「何故そうりゅうが作戦に参加出来ないのですか!?」
ブルーマーメイド商会作戦部長の部屋にましろの声が響く。
まみや丸襲ったシーサーペントを撃滅する為に急遽艦隊が結成される事が中央海のハンターギルドで決定された。
ホワイトドルフィン商会の艦艇にブルーマーメイド商会からは晴風と黒潮、そしてそうりゅうが参加する事になっていのだが。
その準備中に明乃とましろは呼び出され、作戦部長である宗谷 真雪にこう告げられたのだった。
「そうりゅうは今回の作戦に参加出来ない。」と。
突然の通達に明乃は困惑の表情を浮かべ、ましろは思わず真雪に詰め寄ってしまっていた。
「・・・ハンターギルドの決定です宗谷副長、ホワイトドルフィン商会からそうりゅうとの共同作戦は出来ないと言う通告があった為です。」
ホワイトドルフィン商会のシーサーペントの撃破がそうりゅうの攻撃の為失敗した、そんな者達との共同作戦は断らせてもらう、そうハンターギルドに通告して来たと真雪は説明する。
「あいつら・・・」
ましろはホワイトドルフィン商会の理不尽な言い様に怒りが溢れて来る。
「作戦部長、かんちゃん、更識艦長の対応は間違っていなかったと思います。」
明乃はそう言って真雪を見る、彼女も今回のホワイトドルフィン商会の言い分に怒りを覚えていた。
あの時簪が近接信管付きの魚雷でシーサーペントをまみや丸から引き離してくれなければ、救助できなかっただけでは無く、最悪沈没もあり得たのだから。
「・・・分かっています岬艦長、ですがギルドがそう決定した以上従わなければなりません。」
自分の説明に明乃とましろが不服な表情を浮かべるのを見て真雪は苦渋の思いが深くなって来るのだった。
真雪とて今回のホワイトドルフィン商会の抗議やギルドの決定に納得できない思いを抱ている。
様はギルドに所属する商会の中で大きな影響力を持つホワイトドルフィン商会にギルド幹部が忖度した結果のは明白だ。
とは言えブルーマーメイド商会もギルドに所属している以上その決定には逆らうのは、これからの商会の活動に影響が出てしまう。
だから真雪もその決定を受け入れざるを得なかったのだ。
ギルドの決定が通告された日、真雪はそれを簪に直接説明する為そうりゅうを訪れた、彼女を中央海に呼んだのは自分だ、だとすれば人を介して伝えるのではなく自分が出向いてやるべきだと判断したからだ。
「分かりました宗谷作戦部長、そうりゅうは待機しています。」
真雪からの通達を聞いた簪は穏やかに微笑みながら答えた、そう理由の説明を求めたり抗議する事も無く。
簪が自分と商会の立場を案じて何も言わなかった事が真雪はよくわかった。
「宗谷作戦部長、皆に伝言をお願いします。」
簪の伝言を受け取りそうりゅうを降りた真雪は自嘲気味に呟く。
「教え子の立場を悪くしたうえに、その相手から気を使われる・・・これじゃ恩師なんて恥ずかしくて言えませんね。」
真雪はそんな事を思い出しながら、気を取り直し明乃とましろに簪からの伝言を伝える。
「二人に更識艦長からの伝言を伝えます、『私の事に構わず、自分の責務を果たして下さい。』との事です、岬艦長、宗谷副長。」
明乃とましろは簪からの伝言にはっとした表情を浮かべると互いに顔を見合わせ頷きあう。
「かんちゃん・・・」
「・・・らしいですね。」
自分の責務、シーサーペントの駆逐を一時的な感情で忘れないで欲しい、簪らしいその言葉に明乃とましろは冷静になる事が出来た。
海洋学校時代もそうだった、自分達の心情を察し、適切な助言を簪はしてくれたものだったと明乃とましろは思い出す。
多分このままだったら二人は任務を怒りのあまり放棄してしまっていたかもしれない、そうなれば明乃とましろはもちろんブルーマーメイド商会の立場も悪くしていただろうし二人は後に深い後悔をしただろう。
それに気付いた明乃とましろは再び頷きあうと姿勢を正し真雪に向き合い頭を下げる。
「作戦部長申し訳ありませんでした、自分達は責務を果たします。」
「出来過ぎた真似をいたしました、皆に更識艦長の言葉を伝えたいと思います、きっと皆分かってくれます。」
明乃とましろの言葉に真雪は微笑んで頷く。
「ええ二人ともよろしくお願いいたしますね。」
冷静になってくれた明乃とましろ、適切な助言をしてくれた簪、私は何て素晴らしい教え子たちを持てたのだろう、そんな感激に真雪は包まれていた。
数時間後、晴風と黒潮はホワイトドルフィン商会の艦と共に作戦海域に向かっていたのだが・・・
はっきり言って晴風の艦橋の雰囲気は最悪と言えるだろう、誰も押し黙り何時もの明るい会話も無かった。
「あいつら・・・後ろから魚雷を打ち込んでやろうか。」
前方を進むホワイトドルフィン商会の艦を見ながら物騒な事を芽依が呟くが、誰も艦長の明乃どころか何時もならそう言った事を真っ先に諫めるましろさえ何も言わない事が今の彼女達の心情を表している。
いやそれは艦橋要員達だけでは無かった、晴風の乗員皆がそんな心情だったのだ。
それは晴風に戻った明乃にホワイトドルフィン商会の抗議でそうりゅうが作戦に参加出来ないと知らされた乗員達が皆怒った事で分かるだろう。
「更識が何をしたんだと言いやがるんでぃ!こうなったらあいつらに一言いってやる!」
お陰で機関長の柳原 麻侖(マロンちゃん)が殴り込み(?)にホワイトドルフィン商会の艦に行きそうになり、黒木 洋美(クロちゃん)や機関員達に取り押さえられる事態まで起こる始末だった。
一応簪の伝言を明乃から伝えられ落ち着いたのだが、心情は先の芽依同様で、誰しも納得出来ている訳では無いのだった。
そんな重苦しい雰囲気の中事態が動き始める。
『こちら電測室!前方6千にシーサーペントらしき反応有り。』
艦橋内のスピーカーが慧の報告を伝えて来る。
明乃が頷くのを見てましろは艦内電話に取り付き詳しい情報を訪ねる。
「艦長、方位右70、数は1匹の様です!」
慧からの情報をましろが伝えると明乃は再び頷き指示を出す。
「総員戦闘配置に付いて!主砲及び魚雷発射準備!」
「出やがったな!今度こそ決着を付けてやる!あいつらに負けてたまるか。」
「うぃ、それは当然。」
明乃の指示に砲術長の志摩と水雷長の芽依が闘争心剥き出しに(志摩はそう見えないが)声を上げる。
「リンちゃん進路右70、両舷全速!」
「了解、進路右70、両舷全速!」
続いて鈴が指示を受け取ると何時もよりも大きい声で復唱する、大事な仲間である簪に対する仕打ちに、彼女もまた怒っているのだ。
「黒潮にも続く様に伝えて!」
「了解です艦長。」
明乃の指示にましろは艦内電話を通信室に切り替え鶫に連絡を頼む。
『ホワイトドルフィン商会の2艦先行します。』
前方見張りのマチコの報告が入る、ましろは眉をしかめるが何も言わなかった。
晴風と黒潮は先行するホワイトドルフィン商会に続きながらシーサーペントへ向かう。
『シーサーペントを確認・・・?目標が進路を変更、後退して行きます。』
やがて接近したところでマチコがシーサーペントを発見したのだが・・・
「後退?」
ましろが信じられないと言った面持ちで言う、何故ならシーサーペントは自分が深く傷つかない限り下がる姿を見せた事が無かったからだ。
「艦長追撃を・・・」
「待ってシロちゃん、かんちゃんの言葉を思い出して。」
取り敢えず追撃を進言しようとしたましろの言葉を明乃が遮る。
「だからシロちゃんは・・・あっ!?」
明乃の言葉に苦言を返そうとして、ましろは艦長の言いたい事を理解する。
『シーサーペントは狩りについてはとても狡猾です、もし連中が普段と違う行動を取ったら注意して下さい。』
簪が演習前にましろ達にそう言っていた事を思い出す。
「それじゃ艦長、これはもしかして?」
ましろの言葉に明乃は頷くと指示を出す。
「晴風は一定の距離を保ちつつ追跡します、黒潮にも伝えて。」
我先にと追撃して行くホワイトドルフィン商会とシーサーペントを晴風と黒潮は距離を保ちつつ追う。
『シーサーペントの進路及び速力変わらず・・・前方に双子島を確認。』
マチコが報告して来る、ちなみに双子島と言うのは形状が似た島で、艦船がせいぜい2隻通れるかと言う間隔で並んでいる。
明乃とましろは双眼鏡でシーサーペントとホワイトドルフィン商会がその双子島の間の水域に入って行くのを確認する。
そして両者がその水域に入った瞬間・・・
『!?シーサーペントがホワイトドルフィン商会の2艦の間に浮上して来る。』
狭い水域に入ったホワイトドルフィン商会艦の間に突如シーサーペントが浮上して来たのだ。
僚艦が至近距離な為ホワイトドルフィン商会艦は攻撃が出来ずパニック状態に陥る。
「どこから現れたんだ?」
ましろがその状況を見て叫ぶ、その水域にシーサーペントが居たなら水測の楓から連絡がある筈だからだ。
「多分海底に潜んでいたんだよ、言っていたじゃないかんちゃんが、やつらは短時間なら水中に潜んで居られるって。」
冷静に明乃が答える、北方海でも流氷の下に隠れ艦船を襲った事が有る、簪がそう言っていたのを思い出しながら。
『右舷ホワイトドルフィン商会艦が損傷、速力低下、左舷の艦も攻撃を受けてる!』
両艦の間に現れたシーサーペントによりホワイトドルフィン商会艦は為す術も無く損傷を受けて行く。
「艦首艦載砲に煙幕弾装填、射撃準備急いで!」
明乃が指示をする、憎い相手だが見殺しには出来ない。
「・・・うぃ・・・煙幕弾射撃準備。」
砲術長の志摩も複雑な心境だったが明乃の指示を復唱する。
晴風の艦首砲塔が旋回、砲身が仰角を取る。
「射撃準備良し・・・」
「打ち方始め!」
明乃の指示により晴風の艦首砲塔が煙幕弾を発射、ホワイトドルフィン商会艦の間のシーサーペント付近に着弾し煙幕が展開する。
「ホワイトドルフィン商会に離脱する様伝えて、魚雷発射準備、黒潮にも準備を行う様に連絡。」
「魚雷発射準備に入る、急いで!」
「通信室、黒潮に魚雷発射準備を行う様に伝えてくれ。」
ましろと水雷長の芽依が明乃の指示を復唱し行動に移す。
『ホワイトドルフィン商会艦離脱して行きます、シーサーペント目標を見失った模様、誘導していた奴が戻って来ます。』
煙幕によりホワイトドルフィン商会艦をシーサーペントは見失う、一方誘導していた方は進路を戻し向かって来ようとしていた。
「面舵、左舷魚雷戦に入る、黒潮にも続く様に連絡を。」
進路を右に切り晴風は魚雷発射管を左舷側に向け、黒潮もそれに続く。
「メイちゃん、2匹の進路が重なった瞬間に命中する様にお願い、シロちゃん黒潮にタイミングを合わせる様伝えて!」
「OK!第一魚雷発射管室発射準備。」
「だからシロちゃんは・・・八木さん、黒潮にタイミングを合わせて魚雷発射を行う様に伝えてくれ。」
嬉々として発射タイミングを計算する芽依、ましろはつい何時もの小言を言いそうになるのを抑え通信室の鶫に指示を伝える。
「目標2・・・重なるぞ発射!」
『了解です、発射します!』
芽依の指示に一番魚雷発射管担当の松永 理都子(りっちゃん)が復唱、晴風が魚雷を発射、黒潮も続く。
明乃とましろは左舷側の窓に駆け寄り双眼鏡で状況を確認しようとする。
煙幕を抜け2匹が出て来た所に晴風と黒潮の魚雷が命中、爆発音と水柱が立つ。
「状況を確認!」
双眼鏡を降ろして振り向くと明乃が叫ぶ。
『シーサーペントの反応消失を確認。』
電測員の慧が報告して来る。
「やったぜタマ!」
「うぃ。」
志摩と芽依がハイタッチして喜び合う。
「やりましたね。」
「はい、大成功です。」
幸子と鈴も顔を見合わせて微笑みながら喜ぶ。
「・・・それにしても更識艦長はこの事を予測していたんでしょうか?」
双眼鏡でどす黒い体液に覆われる海面を見ながらましろが呟く。
「多分ね・・・かんちゃんならそのくらいやりそうだよ。」
ましろの呟きに苦笑しながら明乃が答える、そう北方海の守護天使ならと・・・まあ簪が聞いたら困った表情を浮かべるだろうが。
「ホワイトドルフィン商会艦に救援が必要か確認を・・・」
「分かりました、まあそうだとしても素直に救援を依頼してくるか疑問ですが。」
明乃が指示すると双眼鏡を降ろしたましろは肩を竦めながら艦内電話を取り上げて言う。
実際その通りで、『手助けなど要らない、自力で帰る。』と返答が来て艦橋要員達は皆呆れた顔をしたのだった。
双子島を後にして港に帰って来た晴風と黒潮が接岸し、ほっとした表情で降りて来た明乃達をある人物が待っていた。
「皆さんお帰りなさい・・・そして任務達成ご苦労様でした。」
それは簪だった、その姿に明乃達は最初は驚いたが直ぐにそれを歓喜に変え彼女を取り囲む。
「かんちゃん!うん任務は大成功だよありがとう。」
「これも更識艦長のお陰だ、感謝する。」
「流石は簪だぜ、なあタマ?」
「うぃ、その通り。」
「守護天使の力、ますます感服です簪さん!」
「簪さん、やっぱり凄いです!」
明乃達の称賛に簪は皆が想像していた通り困った表情で答える。
「いえ、それは皆さんの実力です、私は助言しただけですから。」
その答えに明乃達は顔を見合わせて笑う、簪らしいと思って。
そんな明乃達と簪を他の晴風乗員と黒潮乗員達が更に取り囲み、桟橋の上は少女達の歓声で満たされる。
だがそんな微笑ましい状況に水を差す輩が現れる。
「ふざけやがって!みんなお前たちの所為だぞ!」
ホワイトドルフィン商会の連中だった、晴風と黒潮の乗員達は皆一斉に呆れた表情を浮かべる。
どう考えても油断していた彼らの責任の筈なのだが、彼らはそれを棚に上げて明乃達に文句を付けて来たからだ。
「私は貴方達にも警告した筈です、シーサーペントを侮ってはいけないと。」
簪は聞いてくれるか分からなかったが、真雪を通じてホワイトドルフィン商会に伝えていたのだった、まあ連中は歯牙にもかけなかった様だが。
「それが無かったとしても晴風と黒潮は慎重に行動したでしょう、だが貴方達は油断した、その差が今回の結果じゃないですか?」
ホワイトドルフィン商会の前に出て簪は冷静に指摘するが、怒り心頭の連中に通じる筈も無く、余計に怒りを強めただけだった。
「うるさい!今度こそ分からせてやる・・・」
「馬鹿野郎!分からさせられるのはお前達の方だろうが。」
簪に掴みかかろうとしたホワイトドルフィン商会の男の前に、そう怒鳴り付けながら黒い影が入り込んで来た。
「うげぇ!」
掴みかかろうとした男はその影に吹き飛ばされ奇妙な声を上げて、桟橋に有ったコンテナに叩きつけられる。
「さ、作戦部長!?」
残ったホワイトドルフィン商会の者達はそう言って固まる。
「作戦部長?」
突然の出来事に固まった簪は目の前に立つ影、自分の倍はある体格の男を見上げて呟く。
「お初にお目にかかる更識艦長、ホワイトドルフィン商会作戦部長ジャミル・ニートだ。」
振り向いてそう名乗る彼に簪は思わず絶句する、ジャミル・ニートが機動新世紀ガンダムXの登場人物だと気づいて。
特徴的なもみ上げだが、サングラスを外し片方の目に走る傷跡を見せているから、物語における最終決戦時の姿の様だった。
最早何でも有りだなと簪は内心深いため息を付くしかなかった、今更ながら自分がこの世界に引き込まれた人間だと自覚させられていた。
「今日はうちの馬鹿共が迷惑を掛けて申し訳なかった。」
ジャミルはそう言って彼の出現に固まっている簪に頭を下げる。
「で、でも作戦部長、俺たちは・・・」
そんな作戦部長の姿にホワイトドルフィン商会の者達が言い訳しようとするが、振り向いた彼の眼光に黙らされる。
「黙れこのホワイトドルフィン商会の面汚しどもが・・・さっき更識艦長が言った通りだろうが、お前達は一体何をしてやがる。」
「「「・・・・・・」」」
ジャミルに言われ男達は何も言えず黙るしかなかった。
「しかも勝手にギルドに抗議してそうりゅうの作戦参加を邪魔したな・・・お前達のしでかした事を何処かにやってな。」
どうやらホワイトドルフィン商会の抗議は彼らが勝手にやった事なのだと簪達は気付き皆顔を見合わせる。
「お前達に海に出る資格は無い、全員再教育だ・・・ちなみに商会長もご承知だ、覚悟するんだな、さあそこで伸びている奴を連れてうせろ。」
言われた者達はしょげかえるとコンテナに叩きつけられて気を失っている男を連れトボトボ帰って行った。
「さて更識艦長、岬艦長、改めて謝罪する、まあ正式なものは後でうちの商会長から届くとは思うが。」
もう一度簪達に向かうと頭を下げてジャミルは再び謝罪して来る。
「いえ、そう言って頂けるのならこれ以上は言う積もりはありません、そうですね岬艦長?」
「はい、事情は理解しましたからニート作戦部長。」
今回の件が彼らの独断専行だと簪と明乃は理解出来たのでそう答える。
「そうか感謝する・・・それでは失礼する。」
ジャミルはそう言うと帰ろうとしたが何かに気付いたのか簪に再び向き合う。
「更識艦長、北方海に戻ったら織斑ギルド長に伝えてくれ、死にぞこないのジャミルが会いたがっていたとな。」
そう言ってジャミルはニヤリと笑う。
「織斑ギルド長とお知り合いだったのですか?」
驚いた簪が聞き返す。
「ああ、昔色々とな、まあ頼む・・・北方海の守護天使殿。」
最後に茶目っ気たっぷりに言って今度こそジャミル帰って行ったのだった。
なお、後日簪がその言葉を織斑ギルド長に伝えたところ、『まだそんな事を言っているのかあの男は。」と言って呆れていたが。
兎も角演習参加中に始まった一連の騒動は終結し、以後の予定は全て順調に進んだのだった。
そして簪は中央海での予定を全て終え北方海へ帰る事になった。
当然、お別れ会が今度は黒潮の乗員達も参加して盛大に開かれたのは言うまでも無かった。
3日後・接続海域。
そうりゅうが晴風と共に航行していた。
一応は護衛だが、実際は見送りだった、これはもちろん真雪の好意だった。
「そうりゅうより通信、『見送りを感謝します、岬艦長と晴風乗員の皆さん、またお会いしましょう。』との事です艦長。」
通信室から届いた連絡をましろが艦橋に居る者達に伝える、心なしか声を震えさせながら。
「・・・そうりゅうへ返信、『かんちゃんとそうりゅう乗員の皆の幸運を祈ります、絶対再会しましょう。』。」
「了解です艦長。」
自分と同じく別れの寂しさを感じながらもそう言う明乃に、艦長らしいなと思いながらましろは通信室へその言葉を伝える。
『そうりゅう潜行して行きます。』
マチコの報告通りそうりゅうは潜行してその姿を海中に消して行く。
明乃を始めとした艦橋要員達はその姿が完全に消えるまで目を離そうとはしなかった。
「ぐすぅ・・・簪さん・・・」
「ちくしょう・・・寂しくなんか無いからな。」
「・・・うぃ・・・」
「避けられない別れ・・・ああ簪さん・・・切ないです・・・」
皆目に涙を溜めながらそう呟く声が艦橋内に流れる。
「皆、悲しむ事は無いよ、海は、ここと北方海は繋がっているんだよ、諦めない限りまたきっと会えるんだから。」
努めて明るい表情と声を出し明乃は皆を鼓舞しようする。
「そうですねきっと・・・希望を忘れなければまた会えますね。」
ましろもそう言って努めて明るく皆に言う。
「うんそうですねまた会えますよね。」
「おうそうだなタマ!」
「うぃ。」
「感動の再開・・・ああその時こそ・・・」
明乃とましろの言葉に皆生気を取り戻した様に声を上げる。
「だからかんちゃんやそうりゅうの皆に負けない様頑張らなくちゃね、そうじゃないと笑われちゃう。」
皆の言葉を聞きながら、そうりゅうの消えていった海を見つめ明乃は自分に言い聞かせる様に呟く。
きっと簪も私達同様そう考えてくれていると信じて・・・
中央海での全ての任務終了。
何だか簪より明乃達が活躍する話になってしまいました。
それでは