北方海の守護天使   作:h.hokura

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No.12ー織斑 一夏と更識 簪3-

「艦長、水晶島まであと50分です。」

航海長の娘が海図台から顔を上げて報告してくれる。

「分かりました。」

私は艦長席から立ち上がると艦橋の窓まで行き双眼鏡を覗く。

前方には島影が見えてくる、暗礁海域が近い。

「総員警戒配置について下さい。あと、織斑さん達を艦橋へ。」

「総員警戒配置!総員警戒配置!」

「織斑さん達を艦橋へ案内して下さい。」

振向いて指示を出すと乗員の娘達の復唱が帰ってくる。

艦内にアラームが鳴り響くのが分かる、今頃乗員の娘達は駆け足で配置に付いているだろう。

「相川副長、見張りの配置は問題ありませんか?」

傍らに立った相川副長に私が聞く。

「はい、艦首と艦尾に2人、左右舷側に3人配置完了です。」

「ありがとう。」

そう言って艦首の方を見ると命綱を付け、艦内服(IS学園制服)に救命胴衣とヘルメット姿の乗員の娘達が見える。

暗礁海域を通過する為、通常の見張り員だけでは足りないので臨時に配置しているのだ。

「織斑さん達をお連れしました。」

案内役の乗員の娘に連れられ、織斑 一夏達が艦橋に入ってくる。

「更識艦長、着いたのかい?」

織斑 一夏の問いに私は頷きながら答える。

「はい、と言ってもこれからが本番ですが。」

水晶島に到着するには暗礁海域を突破しなければならないのだ。

「大丈夫なんでしょうねあんた?」

凰 鈴音が睨みつけながら聞いてくる、ここ最近ですっかり敵視されてしまった。

「最善を尽くしますとしか言えませんね。」

「ちょっとそれでは困りますわ。」

私の返答が気に入らなかったのかセシリア・オルコットも睨みつけてくる。

「おい2人共そのくらいにしろって、今は艦長を信じるしかないんだから。」

織斑 一夏がたしなめると2人は不満そうだが黙る。

出来ればそのまま静かにしていて欲しいものだ、これから暫らくは相手に出来ないのだから。

「前進半速、見張りを厳重にお願いします。」

「前進半速。」

「見張員、監視を厳重にして下さい。」

指示に復唱し乗員の娘達が動き始める、さあこれからが正念場になる。

やがてまほろばが進むにつれ艦体が揺れ始める、最初は小さく、そし大きく。

「まほろば、左舷方向に流されます。」

操舵手の娘が報告すると同時に揺れが襲ってくる。

「ちょっと何?」

その揺れに凰 鈴音が倒れそうになる。

「危ない!鈴。」

織斑 一夏が慌てて後ろから抱きしめる様にして支える。

「どこ触ってるのよ変態!」

「暴れるな鈴!」

「2人共破廉恥ですわ。」

騒ぎ出す3人、この時に何をやってるんだか、私は呆れてしまう。

『艦首見張りより艦橋へ、前方より漂流物急速に接近してきます。』

「面舵20!」

「面舵20。」

私の指示に操舵手の娘が答え、まほろばが進路を変える。

「左舷漂流物通過します。」

左舷側見張り員の声が響く、直後まほろばの左側を何かが通過してゆく。

「い、今のは一体何のですか?」

セシリア・オルコットが蒼白な顔をして聞いてくる。

それは明らかに船・・・但し殆ど原型を留めていないのでそう呼べないかもしれないが、だった。

「・・・ここで難破した船の成れの果てです、ああなりたくなかったら、静かにして艦長の集中力を妨げないで下さい。」

相川副長が睨み付けながら言う、どうも前に私を怒らせた事で、副長達乗員は3人を快く思っていないらしい。

「どういう意味・・・」

反論しようとしたセシリア・オルコットは、周りの副長や乗員の娘達に睨まれ口を閉じる。

『前方、更に漂流物、多数接近してくる。』

「取り舵40、前進全速。揺れが酷くなります掴まって下さい。」

私は3人にそう告げる。

まほろばが速度を上げ、進路を変えると今度は右舷側を漂流物が通り過ぎる。

ばらばらになった船と思しき物体だった、3人の表情が強張る。

「艦長、舵が・・・」

操舵手の娘が焦った声を上げる、海流に引っ張られ旨く操舵出来ない様だった。

すぐさま近くにいた相川副長が駆けつけ、一緒に舵を操作する。

この辺は皆慣れたもので、私の指示が無くてもやってくれるので私は助かっている。

「ほら大丈夫?」

「助かります副長。」

「機関室、状態を報告して。」

『こちら機関室、かなり加熱してますがまだいけます。』

誰もが自分の役目を冷静にこなしてくれる、本当に頼りに出来る娘達だと思う。

その様子に織斑 一夏達も感心した表情を浮かべている。

「たいしたものだな。」

「う、うん凄いわ。」

「これが守護天使の艦というわけですわね。」

 

激しい海流を抜け、ようやくまほろばは島に到着する。

「艦長、艦体各部に異常なし、まあ機関が少々オバーヒート気味ですが。」

相川副長の報告に私は頷く、どうやら往路は問題なかった様だ、まだ復路があるけど。

「さて織斑さん、これからは貴方達の番です。ここまでお連れしたのですから頑張って下さい。」

私が3人の方を向いて言うと織斑 一夏は親指を上げて答える。

「ああ、更識艦長や乗員の皆の尽力には答えて見せるぜ。」

爽やかな、アニメではよく見せた笑顔をする織斑 一夏。

「当たり前でしょう、あんた達には負けないわよ。」

「皆さんの協力には感謝いたしますわ・・・私も負けるつもりはありませんわ。」

後の2人は何だかライバル心丸出しだった、恋敵(もちろん私にはそんな気は無い。)が彼の前で良いところを見せたと思ってでもいるのだろう、私は内苦笑する。

「ボートを下ろして下さい、操作は問題ありませんね?」

私の問い掛けにセシリア・オルコットが優雅に微笑んで答える。

「もちろんですわ、このセシリア・オルコットに問題などある筈はありませんわ。」

「その割には時々へまやるけどね。」

「何か言いましたか凰 鈴音さん。」

「別にセシリア・オルコットさん。」

「ははは・・・行こうかセシリア、鈴。」

何時もの2人に織斑 一夏は引きつった笑みを浮かべる・・・大変だとは思うが同情はしない。

3人は案内の娘に連れられ艦橋を出てゆく。

「大丈夫なんですかねあの連中?」

相川副長が呆れた様子で見送る、他の娘達も似たような感じだ。

「・・・まあ、あれでもベテランのハンターですからね大丈夫でしょう。」

私は皆の様子に肩を竦めつつ答えるのだった。

 

結果的に彼らは目的を果たした、ただ道中色々あった様で、睨みあう女性陣と疲れきった表情の彼がだったが。

ちなみに彼らが依頼された回収物だけど、昔ここに居た技師の私物、家族のアルバムだったらしい。

 

復路については特に問題は無く、無事港に着いた。

「今回は助かったよ更識艦長、サンキューな。」

満面の笑顔でお礼を言ってくる織斑 一夏。

「・・・一応礼は言っておくわ、認めたわけじゃないけどね。」

「守護天使の名は嘘では無い様ですわね、まあ負けるつもりはありませんが。」

この2人は相変わらずだ、何だかライバル認定されてしまった様だ、恋愛の方で。

「いえ、私は依頼を普通に遂行しただけですよ、礼には及びません。」

握手を求めてきた織斑 一夏の手を握りながら、彼女達の視線がきついが、答える。

「また一緒に仕事をしてくれよな。」

「・・・機会があれば。」

出来れば避けたいところだ、彼の後ろで睨みつけている彼女達が居るし・・・

帰って行く3人を見送りながら私はそう思った・・・この世界が許してくれるか分からないけど。

 

18:15

水晶島へ向かうハンターチームの輸送及び護衛完了。

 

 




これでISヒロインはあと一人ですね。
彼女については後の話で登場させるつもりです。

それでは。
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