「艦長、目標海域に入り過ぎてます、離脱を。」
サトラガの艦橋で航海担当が意見具申するが・・・
「まだまだよ、確実に仕留めるにはこれじゃ駄目よ。」
だがケイ艦長は離脱命令を出さない、既に危険な位置までサトラガは進入しているのだが。
「これ以上は危険です艦長、そうりゅうの魚雷攻撃に巻き込まれます。」
ナオミが言うが、ケイ艦長は振向いて不敵な笑みで答える。
「カンザシがそんなへまやるわけないわよ、心配はナッシング!」
ケイに過剰な期待を寄せられて更識艦長も迷惑だろうなとナオミは思う。
「サトラガは目標海域のどの位まで進入しましたか?」
暫らく前方を不敵な笑みで見ていたケイ艦長が航海担当に聞く。
「もう半分以上入ってます。」
「・・・よしもう良いわね、面舵一杯、離脱します。」
航海担当の言葉にケイ艦長は頷くと離脱命令を出す。
「了解です、面舵一杯!」
「面舵一杯!」
操舵担当がケイの指示に即座に舵を操作しサトラガが急速にシーサーペントから離れるコースを取る。
一方シーサーペントの方は恐慌状態なのかサトラガが攻撃を止め離れて行く事に気が付かない。
「さあ一発で決めてよねカンザシ。」
「サトラガ離脱します。」
「何て際どい事を・・・」
センサー担当の報告にシャルが半ば呆れた様に言う。
「きっと簪様を信頼されているのでしょう・・・少々、いえかなり過剰だとは思いますが。」
クロエもシャル同様呆れた様子で肩を竦めて呟く。
簪も同じ気持ちだが、確実に仕留める為にかなり危険な行為をしてくれたのだから感謝はするつもりだ。
後でナオミにだが・・・彼女もケイ相手に大変だなと思わず同情してしまう簪だった。
兎に角、後はケイの期待に確実に答えるだけだ、そう考え簪は指示を出す。
「1番から4番発射用意。」
簪の指示に火器管制担当の娘が答える。
「1番から4番目標データ入力よし。」
大型共用ディスプレイにこちらに突進して来るシーサーペントが写っている。
「1番から4番発射して下さい。」
「1番から4番発射!」
火器管制担当が簪の指示を復唱すると、そうりゅうの艦首発射管から魚雷が4本放たれる。
「魚雷目標に向かっています、命中まで20秒。」
センサー担当の娘が複合ディスプレイを見て報告する。
「19・18・・・3・2・1到達!」
センサー担当が叫ぶと同時に大型共用ディスプレイに写っていたシーサーペントに水柱が立つ。
恐慌状態だったシーサーペントは魚雷に気付かなかった為魚雷が命中し咆哮を上げ逃れようとするが、それを見逃す事など簪はする訳が無い。
「5番から6番発射。」
「5番から6番発射します。」
直ちに発射を指示する簪、続いて放たれた魚雷が逃れ様としたシーサーペントに命中し止めを刺すのだった。
シーサーペントを撃破したそうりゅうはサトラガと共に入り江に戻って来る。
既にアークロイヤルも戻ってきており、戦車隊を収容している。
「採掘船に航行出来るか確認をお願いします。」
簪の指示でセンサー担当が採掘船と通信する、傍には呼ばれたユリアが心配そうにその様子を見ている。
「採掘船より返信・・・『我航行可能なり、乗員も全員無事。』、との事です。」
その内容にユリアはほっとしたのか涙を流す。
「大丈夫かい?」
そんなユリアをシャルがハンカチを差し出して慰める、流石は男顔負けのイケメンだなと簪は思う。
「・・・簪、僕は女なんだけど。」
「いや何で私の考えている事が分かるんですか?」
一瞬疑問に駆られるがあまり深く考えるの止める簪だった、まあ何時もの事だしと。
「艦長、アークロイヤルより戦車隊の収容を完了との連絡です。」
「それでは帰港しましょう、アークロイヤルとサトラガに伝えて下さい。」
センサー担当の報告に簪が指示を出す。
採掘船と共にそうりゅう以下2隻の船達は港に向かうのだった。
港に到着し接舷すると簪とユリアはシャルとクロエと共にそうりゅうを降り、桟橋に既に接舷していた採掘船に向かう。
近付くと採掘船から降りてくる船員達、その中の1人の男性が簪達を見ると驚いた表情を浮かべる。
一方簪達と歩いていたユリアもまた驚いた表情を浮かべ、船員達の方へ走りだした。
「お父さん!」
「ユリア。」
駆け寄って来たユリアを男性は抱きしめる、どうやらその男性が父親らしい。
2人は無言で涙を流しながら抱き合う、周りの船員達もその光景を同じ様に涙を流し見ている。
「良かったですね。」
簪は感慨深くそれを見て言う、こういう光景を見られるなら危険を犯してまでやっただけはあると。
「そうだね・・・良かったよ。」
シャルはそう言って少し悲しい様な表情を浮かべる、自分と父親の事を考えたからだ。
「はいまったくですね。」
クロエもそう言って微笑む、普段あまり感情を表さない彼女も今だけは違うらしい。
そんな光景の中、簪は自分の父親の事を考える。
この世界に来る前の記憶は殆んど失われていたので果たしてどんな父親だったかは分からない。
一方簪なった今の状態について言えば、幼い頃失ってしまった為にこちらも曖昧なものだった。
そう考えると、ユリアとその父親の姿に簪は複雑な思いを感じてしまっていた。
そんな思考に簪が落ち込みそうになった時、彼女の左手が誰かの手に包み込まれる。
「簪・・・大丈夫?」
それは何時の間にか傍らに立っていた愛里寿だった、簪を心配そうに見上げている。
「・・・大丈夫ですよ愛里寿ちゃん、ありがと心配してくれて。」
微笑みながら簪は愛里寿の手を握り返して答える。
「うん、それならいい。」
愛里寿もそう言って微笑み返す、それは美しい姉妹愛に見える。
もっともシャルとクロエにしてみれば「「その役は私(僕)がやりたかった。」」となり、此処に妹至上主義の楯無が居たらなら『私の簪ちゃんが取られちゃう!?』と騒ぎになるかも知れないが。
そんな小さな騒ぎの中、ユリアと父親は簪達に頭を下げてくる、もちろん周りの船員達も。
こうして採掘船救出作戦は無事終了したのだった。
その後の話しだが、採掘船は一旦ハンターギルドの有る港に行く事になった、助力を得る為にだ。
そしてハンターギルドの支援の下採掘を続ける事になった彼らが夢の金属K鉱石を発見するのは暫らく後の話しになる。
サトラガ
・サンダース商会所属の駆逐艦。
・現在セキュリテイーブルーに派遣中。
・モデルはフレッチャー型駆逐艦。
・艦長はケイ、副長はナオミ。
武装:艦載砲×5
:機関砲×6
:多連装ロケット弾ランチャー×2
搭載艇:小型高速艇
:中型輸送艇