INFINITE・STRATOS NEXT ~戦いの果ての答え~ 作:タナト
途中で文が消えてしまったりいろいろあって…
そこでいつも目が覚める。
体を起こすと、そこはベッドの上だった。そうしてその人物は自分が何者であるかを思い出す。その人物は織斑一夏だった。彼はリンクスでもORCAでもなく、姉がちょっと有名なだけのどこにでもいる日本に住む少年である。いいや、これからは少し違うが…
だが、彼には奇妙な記憶があった。リンクスと言われネクストと言われる兵器に乗り戦っていた。レイレール・ライミスという男の記憶である。そして彼が自分自身であるという感覚もあった。
レイはベッドから降り、顔を洗いに行った。洗面台の前で、レイはふと鏡に映る自分を見つめた。記憶の中の自分と同じ顔をしている。
リンクスだった自分は何なのだろうか、よく聞く前世の記憶というやつだろうか。確証がないので、そんな考えを巡らせても結論は出ない。だがこの記憶がただの妄想の産物ではないという確心はあった。
織斑一夏にはすさまじい戦闘技能があった。それはレイの母から受け継いだ才能、そして師であったセレンからの教えである。何故それらが自分に備わっていると分かったかというと、2年ほど前のあの日に…
おぞましい記憶を思い出しかけたところで彼は考えるのをやめた。今の自分にそんなことを考える余裕はないと。
そう、レイにはある意味グレートウォール以上の壁が待ち構えているのだ。彼はそそくさと身支度をし、朝食を食べ、玄関を出た。
目的の場所へ向かう足はひどく重い。今は、4月。彼の年齢なら新しい学校の入学式に向かうのは至極当然のことである。
しかし向かう学校が問題だった。
『IS学園』10年ほど前に開発され、その高い軍事有用性から条約で軍事利用は禁止されているものの現在世界の軍事バランスにおいて極めて重要な位置にあるパワードスーツ、インフィニット・ストラトス、通称『IS』。IS学園とはそんなISについての事を主として学ぶ高校である。
ISは既存の兵器全てを過去にするまでの圧倒的な戦力がある。今はとある事情により500弱しか製造されていないが、今ある戦力だけでもISを『使えない』側との戦争になれば3日で勝利できるともいわれている。そう、たった26機のネクストが1ヶ月で世界を変えたように。その意味ではISはネクストに似ていると言える。
またそんなISにもネクストと同じように致命的と言える欠陥があった。一つは女性しか使えないという点である。理由はいまだ不明だが、ISはたった一つの例外を除いて、女性しか使えないのだ。先ほどISを使えない側と述べたが、それは男性の側である。そしてもう一つ、ISのコアの製造法が確立されていない。文字どおりISの心臓部であるコアを作れるのはISの開発者の、篠ノ之束以外作れなのだ。今の世界は、ISという強力な力が偏ってもたらされたことで極めて不安定な状態にある。
しかし、長い間大きな戦争を経験しなかった人々はそのことに気づきもしない。極めて危険な状態だと言える。
はぁ
と、レイはため息をつく。
できればISには関わりたくなかった。闘争の二文字からできるだけ離れ、穏やかに過ごしていたかった。だが今の自分は男でありながらISの使える唯一の存在、世界全体に影響を与えてしまう『イレギュラー』。だから何らかの争いから逃れることはおそらく無理だろう。
そんなことを考え、レイの気持ちはより重くなるのだった。
「ついに来たかこの時が…」
モノレールに乗りIS学園のある島に来たレイは校門の前で立ちすくんでいた。見える校舎はカブラカンのような威圧感を放ち、自分に好奇の視線を送る生徒たちからは、その塔載機のような圧迫感があった。
レイは覚悟を決め、PA(プライベートアーマー)を全開にして敷地内に入っていった。
「一年一組ここか…」
入学式を終え、自分の教室の前に来たレイ。
はぁ
再び大きなため息をつき、覚悟を決め教室に入る。
ジロ
こちらを見る女子の眼球がソルディオスのように感じられた。PAが一気に減衰する。
瞬間キャーキャー声が上がる。
あぁ、OB、いやVOBで逃げたい
リンクス時代でも腕利きとはいえ顔が世間にさらされることはなかったためいくら有名人になろうが視線を集めるようなことはなかった。レイはなかなか回復しないPAのせいで、APまで削られる。必死に感情を殺し、席に座る。
ふと目線をずらすと6年ぶりの再会になるであろう幼馴染が目に入った。
フン
しかしレイの視線に気づくとそっぽを向いた。
数少ない友人だというのになんと冷たいのだろう…いや駄目だ、動じては。兄さんも言っていただろう、想定外のことは常に起こりうるもの。明鏡止水、常に動じず一歩引いて最善の行動をする。己を無にしろ、リンクス。
しばらくすると緑の髪の女性が入ってきて、教壇に立った。どことなく、スマイリーに似ているとレイは感じた。
「えー皆さん初めまして、私がこのクラスの副担任の山田真耶です。一年間よろしくお願いします」
快活そうな先生はにこやかにほほ笑んだ。
「この学園は全寮制です。ここにいる仲間とは寝食を共にするわけですから、早くお互いを良く知るために、早速ですがみなさんで自己紹介をしてもらいます」
その後順に自己紹介が進んでいき自分の番になった。とたんクラス中から向けられていた意識がなおのこと鋭くなる。
レイは意を決して立ち上がり、名乗った。
「織斑一夏と言います。学園の中一人だけ男子ということで気を使わせてしまうことになるでしょうが、よろしくお願いします」
レイはあらかじめ用意しておいた言葉を言った。とりあえず、自己紹介としてはこれでいいと思っていたが、周りからの視線はまだ何か自分に求めているようだった。
珍しがるのは理解できるが何を言えばいいのだろうとレイが思索していると不意に殺気を感じ、高速で振り下ろされる出席簿を左手で受け止めた。
「おっと、何ですか?織斑教授…」
レイは振り下ろされた凶器の意味が分からずに目の前の姉に問いかけた。
「教師の制裁を避けるとはいい度胸だな…まあいい、その様子だと私がここにいることは知っていたようだな」
レイの、織斑一夏の姉であり、このクラスの担任である織斑千冬は、その雰囲気に見合ったドスの利いた声で言う。
「そのくらいの下調べはしておきますよ。けど確かに始め知ったときは少し驚きました」
レイが平然と答えると彼女はふんと息を吐き教壇に向かった。
2人のただならぬ関係にクラスはざわつき始めていた。
「静かに!私は君たちの担任となる織斑千冬だ。私の役目は君たちを1年間で使い物にすることだ。妥協はせん覚悟しておけ!」
千冬が鋭くそう言うとクラス中から黄色い声が上がった。
「キャー!千冬様よ。あの千冬様!」
「あなたに憧れてここに来ました!お姉様と呼ばせてください!」
そんな声に対して彼女は、毎年毎年よくもこんな馬鹿どもが集まるものだ。と冷たく突き放していた。
慕ってくれる生徒に対してそれはあんまりだろうとレイは思った。
そのあと学園とISの概要についての授業があった後、その日は放課後となった。
放課後になった途端、周りの生徒が集まってきてレイを質問攻めにした。彼はそれを何とかぼかしつつ避けていった。
しばらくして、
「す、少しいいか?一夏…」
と少し気色の違う声がレイにかかった。
その声の主を知っていたレイはそちらに向き直った。
「箒…分かった。とにかくここじゃなんだ、移動しよう」
彼女の表情からだいたいのことを読み取ったレイは、迅速に包囲網を突破するため、すぐに立ち上がり彼女の手を掴み、無駄のない動きで女子の集団をすり抜けた。
「ちょ、い、一夏…」
レイの大胆な行動に教室全体が動揺する。もちろん箒自身も例外ではない。しかしレイは構わず、その一瞬の硬直を利用して廊下まで突破、彼女の手を引いたまま廊下を進んでいく。
「ど、どこまで行くんだ?」
「このままじゃすぐまた囲まれる。人気のないところまで突っ切る」
その後二人はカムフラージュのため校舎を一回りしてから屋上に落ち着いた。
「はぁ、いきなりあれは心臓に悪いぞ、一夏」
息を整えた箒が最初に口を開いた。
「ごめん、相手は大勢だったから巻き切るのに時間がかかった」
「そ、そういう問題ではないのだが…」
レイのあっているようでずれている返答に彼女は少し落胆した。
「それより、さっきはすまなかった。あまりに久しぶりでどう話しかければいいか分からなくてな」
彼女は気まずそうに言葉をつづけた。
「5年ぶり、だもんね。しょうがないさ。それにしても箒は成長したな、背もそうだけど雰囲気が大人びた」
レイは素直に感じたことを話した。
「何を年寄りくさいことを言っている。まぁ、そう感じてもらえたならうれしいが…しかし、お前の方は変わってないな」
箒はいたずらっぽく微笑みながら返した。
「なにそれ、俺が成長してないって言いたいのか?背は俺の方が高いぞ」
レイは苦笑し、反論する。
「そういうわけではなくてだな、その、なんというかお前の雰囲気は昔から完成していたというか…相変わらず鋭いなと思っただけだ。昔と変わらずな…」
箒は顎に手を当てうなずきながら、たいへん感慨深そうに言った。
「そうか?5年あれば人はかなり変わると思うけどな…」
レイは空を見ながら言った。箒の言うことも理解できると思っていたが…
「それもそうだな。そういえばお前、私よりも剣道は圧倒的に強かったのになぜ辞めた?」
「金銭面の問題で続けていられなかったんだよ。だけど、毎日素振りぐらいはしてる」
そうか、っと箒は安心したように息をついた。
「まっ、兎に角これからはまた同級生だ。唯一の顔見知りなんだ、よろしく頼むよ、箒」
話を切り替えたレイは、箒の顔を見た。彼女は満面の笑みを浮かべ、ああ、もちろんだと答えた。
「さてと、そろそろ教室に置いてきた荷物回収して、寮の部屋にでも行ってみるか」
レイはそれまで手すりにもたれかけていた体を起こした。
「それもそうだな、ところでお前の部屋はどのあたりなのだ?」
投げかけられた質問にレイは部屋の番号教えた。すると箒は心底驚いていった。
「そ、そこ私の部屋だぞ!」
それは箒がレイのルームメイトだということだ。
一方レイはきょとんとした顔をして、え?そうなの?ほとんど冷静に言っただけだった。
「ああ、確か先生が部屋が足りません、見たいなこと言ってたな」
レイは記憶をたどり思い出した。
「部屋が足りない、か。ならしょうがないな」
箒はすぐに前向きに考えることにしたようだ。
「いいのか、これでも俺は男だぞ」
レイはリンクスだったころセレンと同棲していたので別にどうとも思わないが、少し気まずくなり、聞いてみた。
「お前が変なことをする男ではないと分かっている。それにどうせ誰かと相部屋にならざる負えないなら、顔見知りである私しかいないだろう」
となぜか誇らしげに答えた。
「そうか、信頼してくれるんだ、ありがとう」
「…!お前には小さいころさんざん助けてもらったんだ。そのくらい、あ、当たり前だ…」
予期せぬ感謝の言葉に照れてしまう箒だった。
そして二人は寮に向かうがその途中、レイは視線を感じ急に立ち止まった。
「どうした?一夏…」
周囲に視線を向けるレイだったが、自分のようなイレギュラーには監視の一人や二人ついてて当然だと自分で納得し無視した。
「いや、何でもないよ」
「………?」
結局何が起こるでもなく部屋についた二人はそのまま一日を終えた。
その日、レイはまた夢を見た。
あたりの壁は真っ白でとことん無機質だった。自分が本当に生きているのか疑問に思うほど変化いうものに乏しかった。その場所はインテリオル・ユニオンのリンクス養成施設。故郷ともいえるレイレナードが壊滅し、両親と死に別れた少年だったレイを拾ったのはインテリオルだった。レイの血筋に注目し、リンクスの素養があると期待した彼らはリンクス候補生として彼を迎えた。しかし、彼は適正こそ高いものの、訓練や検査で戦闘技量面であまり資質が無いとされ、AMS関連の実験体に落とされた。
その場所では、様々な実験が行われ日々少年少女たちが廃人と化していくのを見てきた彼はほとんど生きるのを諦め、死を待っていた。
そんなある日、何もない待機室に一人の研究者が張ってきた。
「55番、面会者だ。来い」
自分の番号が呼ばれ、レイは何事かとついていく。
自分に面会者?母の関係者だろうか…と彼の中に疑問がわいてくる。
そうして入れられた個室には、一人の黒髪の女性がいた。とてもきれいな人だと、レイは思った。
彼女と向かい合うようにレイは椅子に座った。
「お前が、レイレール・ライミスか?」
机をはさんで座る女性はそう聞いてきた。
名前を呼ばれるなどいつぶりだろうと、レイは小さな感動を覚えつつうなづいた。
彼女は少し口角を吊り上げ、言った。
「なぁ、お前…私の下でリンクスにならないか?」
主人公の顔はリンクス時代に合わせてあります。色白のクール系というイメージです。
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※3月11日内容の一部を変更