黒兎と灰の鬼神   作:こげ茶

33 / 33
本日2話目の投稿。というよりおまけです。


幕間:リィンさんファンクラ部会報

 

 

 

 

 

リィンさんファンクラ部・校内新聞

 

【<灰色の騎士>の素顔に迫る! 特集1号】

 

 リィン・シュバルツァー教官といえば<灰色の騎士>の通称で有名であるが、実際のところどのような活躍をしているのか、どのような人物なのか、市民の知るところではない。有名なのは名門・トールズ士官学院に所属する学生の身分でありながら<灰色の騎士人形>とも呼ばれる<灰の騎神>を使って内戦中に貴族連合によって軟禁されていたアルフィン殿下を救出。以後<紅き翼>に協力して内戦終結に尽力したこと、クロスベル戦線において幾度となく共和国軍の侵攻を退け市民を守ったことである。また、情報通であれば<北方戦役>にてテロリストと通じたノーザンブリア上層部を少数にて捕縛。暴走した兵器からノーザンブリア市民を守るべく奮戦したことを知っているかもしれない。そんな彼がどのような人物なのか、学生時代の彼を知る人物から話を聞くことができた。

 

 

記者『リィンさんの印象について教えて下さい』

当時の生徒会長『そうですね、仕事の多い生徒会の代わりに生徒たちの困りごと解決を引き受けてくれて……無くなったものだとか、生徒間のトラブルだとか、困った人を見ると放っておけない優しい人です』

 

 

記者『ものすごく良い人、ということですか?』

会長『……うーん、困っていたら手を差し伸べられる、当たり前のことを当たり前にできて、喜ぶ人を見て自分も笑顔になれる、そんな人かな。もちろん、良い人なんだけど。なんて言ったらいいのかなぁ』

 

 

記者『お人好しでしょうか』

会長『あははは……ま、まあそうなっちゃうかなぁ。文化祭だと、木に引っかかった子どもの風船を取ってあげたりもしてたんだよ? ハシゴまで借りてきて。見た時はビックリしちゃったよ』

 

 

記者『リィンさんらしいですね。最初から誰からも好かれる人物だったのでしょうか?』

会長『いいえ。最初は他のクラスの人と喧嘩になったり、クラスの女の子と険悪になっちゃったり、次々問題を抱えてこんで、見ているこっちが心配になっちゃうくらいでした』

 

 

記者『華々しい経歴からは想像できませんね』

会長『まだ学生でしたからね(苦笑)。でも、問題を抱え込んじゃう癖はあっても、誰かのために行動できるリィン君のことを、一緒に学んだトールズの生徒たちは皆大好きだと思います』

 

 

記者『ありがとうございました』

会長『リィン君、色々と大変だと思うけれど頑張ってください。皆で応援しています』

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「―――――という感じでどうでしょうか」

「うふふっ、流石はアルティナさん。もう取材してあるんですね。まずは親しみやすさを、というのは良いと思います♥」

 

「ふむ。まずはハーシェルか。出だしとしては無難なところだな」

 

 

 

 放課後の分校長室。

 端末でデータとして入力された記事は、リィンの日頃の行いなのか、あるいはトワ教官が上手いのか、あるいはアルティナの意外な才能なのか。それなりにリィンを持ち上げつつも親しみやすい面を押し出す記事になっていた。

 

 

 

「では、後のコーナーですが。リィンさんの独自料理である『じっくり焼きむすび』と『フィッシュバーガー』のレシピを掲載しようかと」

 

「あら、それは私も是非食べてみたいです!」

「興味はあるな。シュバルツァーに作らせるか……?」

 

 

 

「それと、リィン教官の独占インタビューですね」

「受けてもらえるかが問題ですけれど……」

「まあ、そのあたり抜かりはなかろう?」

 

 

 

「はい、こんなこともあろうかと既に取材しておきました」

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

記者『今回は生徒としての立場を利用して、教官に取材に応じていただきました』

リィン教官(以下、教官)『身も蓋もないな……。一応、取材は断らせてもらっているんだけど』

 

 

記者『取材を断る理由を教えて下さい』

教官『拒否権とかないのか……? 内戦中とクロスベルについては学生という身分だったからで、<北方戦役>については機密事項も多いから話せないことの方が多いんだ』

 

 

記者『あまり目立ちたくないということでしょうか』

教官『それはまあ。士官学院生として自分なりにできることを探していたけれど、内戦もクロスベルでも、状況に流されるままに戦ってしまった部分も否定はできない。戦いで傷ついた人がいる以上は、あまり分不相応に持ち上げられたくないんだ』

 

 

 

記者『オリヴァルト皇子の<紅き翼>に協力し、市民の救助や軟禁されていた皇帝陛下の救出など、”第三勢力”としての活動を貫かれていたとお聞きしていますが』

教官『それはトールズ士官学院としての成果だから、俺自身は関係ないだろう』

 

 

 

記者『では、そんなリィン教官に助けらたという方からメッセージを預かってきました』

教官『いや、ちょっと待ってくれ。今読むのか?(汗)』

 

 

記者『クロスベル在住のKちゃんとNちゃんから。「トラックでアルモリカ村に疎開しようとしていた時、共和国の飛空艇に襲われてしまったのですが、灰色の騎士さんのおかげでたすかりました。ありがとうございます」という趣旨のお手紙です。手書きの絵もついています』

 

教官『………ありがとう。こうして、自分のやったことで助けられた人がいるというのは素直に嬉しい。けどやっぱり新聞は止めてくれないか』

 

 

 

記者『リィンさんは謙虚ですね。これも日頃の行いでは?』

教官『日頃の行いってあまりいい意味で使われないような……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




意外と真面目な内容でした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。