「ねえ2人ともお姉さんと喧嘩した時ってどんな感じなの?」
それは簪が愛里寿とみほと共にボコミュージアムに行った時の事だった。
展示を見て回り、劇場でボコショーを鑑賞した後休憩を兼ねてカフェテリアでお茶を飲んで会話していた中愛里寿が聞いて来たのだった。
尋ねられた簪はみほと顔を見合わせた後に愛里寿に聞き返す。
「えっと何故そんな事を?」
聞き返された愛里寿は何故そんな事を聞いたのかその理由を話してくれる。
一人っ子である愛里寿にとって姉妹と言う関係には強い憧れがあり、姉妹達の喧嘩はどんなものなのかと愛里寿は興味もったらしい。
「まあそれなら分かりますが・・・私達のは参考になるかと言われると。」
「そうですね、私達のところは・・・その特殊ですから。」
簪とみほの姉である楯無とまほの妹愛の激しさ(笑)は有名だ、そんな姉妹の実例が果たして参考になのか疑問だと2人は思った。
最近それが酷くなって来たなと簪とみほは遠い目をして深い溜息を付く。
「「そう言う所が無ければ尊敬出来る姉なのに・・・」」
片や若いながら商会を仕切る楯無、片や対シーサーペントにおいて抜群の戦果を上げるまほ。
自分達に関しなければ2人の姉は本当に優秀な人間なのを簪とみほはよく知っている。
「・・・えっと2人とも何か御免なさい。」
黄昏る簪とみほを見て何だか申し訳なくなり謝る愛里寿、2人とって姉の話題は触れてはいけないものだったと気付いたらしい。
「いえこちらこそ御免なさいね・・・そうですね喧嘩した時ですか。」
幼い頃は別にしても最近は喧嘩になっていないなと簪、こちらが怒っても暖簾に腕押しで終わってしまう事が多い。
「いえ一度だけ大喧嘩になった事がありましたね。」
ふと思い出した記憶、まあ例の如く後付けのものだがそんな事があったなと簪は思い出していた。
「簪さんとお姉さんが?」
みほが驚いた表情で聞き返して来る、もちろん愛里寿も同様の様だった。
「ええあれは・・・私が中央海の海洋学校に行きたいと言った時ですね。」
その当時は両親が無くなり楯無が商会長になったばかりの頃だった。
商会の経営を軌道に乗せる為楯無は飛び回っていた・・・両親を失った事を悲しむ間も無い位に。
そんな姉を見ていた簪は商会の所有する駆逐艦の艦長になり姉を助けたいと考えた。
前経営者だった両親が亡くなった所為で艦長を始め乗員の大半が辞めてしまったので乗員の補充を行おうとしていたのだが。
乗員はともかく問題は指揮する艦長だった、商会外から招くとなると資金的にきつい事になり楯無を悩ませていた。
だから簪は中央海の海洋学校に行き艦長としてのスキルを習得し艦の指揮を執る積もりだった・・・らしい。
まあその辺は自分の記憶ながら後付けの所為で何となくそうだったという感じだが。
だが楯無にその意思を伝えた所強硬に反対されたのだった。
「簪ちゃんは何もしなくて良いの。」
その言葉に強いショックを受け簪はアニメの様に楯無をそれ以後拒絶し姉妹関係は最悪の状態になってしまったのだ。
ちなみに最悪の状態は簪が中央海へ出発する前日まで続いたのだが。
前日の夜楯無が簪の部屋にやって来ると、涙をボロボロに零しながら自分の心情を話し始めたのだ。
「父や母を失っただけでなく簪ちゃんも失うと思ってあんなこと言ってしまったの・・・ごめんなさい。」
それまで簪の前では涙を流したり弱気な言葉を漏らしたりする事も無かった楯無がだ。
その姿に驚いたが自分の気持ちを話してくれた楯無に簪もまた泣きながら自分の心情を話し姉妹は和解できたのだった。
翌日楯無は心配な気持ちを隠しつつ「待っているから。」と言って送り出してくれた。
「そんな事が有ったんだ・・・」
話を聞いていた愛里寿がそんな姉妹の姿に感激した表情で簪の両手を握って来る。
「・・・ただ帰ってきたら今の様になってしまったんですが。」
ため息を付いて簪が言うとみほと愛里寿が顔を見合わせて苦笑する。
2人ともその時の事が原因で楯無が今の様になったのだと気づいたからだ。
もちろん簪も気づいておりだから強く拒絶できないでいるのだ。
「私の方も・・・大洗商会に移籍してからだから簪さんと似た様なものだし。」
ふとみほがそう言って遠い目をする、まあ彼女の時は商会長であった母しほが説得してくれたので喧嘩までは行かなかったが。
楯無同様妹至上主義に変貌しみほを悩ませる点は変わらない。
そんな簪とみほを見て愛里寿は2人が自分に対して厳しいながらも親しみを見せるのは自分達の姉を反面教師しているからだと気づく。
だから簪とみほには悪いが愛里寿は自分は良い姉達を持てて幸せだと密かに思うのだった。
その後簪とみほは気を取り直して愛里寿と共にボコミュージアムを堪能するのだった。
まあ簪とみほがこの愛里寿とのデートを知った姉達の機嫌を取る羽目になったのは何時もの事である。