北方海の守護天使   作:h.hokura

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ー荒海のコトブキ潜航艇隊2ー

羽衣丸の連絡艇発着場

レオナ達コトブキ潜航艇隊のメンバーも上陸許可第一陣として連絡艇を待っていた。

そしてそこに整備班長のナツオも居た。

「あれ班長も上陸すんの?」

キリエがナツオを見て聞いて来る、まあ滅多に港に着いても彼女が上陸した事が無かったからだが。

「いや俺はマダム・ルゥルゥと一緒に名無し猫に行く、あっちに知り合い、いや師匠が乗っているんでな。」

ナツオはキリエの問いに肩を竦めて答える。

「師匠?と言う事は整備関係のか?」

レオナが聞いて来る。

「ああ、昔整備のイロハを叩き込んでくれた人でな、今名無し猫で整備と補給の責任者をやっている。」

ニヤリと笑いナツオは答える。

「厳しかったが、今の俺があるのはあの人のお陰だからな。」

そんな会話をしているとマダム・ルゥルゥがやって来た。

「貴女達は上陸するのね。」

そして並んでいるレオナ達に話しかけて来る。

「はいマダム・ルゥルゥ・・・少しは息抜きにもなるので。」

レオナはキリエ達を見ながら答える、海の上に長く居る事の多い彼女達としては例え何も無くても嬉しいものだから。

「そう、まあ楽しんでいらっしゃい、それじゃナツオ行くわよ。」

「はいマダム・ルゥルゥ。」

二人は名無し猫に向かう連絡艇に乗ると羽衣丸を離れて行く。

「我々も行くか。」

桟橋に向かう連絡艇の準備が完了したのを見てレオナは乗り込む。

「ええ行きましょうか。」

ザラは微笑んで答えると続く。

「久々の上陸だね。」

「正確には1ヶ月半ぶりになる。」

「地に足が着くのは落ち着くからな、って待てキリエ。」

騒ぎながらキリエ達も続いて乗り込む。

レオナ達以外に上陸する乗員を載せ連絡艇は桟橋に向かった。

 

イリオモテ島の退避港は緊急時に使われると言う性格上、普段は小規模な貨客船しか発着しなかった。

その為港湾設備(ドックや荷卸し施設)は貧弱だったし、街が恩恵を受ける事は少なかった。

しかし派遣艦隊がここを根拠地にした結果、港湾設備は拡張・増強され、加えて艦隊の人間が訪れる様になり街は潤う事になる。

「へえ・・・結構寂れているんじゃないかと思っていたけどそうでもないのね。」

連絡艇から桟橋に降りたザラが周りを見ながら感心した様に言う。

「その様だな、派遣艦隊が来たお陰だろうな。」

レオナ達は退避港を何度か利用した事があるが、大抵は寂れた場所が多かったからだ。

だがここは桟橋も広く大きく、併設されたドックや荷卸し施設も真新しく充実して見える。

「艦隊を受け入れて貰う代わりに地元に経済的な利益を与える、更識会長の発案だという話。」

ケイトがレオナとザラの傍に来て説明する。

「聞いた通り更識会長はかなりのやり手みたいね。」

ザラは肩を竦めて言う。

「まあそうすれば地元の協力が得られるしな。」

レオナは腕を組んで感慨深げに言う。

加えて島は強力な守り手を得られるのだからその恩恵は大きく、だから全島あげて艦隊に協力的らしい。

そんな真面目な会話をする3人の傍らで。

「パンケーキだよパンケーキ、シーサーペントの所為で食べそこなったから絶対食べる。」

「カレーだカレー、決まっているだろうが。」

「貴女達はもう・・・」

キリエとチカが何を食べに行くかで議論しており、エンマが呆れた様にそれを見ていた。

「仕方ないな・・・しかし上陸したはいいが何処へ行ったものか。」

そんなキリエ達に苦笑しつつレオナは考え込む、何しろ初めて訪れる港街だ、土地勘など無い。」

「待っててねパンケーキ、今行くぞ!」

「カレーに決まってるだろうが、おいこら待て!」

そんなレオナを他所にキリエとチカは走り出す。

「ちょっと二人とも危ないから走るのは止めなさい・・・」

エンマが二人に慌てて注意し様とした瞬間。

「きゃあ。」

「おお!!」

「うおお!」

衝突音と共に上がるキリエとチカ、そしてもう一人の声。

「だから言ったのに貴女達はもう。」

呆れた様に言ってエンマがキリエとチカ、そして二人にぶつかった相手に駆け寄る。

「まったく・・・上陸早々何をやっているんだか。」

レオナも呆れた様に言って、苦笑しているザラと共にキリエ達の元に向かう。

「大丈夫か君。」

エンマの手で立ち上がった相手、どうやらキリエ達と同じ年頃の少女にレオナは声を掛ける。

水色の髪に眼鏡を掛けたその少女は白い服、艦内服を身に付けていた。

地元のでは無く艦隊所属の人間らしいと気付くレオナ。

「この二人が迷惑掛けた様で申し訳ない、ほら二人とも彼女に謝れ。」

「ううう御免。」

「悪かった。」

レオナに言われキリエとチカはその少女に素直に謝る、何時もは強気の二人も流石に悪かったと思ったらしい。

「いえ驚いてしまっただけですから、お二人ともお気になさらないでください。」

その少女はそう言って微笑む。

「へえ中々出来た娘ね。」

感心した様にザラが言う、キリエとチカとは同じ年の娘に見えないわねと思って。

「皆さんはもしかして羽衣丸の乗員の方ですか?」

少女はふと気付いた様に聞いて来る。

「ああ羽衣丸所属のコトブキ潜航艇隊の者だよ、君は艦隊の人間だろ?」

「はいそうです、なるほど貴女方がコトブキ潜航艇隊の・・・」

そう言ってレオナ達を見ながら微笑む少女。

「ご活躍は前々からお聞きしております、そのコトブキ潜航艇隊の方々とお会いできたのは光栄ですね。」

少女の言葉にレオナ達は思わず顔を見合わせて照れた表情を浮かべてしまう。

「島には休暇で上陸を?」

そんなレオナ達を微笑ましく見ながら少女は聞いて来る。

「その積もりなんだが、ただ何処に行くかは・・・」

「はいパンケーキの美味しいお店に。」

「いやカレーの美味しい店にだよ。」

「クラブサンドイッチの美味しい店に。」

少女の質問にレオナが答えようとした途端、キリエとチカに加えケイトまでリクエスト(?)を言ってきた。

「お前たちは・・・」

眉間に指を当ててレオナは疲れた声を上げ、隣でザラも思わず苦笑してしまう。

「・・・とまあこんな予定だよ、お陰で該当する店を探し梯子せねばならん。」

何しろ皆料理の希望がバラバラなのだから仕方が無いとレオナは内心溜息を付いてしまう。

「なるほど・・・それなら皆さんの希望を一軒で叶えられるお店を紹介しましょうか?」

疲れた表情を浮かべたレオナを見て、その少女が提案して来る。

「それは・・・助かるが、君は大丈夫なのか?」

彼女が艦隊の人間なら島に上陸しているのは何か用事あっての事だろう、それをレオナは気にしたのだが。

「私の用事ならもう済んでいますから、それに艦に戻っても今日はもうする事はありませんので息抜きもかねてご案内いたします。」

こちらの懸念を察し問題ないと言ってくれる少女にレオナとザラは改めて目の前の彼女が聡明な事を認識する。

「ほんと良い娘ね。」

「そうだな・・・あの二人に見習させたいものだな。」

自分の押す料理が如何に良いかと言う事で言い争いをするキリエとチカに心底そう思ってしまうレオナ。

「それでは頼めるか?申し訳ないんだが。」

「はいそれではこちらへ。」

その少女に案内されレオナ達は街へ向かう。

彼女が案内してくれた店は港から30分くらい行った所にある一見普通の食堂の様だった。

「ここです、店の主人は中央海の大きな店で働いていた事があるそうで味は保証します。」

店の入り口で少女はそう説明してくれる。

「中央海の・・・しかしそんな人が何で北方海のここで?」

ザラが不思議そうに聞いて来る。

「ぬるま湯は嫌だ、自分の料理の腕をこの地で試してみたい、からと言う事らしいですね。」

苦笑しつつそう話してくれる少女にレオナとザラも思わず苦笑してしまう。

「パンケーキ美味しいのこのお店?」

「カレー美味しいのかこの店?」

「ここクラブサンドイッチの美味しい店?」

一方の3人はそちらが気になるらしく少女にそう聞いて来る。

「大丈夫ですよ、どんな料理でも完璧に作って見せるがここの主人の売りですから。」

3人の質問に少女は微笑んで答えると3人は歓喜して(ケイトは相変わらず無表情だったが)いる。

「じゃ皆さんどうぞ。」

入り口のドアを開け少女は先頭に立ちレオナ達を店の中に招き入れる。

キリエとチカそれにケイトが少女の後に続き店の中に入って行く。

「しかしそれだけの腕が有るのなら中央海の方が良いような気がするんだが。」

「まあ人それぞれよレオナ、さあ私達も。」

首を捻るレオナを促しザラも店に入って行くのだった。

結果的に言えば少女の話通りで、主人はレオナ達の一見無茶なリクエストに応えて見せた。

「う~ん美味しいよこれ、こんな美味しいパンケーキ生まれて初めて食べたよ。」

「このカレー、辛さと甘みの絶妙な味、やるじゃないかこの店。」

「確かに・・・中央海の有名店の味に匹敵、いや凌駕している。」

3人の反応から味もまた完璧な事が分かりレオナは驚いていた。

「このビール美味しいわね、料理だけでなく酒も旨いなんて。」

樽ビールを飲んだザラはそう言ってレオナ同様驚いていた。

「皆さんに満足してもらって良かったです。」

少女はコーヒーを飲みながら微笑んで言う。

「ああこれ程とは思わなかったよ、君には感謝する。」

レオナもコーヒーを一口飲み少女に感謝の言葉を言う。

そしてふとレオナはまだ彼女の名を聞いていなかった事を今更ながら気づいてしまった

「そう言えば自己紹介まだだったな、私は羽衣丸所属コトブキ潜航艇隊の隊長をしているレオナだ。」

「私は副隊長のザラよ、宜しくね。」

レオナとザラが少女に自己紹介する。

「後は・・・」

そう言ってレオナはキリエ達を見るが、3人とも食べるのに夢中で自己紹介出来る状態で無く、溜息を付いて少女に言う。

「パンケーキに夢中なのがキリエ、カレーがチカ、クラブサンドイッチがケイトだ、それと・・・」

「エンマと申します、以後お見知りおきを。」

レオナの視線を受け優雅に紅茶を飲んでいたエンマがカップを置いて自己紹介する。

「中々美味しい紅茶でしたわ、中央海でもこれ程のものは飲めませんね、わたくしからも感謝させて頂きますわ。」

洗練された動作と表情で礼を言う姿は没落したとは言え、大商会の元お嬢様故か様になっていた。

「ご丁寧にありがとうございます、私はセキュリテイーブルー・N諸島派遣艦隊の更識 簪と言います。」

「更識 簪さんか・・・ちょっと待ってくれ、更識 簪ってまさか?」

「ええ・・・確か守護天使の名前が・・・」

「はい更識 簪と聞いておりますわ・・・」

レオナ、ザラ、エンマは少女の名を聞くと顔を見合わせて暫し沈黙すると・・・

「「「北方海の守護天使!?」」」

3人は店内に叫び声を響かせたのだった。

「「ほぇ?」」

「やはりそうだった。」

間抜けな声を上げるキリエとチカ、納得した様な声のケイトがそれに続いた。

「いや~守護天使だったとはねえ、パンケーキ美味しかったよ。」

「カレーも良かったぜ、流石は守護天使だ。」

すっかり餌付け(笑)されたキリエとチカが肩を抱いたり、背中をバンバン叩き簪と話していた。

「いえ料理と守護天使は関係ないと思いますが・・・」

当の簪はそんなキリエとチカに苦笑しつつ答えていた。

「そうすると私達は天使に道案内させた訳か・・・」

「ははは恐れ多くて罰が当たりそうね。」

レオナとザラはそんな光景を見ながら苦笑しつつ会話していた。

「確かに・・・でもこう言っては何ですが、少々イメージが合わないのではないかと思ってしまいますが。」

エンマはレオナとザラに同調しつつそんな感想を述べる。

「まあそれは・・・」

実を言えばレオナも簪に失礼だと思いつつそう言う感想を抱いていた。

内気で争い事とは無関係な物静かな少女、レオナの出身場所であり支援している孤児院にも似たような娘が居た事を思い出す。

そんな彼女が幾多のシーサーペント戦に於いて高い実績を上げているベテランの艦長と言うのだからレオナは驚きを隠せない。

「まあ会った時から普通の娘じゃない気はしたけど・・・天使だったとはね。」

追加注文した樽ビールを手にしながらザラもレオナとエンマの感想に同調して言う。

仕事柄人を見極める事に長けているザラだったが、普通の娘とは違う物を感じていたとは言えまさかそれ程の相手だっとは想像出来なかった。

「天使様。」

そんなキリエとチカに絡まれ、ザラとレオナ、エンマに注目されていた簪にケイトが話し掛けて来た、顔を至近距離に近づけながら。

「えっと・・・」

無表情な顔を近づけられて簪は思わず引いてしまったが、ケイトは気にした様子も無く、何処から色紙を2枚出して来る。

「サインをお願いする、私の兄であるアレンが貴女のファン、貰えれば彼が喜ぶ。」

天使と呼ばれ業界以外の人々にも人気の有る簪はこうやってサインを頼まれる事は珍しくない。

まあケイトの様に無表情ながら妙な迫力を持って頼まれるのは初めての経験だった簪だが。

「えっと分かりました。」

受け取り簪はサインを、と言っても自分の名をローマ字表記で書くだけだが、色紙に記入する。

「『アレンへ』と書いて欲しい、あと出来ればもう一枚の方には『ケイトへ』と。」

まあこう言う依頼もよくあるので簪はサインの下にそう記入するとケイトに色紙を返す。

「アレン共々感謝する・・・これは家宝にする。」

色紙を胸に抱きケイトは感謝の言葉を言う、それは無表情ながら歓喜している事が、知り合ったばかりの簪にも分かるほどだった。

「良かったですが・・・家宝はちょっと。」

その様子に若干引きながら困った顔で簪は言うのだが、ケイトは色紙を抱きしめて歓喜(表情的にはそう見えないが)して気付いていない。

「・・・アレンが天使のファンだとは知っていたが、ケイトもそうだったのか。」

アレンとは長い付き合いのレオナは前にそう聞いた覚えがあったが、妹であるケイトもそうだった事を今知ったのだった。

「なるほどね・・・やに天使に詳しいとは思ったけど、そう事だったのね。」

苦笑しつつザラがそんなケイトを見ながら言う。

「わくしもですわ、でも兄の事を理由に自分も名前付きのサインを頼むなんて、あの娘もちゃっかりしてますわね。」

別の意味で感心した様に言うエンマ。

「へえ~これが天使のサインか。」

「何だよく見せろよ。」

「・・・見るだけ、絶対触らないで。」

簪のサインを珍しそうに見様とするキリエとチカにケイトは十分二人から離した位置で見せる。

「・・・ふう。」

3人から解放され溜息を付く簪にレオナが話し掛けて来る。

「うちの連中が迷惑を掛けたしまってすまんな更識さん。」

申し訳なさそうな表情で言って来るレオナに簪は苦笑しつつ答える。

「いえ気にしないで下さい・・・まあ何時もの事ですし。」

疲れた様な声を出す簪にレオナとザラは顔を見合わせて苦笑する。

「天使様と呼ばれるのも大変みたいだな。」

「人気者故かしらね。」

「それはまあ確かに・・・私には過分な称号だとは思うのですが。」

レオナとザラの言葉に簪は顔を赤くし俯いてしまう。

こう言う所は年相応だなとレオナは恥じらっている簪を見てレオナは思ったのだが。

「私は自分の出来る事をやっているだけです、決して特別な事をしている訳では無いのですが。」

簪がそう言うのを聞いてレオナは彼女を見つめてしまった、先程思った『内気で争い事とは無関係な物静かな少女』と言う印象と違うと思って。

『自分の出来る事をやっているだけ。』

言葉だけを聞いていれば普通に聞こえるが、簪が成して来た事を考えればそれが決して容易いな事では無い事はレオナには理解出来る。

そこには慢心も虚栄も無く、淡々と語るだけの『歴戦の者』の姿があった。

「『自分の出来る事をやっているだけ。』ですか、でもそう言って実際に出来る人間は限られていると思いますわ更識さん。」

紅茶のカップを机の上に置き、エンマが悪戯っぽい表情で言って来る。

「それは多分私が諦めの悪い人間だからです、途中で放り出す事が出来ない性格なもので、お陰で姉からは頑固者とよく言われます。」

エンマの問いに肩を竦めて答える簪を見て、益々最初に抱いた印象が変わってゆくレオナ。

容姿に反してと言うと失礼かもしれないが、簪はどんな時でも己の信念を貫き通す人間だとレオナは確信する。

「本当に彼女ってあの娘達と同じ年なのかしらね?」

今も傍らでサインを巡って騒いでいるキリエ達を見て苦笑するザラ。

「それで良いと思いますザラさん、彼女達には彼女達なりに素晴らしい所を持っていっらしゃる筈ですから。」

「あら・・・」

ザラが苦笑して言った言葉に簪は微笑みを浮かべながら答える、それは深い慈愛を持って皆を見守る・・・

「なるほどね天使と呼ばれる訳ね貴女は。」

「えっとザラさん?」

ザラの返しに再び年相応の姿に戻った簪にレオナとエンマも微笑む。

「ああ確かにな。」

「天使など信じない私でも、信じたくなる程ですわ。」

3人の称賛の言葉に簪は益々動揺した姿を見せるのだった。

 

「今日は助かったよ更識さん。」

「いえお役に立てて良かったですレオナさん。」

食事を終え、一緒に店の前に出て来た簪にレオナはそう礼を言う。

そんなレオナに簪は微笑ながら答える。

「お酒も旨かったし、何より天使様と話せたしね。」

「・・・勘弁して下さいザラさん。」

レオナの隣に立ちウィンクしながら言って来るザラに簪は困った様な表情を浮かべ答える。

「そうですわね・・・紅茶も良かったし私もそう思いますわ。」

「エンマさんまで、ってケイトさん?」

ザラに加えエンマにまで言われ困っていた簪は突然ケイトに顔を至近距離にまで近づけられる。

「サイン、兄と共に深い感謝をする守護天使様。」

無表情ながら目を煌めかせて言うケイトに簪は少々逃げ腰になってしまう。

「パンケーキ良かったよ、いやあ流石は天使様だ。」

「おう!ここのカレー気に入ったぜ天使様。」

先程の様にキリエに肩を抱かれ、チカに背中を叩かれる簪。

「今日一日ですっかり気に入られた様だな。」

そんな光景を見ながらレオナは苦笑しつつ言う。

「まああの娘達は子供だからね・・・天使様は慕われるわよね。」

「ケイトも天使様への熱狂度が更に増した様ですわね。」

レオナ同様苦笑しつつザラとエンマもその光景を見ながら言う。

「あの・・・出来れば助けて頂くと助かるのですが。」

キリエ達に絡まれる簪の声にレオナは笑うと近づいて来て言う。

「ほらお前たち行くぞ、そろそろ帰還の時間だ。」

そう言って3人を簪から引き離す。

「それじゃ更識さん世話になった、機会があったらまた会おう。」

少々不満げな3人に苦笑しつつレオナは簪に手を差し出す。

「はいレオナ隊長・・・多分また早いうちにお会いする事になるとは思いますが。」

そう言って簪はレオナの手を握り握手する。

そんな意味深な言葉にレオナは首を捻るが、簪はそれ以上何も言わずに微笑むだけだった。

「それでは失礼します皆さん。」

そう言って一礼すると名無し猫行きの連絡艇に簪は乗船して行く。

「・・・今のは?」

「さあ私にもよく分からないけど。」

レオナの疑問にザラは肩を竦めて答える。

「レオナ早く行こうよ、風呂入りたいし。」

二人が先程の簪の言った事を考えているとレオナが声を掛けて来る。

既にエンマ達は羽衣丸行きの連絡艇に乗り込んで待っている。

「ああ今行く、ザラ。」

ザラに声を掛けレオナは行こうとして、桟橋を離れ名無し猫へ向かって行く簪の乗った連絡艇を見る。

「まあ気にしてもしょうがないか。」

そう考えレオナはザラと共に乗船すると連絡艇は羽衣丸へ向かって行ったのだった。

 

レオナが羽衣丸と自分達コトブキ潜航艇隊が派遣艦隊に所属する事になる事を知るのはこの後すぐである。

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