麻帆良学園内にある施設内の小さなホール。その壇上に、彼らは立った。
「皆様。本日はお集まり頂き、誠にありがとうございます。ネギ・スプリングフィールドです」
「神楽坂明日菜です」
「……長谷川千雨です」
三人は一斉に頭を下げ、再び上げた。
「この度、皆様にお話ししなければならないことがある為、急遽休載させて頂きました」
「説明を省いて読者を置いていく作風。別ペンネームの作品を優先しての月一更新。挙句の果てにはストックすらまともに用意できない始末」
「こうなるのは予想できました。……いや、さっさと見切りをつけるべきだったよな?」
「千雨さん……それって暗に、僕との未来が嫌ってことですか?」
「いやだって……
「大丈夫です!! きっと大丈夫ですよ!! だって原作でもそれっぽいフェードアウトしただけで、もしかしたら『実はヨルダに取り込まれていた』可能性も「それって、一番タチ悪くない?」――明日菜さんもやめてっ!!」
「いいからさっさと発表して帰ろうぜ。この後悪友達と飲みに行くんだからよ」
「あ~私もこれからアスナと一緒に、パルクールサークルの懇親会に参加するって約束してるのよね~」
「なんで重大発表の後にそんな暢気なことができるんですかーっ!?」
「馬鹿者。内容が内容だから、この後気楽にできるんだろうが」
「というか、読者の皆様はもう予想がついているんじゃないかしら?」
「まあ、僕もそう思いますけど……発表はちゃんとしましょうよ」
「しょうがない。さっさと片付けるか……垂れ幕ドン!」
千雨の合図と共に、三人の背後に垂れ幕が下がった。
そこにはこう、記載されていた。
【『魔法先生ネギま 雨と葱』、打ち切りまーす!! みんなごめんね♪】
そして、おもむろに後ろを向いた面々の中で、千雨が真っ先に動いた。
「……って軽っ!! 軽すぎだろ作者!!」
「そもそも、最近断捨離に凝ってる作者が、他の作品含めて執筆の時間が取れないのが原因らしいですけどね。気持ちも軽くなっちゃんたんですかね?」
「そう言えば、要らない物片っ端から片付けて売ろうとしていたものね……」
「いや、だからってこんな軽いオチとか有りかよ!! つーかまともに挨拶する話はどこ行ったコラ!!」
「……ね、ネギ。千雨ちゃん見て分かるでしょ? まともにやるだけ損なのよ。こんな風に事態を軽く見る馬鹿は淘汰されるべきなのに平気で真面目な人巻き込むし」
「というか……まだ異動してなかったんですか、作者。碌な報連相ができないくせに人を平気で見下している馬鹿共の相手が面倒だからって、異動願いだしたの確か、5月終わりでしたよね?」
「それも怪しいけどな。年末までに移動する筈が、未だに異動先がわからないとか」
「おまけに営業所の方が慌ただしくなっているから年明けに伸びそうだし、もう諦めた方がいいんじゃない? 色々金策試しているみたいだし、いっそこのまま退職いっちゃう?」
「駄目ですよ明日菜さん。きちんと収入源確保してからじゃないと」
「ほんと世知辛いよな……ってちょっと待て!! なんで打ち切り発表で作者の愚痴を語ってるんだ私達は!?」
「それは作者のストレス状態によっては、また断筆するからですよ」
「実際、最初の就職先辞めた後なんて酷かったわよね。全然書いてなかったんだから」
「あの時の方が時間あったくせにな……一時期ニートだったし」
また話が脱線しかけていた時、壇下に控えていた朝倉(次話位に麻帆良学園都市に戻ってくる予定です)がカンペを掲げてきた。
【第三章最終話、早く流して】
「いいのか、朝倉。第二章でのお前の活躍なくなるぞ?」
「まあ、打ち切りだからしょうがないじゃない」
「もうすぐ更新文字数累計40万字(現時点)にいくのに、未だに人気がないですからね」
「本当、よく続いたよな。ここまで」
「それでは、皆様……」
「本来執筆予定は遥かに先でしたが、第三章最終話」
「どうぞ、お楽しみ下さい……」
【魔法先生ネギま 雨と葱 最終話】
決戦を終えて数日後の喫茶店『Imagine Breaker』店内にて。
「終わったんだね……全部」
「ああ。終わったんだよな……」
洗い終わった食器を片付けながら、上条はカウンター席に着いているこなたに声を掛けた。全てに決着を終えた今、精神がゆるんでしまっているからだ。
いや、より正確には……ようやく取り戻した平穏を楽しんでいた。
「そう言えば……今日だっけ?」
「うん……どうするのかな、千雨は?」
そう、全ての戦いを終え、ネギ・スプリングフィールドはイギリスに旅立つ。
「もう行ってしまうのか、ネギ? もう少しゆっくりしても……」
「よせってアリカ。こいつももう、自分の道を歩いているんだからさ」
便利屋『RUDE BOYS』のシオンを運転手に雇い、ネギと明日菜は今日、ナギ達に見送られてイギリスへと旅立つ。例え転移者達の脅威を退けても、彼等には
「それにしても、他の皆も薄情よね。見送りに来ないなんて」
「仕方ないですよ明日菜さん。スカリエッティとの戦いの傷跡は、未だに癒えていないのですから」
そう、ここにいるのはナギとアリカだけ。
学園都市の復興作業は未だに終わらず、交通網もタクシーを含めて完全に麻痺していた。運転のできるシオンを雇えたのだって、千雨の力添えがなければ不可能だったかもしれない。
しかし、力添えをした千雨本人はここにはいない。戦後処理で未だに奔走しているからだ。今も恐らくは、関東魔法協会で被害状況を把握する為に情報収集していることだろう。
「僕達には僕達の仕事があります。きちんと片付けて、また戻って来ましょう」
「その頃には妾も免許を取っておくからな」
「本当に取ってそうだな……」
意気込むアリカに若干
「……あ、クラクションなってる」
「もう行かないと……じゃあ、行ってきます」
「ああ、行ってこい」
ナギに背中を叩かれ、アリカに見守られながら、ネギは明日菜を
「お願いします」
「ああ、じゃあ出すぞ……」
シオンの運転する車は、ゆっくりと国道を走り始めた。
「行ってしまったな……」
「ああ……ま、今度帰ってきたら、家族水入らずでうまいものでも『数限りない食材と数限りない料理法。俺は全部を』――あれ、電話?」
通話が入ったのだろう、ナギは鳴り響く携帯を操作し、自らの耳元にあてた。
「もしもし……千雨ちゃん?」
「寂しくなるわね。ネギ」
「ええ、でも大丈夫ですよ」
忙しく書類を捲るネギには、これからのことが手に取るように分かった。いや、分からされたというのが近いか。
「……すぐ忙しくなって、寂しさも紛れるでしょうから」
「うん。見てれば分かる。ハア……」
これから訪れるであろう、大量の仕事に溜息が漏れ出してくる。
しかし、嘆いていても始まらない。これからも前を向いて生きることを胸に近い、再び書類の山に没頭しようとするネギ。
「……なんだ、結局来たのか」
しかしネギの意識は声を出したシオンへ、そして視界に映った鏡に投影された、バイクを駆る千雨に向けられた。
「あ、千雨ちゃん!」
明日菜も気付いたのか、ネギの肩を叩いて千雨の方へ向かせる。信号が青に変わったばかりで未だに停車することはないが、しばらく併走すればそのうち停まる機会もあるだろう。
だが待ちきれないのか、運転席の後ろに腰掛けていたネギはパワーウィンドウを下げ、顔を出そうと――
「千雨さん!! ……え?」
――したが、併走した千雨はそのままネギのいた所を通り過ぎ、運転席のシオンに向けて叫んだ。
「シオン停まるな!! この車に爆弾が仕掛けられている!!」
……全員、思わず開いた口が塞がらなかった。
「このバイクに乗って帰れ!! 爆弾はこっちで処理する、詳しいことはスモーキーに聞け!!」
よく見ると、千雨が乗っているバイクは普段乗っているのをよく見る
「それ
「だから運転代わる為に乗ってきたんだよ!! スモーキーから『お前は逃げろ』ってさ!!」
「うまくいってくれればいいけどな……車もバイクも」
ネギと明日菜ではまともに運転できるかも怪しい。そもそも免許すら持っていないのだ。
適当な荷物を重し代わりにしてアクセルを固定、速度を落とさないようにしてからルーフに躍り出たシオンと入れ替わりに千雨が乗り込む。
「じゃあ後は任せた!!」
そして千雨の乗ってきたバイクに乗り込むや、シオンはそのまま減速、路肩に停車させていた。
「ねえ、千雨ちゃん。爆弾ってどういうこと!?」
「どっかの
ヘルメットを脱ぎ捨て、重しにしていた荷物をどけてから、千雨はことの子細を話し始めた。
「魅了系の
「そういえば、この車に乗ってから赤信号に捕まってませんでしたね……」
「運がいいのかと思えば……真逆じゃないのよっ!!」
しかし嘆いている暇はない。
千雨が人気のない場所まで車を運転している中、ネギは解析魔法を用いて爆弾を探し始めた。
「……ありました! 車体下部、外から取り付けられています!!」
「速度計以外のセンサーがないか探してくれ! なければそのまま
「そっか、それなら……あれ?」
他の車が近づいてこないか見回していた明日菜は、ふと今の千雨の発言に疑問を抱いた。
「……ねえ、車捨てて脱出した方が早くない? さっきみたいにアクセル固定させてから」
「それな……スペアプランに格下げになった」
若干頭を抱えるかのように前のめりになりながら、千雨は苛立たしげにハンドルを回した。速度をほとんど落とすことなく曲がりきると、そこは既に交通規制が掛かっていたのか、進行方向上に車体の影が一つも見えない。
「
「おまけにシオンが死んだらRUDEを敵に回すことになるから、復興どころかまた戦いになるってこと?」
「だからあいつだけ先に脱出させたんだよクソッタレ!!」
唯一の救いは、向こうが『家族』だけを助けてそれで良しとする考えを持ち合わせていなかったことだろう。魔法協会に混ざって、RUDEの面々が交通規制に協力しているのが見える。
けれども、それで爆弾がどうにかなるわけではない。
「速度センサー以外は大丈夫です!! これくらいなら
「ドリフトかますからそのタイミングで外せ!! 湖に捨てちまえば被害ゼロだ!!」
映画撮影の時に改造路面電車で駆け抜けた橋の上に入る前に、ネギはドアを開けて半身を乗り出した。
(ああ、戻ってきたんだ……)
そんな弟分を力いっぱい固定しながら、明日菜は内心で落胆しつつも、安心しきった眼差しを浮かべた。
(一歩間違うと命のやりとりをするくせに、騒がしくて馬鹿馬鹿しい……日常が)
「……え、こんなオチで終わるの?」
「だがそのものずばりだろ。命の危機を乗り越えようとしてる癖に、何故か馬鹿やってるのは」
「でもこういうやりとりも有りですよね……実際はないですけど」
「「……え?」」
ネギのその一言に、明日菜と千雨は一斉に彼の方を向いた。
「おい、ネギ先生……」
「ないって……どういうこと?」
「いや、だってあれ……」
ネギが指さした先には、パイプ椅子に腰掛けてシェイクをすする
「……どういうこと?」
「えっと、朝倉さんのカンペによると……」
和美が再び掲げたカンペに目を通すネギ。千雨も同じくカンペを見つめ、思わず読み上げた。
「……『銀魂ネタ使ってまたエタろうとしたら……シャーリーさんにバレたみたい』って、アホか」
「さっさと異動願い出さないから、もう……」
「そう言えば、会社で起業支援があったんじゃなかったでしたっけ? もう自分でなんとかした方が……」
「でも起業って結構面倒が多いから、最初はフリーランスでいいんじゃない?」
「いや、税金の問題もありますから、収入によっては事業主になった方が――」
「てか、さ……」
千雨は腰に手を当て、肺に溜まった息を吐き出しながら遠くを見つめだした。
「まだ続くのか……これ」
『続けるみたいだよ。そうじゃないと書き癖なくなって執筆自体止めちゃいそうだからって』
「カンペで答えてんじゃねえよ朝倉ぁ!!」
と言うわけで、打ち切りはなしになりました。それでは皆様、また来月に。
「つまり『打ち切る打ち切る』詐欺?」
「誰か本気でこのぐだぐだをなんとかしてくれよぉ!!」
「無理じゃないですかね……自称しがない物書きの内は」