魔法先生ネギま 雨と葱   作:朝来終夜

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 聖剣の力によりかつての記憶を呼び覚ました彼らは、魔王に合体技『メテオジャム』をぶつける。

 次回、勇者アカシとキセキの仲間達
 第十八話 ダイレクトドライブゾーン

 赤司「見なければ、親でも殺す」


第17話 やることやったので観光に行こう

「Time alter――square accel!!」

 ネギは駆けた。四倍速の速さをもって、雷を集束させた右手をもって、残り魔力の全てをもって、ライラックの少女を殺した術式をもって。

 ここでネギが持ちうる全てを賭して、ラカンに突っ込んでいった。

「ぬあああ……!!」

 ラカンもなけなしの気を振り絞って鎖による拘束に抗い、拳を構えてネギを待ち構えた。雷の爪が襲い掛かるのに合わせて、残る気を全て賭けた拳を放つ。

 

 ――ドッ!!!!

 

 爪と拳が衝突した瞬間、闘技場全体を力の奔流が埋め尽くした。

 

「……ってて」

「大丈夫ですか、千雨さん」

 頭を上げると茶々丸が傍に居た。おそらくは先程の衝撃に巻き込まれて、VIP席(ここ)も吹き飛ばされたのだろう。直ぐ近くにも、衣服が乱れて凄いことになっているテオドラが転がっていたのだから。

「何とかな……それより、エヴァの方に行かなくて良かったのか?」

「ここを私に任せて、ネギさんの下へと向か「未だ試合中だろうが!!」――いえ、先程決着が着きました」

「え……?」

 茶々丸に支えられた千雨が見たのは、地面に仰向けに倒れたラカンと、その横でネギを支えているエヴァンジェリンの姿だった。

 

「じっとしてろ!! まったく、ここまで怪我をするなんて……」

「イタタッ!? もう大丈夫ですから、エヴァさん!!」

 闘技場の医務室にて、ネギはエヴァンジェリンに取り押さえられて特製の魔法薬を塗り込まれていた。向かいの壁には千雨と茶々丸が並び、扉付近には龍宮とフェイトが立っている。

「まさかコーヒーを探しに行っている間に決着が着いていたとはね」

「中々のものだったぞ? 若干短かったがな」

 二人が話し込んでいると、扉がノックされてラカンが入り込んできた。

「邪魔するぜぇ」

「何しに来た脳筋!? 返答次第では私がお前を殺すぞ!!」

「……お前、ホント入れ込み方が半端じゃないな」

 呆れつつも、手に持っていた賞金袋を投げ渡すとラカンは、近くの椅子に足を組んで腰掛けた。

「それで、少しはお前が殴りたい奴の格ってのは分かったか?」

「正直予想以上でしたよ。……あれでも未だ、本気じゃないんですよね?」

「当然♪ ……とは言っても、今だからこそあれだけ(・・・・)で済んだと思うぞ」

 おちゃらけた顔を引っ込めたラカンは、未だギプスで固定されている右手を持ち上げてみせた。

「少なくとも威力だけなら、とっくに親父(ナギ)を超えてるぞ。これで戦闘経験なりを積めば……それこそ他に勝てる奴はいない」

「威力だけですよ。総合的には未だ未だ届かない」

「バァカ」

 右手を降ろしたラカンは、左手を伸ばしてネギの頭の上に置いた。

「そう簡単に越えられないのが壁なんだよ。だがお前はその年で、そのなりで俺に一撃を加えた。それだけでもお前は十分一人前だよ」

 それだけ言うと、ラカンは手を降ろして椅子から立ち上がった。

「もうちょい経験やらが必要になってくるが……赤き翼(アラルブラ)が一人、ジャック・ラカンが太鼓判を押してやる。お前は今日から一人前だ。誇れ、胸を張れ」

「……はい!!」

 満面の笑みを浮かべるネギ。それを見た面々も自然と口元を歪めている。

「というわけで副賞だ。ラカン三級をやろう」

「……いえ、それは結構です」

 ひょーしょーじょーとか言っているラカンに、ネギは手を振って断った。けれどもいつ作っていたのか、物凄く凝った表彰状を押し付けられたのであったりする。

 

 ネギは称号『ラカン三級』を手に入れた。

 

 時は進んで夜。

 皆で夕食に向かう前、ネギはラカンに呼び出されて開祖アマテル像の前に来ていた。

「さて、お前に話すことがある。……お前の両親についてだ」

「……はい」

 二人は互いに向き合い、各々真剣な眼差しを向けていた。

「まず最初に……クルトから聞いているな。ナギがこの世界を終わらせようとした魔法使い、始まりの魔法使いを倒したことは」

「聞きました。そして、魔法世界の崩壊に至るまでの道筋を」

 ラカンは静かに頷くと、その先について話しだす。

「その後ナギとアリカ姫は旧世界で暮らし始めた。その後は俺よりも完全なる世界(コズモエンテレケイア)のフェイト辺りが詳しい筈だ。……もしこの先に進みたいのなら、日本の京都にある、ナギの暮らした家を漁れ。確か手掛かりがあった筈だ」

「分かりました。……それで、母さんは?」

「ん……ありゃいい女だった。俺もちょい惚れてたぜ」

「そんなこと、適当な顔で言われても……」

 ラカンが適当な顔になってしまったので、もう話は終わりだろうと背を向けたネギに、鋭い声が掛かった。

「ま、何にせよお前はもう、力を手にした一人前の男だ。男だったら女を守りな」

 無言で振り返ったネギに手を振り、

「また魔法世界(ここ)に来い。魔法使いとして生きるつもりはなくとも、お前自身が来たけりゃ、いつだって来ればいい。戦う相手が欲しいなら、俺でよけりゃあまた相手してやる」

「……ありがとうございます」

 ネギはラカンに頭を下げた。けれども、顔を上げるともう、歴戦の英雄は姿を晦ましていた。

「いつか、また……」

 そしてネギは歩きだした。愛する女性や、頼れる仲間達の下に。

 

「……大丈夫かい?」

「やっぱ飛び降りるのは無茶だったか……」

 アマテル像付近。断崖の下で片腕だけで身体を支えていたラカンの下に、隠れてネギの護衛についていたフェイトが声を掛けたのだ。というかこのおっさん、格好つけるためだけに飛び降りたのだ。ここまでくると、馬鹿を超越しているのではないかと思えてくる。

「ところでよぉ……なんでネギの奴に、てめえらの大将のことを言わなかったんだ?」

「……言うべき時じゃないと思ったからさ。なんせ、彼の父親が関わってきてるんだからね」

 今でも鮮明に覚えている。固有時制御のことを知り、麻帆良学園に眠る始まりの魔法使いの下へ向かった時は。細心の注意を払いつつ、辿り着いた先に居たのは……。

「そもそもその件は、君も関わっていたんじゃなかったっけ?」

「ああ……そん時は向こうに行けなかったから、話だけだな」

 納得したのか軽く頷くと、フェイトは背を向けて水に呑まれ、転移していった。どうやらネギの護衛に戻っていったらしい。

「……え、ちょっ、助けてくんないの!?」

 ラカンの叫びは、遥かオスティアの下方にまで木霊していった。

 

 日は明けて翌日。

「本日の予定は朝食後にオスティア観光を行い、昼食後メガロメゼンブリア本国に移動。その足でウェールズに帰国いたします。以上で宜しいでしょうか?」

「問題ありません……朝食の手配をお願いします」

 ネギの許しを得たリカードは素早く背を向けて退室。それを眺めた面々は一所に集まって話し始めた。

「漸く全部終わりか……とっとと帰国ってことは、未だ向こうも敵だらけってことか」

「でしょうね。仕事も終わりましたし、その後はロンドンを観光して帰りましょう」

「それがいい……じゃあ、行こうか」

 エヴァンジェリンがそう締めくくると、彼らは部屋を後にしていった。

 

「この度は御足労願い、誠に申し訳ありませんでした。そして、今回の働きについて深く感謝致します」

「仕事的には大して苦労しなかったからいいですよ。……もう少し時間を掛ければ、僕を必要とすることはなかった程です。これならば任せても問題はないと判断しています」

「そう言って頂けると助かります」

 セラスと握手してから、ネギはエヴァンジェリンの横に立った。オスティアの入り口に立つ面々は、これからデュナミスの持つグランドマスターキーを使ってメガロメゼンブリアまで転移することになっている。他の者達は、その見送りに来ているのだ。

「それにしても、ジャックは一体どこに行ったのじゃ? 見送りにも来ぬとは……」

「昨夜会いましたよ。……また相手してやるって言い残して帰っていきました」

 実際は直ぐ近くに居て、『エターナルネギフィーバー』を帰り際に売りつけようとしていたのだが、ネギの発言を聞いて出るに出られなくなっているのだ。

「で、では……次お越しの際は今回以上の御持て成しを用意しておきますので、いつでもお声を掛けて下さい」

「いやもう来ねえって。ファンタジーは懲り懲りだってのに」

「別にいいじゃないですか。……ここも観光地だと思えば」

 リカードの言葉に千雨は否定したが、何かを振り切ったのかネギはまた来ようと言い出した。

 確かに魔法使いとして生きるつもりはない。最早魔法は道具としか感じられない。けれどもネギはもう、魔法を否定するつもりはなかった。魔法があったからこそ、今この瞬間があるのだから。

「まあ、当分は向こうが忙しくなるので、来れないでしょうが」

「ある意味海外旅行だもんなぁ……」

「ククク……確かに海は越えているな」

 千雨のボヤキにエヴァンジェリンも愉快気に同意する。荷物を纏め終えたのか、茶々丸が近寄ってきた。

「時間です。行きましょう」

「では、失礼します」

「ウェイバーさん。本来ならば式典を開いて感謝の意を示したいところですが、立場上控えねばならぬことをお許しください。……もしこちらに来ることがあれば、いつでもお声を掛けて下さい」

「妾達でよければ歓迎するでな。……ああ、そうそう」

 何か思い出したのか、テオドラはネギに一通の手紙を差し出してきた。

「ファントムハイヴ家からの書状じゃ。時間ができ次第読んで欲しいとのことらしいが……いつ知り合ったのじゃ?」

「まあ……色々とありまして」

 手紙を受け取って懐に仕舞うと、今度こそ背を向けて歩き出していた。

「では皆さん……お元気で」

 ネギは背中越しに手を振り、皆を引き連れてオスティアを後にした。

 

 そしてメガロメゼンブリアからウェールズに帰国すると、ネギ達は先日宿泊したホテルに再び部屋を取り、今はネギ達の部屋に千雨や茶々丸が集まっていた。

「日本に帰るのは明後日か……明日はどうする? とっととロンドンに向かって観光の続きでもするか?」

「それなんですけど……ロンドンに向かうのは明日の昼でもいいですか? フェイト達に転移を頼むので、移動時間は然程掛かりませんし」

「それでもいいけど……」

 何かあるのか、と千雨は首を傾げた。

 ここはウェールズであり、ネギの故郷でもある。けれども千雨は、ネギにとって、ここにいい思い出があるとは思えなかった。

「実は一ヶ所、寄りたい場所がありまして。……エヴァさん」

「なんだ?」

 ベッドの上、ネギの傍に腰掛けていたエヴァンジェリンは不思議そうに顔を向けてきた。

 ネギも彼女に視線を合わせて、こう話しかけた。

 

「明日……一緒にデートしませんか?」

 

 




千雨とエヴァの次回予告
千雨「……漸く終わった」
エヴァ「今回、ちょっと短い上にだいぶ端折り過ぎじゃないか?」
千雨「これ以上続けるとだらけてしまうらしい。だからカットできる部分はカットしたんだと」
エヴァ「まあ、これで次章に入るんだが……お前の転校先、結構濃い面々で占められていたぞ」
千雨「マジかよおい……」
エヴァ「というわけで魔法世界残業編最終話『Like a Lilac』を楽しみにしろ!」

一言「全てを受け入れる闇のように、僕は前に進み続けます」

千雨「そして次回……」
エヴァ「あの小動物が生きている理由が明かされる……」



以下追記
 上記を読み返し、この発言があった為ハーメルン版没エピローグは、本当に没にしたかった魔法世界残業編没エピローグと同時掲載に致します。御了承下さい。
 また、次回更新時に今後の活動計画を発表します。同時にアンケートも締め切る予定ですので、お見逃しなく。
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