尚、犯人は白の軽か普通乗用車で、形はワゴンに見える後ろが角ばった奴です。ナンバープレートはイエローで0と8の組み合わせのナンバー(咄嗟のことで確認が遅れました)です。詳しい場所はtweetしていますので、興味のある人は確認を。見かけられた方は近寄らず、警察に『轢き逃げ犯がいる』と通報するか、一切関わらない様に願います。卑怯者過ぎて、真っ当な社会人なら関わる価値が一切ない人物なので。
それでは、引き続き本作品をお楽しみください。
「数は!?」
「かなりの数です。おそらく東と西の両方かと……」
「くそっ! 最後の最後に……」
深夜遅く、スーツケースの中身はぶちまけられ、散らばる武器を次々と使えるようにしていく千雨とエヴァンジェリン。茶々丸は事前に聞いていた監視カメラの映像を収集し、ネギはフェイトと連絡を取るために受話器を握りしめていた。
「栞さん!! フェイト達は今そちらにいますか!?」
『すみませんネギさん!! 今フェイト様達は日本へ向かっているのですが、未だ時間が掛かります!!』
「分かりました……」
電話を切り、ネギは皆の方を向いた。
「援軍はしばらく期待できません。ここで籠城します。幸い、フェイトが向こうへ発つ前に他の住人を他所へ移していったので、被害を考えずに迎撃できます」
「不幸中の幸いは遠慮なしでいい、ってか? つくづく嫌気がさしてくるな」
そう言って千雨はネギのグロック17を手渡した。
「弾丸は全て高圧縮魔力弾頭だ。もう加減はできないと考えた方がいい」
「分かっています。千雨さん」
「マスター、こちらを」
茶々丸もエヴァンジェリンに、一丁の拳銃が納められた箱を手渡した。
「フェイト・アーウェルンクスより昨日届いたものです。以前より求められていた超高圧縮魔力弾頭専用銃です。威力はネギ先生の使う高圧縮魔力弾頭の数十倍で、並みの魔法使いならば防御の有無に関わらず吹き飛ばせる代物です」
「ああ、以前フェイトに頼んだやつですね。漸く届いたんですか?」
「ほう、私専用の銃か」
エヴァンジェリンは箱から銃を取り出し、頭上に掲げてみせた。
「超高圧縮魔力弾頭専用銃、通称“ジャッカル”。全長39cm、通常時重量500g、使用時重量16kg。使用時は安全装置を解除してください。その瞬間展開された重力軽減の魔法陣及び引き金のストッパーが解除されて銃に込められた魔力が銃身補強に回されます。そして使用時も、銃身補強のために魔力を常に補充しなければなりません。ちなみに装弾数は6発です」
「素晴らしい……まさに私のための銃だな」
嬉しそうに掲げるエヴァンジェリンを眺める面々。できればもう少し眺めていたかったが、そうも言っていられない。
「千雨さんもこちらをお持ち下さい。生憎と専用銃は間に合わなかったらしいですが、例の弾丸だけは届きました。持ち込んだ単発銃ならば使用は可能です」
「連射できないのがきついが、まあいい……ってこれドア・ノッカーじゃねえか!? 口径違うしんなもん使えるかー!!」
「間違えました。これは私の装備です。弾はありませんが」
んな役に立たないもん持ってくんなよ……とぼやくも千雨は茶々丸から別の中折れ式単発銃と弾丸を受け取る。けれども受け取った瞬間、瞳を真剣なものに変え、一発だけ銃に込めた。
「ま、何だかんだ言ってもやるだけはやるさ。……じゃないとここまで逃げ切った意味がない」
一緒に受け取った肩掛け式のホルスターを身に付け、そこに単発銃を押しこんだ千雨。上着を着込んだ彼女を合図に、各々武器を構えた。
「下は私と茶々丸、上はネギとエヴァでいいな。……生きて会おう」
ジャキキン!
各々が銃のスライドを引き弾丸を薬室に込める。後に彼らは、それぞれの戦場へと向かっていった。
マンションの正面玄関前。一面に配置される式神達で埋め尽くされた光景を前にして、正面のビルで天ヶ崎千草が呪術師達を指揮していた。
「ええか! 絶対に逃がすんやないで!! あの連中を始末できれば、東の無能さを露呈させて日和見の長を引きずり降ろせるんやからな!!」
「元気やなぁ、千草姉ちゃん」
小太郎が呆れた眼差しで見つめてくるも、千草は我関せずと自らの式神である熊鬼と猿鬼を召喚し、他の式神達の先頭に立たせた。
「絶対に仕留めるんや!! 特になんかキャラ被ってる長谷川千雨は絶対にうちの前に引き摺りだしぃ!!」
「うわ、私利私欲満々やん。んなこた知ら――」
ドォオン!!
轟音が辺りに響き渡り、同時に破裂した猿鬼の衝撃で近くにいた者は一人残らず地面に叩きつけられてしまった。
「千雨さんでないのは申し訳ありませんが、今宵は私がお相手いたします」
マンションから悠々と出てきた茶々丸の手には、常人では使えない規模の対物狙撃銃が握られていた。
「できれば撤退をお勧めします。何分高火力装備なため――」
ドォオン!!
「――加減が一切できませんので」
再び鳴る轟音に、今度は熊鬼の方が吹き飛ばされてしまう。
「まさか西の連中も動くとは……だが囮としては使えるな」
「ガンドルフィーニ先生、このまま上に行きましょう。油断しているところをズドン! です」
「先生にお姉様~それって悪役の台詞です~」
後ろからついて来る愛衣達に振り返って、高音はきつめに反論した。
「いいえ、愛衣!! いいこと、私達は正義であり、連中はその崇高な使命を放棄した落後者達。いわば悪です! 悪ならば何をやっても許され「なわけねぇだろ」――ヌヒョワッ!?」
裏門から投げられてきた魔法球が無数に分裂し、鉄の砲弾として辺り一面にばら撒かれたのだ。その勢いはすごく、辛うじて防御が間にあった高音や愛衣はともかく、ナツメグを庇ったガンドルフィーニはどてっ腹に受けたために悶絶して地面を転がってしまう。
「ガンドルフィーニ先生!?」
「ナツメグは先生を治療しなさい! 愛衣、行きますわよ!!」
「逝くんですかぁ~?」
裏門を潜り、マンションの中に入るも、待っていたのは逃亡者達ではなく、
「お姉様っ!?」
「下がりなさい、愛衣!!」
壁から壁に並べられたクレイモア地雷だった。一斉に起爆する地雷群に、高音は
「おのれ悪め、この高音・D・グットマンが正義の鉄槌を叩き込んでくれますわ!!」
「いや、悪党は完全に向こうだろ。しかも三下臭がぷんぷんするし」
千雨は手榴弾や魔法球をふんだんに使ってトラップを幾重も形成しつつ、階段で上に上がって行った。エレベーターは事前にワイヤーケーブルを切断しているために、どうあがいても向こうが使うことは許されない。それはこちらも同じだが。
「とはいえ裏手に回った人間が少ないな。ほとんどは表か上だろうけど……あいつら大丈夫かな?」
そうぼやきつつもあの面子では一番弱いと自覚している千雨は、冷静に後退しつつ対人地雷を仕掛けた。
「ヘリコプターが一杯ですね~エヴァさん」
「無粋な人間も多すぎるがな」
屋上にいるネギとエヴァンジェリンは頭上を仰ぎ、領空権を制している魔法使い達に目を向けていた。しかしヘリコプターに乗っているのは西の呪術師達らしく、そこから式神が次々と召喚されて宙に浮いている。ちなみに全員モブキャラである。
「さてネギよ。今宵は共に踊り明かそうではないか」
「朝までエスコートしますよ、エヴァさん。……いえ、Ms. McDowell, Shall we dance?」
「フッ。……Sure!」
二人は背中合わせになるや、それぞれ銃口を頭上に掲げ、同時に封印を解く。
『拘束制御術式第参号、第弐号――解放!!』
屋上に溢れだす魔力の奔流を合図に、無数の攻撃がネギ達に降り注いだ。
「ああ、マスターが楽しそう……」
式神の頭に左手のガトリング砲を突き付けて発砲し、無力化すると茶々丸はそう呟いた。常に他の場所の様子も窺えるために言えたようなものである。
「ほら、もっと式神出さんかい!! こうなったら総力戦や!!」
「千草姉ちゃん、俺帰ってええか~?」
向こうも式神による波状攻撃に切り替えたため、茶々丸としてはかえって戦いやすくて助かっていた。
(やはり、人はなるべく殺したくはありませんからね……)
今ので弾切れになったガトリング砲を捨て、バックパックからジャックハンマーを二丁引き抜き、両手に一丁ずつ構えた。
「まだまだ残弾に余裕があります。幾らでも攻めてくれて構いませんよ?」
「ようゆうたぁ!!」
千草の号令と共に既に第四波となる式神の群れが押し寄せてきた。
「この程度なら千雨さんとゲームした時の方がまだ遣り応えがありましたね……」
挑発的な一言が漏れるも、ジャックハンマーの連射音に掻き消されてしまう。
「クシュン! ……誰だよ噂しやがったのは?」
適当に階段から手榴弾を撒きつつ登ること十階。未だに諦める気配がないのか、
「待ちなさい、この悪党! 堂々とこの私と決闘なさい!!」
「お姉様ぁ~もう帰りましょうよぉ。危ないですよ~」
等と千雨達が悪党であっても乗らないだろう挑発を繰り返していた。
「まさかあいつらか? ……なわけねぇか」
手榴弾も底を尽き、千雨はイングラムM10を左手に構えた。しかし彼女の瞳は例の単発銃に向けられている。
「こいつであいつらに何処まで通用するか……本当に効くんだろうな、これ?」
半年前。ネット上で千雨はとある弾丸を作れないかとネギに相談していた。
『魔力素破壊弾頭、ですか?』
『そ、魔法そのものでもいいけど、それに干渉して破壊するような弾丸が欲しいんだよ』
計画を練っていた時、千雨には一つの懸念があった。それは普通の人間である自身の戦闘力のなさだった。幾ら今から身体を鍛えているとは言っても、他の生徒に隠れながらだとたかが知れている。ならばせめて対魔法使い用の武器を持っていないと足を引っ張りかねないのだ。そこでたまたま思いついたのが、魔力を破壊できる弾丸なのだが、海向こうの友人は難色を示しているのか、一向に返事を返してこない。
ないのならないでいいと打とうとしたら、その前にネギの返信が返って来る。その内容を読んで千雨は驚いた。
『
「マジかよ、おい……」
ちょっとした思い付きだったのだが、可能性があるのならばそれに賭けるしかない。幸いにもまだ時間があるのだ。その間に用意できるのならば……。
『頼む』
そう返事して、千雨はチャットウィンドウを閉じた。
「神楽坂がその力を持ってたのは良いんだが、ガセじゃねえだろうな? 幾らバカレッドでも、そんな力があるなら私と同じように、強制認識受けられずに苦しんでるだろ、普通」
ちなみにこの弾丸はエヴァンジェリンと協力して本人の血液を奪い、ウェールズに送られて力だけを抽出して作られたものである。
「これでガセだったら笑い話にもなんねえよ。ったく!」
咄嗟に階段から離れる千雨。同時に魔法の炎が階段中を埋め尽くした。
「あっぶねえな! くそっ!!」
階段から躍り出た高音に向けて左手のイングラムM10を連射し、反撃の隙を与えないまま右手でSIGP230を構えて発砲、扉の鍵を破壊して一室に転がりこんだ。
「そんなところへ逃げ込んでも、私からは逃れられなくてよ!!」
「……まあ、逃げる気もないがな」
そう呟いて千雨はSIGP230を腰に仕舞い、イングラムM10の弾倉を取り変えた。
そして軽く息を吐くと、右手で単発銃を引き抜いて構え、部屋の外に躍り出た。出て間もなく、千雨はイングラムM10の引き金を引いて弾丸をばら撒く。
「そんな豆鉄砲等、効きませんわ!!」
高音の挑発にもどこ吹く風で、千雨は単発銃の銃口を
ダァン!!
「
「
銃弾が、魔法が、あらゆる攻撃手段が屋上を覆い尽くし周囲の敵を薙ぎ払っていく。
エヴァンジェリン等遊んでいるのか、
「
魔法と同時に発砲したグロック17のスライドが下がり切ってぼやくネギを、エヴァは背中越しに声を掛ける。
「遊びすぎたな、ネギ! ……って私もか。全く、弾丸が少ないのは困りものだな。ヘリを撃ち落としただけで、ほとんど用なしになるとは。……まあいい、リク・ラク ラ・ラック ライラック!!
宴は終わらない。ネギとエヴァは銃を仕舞うとそれぞれ魔法攻撃に専念する。良くも悪くも全開でないのが作用して、魔力量にはまだまだ余裕があった。
この宴の閉幕は近い。帳を下ろすために者達が今、この舞台へと向かっている。
次回予告
とうとう役者が揃う次回。ネギが、エヴァが、千雨が茶々丸が、自らの気持ちを口にしつつも戦うことをやめない第07話。前書き、後書きを含めて全話を読み返しつつ、次回を待て!!
「悪い、神楽坂……」