕にしがみ付いているエヴァンジェリンに、千雨は腕を組んで呆れかえっていた。けれども開始時間まで刻々と迫っている。

 ――コンコン!

「失礼します。えっと……お連れ様のご見学先ですが、我々と同じVIP席で宜しいでしょうか? 各種御持て成しの御用意はできておりますが……」

 申し訳なさそうに入ってくるリカードが座席についての確認に来たので、エヴァンジェリンは茶々丸に応対を任せた。その間にネギは、しがみ付かれている腕を優しく解き、彼女の落としたジャッカルを拾い上げる。

「……千雨さん」

「ん? 何だ?」

 壁に凭れたままネギの方を向く千雨。視線の先に居る少年は、ジャッカルを見つめたまま口を開いた。

「……僕は悪党なんですよね?」

 

 観客の沸き起こる闘技場。その一角にラカンは立ち、時間が、ネギが来るのを待っていた。自らのアーティファクトである千の顔を(ホ・ヘーロース・メタ・)持つ英雄(キーリオーン・プロソーポーン)を剣状にして突き立て、対戦者が現れる筈の一角を見つめている。

「……来たな」

 その呟き通り、反対側の選手入場口からネギが出てきた。黒く染められたマントを羽織り、その下に戦装束を身に纏っている。詳細は原作でナギ状態のネギが着ていた服を本来の姿で身に付け、且つ全身を包むマントがついていると考えればなんとか想像できる、と思いたい。

 ついでに言えば、ネギの右太腿にはホルスターが付けられ、普段腰に差しているグロック17をそこに納めている。マントが邪魔で見えないが、それを押しのけて一振りの剣が腰のベルトに差されていた。他にも武装しているかもしれないが、目立つ範疇となるとその二つが全てである。

「よく来たなぼーず。……いっちょやるか?」

「その前に……(これ)について何も言わないんですか?」

 ネギは自らの右太腿を指差すが、ラカンはどうでもいいのか口元を歪めるだけだった。

「そもそもそんな豆鉄砲が俺様に効くかよ」

「ならいいですけど……」

 表面上は渋々といった感じで頷くも、ネギは内心ほくそ笑んでいた。グロック17の中身だけでなく予備弾倉も全て高圧縮魔力弾頭。威力だけならば魔法の射手以上の威力を持っている。

「……とは言っても、それだけで勝てる程甘くはないんですよね?」

「それが格上って奴さ。……お前の持ちうる全てで来い。それくらいはハンデだ」

「それじゃあ遠慮なく……拘束制御術式第参号――解放」

 封印は解かれ、ネギの身体に流れる魔力の質が変わった。同時に時間が来る。

『それでは魔法世界救出記念ラカン(カップ)。開始します!!』

 審判の合図が闘技場内に木霊する。

『……試合開始っ!!』

 合図と同時にネギは駆け出した。魔力供給を施し、背中に刻まれた魔法陣を起動させて。

戦いの歌(カントゥス・ベラークス)!! Time alter――double accel!!」

 

戦いの歌(カントゥス・ベラークス)!! Time alter――double accel!!』

「……始まったか」

 所変わってVIP席。

 ソファなり立見なりで闘技場の光景を眺めている面々の目には、ネギが魔力供給を施した上で倍速の早さを得、ラカンの懐へと潜り込む姿が映っていた。前方の強化ガラスにへばりつくエヴァンジェリンをそのままに、千雨達は試合の行方を眺めている。

「しかし、色々と(・・・)小細工してていいのか? 相手が相手とはいえ」

「それは別に構わないと思うよ。結局は“ネギ君自身”が父親と同じ力を持つ者(ナギ・スプリングフィールド)と渡り合えるかどうかが分かればいいんだ。そう考えれば小細工も立派な彼の力さ」

 千雨とフェイトが口だけで話す中、ネギとラカンが接触する。

 

「甘いっ!」

「がっ!?」

 魔力供給により強化され、倍速の早さを得た筈のネギを正確に捉え、ラカンは拳の一撃を持って迎撃した。けれども未だ攻防は止まらない。

 ネギは散布地雷をばら撒くと同時に魔力球の閃光で視界を焼き、一目散に距離を取った。続いて右手の魔法発動媒体である指輪に魔力を流し、魔法の射手を更に叩き込む。

魔法の射手(サギタ・マギカ)!! 連弾(セリエス)雷の29矢(フルグラーリス)!!」

 下手に動けば地雷。動かなくても魔法の射手の餌食となり、止めに奪われた視界。常人ならばこの時点で勝敗は決していただろう。

 ……けれども格が違った。

「オラアッ!!」

 爆発的な気の奔流。たったそれだけで地雷を吹き飛ばし、魔法の射手を弾いてしまう。ラカンは右手の剣を斧槍(ハルバート)に変え、先端に気を集中させてネギに投擲した。

「拘束制御術式第弐ご――」

 斧槍(ハルバート)が着弾し、捲き上がる砂塵がネギを包み込んだ。

『す、すごいっ!! ラカン選手!! 挑戦者を一瞬にして討ち取りましたぁ!!』

「ハハハ……まあまあ」

 ラカンは両手を挙げて観客を宥めようとするが、内心は冷や汗でダクダクだった。

(やっべー……やりすぎたかな?)

 そこそこできるとは思っていたが、やはり学者肌でそこまで強くなかったのか?

 今の一撃であっさり敗北したと考えたラカンはどうしたものかと頬を掻きつつ、

 ――ドッ!!

「……そうこなくっちゃ♪」

 もう片方の手で突っ込んできたネギの一撃を防いだ。

 防がれたネギは先程よりも早い動作でラカンから距離を取り、突っ込む前に事前に詠唱しておいた魔法を放つ。

解放(エーミッタム)! 雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)!!」

 雷の暴風がラカンに迫る。しかし彼は気を身体中に張り巡らせると、全身を包み込んで防御態勢に入った。

「気合防御――!!」

 ――ドンッ!!

 

「……よし、これで行こう。助っ人参上「させるか馬鹿!!」――本気で殴るなぁ!?」

 丁度ネギが雷の暴風でラカンに攻撃している時、何を思ったのか眼鏡を取り出して掛けるエヴァンジェリンを千雨は殴りつけて止めた。尻もちをつく彼女を引き起こし、戦闘状況について尋ねる。

「……てことは未だ生きてんのか? あのラカンておっさん」

「あの程度でくたばるならばとっくに死んでる。聞くところによると、鳥頭(ナギ)の千の雷にも耐えきったらしいからな」

「じゃからこそ、ジャックは英雄と呼ばれとる」

 近くに居たテオドラもエヴァンジェリンの言に同意した。

「さてどうなるのやら……」

 ソファで寛いでいる龍宮が楽しげにそう口ずさむと、ラカンが砂埃の中から出てきた。

 

「成程成程~……まだまだ本気じゃなかったと?」

「正直言うと、力押しや小細工であっさり勝てるんじゃないかと考えていました。……でももう疑いません」

 ネギは両手を静かに持ち上げ、指を組んで向かいに立つラカンを見据えた。その瞳は真っ直ぐ、打倒すべき相手に向けられている。

「貴方は英雄としての力を有している。……正真正銘、全力で行きます!!」

「漸く本番か……来い!!」

 ラカンの叫びに呼応して、ネギは封印を解いた。

「拘束制御術式第壱号――解放!!」

 

 ――闇の魔法(マギア・エレベア)の封印を

 

 




千雨とエヴァの次回予告
千雨「とうとう解放したか、次は闇の魔法(マギア・エレベア)が出てくるのか?」
エヴァ「ああ、そしてネギは奴を倒す!!」
千雨「……最後の最後どころか観戦中も手を出そうとしてる時点で疑ってないか?」
エヴァ「知らん!! というわけで次回『『闇の魔法(マギア・エレベア)』限定解放』を楽しみにしろ!」

一言「それよりもラカンが動きましたよ! ウェイバーさんへ突っ込んでいきます!!」

千雨「……そう言えばネギの始動キーは?」
エヴァ「次話冒頭に注目だ!!」
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