簪が中央海で任務をこなしていた頃。
守護天使の妹こと愛里寿もまた北方海でとある任務に当たっていた。
X島沖合い、アークロイヤル艦上。
「艦長、X島にはあと一時間程で到着予定です。」
航海担当が艦長席に座る愛里寿に報告する。
「了解です・・・各部へ伝達、到着まで引き続き警戒を怠らない様にお願いしますと。」
「分かりました、各部へ到着まで警戒態勢を維持せよ、繰り返す・・・」
愛里寿の指示を乗員が復唱し各部へ伝達する。
「しかしシーサーペントの対処を我々だけでやるとは思いませんでしたね。」
副隊長兼参謀の1人ルミが愛里寿の傍らに立ちながら呟く。
「確かに前例の無い話ではありますね。」
同じ副隊長兼参謀のメグミも腕を組みながらルミの意見に同調して言う。
「戦車隊だけでシーサーペントを駆除ですからね。」
メグミとルミ同様副隊長兼参謀を勤めるアズミもまたそう言って溜息を付く。
3人の話から今回受けた任務が特殊な事が窺い知れるだろう。
「例え困難ものであっても正式な要請であれば遂行するだけです。」
愛里寿の言葉にルミ、メグミ、アズミの3人は顔を見合わせる。
「了解です隊長。」
アズミの言葉に愛里寿は薄く笑みを浮べて頷く。
「X島ですか?」
名無し猫に呼び出された愛里寿は艦隊参謀の山田 真耶からある要請を受ける。
「はい、X島の近辺に現れるシーサーペントへの対処を島田商会単独でお願いしたいのです。」
シーサーペントへの対処なら別に珍しい事ではないが、戦車隊単独というのはあまりなかった・・・
この様な場合駆除は海上と地上の合同作戦になるからだ。
「それは・・・かなり異例ですね。」
同行していたアズミが真耶に言う様に。
「そう言う事になります、ところで島田隊長はX島についてご存知ですか?」
「・・・N諸島と北方海最奥の中間点にある、人口300人の島ですね。」
愛里寿は淡々と答える。
「はいその通りです島田隊長。」
真耶はそう言って愛里寿とアズミの顔を見ながら説明を続ける。
「今艦隊で対処出来るのはアークロイヤルだけなのです、駆逐艦の方は哨戒や護衛で手が離せませんし、そうりゅうは・・・」
「・・・・」
真耶の言葉に愛里寿に俯く、そうりょうは今北方海に居なかった。
中央海のギルドとの対シーサーペント戦術情報の共有と演習参加の為、一時的に艦隊を離れているのだ。
お陰で愛里寿は時々深い寂しさに襲われていた、もちろんその任務が必用なものだと認識はしている。
幼いながらも愛里寿は指揮官だからだ、しかしそれと感情は別物だ。
「隊長・・・」
そんな愛里寿をアズミはやり切れない思いで見つめる。
常に身近に居るアズミ達は愛里寿が、出発前に簪と交換したボコ人形を抱いて時々泣きながら寝ている事を知っているからだ。
愛里寿の心の支えになれないとアズミ達は心を痛めている。
ただ言っておくと愛里寿はアズミ達を信頼し様々な面で支えてもらっていると思っており、単なる上司と部下と言う関係とは思っていない、まあ今の彼女の心の大半をボコと簪が占めているのは事実だが。
「あっすいませんでした。」
俯いてしまった愛里寿を見て真耶は慌ててしまう、彼女が簪を姉の様に慕っているのは艦隊内では知らぬ者は居ない、だから自分の言葉で余計な事を思い出させてしまったと思ったのだ。
「いえ・・・こちらこそ気を使わせてしまって申し訳ありません、続けて下さい山田副長。」
真耶の謝罪の言葉に愛里寿は気を取り直し表情を引き締めて顔を上げる。
今は大事な任務の話中なのだ、こんな事では自分を信頼して付いてきてくれるアズミ達に顔向けが出来ないと愛里寿は考える、自分は彼女達の隊長なのだからと。
それにこんな事で醜態を晒せば、何より簪を失望させてしまうかもしれない、そうなれば彼女は二度と自分を見てくれなってしまうかもしれないと愛里寿は恐れている。
まあ簪はそんな事位で自分を見放しはしない人間だと短い付き合いだが確信はしている、だが愛里寿にしてみれば不安な事は確かなのだ。
「・・・はいお願いします島田隊長。」
そんな健気な愛里寿に真耶は微笑ましい気持ちを抱きつつ言うのだった。
愛里寿がそんな事を思い出しているとアークロイヤルの前方にX島の港が見えて来る。
「入港します、準備を。」
愛里寿の指示で艦橋の乗員達が動き始める、もちろんその中心はルミ、メグミ、アズミの3人だ。
「X島管理事務所へ入港許可を。」
ルミが艦内電話で通信室へ指示をする。
「接舷準備、要員は配置に着いて。」
メグミが艦内放送を入れ乗員達に伝える。
「機関反転、バウスラスター作動準備。」
アズミが艦橋の乗員達を指揮する。
3姉妹と言われるだけあってその連係は素晴らしいものがあり、愛里寿は細かい指示を出さずに済んでいる。
巧みな3姉妹の指揮でアークロイヤルはX島に接岸した。
「艦長、今桟橋に島の評議会の人間が訪ねて来ているそうです。」
接岸が終ったアークロイヤルの艦橋にそんな連絡が入る。
「どうされますか隊長。」
聞いて来るルミの言葉に暫し考えていた愛里寿は3人を見渡して言う。
「会いましょう・・・島の状況を確認する必要があります。」
愛里寿の指示に3人は頷く。
アークロイヤルから桟橋に降りると、二人の男性が待っていた。
共に疲れた表情を浮かべた初老の男性と中年の男性だった。
愛里寿はアズミとメグミ、ルミを引き連れて二人の元に行く。
「ようこそX島へ、評議会議長を務めております安西と申します、こちらは事務長の酒井です。」
初老の男性が自分と隣に居る者の紹介をしてくる。
「お出迎え感謝します、アークロイヤル艦長兼戦車隊長の島田 愛里寿です、あとこちらは副官兼参謀の・・・」
「アズミです、よろしく。」
「メグミです、初めまして。」
「ルミと言います、お世話になります。」
挨拶が終わった所で愛里寿は議長に問い掛ける。
「早速ですが状況をお聞かせ願いますか。」
とても13歳に見えないしっかりとした態度と喋り方に、2人は顔を見合わせる。
「・・・ええもちろんです島田隊長。」
議長は落ち着かない表情で答える。
「シーサーペントが最初に目撃されたのは一瞬間前、操業中の漁船団からでした。」
事務長の男はそう言って愛里寿を見る。
「その時はまだ島に接近する様子は無く我々は警戒を続けながら静観していたのですが。」
次第に島に接近する様になり、危機感を抱いた評議会はハンターギルドに対処を依頼する事を決定した。
「現在漁船は操業を中止、物資の搬入も止まり、島民の不安は高まっています。」
「分かりました・・・それでは我々はこれから対処に入ります。」
そう愛里寿答えると議長と事務長は救われた表情を浮かべると頭を深く下げて言う。
「お願いします。」
愛里寿は頷くとアズミ達と共にアークロイヤルへ戻って行った。
「兎も角、島に接近する前に捕捉撃滅する必要があります、もし仮に港にでも侵入されたら・・・」
アークロイヤルに戻った愛里寿達が善後策を話し合おうとしていた時だった。
「隊長!名無し猫から緊急信、『Ⅹ島に向かいつつあるシーサーペントの報告有り、警戒されたし。』と。」
状況は愛里寿達の予想を超えて最悪の段階に突入しつつあった、Ⅹ島に最大の危機が迫りつつあった。
「直ちにⅩ島西側の海岸に向かって下さい、アークロイヤルはそこに接岸します。」
「了解です隊長。」
名無し猫からの緊急信を受け、愛里寿はアズミ達に指示を出す。
「戦車隊及び支援隊の準備を急いで下さい、到着後出撃します。」
「はい隊長、戦車隊及び支援隊の準備を急ぎます。」
隊員が命令を復唱する。
「アークロイヤルの進路をⅩ島西海岸へ、前進全速。」
「進路をⅩ島西海岸へ、前進全速。」
艦橋の乗員も復唱し、動き始める。
アークロイヤルは進路をⅩ島西海岸へ取り、速力を上げて行く。
やがてアークロイヤルは予定の海岸線に急速に接近、接岸準備に入る。
「接岸後、ルミは偵察・連絡隊を率いて先行、メグミとアズミは支援隊の方をお願い。」
艦橋で愛里はアズミ達に指示を出す。
「私はセンチュリオン隊を指揮して向かいます。」
「「「はい隊長。」」」
アークロイヤルはが接岸を終えると、艦首突端の扉を左右に開き、ウインチを用いて道板繰り出していき、デリック・アームによって固定させる。
既にルミは待機していた高機動車に、アズミとメグミも待機中のハーフトラックに乗り込みを終えていた。
「隊長より出発との指示です。」
乗り込んだアズミにハーフトラックの通信員が報告して来る。
「OK!ルミ行って!」
『了解!偵察・連絡隊発進。』
道板を2両の高機動車が降り海岸を走り始める。
『戦車隊、全車発進。』
無線に愛里寿の声が流れると、高機動車に続き、4両のセンチュリオンが海岸に降りて来る。
「支援隊出発!隊長達に遅れないで。」
続いてアズミが率いる支援隊が降りて来るのだが。
その編成は何時もとは違っていた、普通支援隊の構成は弾薬運搬車と戦車回収車なのだが、今回それとは別の車両が入っていた。
ベースは弾薬運搬用のハーフトラックだが、荷台に弾薬コンテナの代わりに、鉄製の太いパイプを数段束ねた物を搭載していた。
これは多連装ロケット弾ランチャーと呼ばれる小型のロケット弾を大量に発射する新兵器だった。
特殊ロケット弾には劣るが数で威力を増している、もちろん篠ノ之 束によって開発されたのだ。
元々はそうりゅうに搭載している特殊ロケット弾を小型化した物で、開発者は言わずと知れた篠ノ之 束だ。
そうりゅうの噴進弾は威力は文句無しだが、大型で取り扱いが面倒だった。
その為そうりゅう以外で使えない、それを改良して艦艇から車両まで扱える様に小型化したのが、この多連装噴進弾だった。
『一発の威力は小さいけど、多量に打ち込むから、そうりゅうの噴進弾に劣らないよ!』
束はどや顔でそう言って続けた、『やっぱ火力よ火力!女のロマンだよね。』と。
まあ前半はともかく、後半のセリフは皆にスルーされてしまったが(笑)。
兎も角、この新兵器は何度か実戦に使われ、大きな効果を実証しており、サトラガを始めとした派遣艦隊の駆逐艦に搭載されている。
アークロイヤルにはまだ未装備だったが、支援隊にハーフトラック搭載型が配備されていた。
この新兵器は艦隊での運用で問題が無ければ、北方海にある全武装船や陸上部隊(戦車隊)に配備させる事が既に決定していた。
Ⅹ島全島には既にアークロイヤルから派遣艦隊を通して避難要請が伝わっており、人々は避難を開始していた。
「急げ!ほら・・・どうした婆さん?何、腰が痛くて動けない?俺が背負うから早く。」
「そこ!ちんたら歩くな、今は非常時だぞ、お喋りは避難場所でやれ!」
「何だその荷物は?漫画本だ、ゲームだ?お前命とどっちが大事なんだ、そんな物置いて・・・分かった分かった手伝ってやる。」
島の自警団員達が大声をだして人々の避難を誘導していた。
「道を開けろ!緊急車両が通るぞ!!」
避難誘導していた自警団員が前方から来る車両に気づくと大声で叫び、歩く人々を道の左右の端にどかせる。
その開けられた道を、2両の高機動車を先頭に、4両のセンチュリオン、多連装噴進弾を積んだハーフトラックを含んだ支援車両が通り過ぎていく。
アークロイヤルから出発して来た愛里寿率いる部隊だった。
「頼むぞ!港を船を守ってくれ。」
人々は通り過ぎていく車両群に手を振ったり、声を掛けて来る、それに対し隊員達もハッチや窓を開けて手を振り返す。
部隊は避難する人々の声援を受けつつ港へ急ぐのだった。
センチュリオン1号車の中で愛里寿は、外部モニターに重ねて映し出されている地図を見ていた。
「・・・偵察隊及び支援隊へ、次の交差点を左折、3キロ先にある丘に展開、支援準備に入る様に伝えて下さい。」
地図を確認すると愛里寿はそう指示を出す。
「了解です隊長、偵察隊及び支援隊へ、次の交差点を左折、3キロ先にある丘にて支援準備に入られたし。」
『こちら支援隊了解・・・隊長ご武運を。』
『偵察隊了解、隊長ご無事で。』
偵察隊と支援隊はそう返答し、直進するセンチュリオンと別れ、交差点を左折して行く。
「全車へ伝えて下さい、我々は港の桟橋に展開、支援隊の準備が完了するまで時間を稼ぎます。」
「こちらセンチュリオン1号、全車は桟橋にて展開、支援隊の準備時間を稼いで下さい。」
通信士が愛里寿の指示を各車に伝える。
「隊長港に出ます!」
前方を見ていた操縦士が叫ぶ。
「全車展開!戦闘準備。」
港に入って来たセンチュリオンは桟橋上に素早く展開し停止する。
既にシーサーペントは港の中に侵入しており、目を真っ赤に光らせて絶叫していた。
愛里寿はセンチュリオンが停止すると、ハッチを開け砲塔上に半身を乗り出す。
「全車射撃開始。」
「了解です隊長、全車射撃開始して下さい。」
展開した4両のセンチュリオンは砲塔を旋回させ砲をシーサーペントに向ける。
「距離1千、弾種榴弾、照準よし・・・発射!」
センチュリオン1号の砲撃手が叫ぶと、砲弾が発射され、初弾からシーサーペントに炸裂する。
続いて残りのセンチュリオンも射撃を開始、港の中は戦車砲の発射音と着弾音、シーサーペントの絶叫で満たされる。
「次弾装填よし。」
「了解、照準修正良し、発射!」
装填手の声に砲手が答え、射撃を続けるがシーサーペントは怯むことも無く桟橋へ向かって来る。
「隊長!?」
砲手が照準器から目を離し狼狽した声を上げて来る。
「落ち着いて射撃を続けて下さい・・・ここで怯んでは居られません。」
愛里寿は落ち着いた声と表情で砲撃手に語り掛ける。
「・・・はい隊長。」
砲手はそれで落ち着くと再び照準器に目を戻し射撃を続ける、他の乗員達もそれぞれの役目を果たして行く。
ここは幼い容姿ながら隊長としての威厳を持つ愛里寿ならではと言えるだろう。
「支援隊へ状況を報告する様に伝えて下さい。」
「了解です、支援隊へ支援準備の状況を報告願います。」
「準備急いで!隊長を何時までも待たせる訳にはいかないわ。」
丘に展開し支援隊はアズミの指示の元、多連装ロケット弾ランチャーの発射準備を急いでいた。
「ハーフトラックの固定よし。」
「測距儀、測定開始・・・距離9千、方位010。」
「ロケット弾のチェック良し。」
展開した2両のハーフトラックは載せているランチャーの仰角を上げ始める。
「副隊長、隊長より支援準備の状況確認が来ています。」
通信機に付いていた隊員が報告して来る。
「メグミそっちは?」
「OKよ、何時でも行けるわ。」
メグミの答えにアズミは頷くと先ほどの隊員に指示する。
「発射準備よし・・・隊長の指示を待ちますと伝えて。」
「了解です。」
「隊長、支援隊より連絡、発射準備完了、指示を願うとの事です。」
センチュリオン1号の無線手が支援隊からの報告を告げる。
「3分後に射撃開始を、あと全車に五百メール後退する様に指示を。」
愛里寿は即座にそう指示を出す。
「了解です、支援隊へ3分後に射撃開始、全車へ直ちに五百メール後退せよ。」
無線手が無線で支援隊と戦車隊に愛里寿の指示を伝達する。
「後退します隊長。」
「お願いします。」
操縦士がそう言ってセンチュリオン1号を後退させると、他の戦車もそれに続いて後退する。
愛里寿は後退を始めたセンチュリオン1号の砲塔上から空を見上げる。
「ロケット弾発射!」
「ロケット弾発射します!」
アズミの指示を隊員が復唱すると、2両のハーフトラックの載せられているランチャーからロケット弾が轟音と炎と共に次々と発射される。
「隊長へ、射撃開始を連絡。」
「了解。」
「隊長、ロケット弾発射開始との連絡です。」
「全車警戒体制へ。」
そう指示すると愛里寿は車内に戻りハッチを閉じ、モニターに取り付く。
戦車隊の攻撃が止まった為、前進を開始したシーサーペントに、その直後上空から飛来したロケット弾が降り注ぎ、激しい閃光と爆発が包み込む。
その振動はセンチュリオンを激しく揺さぶり、愛里寿は思わずモニターにしがみ付いてしまう。
「わぁ!?」
「きゃああ!」
乗員達もそれぞれ何かにしがみ付きながら悲鳴を上げる。
そして激しい振動が収まると愛里寿はモニターを見る。
噴進弾の激しい爆発を受けたシーサーペントはボロボロになりなが海中に沈んで行く。
愛里寿は溜息を付くと再びハッチを開け、首に掛けていた双眼鏡で体液でどす黒くなった海面を見る。
「凄かったですねあの威力・・・」
砲手が茫然とした表情で呟く。
「・・・そうですね、更識艦長の言っていた事がよく分かりました。」
そう簪が中央海に行く前に言っていたのだ、『束さんの作る物は確かに高性能なのだけど、ちょっと度を越したところがあるから。』と。
もっともちょっとどころでは無い気がすると愛里寿は思ったが。
こうしてⅩ島を襲ったシーサーペントを戦車隊のみで撃破するという初めての事例はこれで終わった。
その後の事についてだが。
住民の歓声浴びながらⅩ島を離れたアークロイヤル艦橋の愛里寿達に通信担当が名無し猫の艦隊参謀である真耶からの通信文を持って来た。
「山田参謀からですか?今回の事で何か言ってきたのかしら。」
愛里寿が通信文を読むのを見ながらメグミが首を捻る。
「と言っても今回の詳しい報告なんてこれからよ。」
ルミもメグミ同様首を捻って考える、今回の事で真耶が何か言って来るには早すぎると思ったからだ。
「艦長、山田参謀は何て・・・」
「!?」
アズミが通信内容を聞こうとした瞬間、愛里寿の表情が、ぱっと明るく変化する。
「艦長?」
その変化にアズミが驚いて声を掛けると、愛里寿は読んでいた通信文をアズミに渡し、嬉しそうな表情を浮かべ席から立つ。
「隊長室に行ってきます、何かあったら連絡を。」
返事を待たず愛里寿はそう言うと艦橋を軽やかな足取りで出て行った。
「・・・・・」
一方通信文を読んだアズミは苦笑しながらルミとメグミを見るとその内容を話す。
「どうやらそうりゅうが中央海での全ての予定を終えて来週にも北方海に帰ってくるらしいわ。」
ルミとメグミは顔を見合わせてアズミ同様苦笑を浮かべる、急に愛里寿が明るい表情に戻った理由を察して。
「あ~あ結局のところ更識艦長には敵わないみたいね。」
通信文を折りたたみ、愛里寿の座っていた席に置くとアズミはボヤくのだった。
艦橋からわき目を振らずに隊長室に向かった愛里寿は、部屋に入るとベットに置かれているボコ人形を取り上げて抱きしめる。
「帰ってくるんだ簪・・・うん、うん。」
目から涙が零れるが、それは今まで流していた寂しさからのものでは無く、簪に会えると言う嬉しさからだった。
連日の寂しさやがあっと言う間に消えて行くのを愛里寿は感じていた。
アズミがボヤいていた通り、今の愛里寿を笑顔に出来るのは簪だけだったから。
「中央海のお話一杯聞かせてね簪、私も一杯お話するから。」
ボコ人形を抱きしめ涙を流しながらも愛里寿は笑顔でそう呟くのだった。
アークロイヤル
・島田商会所属の戦車揚陸艦。
・現在はセキュリテイーブルーに移籍。
・モデルはアメリカ海軍のニューポート級戦車揚陸艦。
・艦長は島田 愛里寿(センチュリオン戦車隊長兼任)。
・副長兼参謀はメグミ、アズミ、ルミ。
搭載車両:センチュリオン×4
:多連装ロケット弾ランチャー搭載M3ハーフトラック×2
:偵察用及び連絡用高機動車×4
:弾薬運搬車×2
:戦車回収車×1
:水陸両用車×1
武装:艦載砲×3
:機関砲×2
搭載艇:小型高速艇
:中型輸送艇