北方海の守護天使   作:h.hokura

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タイプ11の魚雷艇は、海上自衛隊で使われていた「魚雷艇11号型」がモデルです。
・・・知って人、どのくらいいるかな(笑)。



No.14ー織斑 千冬2ー

ドック事務所を出た私達はクロエさんの先導で進む。

どうやら小型船用のドックに向かう様だった。

そしてクロエさんはあるドックの前に着くと持って来たキー束から一本取り出すと、鍵穴に差し込む。

「皆様、お入り下さい。」

扉を開け入って行くクロエさんに続き、私達もドックに入って行く。

するとドック内が明るくなる、クロエさんが照明を付けた様だった。

「これは・・・」

織斑ギルド長がそれを見て呟く。

私も本音も同様に見つめる、そこにある船いや艇と言った方が良いかもしれない。

左右の舷側に魚雷発射管と前後の甲板に機関砲を装備した小型艇、これって・・・

「クロエさんもしかしてこの小型艇って?」

私の問いにクロエさんは微笑みながら答える。

「はい、タイプ11の魚雷艇です簪様。」

魚雷艇・・・ゲームでも使用可能なだったけど、その扱い辛さからか人気は無かった物だ。

確かに攻撃力は有るのだが、耐久値が低く、航続力に乏しかったから。

「使えるのかこの魚雷艇は?」

魚雷艇を前に織斑ギルド長がクロエさんに問い掛ける。

「はい、束様が色々手を加えていますが、普通に使うには問題ありません。」

と言う事はこれもそうりゅう同様にチートに改造されているのだろう。

「必用な乗員は?」

「操艇者と火器管制、センサーに機関担当の4名いれば動かせます。」

この辺もそうりゅうと同じ感じだ、いかにも束さんらしい。

「更識艦長、動かせるか?」

「はい、大丈夫ですよ。」

ゲームで使った事があるせいか、私は扱える事になっている。

まあ艦長という役柄か、大抵の船は操作可能なスキルを私は持っていたりする。

「火器管制は私がやろう、後2人か。」

「ギルド長、それなら私が機関担当をいたします。」

クロエさんが申し出てくる、私と織斑ギルド長は顔を見合わせる。

「これでも扱いには慣れておりますから御安心を。」

流石あの束さんの助手を務めているだけはある、クロエさん自身もかなり優秀だった。

とここまでは有り得るとは思っていたのだけど、次の展開は予想出来なかった。

「それじゃ~センサー~は私にお任せだよ~」

本音がそんな事を言い出すとは・・・

「布仏がか?・・・更識艦長どうなんだ?」

問われた私は肩を竦めて答える。

「・・・一応出来る筈です、前に一度扱ってもらった事がありましたけど。」

商会の事務担当である本音だが、実はセンサーの扱いも出来るスキルがあったりする。

「でも本音、貴女は海に出たくないと前に言ってけど?」

見事な操作だったので、艦に乗らないかと聞いた事があった。

「う~ん~止めておくよ~私泳げないし~」

そう言って断られた、本音らしいなとその時私は思ったものだった。

「そんな~こと言ってられない~から~」

両手をぐっと握り締め本音は私の顔を見つめてくる、何時もはのんびりした彼女だが、その目は本気な事は良く分かった。

だから私は織斑ギルド長を見て答える。

「腕は私が保障しますギルド長。」

「・・・分かった、布仏頼めるか?」

「~OK任せて~」

ギルド長の言葉に本音は力強く頷いて承諾する。

「よしクロエ、出港準備はどのくらい掛かる?」

「艇のチェックと補給で1時間、ですが皆様に手伝って頂ければ30分で済ませてみせます。」

クロエさんが胸に手を当てて答える、その姿はとても力強い感じを受ける。

「分かった、更識艦長、布仏頼むぞ。」

「はい。」

「~うん~」

 

早速準備に入る私達、燃料の補給と魚雷や弾薬の搭載を済ませ、艇のチェックを行う。

「航法システムのチェックはOKです。」

「火器管制は・・・驚いたなここまで自動化されているとは。」

艇外のチェックをクロエさんと本音が行い、私とギルド長は操舵室内のチェックを行っていた。

「この辺は流石束さんですね、航法と操舵も1人で問題なく扱えます。」

まさに天災いや天才だと今更ながら思う・・・日頃の言動を見ているとそうは見えないけど。

「更識艦長・・・その・・・色々世話を掛けて申し訳なかった。」

一息ついたところで、畏まった感じで織斑ギルド長が話しかけてくる。

「今更ですよ織斑ギルド長、ここまで関わったんですから、私も助けたいという気持ちですし。」

微笑みながら私は答える、その気持ちに嘘は無い。

「そうか、お前らしいな・・・私もそうだ、出来れば助けたい、そう思っている。」

座席に座り自嘲気味に織斑ギルド長は話す。

「今日ギルドに慌てて駆け込んで来た親達を見て・・・かっての自分を見ている様だった。」

「それって・・・」

視線を窓の外、ドックの壁に向けながら彼女は話し続ける。

「うちの両親も昔遭難して亡くなった、その時は無力な自分を呪ったものだったよ、あの親達もそうなんだと思ったら居ても立ってもいられなくなった、恥かしい話だが。」

視線を私に戻し織斑ギルド長は溜息を付く。

「ギルドの長としては誉められた事ではないな、もっと冷静になるべきだったかもしれん。」

「そんな事はありませんよギルド長。貴女は自分の出来る事をなさろうとしたんじゃありませんか、私も出来る事をしないで後悔はしたくはありません。」

織斑ギルド長は私の言葉を聞くと頷いて見せる。

「確かにそうだな、やらないで後悔するより、やって見て後悔した方がましか。」

そう言って彼女は何時もの不適な表情に戻る。

「お前と話せて良かったよ、まあ贖罪を聞いてもらう相手としては最適だからな。」

「それって私が天使と呼ばれているからとか言うんじゃないでしょうね。」

答えずに笑っている織斑ギルド長、私は溜息を付く。

「こちらの点検終りました・・・どうかされましたかギルド長?」

「~簪~ちゃん~どうしたの~?」

操舵室に入って来たクロエさんと本音が私達を見て不思議そうな顔をして聞いてくる。

「大したことじゃないさ、更識艦長はその二つ名通り天使だと言う事さ。」

どや顔で言う織斑ギルド長、2人はきょとんとした後、笑みを浮かべて言ってくる。

「今更です織斑ギルド長、簪様が天使だと言うのは。」

「そうだね~簪ちゃん~天使様だよね~」

2人の言葉に私は頭を抱えたくなった。

「そう言われているだけで・・・分かりましから出発しましょう。」

私の反応を見て笑っている3人を急かす。

 

数分後、小型船専用ドックから私達が乗った魚雷艇は発進した。

 

港から旧ドックまでは魚雷艇では40分くらいで着く。

航法ディスプレイで進路を確認しつつ私は操艇する。

「レーダー~反応~なしだよ~」

本音がセンサー席から報告してくる、今のところ平穏に進んでいる様だ。

やがて前方に旧ドックが見えてくる、明かりがついておらず暗闇に溶け込んで見える。

「そういえばクロエさんは旧ドックに行った事はあるんですか?」

魚雷艇を専用桟橋に向けて航行させながら私はクロエさんに聞く。

「いえ、資料でしか見た事は有りません、束様も無いと思います。」

機関の様子をディスプレイで確認しつつクロエさんが答える。

「何しろ広いですから全貌が未だに把握出来ていません。」

使われなくなって10年以上だっている、何が有るか束さんでも分からないらしい。

「ハンターが何度か内部の調査に行ったらしいがな、そっちもろくな結果が無い。」

火器管制席から織斑ギルド長が溜息まじりに話に加わってくる。

「お蔭で~幽霊屋敷~扱い~だよ~」

これは本音の台詞、彼女によれば数え切れない程の怪談話が有るらしい。

「そう言えば姉さんが、一度解体の話が出たけれど、費用の問題で頓挫してと言ってましたね。」

前に姉がそういう話をしていた事を思いだして私は話す。

何処も費用を出したくなかったらしい、解体後の用途もこれといって無かったのも原因だと言う。

それで厄介者扱いで幽霊屋敷、施設自身に罪は無いのにと苦笑する。

「そろそろ到着しますね。」

桟橋が見てくる、私は艇の速度を落とし近づけて行く。

破損箇所があるが桟橋はまだ使える様だったが慎重に接岸する。

到着後、織斑ギルド長が桟橋に上がり、ロープで艇を固定する。

「これでいい、じゃ行ってくる、クロエ頼むぞ。」

ドック内の捜索はギルド長とクロエさんが担当、私と本音は待機だ。

「2人とも気をつけて下さいね。」

ドックへ向かう2人に私は声を掛ける、彼女達の事だ問題は無いだろうけど。

「ああ、そっちもな。」

「行ってまいります簪様、本音様。」

2人はそう言って頷くと歩き始める、それを私達は黙って見送る。

ふと吹いてきた風に私は身を震わせる。

 

私と本音は艇に戻る、2人が戻るまで周りの監視をしながら待機しなければならない。

「あ~れ~」

20分位して本音が複合ディスプレイを見て声を上げる。

「どうしたの本音?」

「う~ん~レーダー~にちらちらと~何かの反応が~」

「位置は?」

「後方~だよ~」

私の問いに本音が答える。

他の船であればちゃんと反応がある筈だ、覗きこんだディスプレイを見て私は確信する。

「シーサーペントですね、本音は監視を続けて下さい。」

こちらに近づいてくる様子は今のところない様だけど油断は出来ない。

ギルド長とクロエさんの捜索は1時間で、見つけられなくても一旦は戻ってくる筈だ。

私達は緊張しつつ、本音は何時も通りに見えるが、待ち続ける。

あと5分というところで戻ってくる2人、傍らには3人の子供達が居る。

どうやら見つけられたみたいだ、私は操舵室のドアを開けて呼びかける。

「2人共急いで下さい・・・お客が来ます。」

その言葉にギルド長とクロエさんは子供達を連れて艇に駆け寄ってくる。

「来たのか?」

ギルド長の言葉に私は頷く、クロエさんは子供達を補助席に座らしてシートベルトを掛ける。

「よしいいぞ。」

ギルド長とクロエさんがそれぞれの座席に付きシートベルト締める。

「機関始動。」

クロエさんが機関コンソールを操作して報告する。

「発進します、少々荒っぽくなりますので注意して下さい。」

既に固定ロープは外されている、私は艇を桟橋から離し、速度を上げる。

「前方に反応、距離20、急速に接近中。」

流石にのんびりした口調が消えている本音が報告する。

不味い事に帰りのコースと重なっている、どうやた一戦交えないといけない様だった。

「本音、探照灯点灯、魚雷発射用意願いますギルド長!」

「うん了解だよ。」

「分かった発射準備に入る。」

私の指示に織斑ギルド長と本音が復唱する。

「クロエさん、機関全開でお願いします。」

「はい、機関全開にします簪様。」

甲高い機関音が響き、魚雷艇は加速を始める。

「来ます!」

探照灯に照らされたシーサーペントが見える、当然の照射で混乱している。

「魚雷発射用意良し、何時でもいけるぞ更識艦長。」

必死に照射から逃れ様とするシーサーペントに突っ込んで行く。

「今です発射して下さい。」

「魚雷発射する!」

ギルド長が火器コンソールを操作すると、魚雷艇の両舷に設置された発射管から魚雷が放たれる。

それを確認した私は魚雷艇をシーサーペントの鼻先で旋回し離れるコースを取る。

照射で目を眩まされたシーサーペントはこちらを追う事が出来ず、まともに魚雷の直撃を受ける。

凄まじい絶叫を上げ、シーサーペントはドックの方へ向かって行く、受けた傷のせいで暴走し始める。

「あのままだと大型船ドックに一直線だな。」

後方を写しているディスプレイを見てギルド長が呟く、頑丈なドック入り口にぶつかればシーサーペントでもただでは済まないだろう。

そして見守る私達の前でシーサーペントは激突し、咆哮を残し沈んで行く。

私達は顔を見合わせて一息を付く、非常に危うい状態を切り抜けられて。

「さて追加の客が来ない内に帰るぞ、もう一戦なんて御免だからな。」

織斑ギルド長の言葉に私達は頷く。

港に魚雷艇の進路を取り旧ドックから離れる。

 

港に到着すると、子供達の親やギルド関係者が待っていた。

降りてきた子供達を親達が駆け寄って来て抱きしめる、双方とも涙を流している。

「良かったですねギルド長。」

私の言葉に織斑ギルド長も微笑んで答える。

「ああ、良かった本当にな。」

これで彼女の抱えてきたものが少しでも軽くなってくれれば良いのだけど。

「布仏、クロエ、お前達にも感謝する。」

降りてきた本音とクロエさんに織斑ギルド長が頭を下げお礼を言う。

「礼には及びませんよ、私も出来る事をしないで後悔したくありませんから。」

私の方を見て何時もの無表情を崩して悪戯っぽく笑うクロエさん、あの時言った私の言葉を真似て言っているのだろうな、私は苦笑してしまう。

「~うん~私も・・・」

「もういいですよ本音・・・これ以上苛めないで下さい。」

同じ事を言いそうな本音を私は止めると、その場に笑が広がる。

その後、親達に何回も感謝の言葉を掛けられる私達だった。

 

「後は・・・帰って姉さんのご機嫌を直さないと。」

きっと仲間外れにされたと言って拗ねているだろうなと思うと鬱になる、そうなると機嫌を直してもらうにはかなり手間が掛かる姉なのだ。

「私も行こう、責任はあるからな。」

私の肩を叩いてギルド長が言う、正直言ってこの援軍は助かる。

「私も~言って~あげるね~」

まあこっちの援軍は・・・無いよりましかな?

 

この後商会に帰った私を盛大に拗ねた姉が迎えてくれた、そして2人の援護の元、機嫌を直してもらうのに1時間以上費やしてしまったのだった。

 

22:30

旧ドックでの救助活動終了。

 




次回はラウラ・ボーデヴィッヒを登場させる予定です。

それでは。
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