北方海の守護天使   作:h.hokura

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巨大シーサーペント編は今回で一区切りです。
まだ後で触れる話があるかもしれませんが。

あと、後半グロイ表現が入りますので注意願います。
そんなに酷く無いと思いますが。

そうりゅうの設定があれですが後悔はしてません(笑)。
もうこうなったら自分の好きな要素をどんどん入れていくつもりです。




No.08ー巨大シーサーペントとシャル4ー

私は再び方海の奥深い氷の海の下に潜水艦そうりゅうで来ていた。

「もっと早く戻ってきたかったけど。」

「仕方ありませんね、とはいえ時間が掛かり過ぎたのは痛いですね。」

そうりゅうの発令所で私とシャルは会話していた。

本来なら早く戻りたかったのだが、諸々の事情が重なり一ヶ月も掛かってしまった。

 

巨大シーサーペントとの一戦後、港に戻った私とシャルは迎えに来た姉に事態を報告した。

その後、姉は織斑ギルド長と相談し、シーサーペントの出現海域の調査を行う事が決まった。

ただ調査を行えるのはそうりゅうしかないのだが、そうするとまほろばを動かす乗員が足りなくなって商会の業務に支障が出てしまう事が問題だった、護衛や救助の依頼は無くなる訳ではないからだ。

そこで我らが束さんの登場だ、「まっかせてよ!」と言って瞬く間にそうりゅうを魔改造したのだ。

お蔭でそうりゅうは10人程度の乗員で動かせるまでに自動化され、兵装と装備も最新にされた。

かなりチートな改造を施された訳だ、流石は束さんだ、天災の名は伊達ではないらしい。

そしてそうりゅうの指揮はそのまま私が取る事になったのだけど、指揮だけだなくそうりゅうの運行を司る役目まで付いてきてしまったのだ。

・・・それってメンタルモデルじゃないのか?

最初に束さんから聞かされた時に私は思ってしまった。

私のそんな疑問は結局そのままで魔改造は進められ、一ヶ月後完了し今こうして戻って来たのだった。

 

「深度80、速度7ノット異常無し。周囲の状況に変化は?」

「変化はありません艦長・・・中々素晴らしい操艦ですね。」

センサー担当の娘の賞賛に私は苦笑する。

「まさか自分で操艦するとは思ってみなっかったけどね。」

座席に座り両手を左右にあるキボードに置きながら、これってアニメでもあったなと思い出す。

ISスーツモドキを着てキボード操作する姿は絵的に可笑しくないかも知れないけど少々複雑だ。

「それにしても簪が甲型潜航艇の操艇資格を持っていたなんて僕も驚いたよ。」

甲型潜航艇の操艇資格、言わばゲームにおけるスキルの事だが、これを所持し甲型潜航艇というユニットを使用すると、海底のレアアイテムの発見率が大幅に上がる効果がある。

だがハンターでは無い、戦闘艦艦長である私には使い道の無いスキルだった。

じゃ何故そんなスキルを取ったのかいうと、ゲームスタート時に適当に選んだスキルの中にあったのだ。

その資格を持っているからこそそうりゅうを操れるらしいけど・・・

様は操縦システムが同じなのだ、これは私が操艇資格を持っている事を知った束さんの仕業だ。

「それがこんな場面で役に立つとは思いませんでしたよ。」

シャルの言葉に肩を竦める私、何しろ束さんに言われるまで忘れていたのだから。

「さてそろそろ出現海域ですか・・・」

キボードと一緒に設置されたディスプレイに表示される航法情報を確認し、艦の深度を上げる。

航法から艦のコントロールまで一人でやるというのはゲームをプレイしてた時みたいだ。

キボードというところが特に・・・

「マルチセンサーポストを洋上に、共用ディスプレイ作動。」

私の指示でセンサー担当の娘が司令塔上に有るマルチセンサーポスト、カメラや電探用アンテナ、各種環境センサーが纏められてものを洋上に上げる。

今までと違い私だけが潜望鏡で外部を覗き込むのではなく、発令所に居る乗員で見れるというのは便利になったけど、潜水艦らしく無くなったのは寂しい気がする。

発令所もかなり変更され、一段高い所にある私の座席の前に3人の乗員達が座る。

火器管制担当とセンサー担当、機関・ダメコン担当の娘達だ。

3人ともまほろばの各担当において極めて優秀な乗員達だ、本当なら彼女達を引き抜くのは避けたかったけど、志願してくれたのを無下に出来ずそうりゅうに乗ってもらっている。

それ以外の乗員達は、魚雷・艦載火器管制室や機関管制室に配置されている。

ちなみにシャルは私の隣にある補助席に座っている。

やがて全員の前に設置された大型の共用ディスプレイに流氷の浮かぶ様子が映し出される。

「レーダーとソナーに反応ありますか?」

「・・・両方に現在のところ反応無しです。」

私の問いにセンサー担当の娘は複合ディスプレイ、レーダーとソナーの情報を同時に表示する、を見ながら答える。

「シーサーペントを最初に見たのはここだったね。」

シャルは共用ディスプレイを見ながら言う、私は頷き答える。

「そうですね、あの時はここから北の方から接近し来た様でしたが。」

後で相川副長に聞いた報告では艦の聴音機がそちらから接近して来るのを補足したとの事だった。

暫し考えた私は指示を出す。

「マルチセンサーポスト収容して下さい。」

「収容・・・完了です艦長。」

「では潜航します。」

センサー担当の報告に私は答えるとキボードを操作しそうりゅうを今度は潜航させる。

「深度50・60・70。」

所定の深度に達するとそうりゅうを水平に戻す。

「このまま前進します、警戒を厳重にお願いします。」

「了解です艦長。」

そうしてそうりゅうは暫らく前進を続け、やがて岩礁地帯に囲まれた海域に進入して行く。

「かなり奥に来たねそろそろ・・・」

シャルが私にそう話しかけて来た瞬間だった、艦が突然激しい振動に襲われ、左舷側に傾く。

「「「「きゃあ!」」」

乗員の娘やシャルが悲鳴を上げる。

「・・・これは?」

手元のディスプレイを見た私は艦が横滑りしているの確認する、どうやら海流に巻き込まれた様だった、それもかなり早い。

「皆さんベルト締めて下さい、シャル貴女も急いで。」

シャル達は慌ててシートベルトを締める、もちろん私も。

全員のベルト着用を確認した私は艦の姿勢を回復させようとする。

「メインモーター全開!」

「メインモーター全開!」

私の指示に復唱が帰ってくると、ディスプレイの速度表示の数値が上がって行く。

そして唐突に艦の揺れが止まる、海流を抜けた様だった。

私はディスプレイを見てそれを確認すると艦の姿勢を回復させる。

「い、今のは簪?」

シャルが席からずり落ちそうな身体を戻しながら聞いてくる。

「かなり早い海流ですね・・・流れの方位と速度は?」

「北西方向に7ノットで流れています、データそちらに送ります。」

センサー担当の娘が報告してくれる、私はディスプレイに表示される海図上に海流の流れが重ねられるのを見る。

「シャル、これを見て貰えますか?」

私が見ている海図を、シャルの席に設置されているディスプレイに表示する。

それを見てシャルは驚いた表情を浮かべて私を見て言う。

「・・・まるで壁だね、この海域を塞いでいる。」

その意見に私は頷くの見て、シャルは再びディスプレイに目を落とすと呟く。

「成る程ね・・・これで分かったよ、奴の生い立ちがね。」

そう言って顔を上げたシャルの表情はお世辞にもいい顔とは言えなかった。

「生い立ちですか?何があると・・・」

「多分この先に答えがある・・・正直言ってあまり気持ちの良い話じゃないね。」

私の疑問を途中で遮ってシャルは肩を竦めて黙る。

「・・・・」

私は溜息を付くとディスプレイ上の海図を見る、壁・・・つまりこの海域は海流で閉じられていて?

「艦長、前方の岩礁まで2千です。」

センサー担当の声に顔を上げて私は指示する。

「メインモーター停止して下さい。」

「メインモーター停止します。」

機関・ダメコン担当が復唱すると艦は速度を落として行き、船足が止まるのがディスプレイに表示される。

停止を確認すると私は深度10まで艦を浮上させるとセンサー担当の娘に指示する。

「マルチセンサーポストを上げて下さい。」

「了解です、マルチセンサーポスト上げます。」

再び前面の共用ディスプレイに洋上の様子が表示される・・・私はそこで妙な悪寒を感じる。

「・・・映像を拡大して下さい、前方の入り江の所です。」

「了解です・・・えっ?」

「「・・・・!!」」

共用ディスプレイを見ていた乗員の娘達が全員絶句している。

「・・・シャル、貴女が言っていたのはこの事なんですね?」

彼女の顔は青ざめていた、いや私も同様だろう、それほど今写されている光景は酷いものだった。

そこにはシーサーペントの卵、いや卵だった物が散乱している・・・と言うよりも食い散らされていると言った方が正しいだろう。

しかもそれだけでは無かった、幼生体らしき物も同様に食い散らされた状態で散らばっているのだ。

「・・・う!」

火器管制担当の娘が目を逸らし口を慌てて押さえる、吐き気を覚えた様だったが誰も咎めない。

ここに居る者全員が同じ気持ちだったからだ、私も胃から熱いものが上がって来そうになり思わず胸を押さえてしまう。

ずっとシーサーペントを倒して来たから、連中の屍骸など何度も見て来たつもりだったが、そんな私達ですら目を背けたくなる光景だった。

「あの巨大シーサーペントはここで生まれた。しかし閉ざされた海域だから餌になるものが極端に少なかった、だから卵や幼生体を食らって成長して行ったんだと思う。」

その光景を見ながらシャルは淡々と話を続ける。

「ここはシーサーペント達の繁殖地の様だから、その後も奴は同様に卵や幼生体を・・・襲っていった。ある程度成長してからは多分ここに産卵に来た他のシーサーペントさえも。」

「・・・そしてあんな巨大な姿まで成長したと言う事ですか?」

私の声は・・・自分でも判るくらい震えていた。

シャルは答えなかった、だがその沈黙が全てを肯定している事を私は認識した。

「か、艦長、レーダーに反応、後方から接近してくるものが。」

突然センサー担当の娘が叫ぶ。

「後方の映像を。」

共用ディスプレイが艦後方の映像を移す、最初は小さく分からなかったが、映像が拡大されてそのその正体に気付く。

そうあの巨大シーサーペントだ、先の戦いでダメージを受けた為か動きは緩慢だがこちらに向かってくる。

「急速潜航します、マルチセンサーポスト収容急いで。」

「は、はい艦長。」

センサー担当の復唱を最後まで聞かず私はそうりゅうを急速に潜航させ方向転換する。

かなり急なダウントリムなうえ乱暴な方向転換に誰かが置いたボールペンが床に落ちる。

「全魚雷発射管装填。」

「はい、全魚雷発射管装填。」

火器管制担当の娘がディスプレイを見ながら操作する。

「距離3千、速度は前と比べると遅い様ですが・・・」

「まだ傷が癒えていないらしいね、そして自分のテリトリーに侵入されて怒っているのか。」

センサー担当の声に共用ディスプレイを見ていたシャルが皮肉な面持ちで言う。

「全魚雷発射管装填完了、目標データ入力よし。」

「全魚雷発射管発射!」

奴をこのままにしておけない、その時私の心を支配していたのは恐怖だった。

先程の光景が、姉や知っている人々の姿に重なる・・・冗談じゃない、そんな事させるものか・・・

「魚雷到達まで5・4・3・2・」

私はカウントダウンを聞きながらそうりゅうを海底に接触ぎりぎりまで潜航させながら叫ぶ。

「メインモーター出力最大に!」

「メインモーター出力最大!」

手元のディスプレイの速力表示が跳ね上がる。

「・1・到達!」

激しい振動が襲いそうりゅうを揺さぶる、と同時にセンサー担当の娘が報告する。

「目標下通過します。」

揺さぶられながらそうりゅうは再び海流を突破しこの海域から急速に離れるのだった。

 

海域から離脱後、私はそうりゅうを浮上させ、シャルと共に司令塔上に上がった。

「あれで死んだと思うかい簪?」

双眼鏡でその海域を見ている私の傍に立ちシャルが聞いてくる。

「・・・わかりません、でも今確認する気にはなりませんね。」

そう言って私は双眼鏡を下ろす、先程の映像が思い浮かび暫らく行く気にならない。

私は司令塔上にあるインターホンを使い発令所を呼び出す。

「レーダーとソナーの方はどうですか?」

『まったく反応なしです艦長。』

「分かりました、引き続き監視をお願いします。」

『了解です。』

インターホンを切り私は溜息を付く。

「どっちにしろ当分奴は出てこないだろうね。あれでまたかなりのダメージを負ったしね。」

シャルは私同様に溜息を付きながら私の肩を抱いてくる。

何時もなら恥ずかしさで困る私だが、この時ばかりは彼女の温もりが有難かった。

正直言って一人のままだったら震えて座り込んでしまいそうだったから。

「・・・暫らくたったら帰港しましょうか。」

「うん・・・」

暫し司令塔上でシャルに肩を抱かれながら二人で海域を見つめ続けた。

 

17:45

巨大シーサーペント調査終了。

 




次回以降は短編を幾つか書く予定です。
それでは。
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