この作品、相変わらずバトルが少ないですね...
ただ、今の所書きたい内容をしっかり書けているので、バトルが好きな人には申し訳ないですが、まだ付き合っていただけると幸いです!
「あの...シオンさん、本当にいいんですか? ご馳走になってしまって......」
ここはイース。アルバにある四つの地域の中で、もっとも穏やな街である。
サトシ達一行はイースに来ており、その中にある喫茶店で軽い食事をしていた。
「心配する必要はないよ、ミツル君。今回は私が持とう。それに、この街では生活資金を自分で調達しなければならない。最初のうちは一週間、こちらから資金提供するが、それ以降は自分たちで何とかしたまえ」
代表はそう言ってコーヒーを一口含むとじっくりと味わった。そして、近くにいたウェイトレスを呼び止めた。
「お客様、どうかなさいましたか?」
「マリー君を呼んできてもらえないかい?」
代表がそう言うと、ウェイトレスは「かしこまりました」と言ってバックへと下がっていった。
「なぜマリーさんを?」
「いい質問だね、サトシ君。君たちが知っての通り、マリー君はうちの役員だ。それに加えて、イースは彼女が管理している街なんだよ」
「え、マリーさんが......」
「彼女からは伝えられていないんだね。まあ、それでもかまわないさ」
代表は表情を全く変えずに笑みを保っているが、サトシ達四人は驚きを隠せなかった。
まさか、身近にいた役員が街を管理しているなんて思ってもみなかったことだ。
「とにかく、まずはイースについてマリー君から話を聞こうか。ちょうど、彼女が来たみたいだしね」
「お待たせしました、皆さん」
すると、代表のすぐそばにマリーさんが足を止めた。
彼女は小さくサトシ達に礼をすると、ウェイトレスがすぐさまもう一つ椅子を用意し、それに座った。
「ではまず、イースについて簡単に説明するね。この街は、見ての通り喫茶店やレストランが多いの。だから、食事に関しては困らないよ。それと、ポケモンバトルに関しては届け出を出してもらえれば専用のフィールドを貸出しするから、安心してね」
「いつでも自由に、というわけではないんですね」
「その点に関してはごめんね。イースはあまり空いてる敷地が多くないから、他の街みたいに気軽にバトルは出来ないの。でもね、その分街にいる皆はいつでもバトルの相談に乗ってくれるし、バトルフィールドは多くの種類を用意してるから、あまり不自由はしないと思うよ」
その後も説明を受け、ひと段落するとマリーさんは店が忙しいのか厨房へと戻っていった。
「もう少し説明してほしかったのだが、彼女も忙しい身でね。許してほしい。気になることがあったら、私に聞いてもらえれば、彼女に伝えておくよ。では、ノースへと向かおうか」
会計を済ませて店を出ると、そのままノースへと向かった。
「街に入る前に君たちに言っておかなければならないことがある」
ノースへと入る入り口まで来たところで、サトシ達の方を向いた代表は、今までとは違う真剣な表情をしていた。
「今から入る街は、今までの二つの街とは違ってかなり治安が悪い。いくら私でも君たち四人を、というのはいささか大変でね。今回は専門の案内役を頼んでおいたのさ」
「専門って言われて悪い気はしませんけど...」
『っ!?』
代表の話を聞いている最中に、突然後ろから声を掛けられた。
思わずサトシ達はビックリして振り返ってしまう。するとそこには、肩にかかるくらいの黄色い髪を後ろで結び、全身を黒を基調とし、縦に赤いラインが入ったジャージを着ている爽やかな青年のような人が立っていた。
「初めまして、この度ノースの案内役を手伝うことになったシャルと言います。以後、お見知りおきを」
丁寧に挨拶をするシャルに、サトシたちも少しばかりぎこちなくなっていた。
「では、そろそろ行きましょう。ノースは言葉で説明するよりも、実際に見てもらった方がわかりやすいと思うので」
シャルを先頭に、サトシ達はノースへと足を踏み入れた。
「こ、これは......」
「今までの街の雰囲気と全く違う......」
「何だ、この感じ......」
「......。」
それぞれが、思うように言葉を発する。
この街、ノースにはこれまでのサースやイースのような華やかさは無く、何か殺伐とした雰囲気を醸し出していた。
町の中心には大きなビルがいくつか建っており、それ以外はコンクリートの床が広がっており、ところどころにフレンドリィショップが建っていた。
さらには昼間だというのに道を歩いている人は全くおらず、少し進むとポケモンを回復させるクスリの空がいくつも転がっていた。
「全く、いつもゴミは持ち帰れって言ってるのに」
呆れながらもゴミを拾って袋へと入れていくシャルの動きは慣れており、この街の住人だということが分かる。
「ごめんね、皆。代表からも聞いてると思うけど、ノースは治安が悪いんだ。それに見てもらえばわかると思うけど、ポケモンバトルの痕跡がいっぱいあるでしょ?ここは他の街と違ってバトルが盛んなんだよ。君たちも馴染みの野良バトルも、この街では頻繁に行われるのさ、これでもかってぐらいにね。でも、不正だけは許されない。いつも監視の目があるからね。そこだけは気を付けてほしい」
シャルの言葉に頷くサトシ達。だがその隣にいるシオンは、何かを考えるような仕草をしていた。
そして、ふと思い出したかのようにシャルの方を向く。
「シャル君、彼はどうしたんだい?」
「あ、あ~...。あいつなら、今は研究室にこもってますよ、昨日の朝から......」
シャルのその言葉を聞いた途端、シオンは「やれやれ」といった顔をする。
もはや代表のこの顔も見慣れたものである。
「君たちにも少し紹介しておこう。このアルバ島には研究チームが存在する。研究内容は幅広く、ポケモンの進化、能力、生体など、様々なものを取り扱っており、その研究チームのトップがこのノースにいるのさ。まあ、彼は滅多に外に出ないからね、君たちと会うことは中々無いだろう」
「その人も、ポケモントレーナーなんですか?」
「あぁ、そうだよ。だが気にする必要は無いさ。おそらく、彼と君たちは戦うことは無いだろうからね」
シオンはいつもの調子でそう言うが、質問をしたミツルは何か納得がいっていないようだった。
「代表、すみませんが少しお時間よろしいですか?早急に伝えておきたいことがあるので」
「そうか......構わないよ。君たちすまないが、話が終わるまで近くのフレンドリィショップで時間を潰していてほしい。終わったら私が迎えに行こう」
役員以外には教える事の出来ない内容なのだろう。秘密事項というのはよくあることなので、サトシ達は全員頷き、全員でショップへと向かった。
「本当に使い終わった道具が捨てられているんですね」
足元に落ちている道具の空を拾いながら、それを一つずつ確認してバッグに入れていくミツル。
「あ、もう入らない......」
「そんだけ入れてればそうなるだろ。というかミツル、本当にそれ持ち帰るのか?」
「うん、何か分かるかもしれないからね。ほら、シンジ君も持って」
「お、おい...」
シンジの返事を待つより早く、ミツルは自分のバッグに詰め切れない分の道具を彼に渡していく。
「すげぇ!ミツルは研究熱心なんだな!」
「そうでもないよサトシ君。ただ、情報は少しでも多く持ってた方がいいでしょ?現にこんな街は初めてだし」
「確かにそうだな。なら俺は周りの景色を観察しよう。申し訳ないが、ゴミを持ち帰れる程の余裕が無いんだ」
「うん、全然大丈夫ですよ。じゃあ、周りのことはアランさんに任せます」
ミツルやシンジ、アランがそれぞれ自分の役割をこなしていく中、サトシも自分に出来ることが無いか考える。
特に目的もなく辺りを見渡していると、サトシは右側に自分たちを見つめている誰かがいることに気付いた。
「あれは...」
サトシの言葉とともに他の四人はサトシと同じ方向を見る。そこには、サトシやミツル、シンジと同じくらいの年齢と思われる少女が立っていた。
その女の子をよく見てみると、おかっぱ頭で髪色は黒、服はゴスロリのようなドレスを着ており、右手には黒い日傘、そして右目には黒い眼帯を付けていた。
「もしかしたら、ここの住人かもしれない。話を聞いてみよう」
ミツルの言葉に全員が頷き、彼女に近づこうと一歩踏み出した瞬間だった。
『っ...!!』
突如、原因不明の重圧と頭痛によって、全員の動きが止まってしまう。
「こ、この感じ...前にもっ!」
以前にも同じような重圧を味わっているサトシは、その時のことを思い出そうとするが、何故かうまく思い出せないでいた。
まるで、白いボヤがかかっているように、その場にいた人物、場所すらも......。
「大丈夫かい、君たち?」
「っ!シオン...さん」
代表の声が聞こえたかと思ったら、急にさっきまでの苦しみが嘘のように無くなった。
ここはセントラルの中枢にある大きなビル。その中の一階にある待合室で、サトシ達四人は待機していた。
その中で誰も、何も言葉を発さず、ただただ思い空気が部屋を満たしていた。
ノースからセントラルに戻ったため、日はもう落ちかけていた。
「失礼するよ」
するとノックの音が響き、シオンが部屋の中へと入ってきた。
その表情にはいつものような穏やかさは無く、サトシ達が初めて見る、曇りのかかった顔だった。
だが、彼女はすぐさま表情をいつものような笑顔に変えた。
「体調は問題ないかい?あの時は少し驚いたよ。君たちが苦しそうにしていたからね。何かあったのかい?」
「いえ、特には何も...ただ、何かに押しつぶされるような感覚があって......」
あの時、シオンが声を掛けた瞬間にサトシ達は重圧から解放された。
だが体の状態が戻った時には、もうあの少女はその場からいなくなっていた。
「そうか......。今日起きた問題は早急に解決させてもらうよ。でないと、君たちも不安だろう。それと、今日回った街のパンフレットだ。多少見た感じと違うことが書いてあるかもしれないが、こちらは外観以外の資料として使ってくれ。それと、街巡りはここまでにしておこう。すまないが、私は今日一日しか予定を開けていないんだ」
「となると...もう一つの街は自分たちで見てこい、という事ですか?」
シオンの言葉にアランがそう返す。そういえば、本来最後に見るはずのエースをまだ見ていない。
「それについてはすまないと思っているよ。だが、エースを見ておく必要は、実は無いのさ」
「それは、どういう......」
「エースには人が住んでいないんだ。代わりに、アルバに住み着いているポケモン達が沢山いるんだけどね。君達も、野生のポケモンに囲まれながら日々を過ごすのは嫌だろう?」
どうやらアルバにも野生のポケモンが生息しているようだ。確かに、自分たちが住む街でないのであれば、今すぐに見ておく必要は無いだろう。
「一週間はセントラルが用意する宿を使ってもらって構わない。だが、それまでにはどの街に住むのかを決めて、私かそれ以外の役員に伝えて欲しい」
『はい!』
話が終わると、シオンはサトシ達を連れて、借りの宿へと案内した。
こうして、彼らのアルバでの生活が幕を開けたのだった......。
日が完全に落ち、夜の事務作業を終えたセントラルのビルから発せられる明かりは、最上階の一室を除いて、すべて消えていた。
そんな中、ビルの最上階にある真っ暗な通路を歩く少年が一人。
彼は自身のトレードマークとも言える赤い帽子を深くかぶり、手には分厚い書類の束を持っていた。
そしてある部屋の前まで着くと扉をノックし、「入りたまへ」という言葉を聞いてから扉を開ける。
「残業お疲れ様です、代表」
扉を開け、目の前にいる人物に労いの言葉を掛ける。
掛けられた人物はと言うと、ナンバーズをまとめる代表、シオンだった。
彼女はその役職に見合った高価なイスに深く座り、入室してきた人物を穏やかな表情で見つめ、先程の彼の言葉に言葉を返す。
「全く、誰のせいでこうなっていると思っているんだい?」
「......俺には全く身に覚えのないことですね。第一、俺は昨日から研究室に籠っていたんですよ?」
少し間はあったが、代表の言葉にスラスラと返していく少年。
「まあいいさ。ただ、彼女を彼らと接触させるのは控えるように、と言っておいた筈だよ?」
「あいつの行動に関しては俺の管轄外です。監視役のシャルを案内役に駆り出した、貴方の責任でもあると思いますよ」
「君がもう少し社交性を持ってくれれば、安心して君に任せられるんだがね?」
「......報告書は置いておきます。では、俺はこれで失礼します」
そう言い残して部屋を去ろうとする少年に、シオンは思い出したかのように彼を呼び止める。
「君はあの四人の中で、誰か気になる子はいたかい?」
「いませんでした」
「もう少し考えるそぶりを見せてくれても良いだろう?」
シオンの質問に即答した彼は、扉のドアノブに手を掛けた瞬間に動きを止め、そのまま振り返らずに......
「ですが、少しはあがいてくれることを祈ってますよ。前回の奴らのように、予選で心が折れてしまってはつまらないですからね」
そう言い残して、今度こそ部屋を去っていった。
シオン「やあ、皆。今回はイースとノースについて、私から説明しよう。イースは前回紹介したサースと街の雰囲気にそこまで違いは無い。比較点は街にある店のジャンルと、バトルの制度だね。イースはサースより自由にバトルをすることは出来ない。マリー君が説明してくれたように、バトルをする際には届け出を出すことを忘れないで欲しい。最後にノースについてだが、こちらは他の二つとは全く違った所でね、実力重視の街なのさ。街に住む九割がポケモントレーナーで、日々至る所でバトルが行われてる。そして、勝率の高い者はそれに見合った金額と宿を支給される。言い忘れていたが、ノースにある住居はホテルしかなくてね、家族で住んでいるものは全くいないんだ。以上で、サトシ君たちが住む街の説明を終わりにさせてもらおう。では、また次回会おう」
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