バトルスピリッツ オメガワールド   作:バナナ 

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勉強の合間にやったものです。特別編だからかいつもの倍以上の文章量です。

完結とか言っててすみません、ある意味これが本当の最終回でした。劇場版的な感じで楽しんでいただけたら幸いです。

それでは最後の一振り、特別編をどうぞ!









特別編
襲来!最凶のデジタルスピリット!


ここはリアルワールドとDワールドの狭間、薄暗くて冷たいこの空間で密かに何かが蠢きだす。

 

 

「さぁ、始めようか、【リアルワールド壊し】」

 

 

その少年はとても人間とは思えないほどに肌色が真っ青。彼はデジタルの狭間で産まれたデジタル体の生命体なのだ。その顔には不気味且つ不敵な笑みが溢れている。

 

 

「さぁ、これから忙しくなるぞ」

 

 

その謎の少年はそう言い残して、その凍てつくような寒い空間を後にした。

 

これは花火達が異世界「Dワールド」を救ってから約1年後の出来事。

 

 

 

******

 

 

 

ここはとある小さな田舎島の小さな空港。大きくもない、小さくもない航空機が着陸する。その中から男女の2人組が降りて来た。

 

 

「うぉぉおぉぉぉお!着いたぁぁぁぁあ!!」

「テンション上げすぎ」

 

 

 

黒くて何も結んではいない長い髪、雪のような白い肌の少女、菜々子が大きな声で叫ぶ。すぐ横には砂塵ゴーグルを首に下げた茶髪の少年、花火や他のお客さんがいると言うのに、

 

花火、菜々子、小次郎はDワールドでの冒険が終わり1年、元の学生としての生活に戻っていた。3人はもう高校3年生だ。

 

リアルワールドに帰った時は、時間が全く動いてなかった事に驚きを隠せなかったが、1年たった今ではそんな感情はすっかり身を潜めて残り少ない学生生活をエンジョイしていた。

 

そして今の季節は夏、花火と菜々子は夏休みを利用してとある離島へと旅行しに来た。それはそれはとても自然溢れる小さな田舎の島だった。

 

 

 

「うがみんしょおらーん!」

「……!?」

 

 

突如として耳に入る謎の言語、花火達にいって来たのは、女の空港員さん。花火はまるで意味がわからなかった。そんな中で、菜々子は……

 

 

「……うがみんしょおらーん!」

「!?」

 

 

菜々子がまさかのその謎の言語で女性の役員に言い返した。花火は空港を歩きながら菜々子に聞いた。

 

 

「なに?『うがみんしょおらーん』って」

「この島の方弁で『こんにちわ』だって、面白いね!」

 

 

菜々子はパンフレットに書かれてあるところを見せながら花火にいった。

 

菜々子の言う通り、『うがみんしょおらーん』とはこの島においては『こんにちわ』の意味。

 

だが、近代化が進むにつれて、ここの島の子供達はほとんど標準語になり、この方弁を使ってはいない。

 

 

 

「そうそう、花ちゃん!この島はバトスピがとても強くて有名な一族があるみたいだよ!今日はそこいかない?」

「ん?一族?まぁいいけどさ」

 

 

この島には謎のスピリットカードを祀る一族がいると言う、その情報が菜々子の目にパンフレットを通して入っていた。

 

元々、今回の旅行は菜々子がくじ引きの時に自分の強運で引き当てたものだ。花火はとやかく言うつもりはなく、この旅行は菜々子のわがままに極力付き合う気でいた。

 

バトスピ一族はここの1つではない。各所に様々なバトスピ文化を持つ一族が存在する。世間ではあまり知られていないが、謎のスピリットカードを祀っていたり、継承していったりもする。菜々子はそのことに興味津々だったのだ。花火もあながち嫌なわけでない。寧ろまだ知らない未知なるスピリットがいるのなら見たいくらいだ。

 

2人はその後宿泊先までバスに乗りこんだ。バスに乗りながらその窓から見える美しい自然を感じていた。自分たちの街と比べると本当に清々しいほどに綺麗な緑で溢れかえっている。

 

そして宿泊先まで到着した。その見た目はまさしくウッドハウス、とても優雅で快適そうだった。2人はある程度の荷物を降ろしてその一族を見ていく事にした。

 

その一族が暮らす場所は花火達が泊まる宿泊先からは意外にも凄く近かった。花火達は自然豊かな田んぼ道を歩く。それは言うなれば昔ながらの風景。花火達現代っ子の服は少々浮いて見える。

 

 

「平和だね」

「……あぁ」

「花ちゃんは今、幸せ?」

「あぁ?どうしたよ急に」

「私は幸せさだな、こうやって2人で肩を並べて歩くのが」

 

 

2人のこのやり取りは異世界での経験がなければすることはなかっただろう。

 

たった1年前の思い出だが、今この場に小次郎とカイネがいたのならばきっと彼らは懐かしい気持ちの虜になるに違いない。

 

そんな事を考えながらも2人は噂の一族の館に到着する。いや、正確にはその館がある山に到着したのか、とてもとても長い石段が綺麗に並んでいた。そのてっぺんは見えない。

 

 

「……これを登んの?」

「……そうみたいだね」

 

 

流石に辛そうな顔をする2人。だが、一族を訪問するためには登るしかない。致し方なくそのまま歩みを進めた。

 

 

「……ヤベエ、もう無理なんだけど」

「ええ!?もうだめなの!?頑張ってよ!」

 

 

大体、800段は登っただろうか。それでも頂点は見えず、最初に来た麓も最早米粒ほどの大きさに見える。

 

へばる花火を宥める菜々子、花火が特別体力がないわけではないが、なにぶん菜々子の体力がすごいのだ。

 

 

「ちょっと待て、一回休もう……」

「ええ〜〜」

 

 

花火はそう言いながらも石段の端っこで腰を下ろした。下ろした瞬間に今までの疲れが溢れ出て来て、呼吸がより荒くなった。

 

菜々子も仕方なく花火に合わせる事にし、その横で自分も腰を下ろした。

 

 

「ヤベエよ、ここどうなってんだよ、こんなの登山となんも変わんねぇよ」

「頂上が麓から見えなかったもんねー、ここの一族の人達はみんなこの石段で修行してるみたいだよ」

「いや、バトスピとなんの関係があるんだよ」

 

 

確かに、石段で修行しても何もバトルスピリッツとは関係がない。いくら体を鍛えてもバトルスピリッツはカードゲーム、極論、腕と頭があればできる。足腰を鍛えるトレーニングなど全く意味を成さない。

 

 

「……おにいさんたち、だあれ?」

「……うぉ!」

 

 

石段に座る花火達の目線の前に突然現れたのは小学生にも満たないくらいの小さな女の子。オレンジに近い茶髪に、飛び跳ねたアホ毛が妙に目立つ。

 

 

「こんにちわー、お名前は?」

「『しぃ』です」

「………いやいや、『しぃ』って」

「しぃちゃんだね!よろしく!私は菜々子!菜々姉さんでいいよ!」

「俺は花火」

 

 

名前を聞かれて覚束ない感じだが、年相応の可愛らしい声で言い返すしぃ、菜々子は小さい子の面倒は弟で慣れているためか、直ぐに仲良くなる。

 

花火も一応挨拶を交わした。彼も子供の扱いは多少手馴れてはいたものの、それに関しては菜々子の方がやはり上手なのか、彼女がいるとどうも会話には参加し辛いものがあった。

 

だが、1つ疑問が残る。花火はその疑問をしぃに対して率直に述べる。

 

 

「しぃちゃんはどこから来たの?…………まさかここを登って来たのわけじゃあないよね?」

「そだよ、うえにすんでるの」

「………!?」

「じゃあしぃちゃんがバトスピ一族の子供?」

 

 

幼いながらにしてここまで登って来たのだ。普通の子供ではないと花火は睨んではいたが、まさか一族の末裔とは思っても見なかった。確かにそれだと辻褄が合う。毎日上り下りしてるからこそ息が上がらずに易々とあの石段を上っているのだ。

 

 

「おにいさんたちおきゃくさん?じゃあしぃがあんないする〜!」

「わっ!」

「え!?」

 

 

しぃはそう言って花火と菜々子の手を引っ張り石段を駆け上る。すごい力だ。最早ギャグ漫画のキャラの領域を超えるか超えないかの瀬戸際だ。

 

体力がある菜々子は兎も角、花火は辛かった。引っ張られているから足が勝手に動かされるのだ。幼いその手を無理矢理離すのはどうかと思われるし、本当にどうしようもなかった。

 

そしてしぃは一気にてっぺんまで上った。

 

 

「とうちゃぁ〜〜く!」

「すごいね!しぃちゃん!」

「はぁ、……はぁ、まったくだ……バトスピ一族すげえ」

 

 

素直にしぃの凄さの事を褒める菜々子に対し、花火は過呼吸寸前だった。

 

着いた場所を見渡してみるとそれはそれはとても広い緑のスペースが広がっていた。その中にはポツンと大きな家が建っている。おそらくはこの島のバトスピ一族の館。

 

その館から『バタン!』っと、初老の男性が扉を開けて花火達の元に向かった。

 

 

「じっちゃぁん!」

「おお、椎名、帰ったか!偉いぞ!」

 

 

男性が向かってくるなり、しぃはその男性に飛びついていった。しぃの祖父なのだろうか。

 

 

「はて、その者達は?」

「おきゃくさんだよ!しぃがつれてきたんだよ!」

「お〜〜お〜〜そうか、そうか!偉いのぉぉぉお!」

「一木花火です」

「空野菜々子です」

 

 

そう言って菜々子も花火もしぃを溺愛するその初老の男性に挨拶を交わした。

 

 

「ほぉほぉ、見た所、観光客と言った感じですかな、まぁ詰まる話もあるじゃろう、どうぞ中へ」

 

 

そう言われながら花火達はその家に入ることになった。驚いたのはその入った瞬間だ。

 

 

「わー!お客さんだ!」

「首に変なの下げてるぞ!」

 

 

などと様々な子供の声が聞こえて来た。ざっと30人はいそうだ。しぃもじっちゃぁんと呼ぶ男性から離れて同年代くらいの友達のところへ行った。

 

 

「この子達みんなあなたの息子さんか、お孫さんなんですか?」

 

 

花火がボソッと呟くように初老の男性に聞いた。すると男性もボソッと言い返した。

 

 

「ほっほ、いや違うよ、確かに息子、孫はいますがね、ほとんどは拾った子達じゃよ、さっきの椎名もその1人」

 

 

この男性はとある一族の末裔。だが、そこに住む子達のほとんどは末裔ではなく、ただの拾い子だと言う。花火と菜々子はそのことに感心しながらも彼の1人部屋に案内された。2人はその部屋のソファに腰を下ろした。

 

 

「すまんのぉ、やかましくって」

「あっ、いえ、全然」

「ところでお主らはデジタルスピリットを持っておられるな」

「……!」

 

 

花火と菜々子は驚いた。まさかここに来てデジタルスピリットの名が出てくること、そして自分らがそれを持っている事をズバリ言い当てた男性に。

 

 

「え!?お爺さん、なんでわかるの!?」

 

 

菜々子が聞いた。

 

 

「ほっほ、そりゃあまぁ、一族代々そのデジタルスピリットを引き継いでいましたからのぉ、不思議と我らの一族はそれを感じることができるのじゃ」

「俺はそんなの感じた事ねぇぞ………て言うか、引き継ぐ?」

「そうじゃ、この島を統治する長は代々それを継承しなければならんのじゃよ」

「じゃあ今はお爺さんがこの島の長?」

「いや、娘さん、それは昔の話、今はこの島に統治者はおらん、いろいろあってのぉ………カードは祠に納められておるが、どうじゃろう、折角じゃし、見てみるかい?」

「え!!いいの!みたい!」

 

 

そう言って今度はその家を出て、すぐ横の祠に向かう花火達、だが、一旦外に出る時に、ここである邪魔が入る。それは邪魔と言うにはあまりにも小さいものであって、

 

 

「おい!お前ら!」

「ん?」

 

 

そこにいたのは10歳前後くらいの男の子だった。ここの子供だろうか、その少年は今にも憤怒しそうな形相で花火と菜々子を睨みつけていた。

 

 

「お前ら、あのカードを奪うために来た、悪もんだろ!」

「え!?いや、私達はただそれをみたいなあ〜って思って来ただけだよ?」

「うるせぇ!怪しすぎだろ!」

「やめんか、葉月」

 

 

葉月(はづき)と呼ばれる少年を制止させようとする初老の男性。だが、葉月はなかなか引き下がろうとはせず、その怒りを花火達にぶつけていく。

 

 

「なんだよ、ジジイ!いつもはこういうやつらなんかケチョンケチョンにしてるじゃねぇか!いつもみたいにやれよ!」

「この者達は見る権利がある。バトルなどする必要すらないんじゃよ」

 

 

花火はなんとなくだが、理解した。おそらく今まで何度もその継承されるカードを狙って来た本当の悪人がいたのだろう。それをこの初老の男性がバトルでねじ伏せていったのだ。

 

だったら話は早い。示せばいいのだ子供達に自分の強さを。

 

 

「よし、お前、そこまで言うなら俺とバトルしてみろよ!俺がお前に勝てば見てもいいだろ?」

 

 

花火が少年の目線に顔を合わせてそう言うと、少年も当然の如くデッキを構える。

 

 

「はぁ、すまんのぉ、」

「ま!子供はやんちゃなくらいが丁度いいって!」

 

 

他の子供達がバトル用のテーブルを外に持ち運んでくる。リアルワールドにはDワールドのようなバトルフィールドの空間は存在しない。故にテーブルの上でしかバトルはできないのだ。プロリーグなどの立派な試合でも、可能なのは精々それらを映像化するくらいだ。

 

花火とその少年は、互いのデッキをセットしてバトルを開始する。どこの世界も変わらないあの言葉で。

 

 

「「ゲートオープン!解放!」」

 

 

バトルが始まるが勝負は終始永遠に花火が優勢。

 

ーそして、

 

 

「よし!いくぜ、グレイモンでアタック!」

「くっ、ら、ライフで受ける」

 

 

花火の最後のアタックが決まり、花火の勝利で終わる。少年は悔しそうな顔をしながら残りのライフのコアをリザーブに置いた。

 

 

「へへ、結構強いじゃねえか、流石はバトスピ一族だな!!」

「うるせぇ!」

「今のバトルでわかったろう、葉月、この者達は見る権利はある。なぁに、本当に盗むのであればこんな昼間っから狙ったりせんわい」

「ぐっ!……わかったよ、勝手にしやがれ」

 

 

そう言って少年は1人で家に帰っていった。花火のバトルを見て他の子供達は大盛り上がり、花火達に大勢の子供達が詰め寄った。

 

 

「お兄さんつえーーー!葉月を倒すなんて!俺らの中ではじっちゃんしか倒せないのに!」

「お姉さんも強いのぉ!?」

「ねぇねぇ、バトルしよぉ!!」

 

 

なかなか静まり帰らない子供達に不機嫌そうな顔をして初老の男性が叱る。

 

 

「こら、いい加減にせんかい、」

「いいですよ、全然、……後でな!後でいっぱいしよう!」

 

 

そう言って花火達は子供達を置いて祠に向かった。そしてその中に入る。その中はとても薄暗く、懐中電灯がなければ何も見えないレベルだ。

 

そしてその最奥部に到着する。そこにはある一枚のカードが綺麗な石碑にめり込むように納められていた。

 

 

「これが、我ら一族の最強スピリット、【インペリアルドラモン パラディンモード】じゃ」

「……究極体」

「このカードも何か特別なのかな?」

「む〜〜、わからん」

 

 

納められていたカードは【インペリアルドラモン パラディンモード】ただしわかるのは系統と名前だけ、コストやBP、シンボル等が描かれていないため、バトルでは使えなさそうだ。

 

究極体のスピリットはDパラディンの双璧や、ダークマターズなど、何かと特別な存在のものが多くいたため、このスピリットも何かしらの特別な存在であることが示唆されるが、花火も流石にそこまではわからない。

 

 

「ほっほ、今は所有者がおらぬからのぉ、その時はこうやってバトルでは使われないようになってるんじゃよ」

「へ〜〜、不思議、」

 

 

結局珍しいカードではあったがそれが一体何でなんなのかはさっぱりわからないまま花火達はその祠を出た。

 

その後はここの子供達と遊び、花火達は有意義な1日を過ごした。

 

そしてその日の夜、花火と菜々子は宿泊先のハウスでたむろしていた。

 

 

「今日は楽しかったねぇ!」

「そうだな」

「ねぇねぇ、明日もしぃちゃん達のところ行かない?」

「………え!?、いやいいだろ、流石に違うところ回ろうぜ、日にちもあんまないしよ」

 

 

明日も一族のところへ行こうと言い出す菜々子、花火は正直行きたくはなかった。理由は単純、石段を登りたくないからだ。

 

 

 

******

 

 

 

一方、時は同じくして、花火達の住む街はと言うと、河川敷で小次郎がある者とバトルをしていた。しかもDワールドでのバトルのように、スピリットを実際に召喚しながら。

 

 

「いけ!アトラーカブテリモン!」

 

 

赤き甲虫の完全体スピリット、アトラーカブテリモンがそのツノに電撃を纏わせて、謎のスピリット軍団に突進していく。だが、その謎のスピリットには歯が立たず、

 

そのまま殴り倒されてしまう。アトラーカブテリモンはその場で消滅した。

 

 

「……ぐっ!………アトラー!!」

「緑坂小次郎、もう少し骨がある奴だと思ったんだけどなぁ、こんなもんか、………やれ、」

 

 

少年のような姿をした謎の青い生命体が命令すると、その禍々しいスピリット達が小次郎を襲った。

 

 

「う、うわぁぁぁぁあ!!」

ライフ1⇨0

 

 

最後のライフを破壊された小次郎はあまりのバトルダメージにより、気絶し、その場に倒れてしまう。

 

そしてテントモン、パルモン、その進化系統のカード達が、円を描くようにその青い生命体の元へと赴いていった。

 

 

「よぉし、先ずは2つ、あと半分、」

 

 

そう言って彼はテレポートでも使ったかのように真夜中の街から姿を消した。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

翌朝、まだ5時くらいだったが、花火は昨日の石段ダッシュが応えてしまい、筋肉痛の痛みで起床する。流石にジョギングくらいして体をほぐさねばと思った花火は寝間着から私服に着替えて外を歩くことにした。

 

 

「あぁ、足いてえ、まさか旅行に来てここまで身体的ダメージを受けるとは思ってもいなかったぜ」

 

 

歩くのもしんどい花火はすぐそこにあった緑溢れる公園のベンチでで腰を下ろした。足の脹脛はパンパンだ。そんな彼を憐れむような声が横から聞こえて来た。

 

 

「はっは、そりゃ、大変だね〜」

「………!!」

 

 

突然現れたその謎の青い生命体は花火の横にチョコンと座ってくる。花火は見たこともないものを見て足の痛みなど忘れて思わず飛び上がった。

 

 

「お前、誰だ!?」

「僕かい?、僕は…………」

 

 

謎の生命体を前にしても本当に驚いたのは最初だけ、花火はこんな不思議なことは慣れっこだ。この程度では困惑はしない。冷静に対処する。

 

だが、自己紹介をしようとした生命体を遮るように花火のスマホから着信が入る。相手は小次郎だ。

 

 

「ちょっ、……悪いな」

「いいよ、でなよ」

 

 

謎の生命体は二言で承諾する。その御言葉に甘えて花火は着信を優先した。

 

 

「おう、なんだよ」

《花火か!?》

「ん?あぁ、そりゃそうだろ、お前が俺にかけて来たんだから………」

《逃げろ!菜々子君もいるんだろ!?》

「はぁ!?逃げろ!?…………いや、なにからだよ!?」

 

 

『逃げろ』と言う意味が花火にはわからない。そもそも一体何から逃げればいいのかわからないのに、一体どこへ逃げれというのか。

 

 

《いいか、よく聞け!昨日俺は怪我して今、病院にいる!!!》

「はぁ!?怪我!?大丈夫なのかよ!?!」

《不気味な青い幽霊みたいな奴が俺らのDパラディンのカードを狙ってるんだ!!俺はそいつにテントモンもパルモンも盗られたんだ!》

「いやいや、不気味な青い幽霊ってお前、馬鹿馬鹿し、………い?」

 

 

花火は気づいた。今自分の目の前にいる生命体は青い。とても青い、髪の先から足の指の先までが青い。まるで青い幽霊だ。

 

あまりの奇跡のタイミングに花火は声も出ない。小次郎も電話越しでなんとなく察したのか、より慌ただしく花火を問い詰めようとする。

 

 

《おい!!!花火!?お前まさか、心当たりがあるんじゃないだろうな!?お、…………》

 

 

次の瞬間、なぜか通信がパタリと途絶えてしまう。

 

 

「小次郎?小次郎!?」

「全くうるさいな、小次郎君は、うるさいからしばらくの間、君のスマホを使えなくしたよ」

 

 

花火のスマホは青い微弱な電気を帯びて機能を停止した。おそらくはあの青い生命体の力。

 

 

「………お前、何者だ、」

「そういえば自己紹介からだったね、僕の名前は【イコール】、世界の調和を望む者」

「世界の調和!?」

 

 

なかなかつかみ所のない自己紹介に花火は疑問を抱かずにはいられない。イコールは順を追って説明していく。

 

 

「そうだね、先ずは僕の生い立ちから知ってもらえたら理解できるかな?……………君はリアルワールドとDワールドの時間軸が違うことは知っているよね?」

「あぁ、」

 

 

リアルワールドとDワールドの時間軸が違う、これはそれぞれの世界を行き来した花火達は当然知っていた。だが、ここからイコールが話すことは驚きの連続であって、

 

 

「ついこの間までは時間軸は違っていた。けど、それは君らが起こした事件で変わってしまった」

「変わった!?事件!?!………もしかしてアポカリモンの時か!?」

「御名答!流石に勘が鋭いね!小次郎君とは大違いだよ!」

 

 

アポカリモンとオメガモンのバトルフィールドでの大激突。あの振動が影響を及ぼしたのはDワールドだけではなく、リアルワールドも影響を受けていた。

 

 

「それが影響してね、2つの世界の時間はほとんど同じに統一されてしまったのさ、偶然……ね」

 

 

これを聞いて正直花火はホッとしているものもあった。帰って来た時にその時間のズレがあることを知ってしまったが、それはつまり、Dワールドの人間が自分たちより、歳をとるペースが早いと言うことでもあって、

 

つまり、今はシデンや、カイネはほとんど変わらない年齢のままということ、また会えるかもしれないと言うことだ。

 

 

「そして、その時に生じたズレのエネルギーによって僕はこの世界に生まれた。言わばエネルギー体だ」

「!?」

「僕は過去と未来の事柄を見ることができる不思議な力を持っている。ただし未来はある程度が限界だけどね、それでもこの世界のことは大体インプットしたよ、Dワールドのことも、そして理解した、君らの住むリアルワールドこそ、【調和を乱すいらない世界】だとね」

「………なに!?」

「そう、だから壊しに来たのさ、リアルワールドを、……そのついでにDパラディンを回収しようと思ってね、意思だけになっても彼らも元はDワールドの住人だからさ、」

 

 

いきなりリアルワールドを壊すと言う言葉に今までとはスケールの違いを感じる花火。だが、これでようやく理解しえた。

 

 

「………で?つまりお前は俺にデジタルスピリットを返せと」

「そう言うこと」

「返さないって言ったらどうする?」

「ふふ、小次郎君みたいに痛い目を見てもらうしかないね〜〜」

 

 

そう言いながらイコールは花火が譲る気は無いと察したのか、右手を挙げて、デジタルの粒子を放出する。それはとても濃ゆい濃度だった。それは忽ち島全体を覆い尽くす。

 

 

「なんだ!?これ!?」

「僕は特別でね、自分でバトルフィールドを作れるのさ」

 

 

イコールは自分のデッキをデジタルゲートから呼び出すと、それをバトル用のシートが貼られた台の上に置いた。そして置いたと思ったら消え、すぐしたらまた出て来た。それらはイコールの意思によって消えたり浮き出たりしているのがわかる。

 

 

「どうなってんだ!?」

「ふふ、僕のバトルは少々変わってるよ、やっぱりスピリットを召喚させるなら、自分の目の前がいいじゃないか」

「それは共感できる」

 

 

確かにこのシステムならスピリットとともにフィールドをかけることができる。邪魔になるバトル台が消えたり浮き出たりするからだ。必要な時だけ出せばいい。つまりこのバトルはこの島全体が大きなバトルフィールドと言うことになる。

 

 

「どうだい?バトルする?決める前に言っておくけど、バトルスピリッツで僕には決して勝てないよ」

 

 

やや得意げな顔で言い放ってくるイコール、だが、花火は最初っから腹はくくっていた。どちらにせよ自分が立ち向かわなければこの世界は終わる。そう思っていたのだ。

 

 

「やるぜ、俺は負けない!!」

 

 

そう言いながら花火も目の前に現れた土台に自身のデッキをセットした。そしてイコールとある程度の距離をとる。

 

 

「なるほど、流石に度胸は座ってるよね、…………じゃあ、始めるよ」

「……あぁ、行くぜ、」

「「ゲートオープン!解放!」」

 

 

世界の隅でひっそりとそれらの命運を賭けた一戦が幕を開けた。

 

ー先行は花火だ。

 

 

[ターン01]花火

《スタートステップ》

《ドローステップ》手札4⇨5

 

「メインステップ、アグモンを召喚!」

手札5⇨4

リザーブ4⇨0

トラッシュ0⇨3

 

 

花火は自分の目の前に小さな恐竜型のスピリット、アグモンを召喚した。いつもは上から見下ろす形での召喚が多かったが、今回は自分の目線でアグモンが見える。と言うか、目の前に存在する。ずっと召喚していたその始まりの龍は自分が予想していたよりもずっと小さかった。花火はそれに触れてみる。毛がないその龍だが、冷たくはなく、肌触りはまるでホットカーペットのよう、アグモンも触れられて嬉しいのか、喜びの声がでる。

 

ー花火は触れてみて違和感を感じた。それは明らかに今までとは違うなにか、

 

 

「なんだ、この感じ、……これ、本当にデジタル体なのか?」

「ふふ、やっぱり気づいたね、彼らは本物さ、僕の力で実際に存在させている」

「………!!」

 

 

いつもと違う違和感は間違いなくそれだ。確かにこの実体化の力があれば、リアルワールドを壊すことなど本当に容易いことだろう。先ずはデジタルスピリットを回収に来たのが不幸中の幸い、その隙になんとか倒さねばならない。

 

 

「アグモンの召喚時!デッキから2枚オープンしてその中の成熟期か、完全体を手札に加える!」

オープンカード

【アシガルラプター】

【グレイモン】

 

 

花火はアグモンの召喚時でグレイモンのカードを手札に加えた。

 

 

「よし!グレイモンを手札に加えて、ターンエンドだ」

手札4⇨5

 

アグモンLV1(1)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

 

先行の第1ターンなど、やれることは限られている。花火はこのターンを取り敢えず終了した。次はイコールのターン。

 

 

[ターン02]イコール

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札4⇨5

 

 

「さぁ、メインステップだ、ケラモンを召喚!LVは1でね」

手札5⇨4

リザーブ5⇨1

トラッシュ0⇨3

 

 

イコールが放った最初のスピリットは群青色の体色に体がいかのように数本の足でできているスピリット、ケラモンが現れる。その顔は不気味な笑みはまるでこの世の破壊を楽しんでいるかのような顔だ。

 

 

「なんだ、あいつ、……あいつもデジタルスピリットなのか?」

 

「そう、僕のオリジナルのね…ターンエンド」

ケラモンLV1(1)BP2000(回復)

 

バースト無

 

 

BPが低いケラモンでアタックすることはなく、そのままイコールはターンを終えた。

 

 

[ターン03]花火

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨4

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、アグモンをLVアップ!」

リザーブ4⇨1

アグモン(1⇨4)LV1⇨3

 

 

コアが与えられたアグモンは力が増し、高らかに吠える。

 

 

「アタックステップ!その開始時に【進化】発揮!アグモンを同じ色のグレイモンに進化させる!」

 

 

アグモンにデータのベルトが巻かれる。アグモンはその力で0と1のコードを返還され、より巨大な恐竜型のスピリット、成熟期のグレイモンへと進化を遂げた。

 

グレイモンは花火の身長の約3倍くらいの大きさ、それでもここの広場がいつものバトルフィールドよりは大きいからかグレイモンもやや小さく感じる。

 

広場に巨大なスピリットが登場するが、今は幸い朝、人気が少ないため、気づかれることはなかった。

 

 

「おお、これがグレイモンのオリジン!………」

「その余裕!へし折ってやるぜ!アタックステップは継続!いけ!グレイモン!」

 

 

グレイモンは走り出すと同時に口内に炎を溜め、それを一気にケラモンに向けて放つ。ケラモンはその炎に包まれて爆発した。

 

 

「グレイモンのアタック時効果だ、BP5000以下の相手のスピリットを1体破壊してカードを1枚ドローできる」

手札6⇨7

 

「なるほどね、だけどその程度の炎じゃぁ、ケラモンは死なないよ」

「なに!?」

 

 

炎の爆煙が晴れると消滅したかと思われたケラモンだが、なぜか生存していた。そして不気味な笑みをあいも変わらず続けている。

 

 

「ケラモンは破壊時にカードを1枚ドローさせて、一回だけ復活できるんだよ」

手札4⇨5

 

「ぐっ、だけどアタックは継続中だ!いけ!グレイモン!」

 

「それはライフで受けようかな」

ライフ5⇨4

 

 

グレイモンの立派な頭角による攻撃をガードするイコールのライフのバリア、それが1つ砕けた。

 

 

「ターンエンドだ」

グレイモンLV3(4)BP7000(疲労)

 

バースト無

 

 

[ターン04]イコール

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ2⇨3

《ドローステップ》手札5⇨6

《リフレッシュステップ》

リザーブ3⇨6

トラッシュ3⇨0

 

 

「メインステップ、ケラモンのLVを2へ、」

リザーブ6⇨4

ケラモン(1⇨3)LV1⇨2

 

 

ケラモンは謎の光を浴びてLVが上がったことをアピールする。

 

 

「さぁ、アタックステップ、いけ!ケラモン!アタック時効果発揮!【超進化】!完全体のインフェルモンに!インフェルモンはLV3!」

リザーブ4⇨2

インフェルモンLV3(5)BP10000

 

「なに!?成長期のスピリットで【超進化】!?」

 

 

ケラモンはアグモンなどより長いデータのベルトを巻き、0と1のコードを返還させ、姿形を変える。現れたのは手足の長い蜘蛛のような姿をした完全体スピリット、インフェルモン。

 

ケラモンは成長期ながら【超進化】を持つ異例なスピリット。

 

 

「インフェルモンの召喚時効果発揮、グレイモンのコアを2つ除去」

 

「くっ!」

グレイモン(4⇨2)LV3⇨1

リザーブ1⇨3

 

 

インフェルモンは口内からマシンガンを飛び出させて、それをグレイモンに向けて放つ。グレイモンは広場の隅までぶっ飛ばされた。

 

 

「さぁ、いけ!インフェルモン!」

 

 

イコールの手札には謎の煌臨スピリットが存在したが、それはこのバトルを終わらせるには十分すぎるほどの力を持っていたが、まだ終わらせるには早いと思ったのか、イコールは使わないことに決めた。

 

 

「……ライフで受ける」

ライフ5⇨4

 

 

インフェルモンが手足を引っ込めて花火に突進してくる。花火のライフを1つ砕いた。

 

 

「ターンエンド」

インフェルモンLV3(5)BP10000(疲労)

 

バースト無

 

 

イコールはターンを終える。

 

 

[ターン05]花火

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ4⇨5

《ドローステップ》手札7⇨8

《リフレッシュステップ》

グレイモン(疲労⇨回復)

 

 

「メインステップ!アグモンを召喚!」

手札8⇨7

リザーブ5⇨2

トラッシュ0⇨2

 

 

花火は【進化】の効果により手札に帰ってきていたアグモンのカードを再び召喚。その効果も遺憾無く発揮させる。

 

 

「召喚時効果!」

オープンカード

【勇気の紋章】

【メタルグレイモン】

 

 

今度は完全体のメタルグレイモンのカードがヒットする。花火はこれを手札に加えた。

 

 

「よし!メタルグレイモンを手札に加えて、グレイモンを再びLV3へ!」

手札7⇨8

リザーブ2⇨0

グレイモン(2⇨4)LV1⇨3

 

 

準備は万端、花火は一気に勝負に出る。

 

 

「アタックステップ!いけ!グレイモン!【超進化】を発揮!同じ色のメタルグレイモンを召喚!」

「………その前に!インフェルモンの効果発揮!【進化】【超進化】を発揮する相手のスピリットのコアを1つトラッシュに置く!」

 

「なに!?」

グレイモン(4⇨3)

トラッシュ2⇨3

 

 

グレイモンが超進化する直前、インフェルモンの砲撃が炸裂。進化の妨害を行う。だがグレイモンは弱体化こそするものの、そのまま超進化をする。

 

その0と1のコードを返還させる。体の半分以上がサイボーグと化したグレイモン、メタルグレイモンが召喚された。

 

 

「まさか、進化の妨害をしてくるなんて、」

「ふふ、僕のバトルでは常識は通じないよ」

「でも、【超進化】は成功した!いけ!メタルグレイモン!召喚時効果!BP12000以下の相手のスピリット1体を破壊!破壊対象はもちろんインフェルモンだ!」

 

 

メタルグレイモンは胸部のハッチを開き巨大なミサイルを射出する。それはインフェルモンに命中するが、

 

 

「無駄だよ、インフェルモンは効果では破壊されない」

「ぐっ!」

 

 

その攻撃は全く通用しない。まるで蚊にでも刺された程度の痛みなのか、インフェルモンは首を傾げただけだった。

 

 

「マジかよ」

「ふふふ、【超進化】を使用した後に、アタックしたスピリットのフラッシュタイミングが残るのを知っているかい?」

「ああ!?」

 

「煌臨発揮!対象はインフェルモン!」

リザーブ2s⇨1

トラッシュ0⇨1s

 

 

何か不穏な空気の流れを花火は感じていた。その謎の答えはインフェルモンにある。インフェルモンは禍々しいほどのオーラをその身に宿していた。

 

成熟期のスピリットが【超進化】の効果を発揮した時、アタックこそスピリットが消えるため、無効となるが、そのアタックに対するフラッシュタイミングだけが残るため、フラッシュタイミングの煌臨が使えるのだ。

 

 

「次元の狭間の魔王よ!今こそ愚かなる世界に鉄槌を下せ!究極進化!ディアボロモン!!」

手札6⇨5

ディアボロモンLV3(5)BP20000

 

 

インフェルモンは禍々しいオーラに飲まれてその形を変える。現れたのは異質な姿をした究極体のデジタルスピリット、ディアボロモン。その見た目はまさしく魔王そのもの。

 

 

「でぃ、ディアボロモン!?……なんだこいつは!?」

「これこそが僕のエースカードだ、煌臨時効果発揮!手札にあるディアボロモンをノーコストで好きなだけ召喚する!僕は4体のディアボロモンを追加!」

手札5⇨1

リザーブ1⇨0

ディアボロモン(5⇨2)LV3⇨1

 

「はぁ!?4体!?」

 

 

ディアボロモンは自身のコピー体を計4体、新たに生み出した。バトルスピリッツのゲームにおいて、同じカード名のカードは基本3枚までのはずだが、

 

 

「ディアボロモンのカードはデッキに何枚でも入れることができる…………言ったでしょ、僕に常識は通用しない」

 

「………くっ!……ターンエンドだ」

メタルグレイモンLV2(3)BP9000(回復)

アグモンLV1(1)BP3000(回復)

 

バースト無

 

 

イコールのデジタルスピリット達にバトルスピリッツの常識は一切通用しない。ディアボロモンはデッキの3枚の上限を超えて何枚でも投入することができるスピリットカードだ。

 

強力なスピリットが途端に5体も増えたのだ、メタルグレイモンもそのアタックを止めざるを得なかった。今、花火は間違いなくイコールの手のひらで弄ばれていた。タイミングによってはメタルグレイモンを破壊できていたのかもしれないのに、ましてやこれを前のターンのフラッシュで使われていたらそのままゲームエンドすらもあり得たのだ、

 

 

[ターン06]イコール

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

《ドローステップ》手札1⇨2

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨2

トラッシュ1⇨0

 

 

「さぁ、メインステップ、ディアボロモンを1体、LV2へアップ」

リザーブ1⇨0

ディアボロモンLV1⇨2(2⇨3)

 

 

ディアボロモンの1体は力を見せつけるように光り輝いた。

 

 

「アタックステップ、ディアボロモンでアタック!その効果で相手のスピリットのコアを2つリザーブに送る!メタルグレイモンとアグモンのコアをそれぞれ1つずつリザーブへ送る!」

 

「くそ!アグモンッ!」

メタルグレイモン(3⇨2)LV2⇨1

アグモン(1⇨0)消滅

 

 

ディアボロモンは自身の胸部から破壊光線を放つ。メタルグレイモンとアグモンは町への破壊を食い止めるためにそれにぶつかっていくが、アグモンはその衝撃に耐えられずに爆発してしまう。メタルグレイモンも体力を奪われたのか、膝をついた。

 

 

「ふふ、そして、カードを2枚ドロー」

手札2⇨4

 

 

おまけのように手札を増やすイコール。そしてまだ物足りないのか、彼はディアボロモンの増殖効果を使用する。

 

 

「ディアボロモンはアタック時にもコピー体を生み出すことができる!僕はもう2体のディアボロモンを召喚!」

手札4⇨2

ディアボロモン(3⇨1)LV2⇨1

 

「なに!?アタック時にも……!」

 

 

ディアボロモンは新たに2体、自身の分身を作り出す。これでディアボロモンの合計数は7、対する花火のフィールドにはメタルグレイモン、花火はここまでメタルグレイモンの背中が頼りなく見えるのは初めてだった。それほどディアボロモンのこの効果は強烈だったのだ。

 

 

「さぁ、アタックは継続中!」

 

「くそ、ライフだ」

ライフ4⇨3

 

 

ディアボロモンが花火のライフを伸び縮みする自身の腕を叩きつけて破壊した。

 

 

「さぁ!次!2体目ぇ!」

 

「これもライフだ!」

ライフ3⇨2

 

 

次なるディアボロモンが襲いかかる。2体目は1体目と同じような容量で花火のライフを1つ破壊した。

 

 

「さぁ、次、3体目だ」

「……ライフで受ける……ぐぅ!」

ライフ2⇨1

 

 

3体目のディアボロモンの攻撃を受けて花火のライフは最早風前の灯火。しかもまだ4体のディアボロモンの攻撃が残されている。絶望に等しい。

 

数が多すぎる。花火はここまでの数の究極体を相手にとったことは一度もない。

 

 

「え〜〜っと、次は、4体目か、やれ!」

 

「ここだ!フラッシュタイミング!煌臨発揮!対象はメタルグレイモン!」

リザーブ5s⇨4

トラッシュ3⇨4s

 

 

メタルグレイモンが赤く光り輝き、進化の兆しを見せる。

 

 

「いくぜ!鋼鉄の龍よ!今こそ最強の龍戦士となり、敵を討て!ウォーグレイモン!究極進化!!」

手札8⇨7

ウォーグレイモンLV1(2)BP8000

 

 

燃え上がる炎の中で花火のエーススピリット、ウォーグレイモンが現れた。

 

 

「やっと来たね、オメガの因子を持つグレイモン系統の最強の進化体……カッコいいじゃないか」

「頼むぞ、ウォーグレイモン……!」

 

 

花火の声に反応するかのように雄叫びをあげるウォーグレイモン、だが、この雄叫びが仇となる事となっていく。

 

 

「ウォーグレイモンの煌臨時効果!BP15000以下になるように相手のスピリットを好きなだけ破壊!……いけ!ウォーグレイモン!アタックしていない回復状態のディアボロモンを1体破壊だ!」

「ほぉ」

 

 

ウォーグレイモンは両掌で大きめのガイアフォースを形成してそれをディアボロモンの1体に直接ぶつける。LVが上がっていないこともあり、ディアボロモンは破壊されてしまう。

 

 

「……よし!」

「ふふ、でもディアボロモンは後6体」

 

 

そうだ、いくら1体破壊したとはいえ、後6体のディアボロモンが残っている。しかもBPはウォーグレイモンより上、最早ウォーグレイモンだけではどうしようもないところまできていた。

 

そんな時、花火は1枚の手札を切ろうとした瞬間、自分の後ろから声が聞こえた。その声は昨日覚えたての声だ。

 

 

「………すごい!!やっぱりほんとにスピリットはいたんだ!」

「「……!?」」

 

 

諸手を上げて喜んでいたのは、昨日知り合ったばかりのしぃ、花火は驚いた。なぜしぃがこんな場所にいるのか、いつもはあの山の上で寝泊まりしているはずなのに、と。

 

バトル中に水を刺されたイコールは少し不機嫌気味になり、

 

 

「なんだ、あれは、人間の雌の幼体?……、目障りだ、消せ、ディアボロモン」

「おいっ……!……今なんて……」

 

 

イコールが指でしぃを指し示すとアタック中のディアボロモンは再び胸部から破壊光線を発射しようとする。しぃはまさか自分が狙われてるとは思ってもいない。

 

 

「………ぐっ!!ちくしょう!!!」

 

 

歯を食いしばりながら全速力で一心不乱にしぃのところまで走る花火。破壊光線に当たる直前に転げながらもなんとかしぃを抱えながら避けることに成功する。

 

 

「ブロックだ!ウォーグレイモン!」

 

 

花火はしぃと共に転がりながらもウォーグレイモンにディアボロモンが手を出さないように指示する。ウォーグレイモンがドラモンキラーの一撃でディアボロモンを上空へと追いやる。

 

 

「え!?」

 

 

しぃは今頃気づいた。ディアボロモンが狙っていたのは自分だと、だとしたらなぜ昨日あったお兄さんは一緒に倒れているのだろうっと。考えれば直ぐに答えはわかった。

 

 

「……何しているんだ君は、そんな幼体、人間は星の数ほどいるだろう?……なぜ助ける……どの道この世界の人間は僕に殺されると言うのに」

 

 

イコールの質問に花火は抱きしめていたしぃを静かに離し、転げ落ちた時に傷ついた左手を庇いながら起き上がり、口を開いた。

 

 

「……星の数ほどいる……だと?笑わせんじゃねぇ!この子が死んだらどれほどの人が泣くと思ってんだ!どれほどの人が悲しむと思ってんだ!この子の代わりになる人間なんて1人もいねぇ!!!!!この世界の人間はみんなお前に殺されるために生まれて来たわけじゃねぇ!」

「……………!!」

 

 

イコールはなぜか震え上がった。背筋が凍りつく。気圧された。目の前にいるのはまさしく自分が苦手なタイプの人間だ。賢いくせに感情論で動く。そんな人間がイコールは大嫌いだった。そんな人間に恐怖を感じるなど思ってもいなかった。

 

花火の心からの声に、まだ5、6歳くらいのしぃは不思議と涙が止まらなかった。それが滝のように流れている。なんでだろうか、それは今この場では明らかにすることはできない。花火はしぃがディアボロモンが怖かったからだと勝手に勘違いして、再びしぃのところへ行く。

 

 

「泣くなよ、しぃちゃん、………あっそうだ!……これやるよ」

「……!!?」

 

 

そう言って花火が懐から取り出し、しぃに見せたのは自分が昔つけていた砂塵ゴーグル、10年以上前から父への憧れから花火が肌身離さず着用していたものだ。所々に傷があり、より使い込んでいたのがわかる。

 

花火はしぃの小さい頭にそのゴーグルを着けてあげた。丁度ゴーグルが飛び跳ねたアホ毛に当たるので少々着け辛かったが、

 

 

「不思議と勇気が湧いてくるだろ?……勇気が湧いて来たらこの場から離れろ」

 

 

流石にここまでの大きな音を立て続けに出したせいか、町の人が気づきはじめる。そして異様な化け物達を見て恐れ慄いた。

 

流石にこれではダメだと思い、花火はここでイコールにある提案を持ちかける。

 

 

「イコール、場所だけ返させてくれ、町の人に迷惑がかかる」

「………全く、その内全員死ぬと言うのに、まぁいいや」

 

 

そう言いながらも左手の指を鳴らすイコール。すると島中に張り巡らされたデジタルの糸は凝縮していき、花火とイコール、そのスピリット達だけをすくい上げ、空の彼方へと移動させる。凝縮したとは言え、東京ドームが丸々入りそうな広さだ。十分スピリット達も暴れることができる。

 

 

「これでいい?……もう手は抜かないよ」

「望むところだぜ」

「ウォーグレイモンとディアボロモン1体の勝負の途中だったね〜軽く捻ってやれ、ディアボロモン」

 

 

そう言いながらディアボロモンは伸縮性のある腕でウォーグレイモンを縛り付ける。ウォーグレイモンの武器や装甲にどんどん亀裂が生じて行く。

 

 

「フラッシュタイミング!お前のBP8000以上のスピリットのアタック中に、1コストを支払ってブラックウォーグレイモンを召喚できる!」

リザーブ4⇨3

トラッシュ4s⇨5s

 

「なに?!?……」

 

「いくぜ!漆黒の龍戦士のお出ましだ!ブラックウォーグレイモンを召喚!」

リザーブ3⇨2

手札7⇨6

ブラックウォーグレイモンLV1(1)BP9000

 

 

漆黒の龍戦士ブラックウォーグレイモンが黒炎の中から呼び出される。ブラックウォーグレイモンは張り巡らされたデジタル空間を震撼させるほどの巨大な咆哮をあげる。

 

 

「黒いウォーグレイモン、…こんなものまで……」

「ブラックウォーグレイモンの召喚時効果!BP12000以下の相手のスピリット1体を破壊!アタックしていないディアボロモンを破壊!」

 

 

ブラックウォーグレイモンの両掌から放たれる暗黒のガイアフォースが未だ回復状態のディアボロモン1体を爆破させる。これで残りのディアボロモンは5体。

 

 

「ふふ、いいのかい?バトル中のディアボロモンを破壊しなくて、これじゃあウォーグレイモンは無駄死にだよ」

 

「ウォーグレイモンを無駄死ににはさせない!……フラッシュタイミング!マジック!リアクティブバリア!不足コストはウォーグレイモンから確保!」

手札6⇨5

リザーブ2⇨0

ウォーグレイモン(2⇨0)消滅

トラッシュ5s⇨9s

 

「……!!……白のマジックまで持っていたか……!」

 

 

縛り付けられたウォーグレイモンはそのまま白き結晶となって姿を消した。それと同時にブリザードが巻き起こり、5体のディアボロモンの動きを止めた。

 

 

「……仕方ないな、ターンエンドだ」

ディアボロモンLV1(2)BP12000(疲労)

ディアボロモンLV1(1)BP12000(疲労)

ディアボロモンLV1(1)BP12000(疲労)

ディアボロモンLV1(1)BP12000(疲労)

ディアボロモンLV1(1)BP12000(回復)

 

バースト無

 

 

イコールのターンエンドの宣言により、大人しくこの場は引き下がるディアボロモン達、花火はなんとかこのターンを凌ぎ切った。

 

 

「このターンだ、このターンでなんとかしないと、」

 

 

花火がそう言った時だった。デッキの一番上のカードが光輝き出す。花火は不思議とそれがなんなのかわかってしまう。今はそれがデッキにも入っていないと言うのに。

 

 

「ま、まさかこのカードは」

 

 

[ターン07]花火

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ0⇨1

 

 

「ドローステップ!……やっぱりお前か……!……ありがとうな!本当に!」

手札5⇨6

 

「オメガモンか……、なぜ奴は花火君に味方する」

 

 

花火がドローしたカードをイコールは見事的中させる。その通り、花火がドローしたのはDワールドからリアルワールドのピンチに駆けつけたオメガモンのカード。だが、カード単体だけで空間を急速な速度で移動したためか、その効果はアポカリモンの時と比べると劣っていた。

 

 

《リフレッシュステップ》

リザーブ1⇨10

トラッシュ9⇨0

 

 

「メインステップ、ロクケラトプス!アグモン[2]を召喚!」

手札6⇨4

リザーブ10⇨7

トラッシュ0⇨1

 

 

花火のフィールドに現れたのは、三本のツノが立派な地竜スピリット、ロクケラトプスと第二のアグモン、アグモン[2]が現れた。最初のアグモンと比べるとやや体色が黄色いか、

 

 

「ブラックウォーグレイモンにコアをありったけ乗っける!」

リザーブ7s⇨0

ブラックウォーグレイモン(1⇨8s)LV1⇨3

 

 

ブラックウォーグレイモンは凄まじいほどのコアの嵐を吸収して一気にLV3まで上り詰める。

 

 

「アタックステップ!ブラックウォーグレイモンは相手のスピリット1体に指定してアタックが可能!ディアボロモン1体を指定!」

「……いいだろう、ディアボロモンでブロックだ」

 

 

ブラックウォーグレイモンがディアボロモンに狙いを定めて一気に飛翔する。そして赤い光を帯びる。これもブラックウォーグレイモンの効果の一環だ。

 

 

「ブラックウォーグレイモンは指定アタックした時、そのスピリットが最もBPの高いスピリットであるならば、回復する!」

ブラックウォーグレイモン(疲労⇨回復)

 

「……なに!?」

 

 

イコールのフィールドに存在するディアボロモン5体はいずれもLVが1、つまり今は最もBPの高いスピリットはディアボロモン5体。どれを指定してもブラックウォーグレイモンは回復するのだ。

 

ブラックウォーグレイモンが勢いよくディアボロモンと衝突していく。ディアボロモンが再びウォーグレイモンと同じように腕で縛りあげようとするが、ブラックウォーグレイモンは俊足でそれを回避、したかと思えば、通り過ぎるかのようにディアボロモンを八つ裂きにしていた。ディアボロモンは耐えられずに爆発四散する。

 

 

「次だ!ブラックウォーグレイモン!」

「くっ!ディアボロモンでブロック……!」

 

 

背後から迫るディアボロモンに瞬時に察知し、暗黒のガイアフォースを反射的に浴びせた。ディアボロモンはまた破壊されてしまう。これで残りは3体。

 

勝って兜の緒を締めよ。ブラックウォーグレイモンはまだまだ戦う。

 

 

「まだ行け!ブラックウォーグレイモン!」

 

 

次のディアボロモンは腕を掴んで振り回し投げ飛ばして地面に叩きつけた。ディアボロモンは耐えられずに大爆発。残り2体。

 

 

「ブラックウォーグレイモン!ディアボロモンに指定アタック!」

 

 

残り2体の内1体に指定アタック、花火は一切気を抜いたりはしない。仮にブラックウォーグレイモンで残りのディアボロモンを一掃できたとしても返しのターンで何も防御札がなければそこでジ・エンド。ここで活躍するのがオメガモンだった。

 

 

「フラッシュタイミング!煌臨発揮!対象はブラックウォーグレイモン!」

ブラックウォーグレイモン(8s⇨7)

トラッシュ1⇨2s

 

「ここでまた煌臨!?」

 

 

ブラックウォーグレイモンは色が剥がれるように変わり、ウォーグレイモンへと原点回帰する。それと同時にデジタルゲートが開き、その中からメタルガルルモンが現れる。

 

花火はメタルガルルモンのことを懐かしく感じるが、今はそんなことに浸っている暇はない。煌臨口上を淡々と述べていく。

 

 

「右に友情!左に勇気!2つが1つになる時!真の勇者が誕生する!……合体!オメガモン!」

手札4⇨3

オメガモン[2]LV3(7)BP15000

 

 

ウォーグレイモンとメタルガルルモンが変形して衝突する。その時に溢れんばかりの光量に包まれる、それが晴れると、中から最強のデジタルスピリット、左腕はウォーグレイモンを、右腕はメタルガルルモンをそれぞれ模し、白いマントをなびかせて、伝説のDパラディン、オメガモンが現れた。

 

 

「オメガモン、だがやはり、弱くなっているね、無茶しすぎ……そんなにこの世界が好きなの?」

 

 

イコールの言葉を無視して花火はオメガモン[2]の煌臨時効果を使用していく。

 

 

「オメガモン[2]の煌臨時効果!トラッシュのソウルコアをオメガモン[2]に置くことで、トラッシュにあるスピリットカードを回収!……俺はこの効果でウォーグレイモンを回収する!」

トラッシュ2s⇨1

オメガモン[2](7⇨8s)

手札3⇨4

 

 

「なるほど、ウォーグレイモンの煌臨条件はコスト6以上の赤か白のスピリット、オメガモン[2]も例外じゃない、これで次のターンを防ぐつもりか」

「煌臨スピリットはその煌臨元のスピリットのすべての情報を引き継ぐ!ディアボロモンを討て!オメガモン!」

 

 

オメガモンとディアボロモンが対峙する。だが、今オメガモンが見ているのはそこではない。

 

 

「フラッシュタイミング!オメガモンのアタック時効果を発揮!煌臨元のカードを1枚取り除いて相手のBP12000以下のスピリット1体を破壊する!俺はブラックウォーグレイモンのカードを取り除き、バトルしていない、ディアボロモンを破壊!…………喰らえ!ガルルキャノン!!」

 

「なに!?」

 

 

オメガモンはメタルガルルモンを模した右腕から砲台を展開させて、それを左手で支え、焦点を合わせる。狙うはバトルしていないディアボロモン、放つと、それはまるで核爆弾並の威力、ディアボロモンは耐えられずに爆発四散した。

 

そしてオメガモンは残った最後のディアボロモンに狙いを定めて、左手のグレイソードを解放する。出した瞬間、周りの空気の温度差からか、蒸気が漏れ出ていた。

 

 

「打ち上げろぉぉぉお!オメガモン!………天下の豪剣!グレイソード!!」

 

 

オメガモンはグレイソードの一撃でディアボロモンの顔面を串刺しにした。ディアボロモンは堪らずデジタルとなり、消滅してしまう。

 

これでディアボロモンは全て除去された。トラッシュに行けば増幅はしない。

 

 

「ターンエンド!」

ロクケラトプスLV1(1)BP3000(回復)

アグモン[2]LV1(1)BP2000(回復)

オメガモン[2]LV3(8s)BP15000(回復)

 

バースト無

 

 

花火はこのターン全員で総攻撃を仕掛ければ勝てていたかもしれないが、それができなかった。当然だ、もし仮にカウンターを食らってしまえば、全てが水の泡、その時点で世界は、リアルワールドは滅んでしまうのだから、そう考えたら、あまり思い切りのいいバトルはできなかった。

 

 

[ターン08]イコール

《スタートステップ》

《コアステップ》リザーブ9⇨10

《ドローステップ》手札2⇨3

《リフレッシュステップ》

 

 

「メインステップ、もう一度、ケラモンを召喚」

手札3⇨2

リザーブ10⇨6

トラッシュ0⇨3

 

 

イコールは再び成長期のケラモンを召喚した。ケラモンはあいも変わらず不気味な笑いを続けている。

 

 

「……さっきの一撃でわかったよ、オメガモン、そんなにこの世界の人間に恩があるか、そんなに僕を消したいか、……なら僕もお前をこの世から消してやろう、」

 

 

イコールはオメガモンまで消すつもりはなかった。だが、いくらDワールドの神に等しい存在と言えども、自分の定義した答えを書き換えようと言うならそれは最早反逆者とみなす。イコールの本質は破壊行動を楽しむことにある。

 

 

「アタックステップ!ケラモンでアタック!」

「なに!?そいつだけで!?………くっ!なに企んでるのかは知らないけど、ここはロクケラトプスでブロックだ!」

 

 

BPの低いケラモンだけをメインステップで召喚して何故か攻めてくるイコール。ケラモンがいくらターンに1回だけ破壊されないとはいえ、この攻撃は明らかに浅はかだ。

 

だが、これも策略のうち、本当の計画はここからだった。

 

 

「フラッシュタイミング!僕は手札にある【アーマゲモン】の効果を発揮させる!」

「アーマゲモン!?」

 

 

効果の発揮と共にディアボロモンが4体一気にデジタルゲートより、復活する。

 

 

「また、ディアボロモン!?」

「いや、今度はそんなものじゃない、このデジタルスピリット、【アーマゲモン】はトラッシュにあるディアボロモンを4体まで、手札に戻すことでフラッシュタイミングで召喚できる!さらにこの効果で召喚する時、戻したカード1枚につき、コストを3下げる!」

「………4体のディアボロモンを戻したってことは………!」

 

「コストはマイナス12でゼロ!………魔界の竜神よ!今こそ世界の理を覆せ!!召喚!【アーマゲモン】!!!!」

手札2⇨6⇨5

リザーブ6⇨1

アーマゲモンLV3(5)BP22000

 

 

4体のディアボロモンは混ざり合い、融合し、より巨大な姿へと変貌していく。その大きさはオメガモンを遥かに凌ぐ。蜘蛛のような手足、竜のような頭部、そして純黒の体色、瞳のない目玉をギラつかせて史上最悪の超究極体のデジタルスピリット、アーマゲモンが誕生する。

 

アーマゲモンは登場してくるなり、大きな奇声をあげる。耳の鼓膜が割れるかと思うほどのその音量は、まるでこの世の終わりを告げられているかのよう。

 

 

「で、でかい……!」

 

 

顔のサイズだけでもオメガモンを凌ぐその体躯はまさしく絶望そのもの。オメガモンが本調子でも勝てるかどうか怪しいレベルだ。

 

一方でこのタイミングはロクケラトプスとケラモンのバトル中、弱々しい小競り合いを制したのはロクケラトプス、だが、ケラモンはターンに1回だけ破壊されない。ケラモンとロクケラトプスは再び互いの主君のところへと帰っていった。

 

 

「いけ!アーマゲモン!アタックだ!」

手札5⇨6

 

 

アーマゲモンがその奇妙な手足を活かして花火のところへ向かってくる。

 

 

「アーマゲモンの効果!コスト10以上のスピリットがアタックする時、相手は相手のスピリット1体を破壊しなければブロックができない……!」

「……!!」

 

 

アーマゲモンの効果、それは自分のアタックステップ時にコスト10以上のスピリットがアタックする度に相手は自分のスピリットを1体破壊しなければブロック宣言ができなくなるというもの、花火のライフが残り1の状況も相まって極めて厄介な効果だが、花火には今、疲労状態でブロック宣言すらできないロクケラトプスがいる。

 

花火は仕方なくロクケラトプスの名前を宣言することにする。

 

 

「くっ!ロクケラトプスを破壊……、ごめんな」

 

 

アーマゲモンの背部から放たれる雨のような爆撃にロクケラトプスは破壊されてしまう。その破壊力はオメガモンのガルルキャノンをも凌駕している。

 

これで花火がアグモン[2]でブロックすればオメガモン[2]は破壊を免れるが、……イコールのタクティクスは甘くはなかった。

 

 

「さらにここでフラッシュタイミング!アルティメットフレア!不足コストはケラモンから確保!!!」

手札6⇨5

リザーブ1⇨0

ケラモン(1⇨0)消滅

トラッシュ3⇨5

 

 

不足コストにより、維持コアを損失したケラモンは消滅してしまう。

 

 

「なに!?」

「アルティメットフレアはコアが2個以下のスピリット1体を破壊する!………アグモン[2]を破壊!」

 

 

アーマゲモンの口内から放たれる莫大なエネルギー弾がアグモンを襲う。アグモンがそれに耐えられるわけもない、儚くその命を散らしていった。

 

 

「くっ!……アグモン!!」

「この効果の発揮後、デッキを上から3枚オープンしてその中の系統「冥主」を持つ6色スピリットを1枚手札に加える」

オープンカード

【ケラモン】

【ディアボロモン】

【ディアボロモン】

 

 

オープンされたカードのうち、イコールは成長期スピリットのケラモンを手札に加えた。残ったディアボロモンのカードはそのままトラッシュへ送られる。

 

 

「さぁ!これで逃げ場はなくなった!!!」

手札5⇨6

 

「……くそ!頼む!オメガモン!!!」

 

 

花火の言葉にオメガモンは頷き、迫ってくるアーマゲモンに果敢に挑む。

 

オメガモンはガルルキャノンを数発放つが、アーマゲモンにはまるで効かない。オメガモンはアーマゲモンの足の間を掻い潜りながら勝機を模索する。そして、一瞬の隙をついて、懐から飛び出し、アーマゲモンの鼻先側の頭部をグレイソードで突き刺す。

 

だが、あくまで突き刺っただけ、まるで効果はない。振りほどこうともがくアーマゲモン、オメガモンはその揺れながら開いた口にガルルキャノンを数発叩き込む。流石に腹のなかで食らっては耐えられないと思われたが、ガルルキャノンは腹のなかでは少し光るだけで全く効果がなかった。

 

そしてアーマゲモンはそのまま口内からオメガモンにゼロ距離で特大のエネルギー弾をおみまいする。オメガモンは装甲を砕かれて吹き飛ばされた。

 

 

「オメガモンッ……!!!!…うわぁぁぁぁあ!!」

 

 

爆発の爆風に巻き込まれて花火もその場から吹き飛ばされてしまう。

 

爆音と爆煙が晴れるころ、オメガモンは仰向けで倒れていた。頼もしかったマントはボロボロになり、その機能を停止させるかのように瞳が黒くなっていく。

 

花火も最早立ち上がる気力すら残ってはいない。そんななかでただ1人イコールだけが不気味な笑みで微笑んでいた。

 

 

「はっはっはっは!終わったね!!!僕の勝ちだ!」

 

 

悔しいが立ち上がることのできない花火。オメガモンと一緒に戦ってもこのザマだ。弱い自分が本当に憎くてしょうがない。

 

 

「……だめだ、今回ばかりはもう勝てる気がしねぇ」

 

 

彼らしくもない弱音を吐く花火。それほどまでにイコールとアーマゲモンは驚異的だった。

 

だが、花火達が諦めかけてもまだここに諦めてはいないもの達がいた。

 

 

「………あきらめないで!!!!!」

 

 

それは下にいるしぃの声、その幼い声は透き通るようにデジタルの壁を通り抜けて上空にいる花火に伝わった。そしてその声の主はしぃだけではない。町の人たち全員がしぃと同じように花火の勝利を望むかのように声援を精一杯あげる。

 

その木霊する声は花火とオメガモンに再び奇跡を呼び起こす。花火はそのボロボロになった身体を震わせながらも立ち上がる。

 

 

「そ、そうだ………俺たちがここで諦めたら、今までの時間が全部台無しになっちまう。諦められない!俺には夢があるんだぁぁぁぁあ!!」

 

 

胸が張り裂けそうになるくらいの花火の怒声。それはオメガモンにも強く浸透していく。

 

 

「オメガモン!!!!お前はまだやれる!大丈夫だ!お前には俺が!いや俺たちがついている!………全力で打ち上げろぉぉぉお!」

「……ふふ、何を言っても無駄だ、よ?」

 

 

人々の声援の中、オメガモンは立ち上がった。装甲がひび割れながらもその眼光を再び輝かせ、ボロボロになったマントをなびかせながら、確かにそこに立ち上がる。受けた恩を仇で返すわけにはいかないと言わんばかりに。

 

 

「なぜだ、BP差は圧倒的にこっちの方が上のはず」

 

 

そして奇跡は起こる。この場にいるオメガモンと、花火達が昨日通った一族の祠が共鳴しだす。正確には祠の中で眠りについている【インペリアルドラモン パラディンモード】か、それが放つ一筋の光が真っ直ぐに導き、花火とオメガモンに新たなる力を与える。

 

 

「あの少年に力を貸すのか、インペリアルドラモンよ、」

 

 

祠の前でその光を見届けるかのように、しぃ達がじっちゃんと呼ぶ初老の男性が呟いた。

 

そしてオメガモンは限界を超えて、新たなる進化を果たす。

 

 

「………煌臨発揮!!!対象はオメガモン[2]!!!!…………世界が絶望にのまれる時、白き翼を纏いし戦士がそれを希望に変える!!オメガモン、モードチェンジ!!マーシフルモード!!!!」

オメガモンマーシフルモードLV3(7)BP27000

 

 

オメガモンは新たなる光を纏う。ボロボロになったマントは翼に変換され、亀裂が入った装甲は元に戻っていき、色が両腕もろとも白をベースとしたカラーリングへとチェンジしていく。

 

そして純白の装甲を煌めかせ、オメガモンマーシフルモードへと姿を変えた。

 

 

「な!?……オメガモンが、進化しただと!?」

「これがマーシフルモード、俺たちリアルワールドの人間が無駄じゃない証拠だ!」

 

 

イコールはマーシフルモードの凄まじいほどの威圧感にのまれる。まさか、アーマゲモンを召喚してここまで何かに恐れを抱くとは思ってもいなかった。

 

だが、自分にも負けられない理由がある。イコールは再びアーマゲモンに指示を送る。

 

 

「その程度で……!!いけ!アーマゲモン!アルティメットフレア!!!」

 

 

アーマゲモンはイコールの指示でマーシフルモードに向けて再び口内からアルティメットフレアを放つ。だが、マーシフルモードには全く通じなかった。マーシフルモードはビームサーベルと化したガルルキャノンで一閃、アルティメットフレアをいとも簡単に消滅させた。

 

ーそして次はマーシフルモードの攻撃だ。

 

 

「いけ!オメガモンマーシフルモード!!俺たちの全てをお前に乗せる!!!」

「ば、馬鹿な、この僕が、なぜ、なぜだ!!僕は世界を変えるために生まれたはずっ!!なのになぜ!!?」

「………当たり前だ!!世界を変えるのは世界中の人々全員の意思なんだ!!!お前だけで創り変えれるものじゃない!!!!!」

「………!!」

「その一振りは天下無敵!!!!虞怜刀一閃!!!!」

 

 

マーシフルモードは日本刀と化したグレイソードでアーマゲモンを一瞬で通り過ぎるように切り裂く。一刀両断されたアーマゲモンは静かにその身を消滅させていく。

 

アーマゲモンの敗北により、イコールの身体も消滅していく。不思議とそこには死に対する恐怖の感情はなく、只々自分が産み出された意味を考えていた。

 

そしてふと彼は自分の力で再び未来を見据える。漠然とした映像ではあるが、そこに広がるのは無限の可能性を感じさせる豊かな世界。とても破滅とは遠い世界。

 

イコールは気づく。自分は本当の意味で未来を変えるために生まれて来たのだと言うことに。花火の言葉にあった、世界中の人々全員の意思に自分が入っていたと言うことに、その証拠がオメガモンの進化、マーシフルモードだ。

 

 

「なるほど、これが僕の役目、未来は安泰か」

「!?」

 

 

イコールはその瞳をゆっくり閉じ、アーマゲモンと共に消滅していった。

 

 

「や、やった、勝った、勝ったぞぉぉぉお!」

 

 

喜ぶ花火と島の人々、イコールの消滅の影響で先ずはデジタル空間が消えていく。オメガモンマーシフルモードは花火を肩に乗せて緑豊かな下に降りた。

 

その後は元のオメガモンに再び姿を変えて、イコールの力での実体化もできなくなって、カードの姿に戻る。そしてまたいずこかえと消えていった。

 

 

「ありがとう!オメガモン!今度会う時は一緒に楽しいバトルをしようぜ!!」

 

 

その後、花火は島を救った英雄として大勢の人から胴上げされた。

 

ちなみに朝早い出来事であったこともあって、菜々子はただひたすらに熟睡していた。まったく、呑気なものである。

 

 

「す、すごい、しぃもあんなふうになりたい!!!」

 

 

高らかに胴上げされる花火の姿を見て、しぃは頭に着けられたゴーグルを輝かせながら言った。この小さな少女の憧れが後に新たなる物語へと繋がることは、まだ世界中の誰もが知らないことであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーそして次の物語が動きだすのは10年後の未来!!!!

 

 

 




終わりました。隙間時間でもいけるんじゃないかと思って書いて見たら割と時間をくってしまって、結局あまり勉強できませんでした。テストが8月にあるので、やはり続編は9月ごろの予定になりそうです。

そして花火、また頑張ってくれてありがとう。これで本当にしばらくは休んで羽を伸ばしていてね。


最後までお読みいただき誠にありがとうございました!
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