北方海の守護天使   作:h.hokura

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No.21「悪魔は再び?」

三式潜航輸送艇みやまの乗員達は今信じられないものと遭遇していた。

「センサー間違無いのか!?」

司令塔上で双眼鏡を構えて前方を見ていた艇長が怒鳴る様にセンサー担当に聞いていた。

『間違い無いっす!前方3千を進路030で進行中です。』

報告を聞きながら双眼鏡で目標を追っている艇長が呻く。

「と言う事は幻じゃないって訳か・・・たっく冗談じゃねえぞ。」

隣で同じ様に目標を追っていた見張りが問い掛ける。

「それじゃさっき艇長が言っていたやつなんですか?」

呻いた艇長は双眼鏡を降ろすと溜息を付きつつ答える。

「ああ間違いな・・・信じられね話だがな。」

答えた後艇長はハッチを通って発令所に降りようとしながら言う。

「こんなおんぼろ艇なんぞ一撃でお終いだ、そうなる前に潜って隠れる。」

危険時に潜って姿を隠す、何時もみやまがやる手だ。

「上手く隠れられるんですか?」

「まああいつ次第だな、ほらさっさと潜るぞ。」

艇長の答えに見張りは顔を青くさせながら続いて艇内に降りて行く。

数分後みやまは潜水すると物音を出さない様その場で静かに潜む、結果見向きもされず逃れられたのだった。

 

「それは・・・確実ですか?」

『はっきりと断言は出来ねえ、俺もそいつについては話を聞いた事があるって程度だからな。』

みやまと洋上で落ち合ったそうりゅうの発令所で簪は艇長と通信回線を開き話をしていた。

『まあ背中に大きな傷らしいものは見えた、ただそれだから言ってあいつだと確信出来た訳じゃないしな。』

たった一日で数十隻の船を沈めた凶悪さから悪魔と名付けられたシーサーペント。

みやまからそれらしきものを見たとの報告がありそうりゅうこの海域に派遣されて来たのだった。

特徴は背中にある他のシーサーペントと争った結果出来たと言われる傷跡。

「しかし悪魔は撃破された筈です。」

簪は巨大シーサーペント対応で関わっていなかったが、複数の商会によって撃破されたと後に聞かされた記憶があった。

『俺だってそう聞いていたからな、未だに自分の見たものが信じられん。』

結局簪はそれが悪魔がなのか確信を得る事は出来なかった。

『とりあえず付近の海域には警報を発令し、セキュリテイーブルー所属の艦を全て出撃させた。』

みやま乗員からの聞き取りを終え、報告を上げた簪に千冬が告げる。

『ただこの件でギルドは大混乱だ、誰が責任を取るかでな、まあ更識商会長が抑えている様だが。』

「騒ぎを収めるには悪魔を撃破するしかありませんね・・・本物ならですが。」

未だにみやま乗員の見たシーサーペントが悪魔なのか簪は確信を持てなかった。

簪の言葉に千冬も同意した様に答える。

『確かにな私も納得出来ていない、兎も角更識艦長には真偽の調査と撃破を要請する。』

「了解しました。」

千冬との通信を終えた簪は今後の方針を指示する。

「取り敢えずみやまが目撃した海域へ向かいます、総員警戒態勢へ。」

 

「悪魔か・・・これかなり厄介な相手だね。」

簪の隣の席でディスプレーに悪魔の情報を呼び出して見ていたシャルが呟く。

「かなり凶悪な奴で撃破されるまで犠牲になった船は20隻に達した様ですね。」

シャルの呟きに簪が航路情報を確認しながら続ける。

ちなみにこれには戦った武装船も含まれるらしいと簪。

「姉いえ更識商会長も私を戻す様にギルドの商会長達に言われた様ですね。」

北方海の天使が必要だと圧力が凄かったらしいと簪は後に姉から聞かされたものだ。

「結局私を呼び戻す前に撃破された・・・と聞いていたのですが。」

「それが違ったと言う事なのでしょうか?」

傍らに控えているクロエが不安げな表情を浮かべながら簪に尋ねる。

「まだそうだと結論は出せませんねクロエさん、慎重に対処する必要があります。」

クロエの問いに簪は答える。

やがてそうりゅうはみやまが目撃した海域に到着する。

「これより捜索を開始します、進路及び速力はこのまま、ソーナー及びレーダーの監視を厳重に。」

「はい艦長。」

「私達が発見する前に何か起こらないと良いのですが。」

センサー担当が指示に答えるの聞きながら簪は呟く。

そして簪の懸念は最悪の形で起きてしまう。

「艦長!貨客船シーホース号から救難信号です、『我シーサーペントの襲撃を受けつつあり、即救援を願う。』です。」

捜索を開始して4時間後、そうりゅうに救難信号が入って来た事で。

「座標をお願いします、メインモーター出力全開、総員戦闘配置に着いて下さい。」

「座標を送ります艦長。」

「メインモーター出力全開。」

簪が送られて来た座標にそうりゅうの進路を変更、機関担当が復唱して速度を上げて行く。

「深度を上げます、マルチセンサーポストを作動。」

そして1時間後予定座標に到達した事を確認した簪がそうりゅうの深度を上げながら指示を出す。

共用ディスプレーにシーサーペントの襲撃を受けているシーホース号が映し出される。

「近すぎますね・・・」

シーサーペントがシーホース号近すぎてむやみに手を出せない状況に簪は暫し考えると。

「1番発射管に近接信管を装着した魚雷を装填。」

簪はシーホース号からシーサーペントを引き離す為近接信管付きの魚雷を使用する事にした。

「近接信管の装着及び装填完了。」

1番発射管に近接信管を装着された魚雷が装填される。

「発射して下さい。」

「発射。」

簪の指示で1番発射管から魚雷が放たれる。

放たれた魚雷はシーホース号とシーサーペントの間で近接信管が作動し衝撃と水柱を起こす。

襲い掛かろうとしていたシーサーペントはその衝撃と水柱に怯むとシーホース号から離れて行く。

「シーサーペント急速に離脱して行きます、追撃を?」

「いえシーホース号の保護を優先します。」

そうりゅうから離れて行くシーサーペントを共用ディスプレー上に見ながら簪が指示を出す。

そうしている中にシーサーペントはそうりゅうの索敵範囲から消えて行った。

やがてシーホース号の乗員を要請を受けて救助に来た商会の駆逐艦に任せそうりゅうは追跡を再開する。

発令所内では簪達が共用ディスプレーに映し出された先程のシーサーペントを見ていた。

「そこで止めて下さい・・・シャル?」

「傷が有るね、記録とは一致するけど。」

拡大された画像上に映し出されているシーサーペントの背面に傷跡があった。

「でもあの攻撃位で逃げ出しているのは悪魔らしく無いですね。」

簪はそう言うと考え込む、本当にあれは悪魔なのかと。

「僕も簪の言う通りだと思うよ、悪魔は少々の攻撃など意に返さなかったらしいからね。」

席のディスプレーで記録を見ながらシャルが言う。

「兎も角追跡を続行します、例え悪魔では無いにしてもです。」

既に被害が出ている以上簪達のやる事は決まっているのだから。

しかし混乱は簪の思っている以上に北方海に広がりつつあった。

「付近にある島の漁師ギルドは出漁を取りやめたそうです、あと船員ギルドは航路の安全が確保されるまで乗船を拒否するそうです。」

セキュリテイーブルー職員からの報告に千冬と楯無は溜息を付く。

漁師ギルドや船員ギルドからのセキュリテイーブルーへの圧は強まりつつあった。

「このままでは流通が停止してしまうな・・・」

「一部の島では食料や燃料の枯渇が起きるかもしれないと言う不安からパニックも起き始めていますね。」

伝わって来る状況は悪化して行くものばかりだった。

「そうりゅうからは貨客船を救助後追跡に入ったという連絡が有ったきりだ。」

腕を組み眉間にしわを寄せながら千冬は呟く。

「・・・簪ちゃんならきっと仕留めて見せますよギルド長。」

その通りだと信じて疑わない楯無の言葉に千冬は苦笑しつつ答える。

「確かに居間は更識艦長いや守護天使を信じるしかないか・・・」

「ええだから私達は出来るきことをやりましょう。」

千冬は頷き楯無と共に自身が出来る事を進めるのだった。

「艦長!パーク島から救助要請です・・・シーサーペントが港に接近中との事です。」

追跡を再開したそうりゅう近くの海域に有る島から緊急連絡が入って来た。

「進路をパーク島へ取ります、メインモーター出力全開。」

「了解、メインモーター出力全開。」

機関担当が復唱するとそうりゅうが速力を上げて行く。

「総員戦闘配置。」

「総員戦闘配置に着け繰り返す・・・」

艦内にアラーム音が鳴り響くと乗員達がそれぞれの配置に付く。

「艦長、シーサーペントを捕捉しました、島まで30キロです。」

複合ディスプレイを見ていたセンサー担当の報告を聞いて間に合ったと簪は安堵の溜息を付く。

「進路を島とーサーペントの間に向けます、両舷全速。」

簪がそうりゅうの進路を島とシーサーペントの間に向けつつ指示を出す。

「予定ポイントに到達、マルチセンサーポスト作動開始。」

「マルチセンサーポスト作動。」

そうりゅうが島とシーサーペントの間に入った事を確認した簪が深度を上げつつ指示する。

センサー担当が復唱すると共用ディスプレーに海上の様子が映し出される。

「シーサーペントを確認、距離7千です艦長。」

「全発射管に魚雷装填、急いで下さい。」

一直線にそうりゅうに向かって来るシーサーペントを見ながら簪が攻撃準備を命じる。

「全発射管に魚雷装填開始します。」

艦載火器管制室が火器管制担当の指示により発射管に魚雷装填を装填して行く。

「シーサーペントまで距離3千。」

「全発射管に魚雷装填完了、発射用意良し。」

センサー担当の声に続き火器管制担当が発射用意が整った事を報告する声が発令所内に響く。

「1番及び2番に目標データ入力。」

「・・・目標データ入力完了、何時でもいけます艦長!」

「1番及び2番発射。」

簪の指示により艦首発射管から2基の魚雷が発射、魚雷に向かって向かっていった。

「目標に到達・・・今。」

発射された2基の魚雷が魚雷に命中し激しい炎と水柱を上げる。

「目標進路変更、急速に離れて行きます。」

魚雷によって身体の半分を吹き飛ばされた悪魔は進路を変え逃亡しようとしていた。

「3番から6番の魚雷に目標データ入力。」

だがここで逃がす訳にはいかないと簪は追撃を命じる。

「目標データ入力完了、発射用意よし。」

簪の指示に火器管制担当が間髪を入れず答える。

「では発射して下さい。」

「了解、3番から6番発射します。」

再び艦首の発射管から4基の魚雷が悪魔を目指して発射される。

そして4基の魚雷は逃亡を図ろうとしていた悪魔の後方から命中しどす黒い体液と肉片を撒き散らしてその姿を消す。

「目標の反応消失。」

「共用ディスプレーに映像を。」

センサー担当の声を聞いた簪が指示を出すと海面の状況が共用ディスプレーに映る。

映し出された黒く濁った海面と漂う肉片の映像を簪達は見つめる。

「戦闘配置を警戒配置に・・・本部に悪魔の撃破を報告して下さい。」

暫しの沈黙後簪がそう告げるとシャルとクロエ、担当乗員達が安堵の溜息を付く。

「お疲れ様簪。」

「お疲れ様です簪様。」

シャルとクロエが簪に微笑みながら声を掛けて来る。

「ええシャルもクロエさんもお疲れ様です。」

簪が微笑みながらこれで終わったな改めて思うのだった。

「しかし本当に悪魔だったのでしょうかあのシーサーペントは・・・」

そうりゅうの食堂で簪はシャルとクロエと共に休憩を取りながら話し合っていた。

簪の隣に立って紅茶を入れながらクロエが言った言葉にシャルがコーヒーを飲みながら答える。

「今となってはもう誰にも分からないだろうね、全てが海の藻屑と消えてしまったからね。」

「そのお陰で陸の上は未だに騒ぎが収まっていません・・・姉さんとギルド長は未だ後始末に追われています。」

コーヒーカップをテーブルに置くと簪が溜息を付きつつ話す。

その辺の状況は悪魔撃破を報告後、ギルド長の千冬から連絡が来た時に皆が知る事となった。

『更識商会長が検証委員会を作って調査する言って何とか皆を説得した、正直に言って厄介事を先送りにしただけだがな。』

簪達を労った後千冬はうんざりした声で状況を教えてくれたのだった。

「では急ぎますか詳しい報告書を?」

『いや急ぐ必要は無い、更識商会長がその辺は上手くやるだろうさ』

まあ確かに姉なら騒ぐ商会長達を抑えて混乱を収めるだろうなと簪は千冬の返答を聞いて確信する。

「簪はどう考えているんだい?」

シャルの問い掛けに簪は暫し考え込んだ後に答える。

「もしかすると私達は悪魔と言う過去の影に振り回されただけじゃないかと思ってます。」

シャルとクロエが顔を見合わせる。

「傷についてもただ似ていただけかもしれませんしね・・・あくまで私の考えですけど。」

一連の騒ぎを見て簪はどうしてもそう思えて仕方が無かったのだ、自ら作り出してしまった影に怯えていただけではないのかと・・・

「その可能性はあると僕も思うね。」

座席に背を預けシャルが呟くとクロエもまた頷いて同意を示しすのだった。

 

14:00 悪魔の掃討を完了

 

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