北方海の守護天使   作:h.hokura

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元ネタはウルトラマン80第32話「暗黒の海のモンスターシップ」です。
ちなみにシュールクーフなのは完全に作者の趣味です((笑)。



No.20ー北方海のモンスターシップー

北方海の洋上を1隻の貨物船が航行していた。

そのブリッジで当直についていた航海担当の所にコーヒーを持った船長がやって来る。

「眠気覚ましのコーヒー持ってきたぞ。」

「ああ船長ありがとうございます。」

監視していた航海担当は双眼鏡を下すとコーヒーを受け取って一口飲む。

「問題は無いみたいだな。」

船長は前方の海上を見ながら呟く。

「ええ平和なものですよ、このまま無事に港に着いて・・・」

だが航海担当の言葉は前方に何かが浮き上がって来た事で途切れる。

航海担当が慌てて双眼鏡でそれを見て驚きの声を上げる。

「あ、あれって船長!?」

言われた船長も置いてあった双眼鏡を構えてそれを見る。

「・・・こっちの前に突然現れやがって何のつもりだあいつは!!」

双眼鏡を下し船長は怒った表情を浮かべて叫ぶ。

「通信室に言って直ぐ進路を開ける様に連絡しろ、まったく航海法も知らないど素人か。」

「了解です、通信室・・・」

船長の怒鳴り声に航海担当が慌てて船内電話を取り上げ通信室を呼び出そうとした次の瞬間。

凄まじい振動と光が襲い船長と航海担当はブリッジと共に消滅してしまう。

そして貨物船は船体のあちこちから火を噴きだし急速に海中に沈ん行く。

後には海面に漂う貨物船の漂流物のみが残されるだけだった。

貨物船の前方に現れたそいつは暫し佇んで居たが、何事も無かった様に海中に消えていった。

「連続遭難・・・事件ですか?」

退避港から通常の哨戒任務の為出発したそうりゅうの発令所に名無し猫経由で千冬から通信入って来た。

『そうだ更識艦長・・・最早事件と呼ぶしかない状況だな。』

共用ディスプレーに映し出された千冬は肩を竦めるながら簪の問いに答える。

『今月に入って数隻の船がやられている、一昨日も貨物船が沈められたよ。』

ギルド長の映像が縮小され海図が代わりに拡大されると次々とバツ印が日付と共に表示される。

「一定の海域ではありませんね、私には移動している様に見えるのですが。」

それを見たクロエが言うと千冬も頷いて答える。

『その通りだクロエ、明らかに移動しながら手当たり次第に沈めているとしか思えない。』

「原因はシーサーペントではないのですかギルド長?」

補助席に座り千冬の説明を聞いていたシャルが皆が抱いている疑問を聞いてくる。

そうこれがシーサーペントの仕業ならはっきりと千冬は言う筈なのだ。

『今回は・・・シーサーペントさえも犠牲になっているんだよデュノア。』

海図に表示されているバツ印の一つを指し示しながら千冬がその疑問に答える。

『十数匹のシーサーペントの死体を確認しているが、掃討したという報告は無い。』

普通ハンターチームがシーサーペントを撃破すればギルドに報告が上がる筈なのだ。

『そして・・・沈められたり撃破された原因は砲撃を受けた結果だと報告が上がっている。』

簪達は顔を見わせる、それが意味する事に気づいて・・・

「砲撃だとすれば艦艇ですが・・・該当するものは見つかっていないのですね?」

簪の問いに千冬が深く頷きつつ答える。

「事件後、現場海域にハンターチームが急行したが見当たらなかった・・・シーサーペントの時を含めてな。』

「・・・」

商船やシーサーペントを撃破する程の艦載砲を搭載している艦艇を歴戦のハンターチームが容易く見逃すとは簪には思えなかった。

『前にあった商会の様に怨恨の線も考えたが、襲われた商会に共通点がまったく見当たらない。』

最早お手上げだと言うように千冬は肩を竦めて見せる。

『ここまでくれば更識艦長いや守護天使に頼るしかないと言う訳だ。』

千冬の言葉に簪は苦笑すると海図を見ながら問い掛ける。

「それで確認したいのですが・・・こいつの目的地は北方海中央港だとギルド長は確信しているのですね?」

「「ええ!?」」

シャルとクロエが驚きの声を上げ簪を見る。

『流石だな守護天使・・・そう奴の最終目的地はそこだと私は結論した。』

海図上で点々と続く事件現場の先を追って行くと中央港に辿り着く事に簪は気づき、千冬もまたそう確信していると思ったのだ。

『想定される被害は説明の必要は無いだろう更識艦長・・・』

中央港に向かう進路上には多くの航路や漁場が存在する、今までの状況から何が起こるかは簪だけでなくシャルとクロエにも容易に理解出来た。

「了解しました、そうりゅうはこれより正体不明の艦艇の進行阻止に向かいます。」

『ああ頼むぞ更識艦長。』

通信終了後そうりゅうは正体不明の艦艇の予想進路に向かった。

「マルチセンサーポストの用意を。」

予想海域に近づいたそうりゅうの深度を上げつつ簪が指示をする。

「マルチセンサーポスト・・・準備よし。」

センサー担当が答えると共用ディスプレーに海上の様子が映し出される。

「ソーナー及びレーダーの反応はありますか?」

「・・・今の所ありません艦長。」

「それでは予定航路を進みます、総員警戒配置へ。」

艦長席のディスプレーに海図を表示させそうりゅうを予想海域に侵入させながら簪は総員を警戒配置につける。

「総員警戒配置繰り返す総員警戒配。」

火器管制担当が艦内にアナウンスすると共にアラーム音を響かせる。

「メインモーター出力二分の一、ソーナー及びレーダーの監視を厳重に願います。」

「メインモーター出力二分の一へ。」

「ソーナー及びレーダーの監視を厳重にします。」

機関担当とセンサー担当が復唱する。

「さて上手く見つかるといいんだけどね。」

隣の補助席に座るシャルが共用ディスプレーに映し出されいる海図を見ながら呟く。

「出来れば次の被害が出ないうちに見つけたいものですね。」

艦長席に座る簪の傍らに控えるクロエが同じように共用ディスプレーを見ながら言う。

それは簪も同じ気持ちだ、これ以上の犠牲者を出さない為にも。

「艦長!こちらに向かってくる目標を探知。」

捜索を開始て1時間経った時だった、センサー担当が振り向いて報告する。

「シーサーペントですか?」

簪が問うとセンサー担当は首を振って答える。」

「いえ、機械音がするので違うかと・・・」

「マルチセンサーポスト作動、画像を共用ディスプレーに出して下さい。」

共用ディスプレーにそうりゅうに向かってくる艦艇らしきものが映る。

「拡大して下さい。」

「はい艦長。」

ディスプレーに拡大されたその艦艇の映像が表示される。

それは船体上の大きな司令塔の前部に連装の艦載砲を持ち、そうりゅうよりやや小型の潜水艦。

「シ、シュールクーフ!?そんな何故・・・」

それを見たクロエが驚愕の声を上げる。

「シュールクーフ?・・・ってクロエさん座ってください、総員衝撃に注意。」

画面上のシュールクーフの艦載砲がそうりゅうに向けられ事に気づいた簪が叫ぶ。

その声にクロエが慌てて簪の後ろの座席に座りベルトを締める。

それを確認した簪がそうりゅうを急速潜航させた瞬間、激しい衝撃が発令所を襲い激しく揺さぶられる。

その揺れの中簪はそうりゅうを操りシュールクーフの下を通り抜けさせる。

「メインモーター出力全開。」

「メインモーター出力全開。」

機関担当が復唱すると艦長席のディスプレーの出力表示が跳ね上がる。

「一旦離れます。」

簪はそう言ってシュールクーフから離脱するコースにそうりゅうを乗せるのだった。

「目標追って来ません、潜航しそのまま進行して行きます。」

センサー担当が報告するの聞きながら簪は考え込む。

「どうやら目の前の障害をしか興味がないみたいだね・・・ところであれを見てシュールクーフって言っていた様だけど?」

そう呟いた後シャルは振り向いてクロエに質問する。

「・・・簪様、あれはシュールクーフですよね?」

「ええ間違いないと思うますよクロエさん。」

クロエは答える前に簪に確認して来る、シャルは深刻そうな顔をする2人に困惑した表情を浮かべる。

シュールクーフ、簪が転生前の世界ではフランス海軍の潜水艦であり、ゲームでも登場していた艦だった。

そしてこの世界では・・・

「シュールクーフは中央海のある商会が建造した無人潜水艦です、但し半年前に沈んだ筈なのですが。」

人的被害を出さずシーサーペントを撃破出来る未来の潜水艦だと大々的宣伝されていたのを簪とクロエは思い出していた。

それが束の作ったそうりゅうを意識して建造された事は処女航海のゴールに北方海中央港を選んだ時点で想像が付く話だった。

もっとも束はその事実に冷笑を浮かべながらこう言った。

「はん!機械仕掛けの玩具が果たして中央港までこれるかしらね、まあ精々頑張って欲しいものだね。」

簪としては自動化については否定してはいない、だが自動化だけに頼るのではなく人もまた大きく関わるべきだとは思っている、それは束とクロエも同意見だった。

そして案の定シュールクーフは北方海に入り数度のシーサーペントとの交戦後消息を絶ってしまった。

原因ははっきりしないものの束は数度の戦闘でその戦闘パターンをシーサーペントに見抜かれ撃沈されたのだろうと言っていた。

シーサーペントの狩りに対する狡猾さを知る簪にしてみれば束の結論は納得できる話だった。

「そんな事があったんだね・・・でもそうだとしたらあのシュールクーフは一体?」

事情を聞いたシャルは事情を理解したが、同時に疑問に感じて簪に問い掛ける。

「私が束様から聞いた話ですが、シュールクーフには一応損傷時に対応するシステムが有ったそうなのですが。」

クロエが簪に代わってシャルに答える。

「半年掛けて自分を修復したと言う事ですかクロエさん?」

「その可能性が有ります簪様、ただ今のシュールクーフはその結果暴走している様に見えますね。」

クロエの返答に簪は暫し考え込む、それはシステムの欠陥だったのかそれとも何らかの異常が重なった結果のかと。

「名無し猫に連絡を、織斑ギルド長を至急呼び出して欲しいと。」

だが今原因を追究している時間は簪達には無い、シュールクーフは中央港に一直線に迫っているのだ。

『シュールクーフだと!?』

名無し猫を経由して呼び出された千冬は簪からの報告を聞いて絶句する。

「間違いありません、クロエさんも私も確認しました。」

『ああその様だな・・・まさかそんなものが出て来るとは思わなかった。』

送られてきた映像を見て千冬は深いため息を付いて見せる。

『更識艦長、こうなれば一刻の猶予も無い、中央港にたどり着くまでにシュールクーフを撃沈してくれ。』

「了解です、関係機関への連絡はそちらでお願いします。」

ディスプレーの中で千冬は頷くと答える。

『そちらは任せてくれ・・・それにしても厄介なものを北方海に持ち込んでくれたものだな。』

うんざりした表情を浮かべ千冬がぼやく、まあこの後の事を考えれば彼女のぼやきも当然だなと簪は思う。

中央海のギルドとの交渉や漁師ギルドや船員ギルドへの通達などで千冬は暫く忙殺されるのは確実なのだから。

「メインモーター出力全開、そうりゅうはこれよりシュールクーフの追跡に入ります、総員戦闘配置へ。」

「メインモーター出力全開。」

「総員戦闘配置繰り返す総員戦闘配置!」

艦内にアラーム音が響き乗員達が配置に付いて行く。

「艦長、総員戦闘配置に付きました。」

「了解です、シャルや皆さんも注意を・・・では行きます。」

速力を上げたそうりゅうを簪は操りシュールクーフの追跡を開始する。

そして1時間後。

「艦長!前方にシュールクーフを確認、速力13ノットで航行中です。」

センサー担当が複合ディスプレイから振り向いて報告する。

航法ディスプレーを見た簪はシュールクーフが中央港近くの漁場に侵入している事を確認する。

「艦首発射管1番から4番に魚雷、5番から8番にアンチ魚雷を装填、急いで下さい。」

「1番から4番に魚雷、5番から8番にアンチ魚雷装填開始します。」

一刻の猶予も無いと簪は攻撃の準備を急がせる。

「艦長、シュールクーフが進路を変更しそうりゅうに向かって来ます!」

シュールクーフの方もそうりゅうに気づき応戦する気だと簪。

「マルチセンサーポスト作動。」

そうりゅうの深度を上げながら簪が指示を出す。

やがて共用ディスプレーにそうりゅうも突進してくシュールクーフが映し出される。

「1番から4番の魚雷に目標データ入力完了しました艦長。」

「シュールクーフが砲撃!」

画面上のシュールクーフが艦載砲を向け発砲するのを見た簪はそうりゅうを急速潜航させる。

砲弾が潜航したそうりゅうの頭上で着弾し発令所を揺さぶる。

「シュールクーフが潜航して接近して来ます・・・発射管の開放音を確認。」

センサー担当が複合ディスプレイを見ながら報告して来る。

共用ディスプレーに切り替えられ急速にそうりゅうに接近して来るシュールクーフが表示される。

「1番から2番発射!」

「1番から2番発射します。」

簪の指示を火器管制担当が復唱すると2本の魚雷が放たれる。

「シュールクーフも魚雷を発射、雷数2です艦長。」

シュールクーフから発射された魚雷とそうりゅうの魚雷が共用ディスプレーに表示される。

「5番から6番のアンチ魚雷発射。」

「アンチ魚雷発射します。」

魚雷迎撃用の魚雷がそうりゅうから放たれてシュールクーフの魚雷に向かって行く。

それを確認した簪はそうりゅうの進路そのままで深度下げシュールクーフに向かって行く。

「シュールクーフが左舷に進路変更、こちらの魚雷命中まで30秒。」

「アンチ魚雷・・・シュールクーフの魚雷に到達します。」

火器管制担当とセンサー担当が同時に報告して来る。

共用ディスプレー上でシュールクーフの魚雷がアンチ魚雷に破壊され反応が消える。

「こちらの魚雷は?」

「シュールクーフの放ったデコイに引き寄せれれ外れました。」

シュールクーフへ向かった魚雷はデコイに命中しこちらも反応が消える。

火器管制担当が悔しそうに報告するが簪は予想していたので慌てる事も無くそうりゅうを操りシュールクーフを追う。

「3番から4番発射用意。」

そうりゅうをシュールクーフの後方に付けながら簪が指示を出す。

「目標データ入力良し。」

「3番から4番発射。」

そうりゅうから再び発射された魚雷がシュールクーフへ向かう。

「シュールクーフがデコイを放出しました。」

再びデコイを放ち逃れようとするシュールクーフだったが、今度の魚雷は騙されなかった。

デコイのデータを織り込み済みだったからだ、簪が最初にそうりゅうのデコイを使用しなかったのはその為だ。

シュールクーフの自動システムはそこまで考えられていなかった、まあそらだからこそシーサーペントに付け入れられたと言える。

「シュールクーフが魚雷を発射しました艦長!」

艦尾発射管からシュールクーフが魚雷を放つが、簪は冷静に指示を出す。

「艦尾発射管よりデコイを射出。」

そうりゅうの艦尾発射管からデコイが射出されシュールクーフの魚雷を引き付ける。

シュールクーフの方はそうりゅうのデコイに対してのデータが無かったからだ。

「魚雷がシュールクーフに命中します。」

発射されたそうりゅうの魚雷の1発目がまずシュールクーフの艦尾付近に命中し機関室と推進機を吹き飛ばす。

そして行き足を失ったシュールクーフの艦中央に2発目の魚雷が命中し艦のコントロール機能を奪い艦を真っ二つする。

真っ二つになったシュールクーフはそのまま深い海底へ沈んで行く。

「ここの深度は2千メートルあった筈ですね簪様。」

共用ディスプレーにシュールクーフが深海に消えて行くのが表示されるのを見ながらクロエが問い掛けて来る。

「ええ・・・どんな潜水艦も耐えられない深度ですね。」

やがて真っ二つなったシュールクーフの反応が共用ディスプレーから消えると発令所内に何とも言えない空気が流れる。

「終わったけど素直に喜ぶ気にはなれないね・・・」

皆の心象を代表する様にシャルが深い溜息を付きながら言う。

「そうですね私もそう思います、シュールクーフはただ与えられた命令を実行していただけですからね。」

「ですが多くの船乗りを犠牲にしています、それはどんな理由があれど許せるものではありません簪様。」

シャル同様深い溜息を付き答える簪にクロエが毅然とした態度で言う。

「確かにそうですねクロエさん・・・ただ今回は人間側にも責任がありますね。」

クロエの言葉に簪は頷きながら答える。

「はい、これは私達のおごりが生んだ悲劇だと思います簪様。」

その言葉に反対する者は居なかった。

「ギルド本部に連絡を、あとそうりゅう各部の点検をお願いします。」

「「「はい艦長。」」」

発令所の乗員達が本部への連絡や点検作業に行うのを見ながら簪はそうりゅうの進路を退避港へ向けるのだった。

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