予告した通り今回はラウラ・ボーデヴィッヒ登場です。
但し織斑 一夏へのデレは無しですが。
旧ドックでの救助についての後処理の為、ハンターギルドに赴いた私は早く着き過ぎた事もあり、食堂へ向かった。
ここの造りはIS学園の食堂とそっくりに出来ているので妙な気持ちになる。
そこで私は織斑 一夏、凰 鈴音、セシリア・オルコットの3人に捕まった、いや正確には女性陣にだが。
「ちょうどいいわこっちへ来なさい。」
「貴女とはお話がしたいと思っておりましたわ、構いませんわよね。」
2人共それは素敵な笑顔で、私の両腕を掴みテーブル席に連行された。
「お、おい2人共何を?」
「「女の子同士の話しですので、一夏(さん)はそこで待っていて(下さいませ)。」
声を掛けた織斑 一夏にそう言って待つ様に促す2人、見事な連携だった。
そして座らせられた私の前に陣取る2人、アニメでみたあのシーンを思い出す。
ヒロイン達が更識 簪を尋問する例のシーンを、もっとも他のヒロイン達は居ないけど。
そこからは、凰 鈴音は直球で、セシリア・オルコットは遠まわしに織斑 一夏への私の気持ちを聞いてくる。
どうも前回の事で完全に疑われてしまっているみたいだった。
「別に私はそんな気持ちはありません。」
もちろん私は彼に興味は無いので正直にそう答えたのだけど、疑い深い2人は納得してくれそうもなかった。
「2人共何を言っているか分からないけどそのくらいにしておけよ。」
いや織斑 一夏さん、貴方の事で揉めているんですが、本当に彼は鈍い。
「「一夏(さん)は黙っていて(くださいませ)。」」
何だか前にも見た光景に私は半ば呆れていた時だった。
「ふん、昼間から痴話喧嘩とはな、やはり北方海の奴らは腑抜けているな。」
と食堂内に響く少女の声、私と織斑 一夏達はその声の主を見る。
そこに立っていたのは、長い銀髪に左目に黒い眼帯をした少女、そうISヒロインとしては最後に登場のラウラ・ボーデヴィッヒだった。
2人に尋問されていて私が気付かなかったが、何時の間にか食堂の真ん中に立っていた。
「ち、痴話喧嘩ってあんた一体なによ?!」
「そうですわ、いきなりそんな事をおっしゃるなんて失礼でありませんか。」
凰 鈴音とセシリア・オルコットが食って掛かるが、でも痴話喧嘩なのは間違っていないと思う。
「ふん・・・・」
ラウラ・ボーデヴィッヒは歯牙にも掛けない、一瞬の内に険悪な雰囲気が食堂内に広がる。
私達以外に居たハンター達も、彼女の「腑抜けている。」と言う言葉に怒り顔だ。
「お前達ここで何をしている!?」
その時食堂内に響く声、皆が振向く先に居るのはギルド長の織斑 千冬。
彼女は食堂内の険悪な雰囲気に繭を顰め、その中心にいる私達を見る。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ、私は騒ぎを起こすなといった筈だが、これは一体どういう事だ?」
怒りを隠そうともしない凰 鈴音とセシリア・オルコット以下食堂内に居る者達を見て、織斑ギルド長は状況を察したのか、ラウラ・ボーデヴィッヒを問いただす。
「私はこの者達に本当の事を言っただけです教官。」
「私達を馬鹿にしたのがそうだと言いたいわけ?!、何ふざけたるのよアンタは。」
平然と答えるラウラ・ボーデヴィッヒに凰 鈴音が怒りの声を上げる。
「いい加減にしろ凰 鈴音、ラウラ・ボーデヴィッヒ、これ以上騒ぐなら容赦せん。」
2人は共に不満げな表情を浮かべながらも黙る。
「織斑、次の仕事の打ち合わせが有る筈だ、さっさと行け。」
「あ、はい、ちふ・・ギルド長。」
呆然としていた織斑 一夏は我に帰ると凰 鈴音とセシリア・オルコットを連れて出てゆく、もちろん2人は不満顔だ。
それを見送り織斑ギルド長はラウラ・ボーデヴィッヒを見て言う。
「・・・ラウラ・ボーデヴィッヒ、お前もさっさと到着の手続に行け。」
「きょ・・ギルド長、その前に質問をお許し願います。」
「何を聞きたい?」
苦々しい表情を浮かべながらギルド長が促す。
「北方海の守護天使に会いたいのですが、何処に行けばよろしいのでしょうか?」
突然私の事が出てきて驚かされる。
ギルド長が苦笑に表情を変えて、ラウラ・ボーデヴィッヒの後ろに居る私を見る。
「天使ならお前の後ろに居る彼女がそうだ。」
その言葉にラウラ・ボーデヴィッヒは後ろを振向き、私を見つめて驚いた表情を浮かべる。
「貴様が北方海の守護天使か?」
「確かにそう呼ばれてはいますが・・・更識 簪です。更識商会所属、まほろばの艦長です。」
北方海以外の海域に居る人間まで、例の二つ名が知れているのに鬱になりながらも返す私。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ、シュヴァルツェ・ハーゼ商会所属、シュヴァルツェア・レーゲン艦長だ。」
シュヴァルツェ・ハーゼ、アニメで彼女が隊長を務めていたドイツのIS配備特殊部隊、それが所属している商会で、専用ISのシュヴァルツェア・レーゲンが指揮している艦の名前と言う訳らしい。
そう名乗ってラウラ・ボーデヴィッヒは意味深に私を見る、赤色の右目で。
左目を黒い眼帯で隠しているのはアニメ同様金色だからだろうか?
「もう良いだろラウラ・ボーデヴィッヒ、私と共に来い。更識艦長、担当の者が探していた、お前も早く行け。」
織斑ギルド長の言葉に頷き、私は食堂を出る為その場を離れる。
ラウラ・ボーデヴィッヒの視線は、私が食堂の外に出るまで消えなかった。
事後処理を終えギルドの廊下を歩いていた私は織斑ギルド長とラウラ・ボーデヴィッヒを見かけたのだが、何だか様子が変だった。
最初は話をしていただけかと思ったのだが、揉めているというか、ラウラ・ボーデヴィッヒが一方的に食って掛かっているみたいなのだ、これってアニメのあのシーンなのだろうか?
「ここでは教官の能力は発揮できません、こちらに戻って頂けないのですか?」
「何度も言った筈だ、私はここを離れる気は無い、あと教官では無いともだ。いい加減納得しろ。」
ギルド長はいかにもうんざりといった表情を浮かべ対応している。
「いえ納得しかねます、ここの連中はそろいもそろって腑抜けです、そんな者の為に教官の能力を使うなど・・・それに私にとっては今でも教官です。」
今のラウラ・ボーデヴィッヒの言葉にギルド長の表情が険しくなる。
「ずいぶんと偉そうな事を言う様になったなラウラ・ボーデヴィッヒ、何様のつもりだお前は?」
びっくと身体を震えさすラウラ・ボーデヴィッヒ、織斑ギルド長の迫力はアニメ同様だ。
俯き震えるラウラ・ボーデヴィッヒを見つめた後、ギルド長は深い溜息を付いて言う。
「取り合えず騒ぎを起こさんでくれ、お前は南方海のギルドから派遣されてきたんだ、それを忘れるな・・・もう良いだろう部下の所に戻れボーデヴィッヒ艦長。」
「はい。」
力無く返事をし、ラウラ・ボーデヴィッヒは歩いてゆく。
その背中は小柄でかつ細身な所為か余計物悲しく見える・・・
とういうか何だか盗み聞きした様で私は罪悪感を覚える、さっさとこの場を離れて・・・
「そこに居るのは分かっているぞ更識艦長。」
どうやらブリュンヒルデの目は誤魔化せなかったらしい、私は隠れていた物陰から出る。
「すいません聞くつもりは無かったのですが。」
私の謝罪にギルド長は苦笑を浮べて答える。
「別に怒ってはいない、お前が盗み聞きする様な人間では無い事くらい分かっているさ。」
そう言ってから溜息を再び付くギルド長。
「・・・ボーデヴィッヒ艦長は確かに優秀だが、どうも自分の能力を過信している節がある。南方海のギルドで訓練をしていた時から感じてはいたのだが。」
織斑ギルド長、当時はギルド長では無かったが、南方海のギルドで訓練教官をしていた時期があったとの事だった、ちょうどアニメでドイツ軍に出向してIS操縦者を育成する教官を務めた様に。
「確かに自分の能力を信じる事は悪く無いが、過信すればどうなるか・・・いや更識艦長には分かり切った話か。」
「・・・それは買いかぶりですね、私は自分に出来る範囲の事をやっているだけの臆病者です。」
織斑ギルド長は私の言葉に意地の悪い笑みを浮べて言う。
「私は、自分を臆病者だと言った奴が本当に臆病者だったというのを見たことが無いがな。」
それにどう答えれば良いのか困ってしまう、臆病者は言い過ぎかもしれないが、自分の出来る範囲でベストを尽くすのが私の信念みたいなものだから。
「まあ良い、更識艦長らしくてな。ボーデヴィッヒ艦長もだが一夏の奴もその辺が少々心配だがな。」
アニメでもそうだったが織斑 千冬はこの世界でも苦労人みたいだ。
「悪かったな更識艦長、色々手間を掛けさせて、だが出来ればボーデヴィッヒ艦長の事も気に掛けてやってくれ、お前に頼むのは筋違いかもしれんが。」
「出来る範囲ですがね。」
「ああ、出来る範囲でだ。」
私の返答に織斑ギルド長は笑うと部屋に戻って行く、それを見送り私はギルドを辞するのだった。
2日後。
「艦長、無人潜航艇の積み込み完了です。」
この日、中断されていた北方海奥地の調査及び巨大シーサーペントの監視が再開する事となった。
ただしそうりゅうは結局復帰出来なかった、もう新造した方が安く付くらしく修理は断念されたのだ。
その代わりに束さんが提案してきたのが、今まほろばに積み込まれた無人潜航艇の「なでしこ」だった。
元々深海調査用に束さんが作成していた物で、転用はかなり簡単に出来るとの事だった。
そして操作システムと搭載機器のまほろばへの積み込みが終わり、今日その試験を兼ねて調査に向かう手筈なのだ。
「お早う簪。」
調査再開に伴いシャルもまほろばに戻って来た、彼女と航海するのは数ヶ月ぶりで感慨深い。
「お早うシャル、またよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、あと自分の用事で手間掛けて御免ね。」
今回の調査の際、島の施設に残してきてしまったシャルの資料を回収する予定なのだ。
それは今までシャルが収集してきたシーサーペント関するもので、今後必要になるものだ。
というのも今回の巨大シーサーペント出現を契機に生態のはっきりしない彼らの本格的な研究を開始しようという提案が織斑ギルド長と私の姉、更識商会会長から出たのだ。
世界最強と交渉事では右に出る者の居ない商会会長の2人の事、話はあっと言う間に具体化され、正式にハンターギルド直属の研究チームが組織された。
その研究チームのリーダにシャルが抜擢された訳だ。
これによりシャルはデュノア商会からハンターギルドへ出向という形になった、まあこれは彼女の境遇に対する対策じゃないかと私は思っている。
「気にしないで下さい、研究チームリーダさん。」
私の少し意地悪な言葉にシャルは苦笑して答える。
「分かったよ天使様。」
私達は顔を見合わせて笑う。
「では乗艦して下さいシャル。」
「うん。」
シャルが乗り込むのを見ると私は傍らにたっている相川副長に指示する。
「それでは出航しましょう、準備は問題ないですね。」
「はい艦長、問題ありません。」
私は頷くと相川副長と共にまほろばに乗り込む。
ふと私はまほろばとは反対側の桟橋に止まっている艦を見る、この北方海では見た事の無い艦を。
その艦の名はシュヴァルツェア・レーゲン、ラウラ・ボーデヴィッヒ指揮の駆逐艦。
旧ドイツ海軍のZ1型駆逐艦をモデルとした艦の様だった。
「艦長?」
「・・・今行きます。」
私は視線をその艦から外し艦橋に向かう、まあ今は考えても仕方が無い、そう思って。