やはり俺の青春ラブコメ計画は脱線している。   作:おるぱわ

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追記? ミスしてたところをちょっとだけ修正しました。


そして彼は自ら論争に巻き込まれる

俺が心の中で救難信号を送って三分後、やっと心待ちにしていた瞬間が訪れた。

ノックもせずに、荒々しくドアをガラッと開けた平塚先生が、俺には天使に見えた。

 

「雪ノ下、鶴見。邪魔するぞ」

 

先生、アンタホントいい人だよ! これで俺は空気の呪縛から解放される!

内心喜ぶ俺とは対照的に、ルールに厳しい雪ノ下がまた溜め息をついていた。

 

「先生、ノックを…」

 

「悪い悪い。まぁ、私に構わず続けてくれ。面白い様子を見に寄っただけなのでな」

 

前言撤回。ニヤリと笑う平塚先生は、俺を助けるつもりは無いらしい。この悪魔!魔jy……。危険なワードに触れそうだったので思考を停止した。下手すると、さっきの痛みがよみがえってくるし。

幸いにも、平塚先生は俺の思考は読み取れなかったようである。

 

「三人とも仲がよさそうで結構なことだ」

 

その感想は確実に違う。ついさっき、雪ノ下と比企谷は、俺の敵になったばかりだ。

ついでに、敵である二人も互いにオーラで威嚇し合っていた。完璧に三つ巴状態である。

 

「比企谷はこの調子で、この部の活動を通して、捻くれた根性の更生に務めたまえ。そこの男と一緒に、腐った目もろとも叩き直して貰うといい。では、私は戻る」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

「あ、比企谷!やめっ!」

 

平塚先生は、比企谷にそう告げるとそそくさと帰ろうとする。しかし、比企谷は先生を引き留めようと先生の肩を掴もうと手を伸ばした。俺はその行動の危険性を身をもって知っている。

だから、止めようとしたのだが、一歩遅かったようだ。

 

「いたっ!いたたたたっ!痛いです!ギブ!ギブッ!」

 

次の瞬間には、比企谷は腕を捻られ、即座にギブアップしていた。ここまでの時間、約二秒!

平塚先生の後ろは危険なのである。俺は、不注意でこれまでに四回くらいやられました。

でも一方で、やられてる比企谷を見てるとさっきまでの怒りが少しスカッとした。ざまぁww。

 

「なんだ、比企谷か。不用意に私の後ろに立つな。いつもの癖で技を掛けてしまうだろう」

 

「あんたゴルゴかよっ!それに普段からこんなことしてるんですか!?」

 

「いや、誰でもというわけではないぞ。比企谷と、そこの問題児だけだから安心しろ」

 

「どこに安心の要素があるんですか!?」

 

痛みから解放された比企谷が、猛抗議していた。だが、平塚先生はその抗議を飄々とかわす。

ついでに問題児と言ったときに、先生はしっかり俺のほうを見ていた。確かに、勝負事とイベントとかに熱くなりやすい性格ではあるけどなあ…。まあ、廊下走ったり、調子乗って、学校の物を壊したりした前科があるので、反論出来ないけど。

そんなことを考えていると、捻られた右腕を押さえていた、比企谷が口を開いた。

 

「更生ってさっきも言ってましたけど、俺が非行少年みたいじゃないですか。だいたい、ここで何をするんですか?」

 

比企谷の言葉に平塚先生は、少し驚いたような顔で俺と雪ノ下を見る。

 

「雪ノ下、鶴見。君たちは比企谷に説明してなかったのか?」

 

「その男が話を聞こうとしないからです」

 

「そうだったか。……それなら、鶴見。今からこの部について説明しろ。さっきのペナルティだ」

 

「え?また俺ですか!?」

 

俺が、マジでやるんですか? と目で問いかけると、先生は、やれ。さもなければ……分かっているな?と鋭い睨みを返してきた。痛いことは嫌なので、コホンと咳払いをし、比企谷に向き直る。

 

「えーっと、この部活はさっき雪ノ下さんが言ってたけど、奉仕部って名前がある。目的は、簡単に言えば自己変革を促して、悩みを解決すること。平塚先生は改革が必要だと思った生徒をここに連れてくる。で、その悩みを解決する。まあ、一種のお悩み相談室みたいなもんか。まぁ、細かい所で色々違うんだが、今はその認識で良いぞ」

 

ふぅ…。結構疲れた。人前で話すのに全然慣れていない人にとって、教えるという行動は、かなりのエネルギーを使うのだ。それはともかく、説明はそこそこ良かったようで、平塚先生は笑顔である。

 

「驚いたよ。私の言いたいことをほとんど言ってくれるとはな。…だが、その例えはいただけない。

例えるなら、精神と時の部屋か、少女改革ウテナだろう?」

 

この人、チョイスが古いんだよな。口には出さないけど。

が、目の前にいる男はぽつりと一言。

 

「……余計分かりにくいし、例えで年齢がばれるでしょうに」

 

「比企谷ぁ、何か言ったかァ?」

 

「な、なんでもないっす」

 

比企谷は余計な独り言を言ったせいで、先生に目力で射殺されたようだ。

平塚先生は、そんな比企谷を見てわざとらしい溜め息をつき、雪ノ下に問いかける。

 

「はぁ…。比企谷の更生には、てこずりそうだな、雪ノ下」

 

「本人が問題を自覚していないせいです」

 

二人とも、目を閉じて考えて込んでしまった。正直、俺も一応、更生される側なので、この空気だと居心地がかなり悪い。

張本人である比企谷もこの空気に耐えかねたのか、今度は自分から話し始める。

 

「あの、さっきから更生だの変革だの勝手に盛り上がってくれてますけど、別に俺はそういうの求めていないんですけど…」

 

「ふむ?」

 

平塚先生は、その後の言葉を聞こうと思ったのか、話の先を促そうとした。が、雪ノ下がそれを遮る。

 

「傍から見れば比企谷君の人間性は他人に大きく劣っていると思うのだけれど。自分を変えたいとは思わないの?」

 

「他人に俺の「自分」を語られたくないんだっつの。大体、人に言われたくらいで変わる自分が『自分』なわけねぇだろ」

 

「あなたのそれは、ただ逃げているだけよ」

 

雪ノ下が比企谷に冷たく言い放つ。心なしかだんだん空気が重くなってきたような気がする。

というか、ひたすら怖い。もう、お家帰りたい。

だが、比企谷も信念があるのだろう。いまさら口論を止める気は無いらしい。

 

「逃げて何が悪いんだよ。変われ変われってお前はあれか。太陽に東に沈めとか言うのか」

 

「詭弁だわ。論点をずらさないでちょうだい」

 

さすがに空気が悪くなりすぎだと思うので、俺が会話を換気しにいってみる。

俺なりに超爽やかな空気を出しながら、会話に入っていく。

 

「雪ノ下さん。比企谷。もうその辺にしと…」

 

「「うるさい」」

 

「……かなくていいですごめんなさい」

 

一発で撃沈した。しかも、氷のような目と、毒でも放ってそうな目に同時に睨まれたので、こおり状態と、どく状態に同時にかかりそうだった。なんでこういうときだけ息ぴったりなの?

平塚先生は、ドンマイ!次があるぜ!みたいな目を向けてきてるし。そんな同情要らないです……。が、空気が比較的明るいのは俺と平塚先生だけで、二人はまだ睨みあっている。

 

「とにかくだな、俺は変わるって言葉は嫌いなんだよ。結果的には、逃げるために変わるんだからな。本当に逃げないのなら、変わらないでそこで踏ん張るべきだろうが。どうして今や過去の自分を肯定してやれないんだよ」

 

比企谷が俺と雪ノ下に腐った目を向けた。だが、その腐った瞳の中には、少し光があったように俺には見えた。コレだから素人は(笑) とでも言いたげな、態度は気に入らないけど。

 

「………」

 

比企谷の言葉に、雪ノ下は答えない。ギュッと手を握り締め、そして様々な感情が渦巻きながらも真っ直ぐな目で、俺を見た。俺はその視線の意味を知っているから、その目を真っ直ぐ見れない。

その態度を答えと見たのか、雪ノ下は比企谷へと視線を戻した。

 

「…それじゃあ、悩みは解決しないし、誰も……救われないじゃない」

 

その言葉は、誰に向けられた言葉だろうか。少なくとも、俺は、ちゃんとその言葉を受け止めなくてはならないと思った。……過去の清算として。

そんな重苦しい空気を、平塚先生が咳払いで押し流した。

 

「ふむ。面白いことになってきたな。お互いの正義がぶつかる、私はこういう展開が大好きなんだ」

 

それは教師としてどうなんだろうか。争いを起こさないことを第一に考えたりしないのだろうか。

……しないだろうな。平塚先生なら、自ら火に油を注ぎかねない。

 

「…そうだな。これから君たちには勝負をしてもらおう。私がここに悩める子羊たちを連れてくる。そして君たちなりの方法で問題を解決し、お互いの正しさを存分に証明しあうといい。ガンダムファイト、レディ…」

 

お互いの正義をかけて戦えということだろう。だが、こうなると俺に問題が発生する。

 

「ちょっと待ってください、平塚先生」

 

「……なんだ、鶴見? 今からいいところだというのに」

 

「Gガ○ダムは別のときにやって下さい。それよりもこの場合、正義とやらを持たない俺はどうすりゃいいんですか?」

 

他の人が聞けば滑稽かもしれない。信じる考えや信念がないなんて、逆に考えにくい。

だが、平塚先生は優しく微笑んで答えてくれた。

 

「……鶴見、それは違うぞ。それは持っていないのではなくて、見つけられていないんだ。君もこの勝負を通して、何か見えるものがあるはずだ。君の信じるままやればいい」

 

「俺が参加するのは、決定事項なんですね…。まあ、勝負事は好きなんで拒否はしませんけど」

 

「よし、決まりだな」

 

俺が苦笑いを返すと、満足そうに微笑む平塚先生。

 

「己の正義を証明するのは、己の行動のみ!勝負するのは絶対義務だ。お前たちに拒否権はないと思え」

 

「横暴すぎる…」

 

だが、比企谷の否定的な反応を受けて、少し思案し始める。

 

「ふむ。やはり、メリットというかご褒美があったほうが良さそうだな……」

 

平塚先生が結構真剣に悩んでいた。関係ないけど、「ご褒美」という言葉で、先生の胸を見てしまった俺は、かなり変態なのかもしれない。

 

「じゃあ、勝った方が負けた方に何でも命令できるというのはどうだ?」

 

超魅力的な提案である。しかも男子からしてみれば、もうヤバイ。サッカリン並みに甘い提案である。要するに、甘すぎて食べれないくらいの甘さ。俺は釣られたりなどしない。

だが、その提案に釣られたお馬鹿さんが一人。

 

「なんでもっ!?」

 

比企谷が大声を出して反応していた。腐った目がさらに腐り始めたので、考えていることが丸分かりである。雪ノ下はその思考を読み取ったのか、ズザザッと二メートルほど比企谷から距離をとった。

 

「そこの男から貞操の危機を感じるのでお断りします」

 

「へ、偏見だっ!何も高校生男子が卑猥なことばかり考えてるわけじゃないぞ!例えば…世界平和とか?」

 

「自分から言っといて疑問形かよ…。どうせ卑猥なことしか考えれなかったんだろ?」

 

比企谷の誤魔化し方が、あまりにも下手すぎるので、思わず口を挟んでしまった。

 

「お、お前何言ってるの? 俺、超無欲だぜ? 卑猥な欲なんてこれっぽっちもねぇよ」

 

「そういう鶴見はどうなんだ? 君のほうが下卑た思考をしてそうだがな」

 

比企谷がいかにも童貞らしき反応をしていた。まあ、俺も童貞なんだが。

そんな比企谷は置いといて、平塚先生が俺に酷い質問を投げかけてきた。俺が下卑た人間の

設定まだあったのかよ。

だが、俺はうろたえない。否、変態紳士はこんなことではうろたえないのだ。

 

「いやいや、何を言ってらっしゃる、平塚先生。この場合、俺が下卑た思考をしていようが、卑猥な要求を考えていようが、関係ないんですよ」

 

「あら、珍しくこの話題に大人しいと思っていたのだけど、化けの皮が剥がれたようね。学校を追放される前に何か要求があるの? 変態さん?」

 

雪ノ下が俺の言葉に食いついてきた。だが、これはほぼ計画通りである。てか、ごく自然に俺を学校から追放しようとしていたのが、マジ怖い。

だが、俺は雪ノ下の言葉を出来るだけスルーして言葉を並べる。

 

「ふん。だけど、それは今言わなくても良いんだよ。なぜなら……」

 

「うげぇ……」

 

俺は、多分人生で一番のドヤ顔をしていたであろう。あの比企谷が結構マジで引くくらい。

そして、俺は言葉の引き金を引いた。

 

 

「貴様に勝ってから、どれだけでも考えればいいんだからなぁ!!」

 

 

ムカッという擬音語が聞こえてきそうなほど、不機嫌になる雪ノ下。だが、何か反論される前に

すぐに平塚先生をチラッと見る。すると先生は頷き返してくれた。俺の考えは把握しているようだ。

そしてニヤリとした笑みを、俺の言葉で唇を噛み締めている雪ノ下に向けた。

 

「雪ノ下。君は今、この勝負にエントリーしていないことになっている。ここで君が棄権すれば、そこの男二人の不戦勝ということになるが……。そんなに鶴見達に勝つ自身が無いかね?」

 

平塚先生の言葉で決心がついたのか、俺と比企谷に、凍りつくような目を向けてきた。

 

「……いいでしょう。その男に誘導されたのはとても癪ですが、受けて立ちます。」

 

「うむ。これで参加者が揃ったな」

 

どうやら、俺と平塚先生の挑発に乗ってくれたようだ。じゃなきゃ、あれだけ煽った意味が無い。

だが、ふと比企谷が何かに気づき、平塚先生に呟いた。

 

「あれ、俺の意思は……」

 

「君は強制参加だ。同じ男子で手を組んでもいいとなれば、メリットの方が多いからな」

 

「……俺は、こいつとタッグなんて組みたくありません」

 

「それは、こっちのセリフだ」

 

「……君たちは、なかなか相容れなさそうだな。」

 

比企谷は俺と協力する気は最初から無いらしい。実際、俺も一人でやるほうが、自由に動けるので協力しない。この世界の主人公だろうと、今から手を貸すつもりは全く無い。ヒロインなら貸すけど。

平塚先生は俺と比企谷を見て、苦笑いを浮かべていた。

 

「まあいい。この勝負の裁定は私が下す。基準はもちろん私の独断と偏見だ。近々悩める生徒を連れてくるから、あまり意識せずに、頑張りたまえ」

 

 

 

そう言い残して、平塚先生は教室を出て行った。閉じられたドアが、ピシャンと音を立てる。

長い間立っていたような気がするので、正直疲れた。だが、これで最終下校時刻まではゆっくりしていられるだろう。今は何分か確認しようと時計を見ようとしたとき、ふいに冷たい声を掛けられた。

 

「ねえ、鶴見君。私は今、すごく怒っているのだけれど」

 

「ん? なんだ雪ノ下さん……ひぃ!!」

 

違う。地獄からのささやきだった。雪ノ下は天使のような笑顔を浮かべているが、後ろには猛吹雪のオーラが見える。この教室はいつから氷点下になったのだろうか。

というか、これはヤバイ。マジで怒らせたときのオーラじゃん。

 

「私にあれほどの屈辱を味合わせたということは、覚悟は出来ているのよね?」

 

俺はすっかり忘れていたようだ。雪ノ下に対して、上から目線は厳禁だということを。

一歩、また一歩と、俺との距離を詰めてくる雪ノ下。美少女に近寄られて、嬉しくないわけないだろうが! と思うかも知れないが、今の俺には死刑へのカウントダウンにしか見えない。

最後の悪あがきとして、言い訳を試みる。

 

「かかか、覚悟とは、なんということでありましょうか!」

 

怖すぎて、日本語がおかしくなってる気がする。

 

「あなたが、どんなことをされても耐え抜く覚悟よ。分かる?」

 

この状態の雪ノ下に、どんなことでも、と言われると嫌な予感しかしない。

しかも目が本気の目だった。下手すると死ぬかもしれない。

とにかく、ひたすら謝っておく。さっきまでの超強気の俺はどこ行ったのだろうか。

 

「暴力は平塚先生だけで十分です勘弁してください!」

 

俺は、両手を前に出し、それ以上来ないでくれ、と意思表示をした。しかし、怒ってしまった雪ノ下がそんなことで止まってくれるはずもない。

また、雪ノ下が俺に一歩近づく。そして小首をかしげて、こう言うのだ。

 

「そんなことはしないわ。さっきも言ったのだけれど、精神的に攻撃するだけよ。…徹底的に、ね?」

 

あ~。もう、詰んだわコレ。きっと心の隅々まで抉ってくる罵詈雑言を越えた生き地獄が待っているのだ。どんどん底なし沼に嵌まっていくような気分である。ん?底なし沼?そうだ!比企谷がいる!

俺は一抹の希望に掛けて、底なし沼のような目をしているであろう比企谷のほうを見た。

必死に目線でSOSを伝えるが……。

 

「………フッ」

 

その比企谷は、窓の外を見ていた。そして、少し俺の方をチラッと見る。すぐに視線を窓の外の夕焼けに戻す。…コイツ、鼻で笑いやがったぞ!

こうなると、もう後の手段はほぼ残っていない。これは地獄を見ないといけないかもしれない。

しかも、雪ノ下には話を聞いてるフリというのが効かないので、本当に逃げ場が無い。

 

そんな諦めかけていた俺の耳に救いの音が流れてきた。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「ッ!」

 

最終下校時間を知らせるチャイムである。それに雪ノ下は一瞬気をとられた。

その一瞬の隙の間に、俺は近くにあった自分のカバンを掴む。

雪ノ下が俺がしようとしていることに察しがついたようだ。だが、遅い。

 

「じゃ、じゃあ俺帰るわ! 平塚先生に用事とかあるし!」

 

もちろん、用事があるというのは真っ赤な嘘である。雪ノ下には完全にバレているだろうが。

とにかくドアをガラッ!と力任せに開け、転がるように廊下へ飛び出た。

だが、後ろから絶対零度の声が聞こえてきて、体が少し強張った。

 

「今日のことは、明日に持ち越しにしておくわ。覚えておくことね」

 

「………」

 

……うん。俺は、何も聞いていない。死刑宣告なんて聞いていない。

俺は記憶を振り払うように、そのまま走り続け、特別棟と校舎を繋ぐ渡り廊下でようやく立ち止まる気になり、息を整えた。

 

 

 

「ハァ…、ハァ…」

 

全力疾走並みに息が上がっている。実際は、走ったからではなく、雪ノ下のあの威圧の効果の方が大きい。本当にあの目は怖い。全身に寒気が走る。

少し落ち着いてきたところで、背中を壁によりかからせた。そして、独り言をぽつりと漏らす。

 

「今日は、散々だったな……。雪ノ下は怒らせちまうし、平塚先生には腹パンをもらったし、比企谷とは冷戦みたいになっちまったし。まあ、自業自得なんだけど」

 

そう。今日の俺の行動は全て自業自得なのである。

世界の大体は、自業自得という言葉で完結出来るのではないかと、俺は思う。

どんな行動でも、最後には自分に還ってくる。努力をしなければ、神童も落ちぶれるように。

嘘をつけば、後になって後悔ことがあるように。

余計に首を突っ込めば、痛い目を見るのは自分だということは分かっている。

でも、わざわざこの部活に入ると決めた。だから、止めるわけにはいかないのだ。

そう思って気合を入れ、壁から背中を離す。ふと窓の外を見れば、陽もさっきより少し傾いている。

下手にここで立っていれば、雪ノ下や比企谷に追いつかれてしまうかもしれない。

特に今の雪ノ下とは正直、顔を合わせたくない。

 

「明日、部活休むか……。でも、休むと平塚先生が怖いな…」

 

部活に行けば毒舌地獄、行かなければ鉄拳制裁という、まさに板挟みである。と言うか、平塚先生は何故、俺に対してあんなに暴力的なのかが、いまいち釈然としない。

 

「うが~!明日、どうすりゃあいいんだよ!」

 

廊下を歩き始めながら、頭を抱えてしまう。今日の夜は、明日の対策を考えなければいけなくなってしまったようである。

 

そして、この日の夜。俺、鶴見雷治は、ほとんど睡眠時間が確保できなかった。

 

 

 




もう、ストックが無い……どうしよう(汗)
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