筆者「本編に全く入る気配が無いのは何故なんだろう……。」
神「あなたに文才がないからです」キリッ
筆者「 」
みたいな事を脳内で妄想してる筆者です。
奉仕部の部室までが遠い……(泣)
「はぁ~あ……またか……」
一年間で、最も不幸だった日を決めるとしたら、昨日になるんじゃないかって言うくらいの激動の一日を過ごした翌日。
俺は、職員室前のドアの前で、盛大に溜め息をついていた。
女子の集団が、哀れみに満ちた視線を俺に向けながら、隣を通り過ぎて行く。先生に呼び出されちゃったんだ(笑)頑張ってね(笑)とでも、言いたいのか。なら、はっきりと言えば良いじゃないか!今日、俺は悪いことはしていないぞ。自重したし。
あと、直接関係はないが、家庭科の先生である叔母さんに、渡すべきプリントを持ってきてあるので、ここに来たことは正当な理由の元に成り立っているのだ。
叔母さんは提出物にはうるさいので、ここで出さないと家で怒られるかもしれない。
平塚先生とは、別の怖さがあるので、ここは何かを犠牲にしても出したいところだ。
……というか、最近の職員室へのエンカウント率が高すぎる気がする。
一昨日、昨日、今日と三日連続でここに来ているのは、明らかにおかしい。
もしかして、俺の物語は職員室から幕を開ける!のだろうか?
カッコよく言ってみたつもりでも、実際は先生に目をつけられているだけなんだよな……。
そんな無駄とも思える思考回路を構築していると、ドアの内側から声が近づいてきた。
なにやら、言い合いになっているようである。
「ちょ、……っと!何……んですか!痛い!痛いっつーの!」
「奉仕部で勤労の尊さを学んできたまえ!」
ガラッと目の前のドアが勢いよく開けられ、中から出てきたのは、俺を呼び出した張本人である平塚先生と、俺が所属する奉仕部の新入部員になった比企谷八幡である。
そういえば、今日はF組が調理実習だったはずだ。その話でもしていたのだろう。確か、サボったからレポートを書かされたんだっけ?
頭の中にある微かな前世?の記憶と、今の状況を照らし合わせていると、比企谷と目が合った。
「……」
そのまま、俺の隣を通り過ぎると、部室のある特別棟とは反対の方向に歩き出した。清々しいほどのスルーである。ちょっと俺に対する反応が、酷すぎやしませんか?
今言うべきは、それではなくて別のことなんだけど。
「おい、そっち部室じゃないぞ」
「……チッ」
「……今明らかに舌打ちしたよな?」
「……別に。何もしてねえよ。てか、進行方向を塞ぐな」
「部長からの命令なんだ。まことに不本意だがな……」
個人としては、気持ちは分からんでもないのだが、部活の副部長としては、正直欲しくない人材である。
簡単に言えば、『普段は面倒くさい奴』って評価なんだよなぁ……。
入部初日の雪ノ下との口論でも、言うことはカッコよかったし、俺より数段頭は早く回るから、俗に言う、やる時にはやる人間であるのは確かなんだが、普段の様子はあんまり良いとは思えない。第一印象が互いに悪かったのが、主な原因かもしれない。人は第一印象で人を判断することが多い。多分、俺も例外ではないからな。
二人の中で、険悪な目線のやり取りをしていると、比企谷の後ろから手が近づいて来るのが見えた。一瞬、命の危険を感じ、後ろに飛び退いた。
「何してるんだ、比企谷。早く部室に行け。それとも、また私の手を煩わせたいのか?」
右手の正体は平塚先生だった。比企谷がいまだに部室に行かないことに、業を煮やしていたようで、そっと比企谷の肩に右手を置いた。幸いそっちには力は入っていないようだが、置いていない方の手の指をパキポキ鳴らしながら、威圧する平塚先生の姿は、まるで本物の鬼のようであった。
そんな平塚先生の様子に、冷や汗を掻きながら、首だけを器用に後ろに向けて、弁明する比企谷。
「い、いえ、今から行こうとしていたところですよ」
ダウトだ。このセリフを言ったやつは、大抵行かない。宿題をやったかと親に言われて、
「うるせぇ!今からやる所だったんだよ!」に似た、良くあるパターンだ。
俺も家で、ついやっちゃうんだ☆。数分後には、叔母さんにリビングで説教食らうんだよね。そんな言い訳はお見通しなのか、右手に力を入れて比企谷の肩を強く掴む。
「比企谷、絶対に逃げるなよォ?」
「分かりました!分かりましたから!さっきと同じところ掴まないで!」
「君のサボるための努力は一級品だからな。監視を強化しないといけないんだ。大体君はこれだけ説教されてもまだ、サボる気があるとは……で……だから、……だ」
……なんという圧政。見てるこっちまで、肩と耳が痛くなってしまいそうだ。
今度から、背後に立たれないようにもっと努力しないとな。
その後、二つ三つ忠告して、平塚先生は比企谷を部室の方へと追っ払った。
無理矢理に部活に参加させられることになった比企谷は、恨みがましい目を向けるが、平塚先生がいつもより一段と怖い顔で睨んだので、スタコラサッサと退散して、特別棟に向かった。気になる生徒にそんな顔したらイカンでしょうよ、先生。
一連の騒動をぼんやりと見ていた俺の方に、平塚先生は体を向き直した。
息を吐いて、落ち着こうとしているところを見ると、どうやら少し焦っていたらしい。
息を整え終えた頃合を見計らって、俺の方から話しかける。
「あの、先生。どうして俺は呼び出されたんですか?今日は職員室に呼び出されないように、慎重に一日を過ごして、かなり頑張ったんですが……」
「いや。鶴見を呼び出したのは、別の用事だ。あと、頑張る方向性が違うぞ」
「人とは違うなんて言われると、照れますなぁ」
「褒めてないぞ……。私は、君のことを遠回しに変人だと言ったんだ」
「そこは、言わないままで良かったです。ちゃんと、自分で分かってますから……」
くそう。ボケで返してみたら、心にまた傷を負っちまったじゃないか。
というか、肝心なことが聞けていない。この人と話すと、話がよくわき道に逸れてしまうな。まあ、俺としては楽しいからいいけど。
「話を戻しますけど、じゃあ別の用事って何ですか?」
「まあ、待て。すぐに分かるさ」
その言葉で、平塚先生は左腕の腕時計を見る。そして、教室棟のほうに目を凝らした。
俺も、先生が目を向けた方に目を向けると、一人の女子生徒が歩いてくるのが見えた。
他にも廊下を歩いている生徒は何人かいるのだが、不思議と彼女が目立っているように見える。なんというか、動きがぎこちないのだ。人に見られないように歩いているつもりだろうが、ここからでも分かる派手な容姿のせいで、逆に目立ってしまっていた。
あの見た目、見覚えがある気がするな……。
オドオドする彼女に、平塚先生は周りなど構わず、大きな声で呼びかけた。
「由比ヶ浜!こっちだ!」
「!?」
その声に、彼女はビクッ! と反応して、辺りをものすごいスピードできょろきょろ見始める。おぉ、かなり焦ってる。
平塚先生を見つけると、安堵の表情をするが、すぐに頬を膨らませ、こっちにどんどん近づいてくる。
距離が縮まったおかげで、一体誰なのか、しっかり確認することが出来た。
ピンクにも見えそうな茶髪を、頭の右側にお団子みたくまとめてある、特徴的な髪型。
ブラウスは、第三ボタンまで外してあり、中のネックレスと肌が見えて、直視出来ない。
平塚先生と同等か、それ以上に自己主張が激しい胸部。
そして、いかにも、怒ってます! と感情を隠さない、幼さを残す顔立ち。
仮にも隣のE組だから、噂や女子の会話の中で何回か聞いた覚えもある。
そして、俺の記憶のデータベースにも一致する。
今、目の前まで来た彼女は、2年F組の由比ヶ浜 結衣(ゆいがはま ゆい)だ。
頬を膨らませて、涙目で平塚先生を睨む由比ヶ浜。あらやだ、かわいい。
自然と上目遣いで見上げる由比ヶ浜に、平塚先生が後ろに仰け反った。
「先生ぇ!昨日、他の人には出来るだけ気づかれないようにする、って言ったじゃないですかぁ!」
「あ、あぁ。少し軽率だったな。すまない」
……なんか、先生がダメな夫みたいに見えてきたよ。女だけど。
まあ、先生にも非はあるだろう。隠し事を無意識にバラされそうになったら、そりゃ泣きそうにもなるだろうから。
隣で様子を見ていると、平塚先生が目で、俺に助けを訴えていた。
困った顔が、なんだかかわいらしく見えたので、咄嗟に助け舟を出した。
「先生。別の用事ってこの子のことですか?」
「そういうことだ。簡単に言えば依頼者ということになるな」
ゴホン、と今までの醜態を誤魔化すように咳払いして、俺と由比ヶ浜の間に立つ平塚先生。そして、由比ヶ浜に俺のことを紹介し始めた。
「由比ヶ浜。こいつは、君が依頼した奉仕部の副部長で、鶴見雷児だ。普段は何かと問題を起こす厄介な奴だが、ある程度役に立ってくれるだろう」
「先生、俺のこと真面目に紹介する気ないんですね……」
「君の事を忠実に言ったまでだ。普段の行いが悪いからこういうことになる」
まず、己から見ろってことか。不本意ながら、俺が比企谷に出した評価と、平塚先生が俺にした評価が、ほぼ一緒になってしまった。
俺も、『普段は面倒くさい奴』ってことらしい。
苦笑いを浮かべることしか出来ない俺に、由比ヶ浜はガバッと勢いよく頭を下げた。
「あの、よ、よろしくお願いします!」
「由比ヶ浜さん!?いや、頭下げなくていいから!」
俺がそういうと、まだちょっと申し訳なさそうに頭を上げる由比ヶ浜。
そんな由比ヶ浜を、平塚先生は柔らかい口調で、フォローする。
「そうだぞ、由比ヶ浜。そんなに頭をヘコヘコ下げるもんじゃない。コイツは部活の活動で君をサポートするんだ。迷惑かも、などと思わなくていい」
「でも……」
由比ヶ浜は、その言葉を言われても、両手を胸の前でキュッと握り、何か悩んでいるようだ。平塚先生は、眼を閉じて、ふっと息を吐き、さっきとは違う真剣な眼差しで由比ヶ浜を射抜く。少し雪ノ下に似た、突き放すような視線だ。
この人のことだから、そう見えるだけで本当は違うのだろうけど。
「昨日も言ったが、気軽に相談するくらいの気持ちで良いんだ。そら、行った行った!私は、まだ仕事が残ってるんだ。鶴見、あとのことは頼んだぞ」
「えっ、ちょっ!?」
そう言い切ったと思ったら、平塚先生はドアをピシャン!と閉めてしまった。
あの人、言いたいことだけ言って、あとのこと全部押し付けやがったな……。
今ここには、どうしていいか分からず手をモジモジさせている由比ヶ浜と、ドアの前で変な姿勢のまま、石像のように固まっている俺しかいない。
「…………」
「…………」
この沈黙が痛いな……。とりあえず、これからやることは決まっている。まずは、由比ヶ浜を部室まで送り届けなくてはいけない。にしても、別にこの役目は俺じゃなくても良かったんじゃないか?今になっては、もう遅いことだから、考えてもしょうがないけど。
深呼吸して、少し鼓動を落ち着けてから、由比ヶ浜に声をかけた。
「と、とりあえず、部室にいきませんかぁ!?」
「う、うん……」
ダメだ。声が完璧に裏返ってしまった。時間をかけて、落ち着いた意味が全くない。
だが、由比ヶ浜にもミスを指摘する余裕など無いようで、視線を足元に泳がせながら、首を縦に振った。
意外だな。先生がいなければ、もっとリラックスというか、遠慮が無くなると思ったんだけど、むしろさっきより表情が硬い。
これは、ただ単に、見知らぬ人に相談することに緊張しているのか、俺が有害と思われているのか。後者で無い事を切実に願いながら、部室へと足を向けた。
……あ、叔母さんにプリント提出するの忘れた。
近いうちにテストが有るので、三週間は更新が出来ないと思います。(設定集とかは暇つぶしに投稿できるかもしれませんが)
読んでくれている人、ごめんなさい。そして読んでくれてありがとうございます!<(_ _)>
追記 ※サブタイトルが長かったので変えました。