時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

100 / 120
第100話 新たなる兵器と艦娘

 浦田重工業が反乱を起こしてから数時間、避難民は陸の奥へと逃げた。避難場所へ逃げても避難民達は困惑していた。政府機関やマスコミは攻撃され、軍の鎮圧をものともせずに日本を蹂躙。深海棲艦も浦田重工業の命令に従っているのか、浦田重工業の私設軍隊だけは攻撃して来ない

 

 民間人だけでなく、避難誘導を行っていた消防や警察、そして憲兵隊も不安が漂って来た。特に憲兵隊は無線から軍の状況を断片的であるが、把握していた。圧倒的な強力な兵器とどんな攻撃も効かない深海棲艦に勝てるはずがない

 

 市民達の中には、そう考える者が少なからずいる。パニック状態に陥ってしまった。警察も憲兵隊も必死に押さえていたが、そう簡単に治まる訳がない

 

だが、高台や山に避難した人達は、信じられないものを見ていた

 

 反乱が起きてから数時間後、事態は再び急変した。無敵と思われていた浦田重工業の兵器が突然、機能しなくなった。浦田重工業の私設軍隊は撤退したが、それでも抵抗は続いている。ところが、何と深海棲艦が気が変わったのか、何の前触れもなく浦田重工業の私設軍隊を攻撃しだしたのだ

 

「一体、何が起こっている?」

 

 国会議事堂の爆撃から命からがら逃れた記者は、この光景に呆然とした。自前の双眼鏡を除くと見たことも無い女性のような人が、指揮を取っている。見たことも無いとは、これまで資料を見ていた深海棲艦に載っていない個体だった

 

 記者が見たのは南方棲鬼である。浦田重工業の施設に対して過剰に攻撃している事から、何かしらやらされたのだろう。推測であるため確証はないが、どうも深海棲艦は浦田重工業の味方ではないようだ。ただ、『異例』の戦艦ル級によってやられたが

 

 そして謎の少女と交戦した光景を見て、記者は更に困惑した。彼女達は何者だろう?確か数年前にある海軍士官が『艦娘計画』を発表したような……

 

記者は証拠を残すためにカメラを構えると奇妙な戦いにシャッターを押した

 

 

 

 そんな困惑を他所に2つの軍団は、東京湾で火花を散らしている。鳥海達は戦艦ル級改flagshipの支配下に置かれてしまった軽巡棲鬼と駆逐棲姫を主力とした水雷戦隊と戦っている数では深海棲艦の艦隊が勝るが、火力は鳥海と川内の方が上だ。鳥海と川内は、ビル内とは言え、1時間前に戦艦ル級改flagshipと交戦したためもあって、軽巡棲鬼と駆逐棲姫とやり合っている。魚雷と砲弾を躱しながら的確に当てている。不知火も重巡リ級を倒す程の能力を持っている。先ほど建造されたばかりの吹雪も負けじと戦っている。まだ射撃能力は低いが、複数の駆逐イ級と渡り合えているため、問題ないだろう

 

 鳥海達が戦っている場所から離れた所に2つの戦いが行われた。時雨は天龍と組んで軽巡棲姫との戦っている。武装や能力を見て軽巡だが、姫級だからだろう。火力が戦艦並の力を持っている。天龍も奮闘したが、まとももやり合っても負けるだけだ。そもそも、攻撃防御が違い過ぎる

 

 だが、天龍は悔しさよりも驚きの方が勝っていた。確かに軽巡棲姫は強い。だが、時雨は軽巡棲姫と対等に戦っているのだ。高速で接近して主砲を数発当てると、全速力で逃げる。隙を見て魚雷を発射する始末だ。しかも、魚雷は全て命中している。魚雷の威力は絶大だが、速度が遅いのが難点である。だが、時雨はまるで軽巡棲姫の行動を予測しているかのようだ。それどころか、軽巡棲姫が放つ降り注ぐ砲弾の雨を掻い潜りながら戦っている。まさか、躱しているのか?被弾してもいない

 

「舐メルナ!」

 

 軽巡棲姫は吠えた。洗脳されたとは言え、駆逐艦娘に一方的にやられては黙ってはいない。軽巡棲姫は接近して攻撃しようとしたが、時雨は魚雷攻撃でお見舞いした

 

「天龍さん、援護を!」

 

「あ、ああ……」

 

時雨の戦い方を見て天龍は舌を巻いた。まさか、ここまで強いとは……

 

改二や装備のお蔭ではない。それだけの修羅場を潜って来たらしい

 

 天龍は気を取り直すと執拗に時雨を攻撃する軽巡棲姫に突進。軽巡棲姫に向けて刀を振り下ろす。天龍龍田は砲雷撃の他に白兵戦も可能である。接近しなければならないが、彼女達が持つ武器の威力は強力だ

 

「グッ!」

 

「へへ……怖くて声も出ねぇかァ?オラオラ!」

 

軽巡棲姫は咄嗟に左手に装着していた艤装を盾にして防いだが、天龍は攻撃の手を緩めなかった

 

「来ルナァ!」

 

「断る!」

 

刀と偽装から火花が散る。だが、全て防げず天龍の猛攻に軽巡棲姫は距離を取るために後退した

 

「憎ラシヤ!」

 

軽巡棲姫は吐き捨てるように言ったが、彼女のマスクが割れ、右目が晒された。その眼は暗い蒼色であった。だが、闘志の炎は消えていない

 

「クソ、コイツをやり合っている暇はねぇのに!」

 

天龍が言っている事は正しい。もう一つの戦いは、蹂躙に等しかった

 

浦田結衣である戦艦ル級改flagshipは強敵だった。長門と金剛が組んで戦っているが、相手にかすり傷程度しか負わせていない。それどころか、身動きをほとんど行っておらず強力な火力を長門と金剛に向けて叩き込んでいる

 

金剛は高速戦艦である速度を活かして攻撃を躱していたが、どうもワザと手を抜いているらしい。その証拠に副砲で応戦しているのだ

 

 しかし、飽きて来たのだろう。主砲を2発放った。それも48cm主砲である。その2発とも金剛に命中。たちまち中破に陥ってしまった

 

「サア、長門。オ前は私にどのように楽しませてくれる?」

 

(……こんな奴にどう戦う!?)

 

敵は航空戦艦に大改装されたとは言え、欠点が無いように見える。そんな事が可能なのか?伊勢日向でも、ここまでの火力は無いだろう

 

 長門は知らないが、浦田結衣は戦艦レ級から力を吸収。そして、その能力を発揮するための薬品を撃ち込んだからである。戦艦レ級は深海棲艦の中でも特殊な個体だ。エネルギー消費は膨大だが、圧倒的な火力を搭載する事が出来る能力を持つ

 

 そこを浦田結衣に目を付けられた。流石に全ての能力を引き出すのは無理だが、それをカバーするだけの兵装はある

 

艦載機はF5UとF6A。もう1つあるが、まだ見せていない

 

(敵は油断している。しかし、時間の問題だ!)

 

 ただでさえ、敵の主砲の口径は48cmだ。しかも、射撃能力は未来技術を用いているせいか、精密である。あんなものを食らえば、どんなに重厚な装甲を纏った戦艦でも戦闘不能に陥ってしまう

 

 

 

 圧倒的な火力を前に長門は、追撃する戦艦ル級改flagshipから逃げながら弱点を模索していた。これでは勝負にならない

 

 

 

 東京湾内で海戦が行われているのを他所に、地上では戦闘は終結しつつあった。浦田の残存部隊は未だに抵抗していた。だが、そんな抵抗も徐々に少なくなっていたのである

 

「ここで負けてたまるか!軍国主義共を殺せ!」

 

 ある隊長は部下達に叱咤したが、部下達は従わなかった。それどころか、こちらに武器を向けている

 

「な、何を!」

 

「何がより良い世界を築くだ?こんな世界に連れてきて戦争してるだけではないですか?」

 

部下達の士気は既に下がっており、厭戦ムードが漂っていたのだ。自分達のボスである警備隊長も浦田社長も死んだ。自分達はどうなるんだ?武器弾薬だって無限ではない

 

「お、お前ら――」

 

部隊長は武器を下ろすよう命じたが、それよりも早く相手は拳銃の引き金を引いた

 

「なぁ……俺達、やってることは米帝や軍国主義と変わらないな」

 

「違う世界とは言え、日本人同士で殺し合いなんて……」

 

「お前は他所の世界出身者だったか。俺は家族に飯を食わせるために働いたつもりだけど、もうついていけない」

 

 マインドコントロールされた人達もここでようやく目が覚めたらしい。平行世界から来た人も現地で雇われた人も愚痴を吐いた

 

もう、戦争は沢山だ。たかが政府批判や理想のために血を流す価値なんてない。彼等は、未だに戦うよう叱咤する上官に向けて引き金を引いた。どうせ、部下達に責任を擦り付けて逃げるつもりだろう

 

 軍隊において上官を殺しというのは珍しくない。将校は絶対的権力ではないため、味方から殺される事も考えないといけない。当然、憲兵に捕まるのがオチだが、平時はともかく戦時になるとそうも言ってられない。何らかの拍子で殺されるからだ。旧日本軍でも考慮してる所はあったが、部隊長はそれを考慮していなかった。いや、会社と同じように部下が働き蟻のように従うと思ってるらしかった

 

 会社だとそれでいい。しかし、軍隊となると話が違う。何しろ、部下達は武器をもっているからだ

 

「ワームホールは壊されたらしいぞ」

 

「どうやって帰るんだよ……」

 

「ここに住んだら?向こうの世界では指名手配犯だろ?」

 

「理想は所詮、理想か……」

 

「まずは殺されないために白旗を振ろう」

 

地上では浦田部隊は次々と陸軍の地上部隊に対して降伏した

 

 

 

 しかし、やはり一部は抵抗が熾烈だった。何しろ、浦田社長も警備隊長もいないのだ。後継者だと名乗り、部下達を率いて戦う者もいる

 

「戦艦ル級改flagshipからの命令だ。この兵器を艦娘に攻撃しろとのことだ」

 

 部隊長は戦艦ル級改flagshipと連絡を取る事に成功。爆撃から逃れ無事であった武器をかき集めると未だに抵抗していた。偶然、提督が狙っていたものであった

 

そのため、戦車隊と502部隊との間で戦闘が始まった

 

しかし、こちらは人数が少ない。対策は戦車ミサイルによって五式中戦車が吹き飛ばされたことにより、距離を取らざるを得なかった

 

「ダメだ!近付けない!」

 

「どうしてだ!?こちらも人が少ないんだ!」

 

「アホか!これは試作戦車だぞ?五式戦車を失ったら後がなくなるわ!兵器を何だと思ってる!?」

 

 軍曹は抗議したが、戦車長も黙ってはいない。兵器はタダではない。そんなものを湯飲みの如く消耗する訳にはいかない。まして、やっと欧米と肩を並べるほどの戦車を開発出来たのだ。そんなのをここで失う訳にはいかない

 

 一方、物陰に隠れていた陸軍将校と提督と一緒についてきた五月雨、そしてあきつ丸を含む部隊は最終手段に出た

 

「よし、あきつ丸。いけるか?」

 

「将校殿、いつでもいけます!」

 

 あきつ丸だけでなく、戦闘妖精達も敬礼していた。こんな状況でも士気は高いらしい

 

「本当に大丈夫ですか?こんなばかでかい武器を持って?」

 

「大丈夫であります!」

 

ビルで包囲された時、浦田部隊から鹵獲した武器は2つ。そのうち1つは普通の人が持てそうな武器ではない

 

しかし、あきつ丸は軽々と持ってるのだ

 

「よし、行け!」

 

あきつ丸は戦闘妖精達と共に物陰から飛び出した

 

 

 

 浦田残存部隊である部隊長は目を疑った。陸軍服を着た一人の女性が現れた。彼女の地面の周りにラジコンほどの大きさの戦車が2、3台動いている

 

 しかし、部隊長はそんな奇妙な現象に驚いた訳ではない。彼女が手に持っている武器に驚いた

 

「お、おい……あれって……」

 

「ミニガンじゃねぇか!」

 

 浦田兵が驚愕するのも無理はない。6本の銃身を持つ電動式ガトリングガンであり、毎分2千〜4千発という単銃身機関銃では考えられない発射速度を持つ。しかし、最大で135kgという重量に加え、反動も凄まじいため個人で携行品は不可能である……そのはずだ!しかし、あきつ丸は黒い鉄の箱を背負いながら、M134を抱えているのだ!

 

あきつ丸がミニガンを浦田残存部隊に向けていることから残存部隊は慌てた

 

この女、本気だ!映画の真似をする間抜けではない!

 

「逃げろ!」

 

部隊長が叫ぶと同時にブーンという芝刈機のような音が辺りを鳴り響かせた

 

装甲車はたちまち蜂の巣のように穴が空いた。いや、それだけじゃない。車両だろうが、人がろうが球は貫通する。燃料タンクに多数の弾丸が命中し、ガソリンに引火、爆発炎上してるジープがいる

 

「応戦しろ!」

 

「無理です!蜂の巣になってしまいます!」

 

「ヘリを呼べ!早く!」

 

「ダメだ!撃墜されてしまう!」

 

 浦田兵は大混乱に陥った。まさか、旧軍が、しかも一人の女性がミニガン抱えて乱射しているなんて誰が想定しようか?

 

「何だよ、あれ?未来から来た殺人ロボットか?」

 

1人の人間が持てそうな武器ではないを一人の女性が抱えて反動をものともせず乱射してる。部隊長からして見れば悪夢そのものだ

 

不意に相手の発射音が鳴り止んだ。弾切れらしい

 

「あの頭のおかしい女を攻撃しろ!」

 

部隊長が叫んだが、今度は別方向から小人のような集団から攻撃を受けた

 

ミニガンをぶっ放している間に移動したらしい。こちらも手強く、しかも威力が高い。『ガリバーの旅行記』に出て来る小人が現れたかのような錯覚に陥った

 

「おい、ヘリは何処にいる?さっさとこっちに来い!」

 

 

 

 提督も五月雨は耳を塞ぎながらあきつ丸の乱射を物陰から見ていた。明石からは発射速度を落としているらしいが、それでも凄まじい火力だ。装甲車や車両がズタズタになったのだ。鹵獲した兵器は、ミニガンというらしい

 

相手は大混乱しているが、弾切れになるた反撃を受けた

 

しかし、あきつ丸は撃たれながらも平気で提督達が隠れている方へ向かった

 

 

 

「装填に時間がかかるからこれを使ってくれ」

 

「了解であります」

 

提督から別の武器を受け取るあきつ丸。使い方は手に取るように分かるらしい

 

「ヘリを呼んだらしい。気を付けろ」

 

「それまでは暴れるのであります」

 

重機関砲を受け取りながら将校の注意を聞くと再び前線に出た

 

浦田部隊から見たら悪夢そのものだ。あの女、また物騒なものを持ってきやがった!

 

引き金を引くと同時にドドド!と重い銃声が鳴り響いた。浦田部隊は反撃したが、あきつ丸は艦娘であるためちょっとやそっとでは倒れない。手榴弾やロケット弾で攻撃しようとした浦田兵もいたが、あきつ丸は即座に見破り優先的に攻撃した。ロケット弾は明後日の方向へ飛び、投げる直前で弾を食らい、手榴弾を落としたために被害があった集団までイル。戦闘妖精も厄介であきつ丸を攻撃しようとする部隊に対して妨害を執拗に行った

 

T-72戦車が出てきても全く怯まず、それどころか戦闘妖精が爆弾をこっそりと仕掛けられ大破する始末だ

 

「あいつ、何処かの特殊部隊か!?」

 

「クソ、旧軍にあんな化け物がいるなんて!」

 

「落ち着け!」

 

 あきつ丸が今度はM60を乱射したため、浦田兵は余計に大混乱した。構え方は素人ではないが、重機関銃を握ったのは初めてらしい。しかし、ミニガンといい反動をものともせず、おまけに射撃はいい。こちらの兵がバタバタと倒れる始末だ

 

そんな中、何処からやって来たのか?上空からヘリが飛来してきた

 

UH-60の重武装バージョンだろう。ロケット弾やマシンガンを装備したヘリがあきつ丸に向けて攻撃してきた

 

流石にあきつ丸は物陰に隠れて撤退したが、再装填し終えたミニガンを将校達から受けとると、再び躍り出るとミニガンをぶっ放した

 

ヘリも驚いただろう。まさか、ミニガンを一人の女性が携行してるとは思いもよら無かった。いや、無線から状況を聞いていたが、内容があまりに常識を逸脱していたためパイロットも半信半疑だったのだ

 

 しかし、何もしない訳にはいかない。ロケット弾やマシンガンで応戦しようとしたが、相手はミニガン。既に遅く、あっという間にズタズタになってしまい、操縦不能に陥り撃墜してしまった

 

「何なんだ、あいつ!」

 

 部隊長は愕然としていた。たった1人の人間によって蹂躙されている。このままでは、貴重な兵力がすり潰される

 

 部隊長は撤退しようかどうか指示を出そうとしたが、敵は戦車を出して来た。形状からして話から聞いていた五式中戦車だろう。部隊長はたった今、増援でやって来てくらたT-72に攻撃命令を出した。勝利の女神はこちらに微笑んでくれた!

 

「奴を攻撃しろ!」

 

 あきつ丸は先程の隠れ場所とは違う方向に駆け抜けたため、部隊長はあきつ丸に集中砲火を浴びせるよう命じた。五式中戦車がT-72に向けて砲撃を行ったが、砲弾はことごとく弾かれた

 

 戦車の攻撃防御共、違い過ぎたため仕方がなかった。T-72は走って逃げるあきつ丸に対して砲撃。あきつ丸が走っていた場所の付近に砲弾が着弾。爆発が起き、あきつ丸は宙を舞った

 

「やったぞ!」

 

 部隊長はガッツポーズをした。戦争映画の主人公気取りをした者を吹き飛ばしたのだ。あきつ丸が地面に落ち、動かなくなった。近くに居た浦田兵は戦死したか確認するために前進を行った。『一人だけの軍隊』の主人公のような人も流石に戦車に勝てなかったようだ

 

 五式戦車も後方にいた兵士達も慌てたらしく、盛んに攻撃して来た。しかし、銃弾くらいでT-72が撃破される事はない

 

「よし、奴等をぶっ殺せ!」

 

 部隊長は命じた途端、T-72が突然爆発した。上部の砲塔は吹っ飛び、残された車体は煙を上げている。余りの急展開に部隊長は思考停止に陥った。何が起こったか、状況を把握する前に、バットで殴られるような衝撃を受けて倒れ込んだ。502部隊の狙撃兵が、彼の脳天に弾丸を撃ち込んだのだ。彼は何が起こったのか、永遠に分からないままだろう

 

 

 

「よくやった。陸上戦闘でもここまでとは、心強い」

 

「ありがとうございます!」

 

 戦闘が終わり、将校はあきつ丸に感謝した。まさか、ここまで強いとは思わなかっただろう。

 

「なあ……俺達、まだほとんど何もしていないんだが。もう、あいつ1人でいいんじゃないかな?」

 

「敵兵からロケット砲を奪って攻撃するって……」

 

あきつ丸の奮闘に戦車長は、提督に向かって呆れるように聞いてきたが、彼も同意見だった。五月雨も艤装を持っていたが、陸上戦闘は得意ではない。彼も時雨のように地上戦闘するよう命じなかった。尤も、それを得意とする艦娘がいるので心強いのだが、まさか残存部隊とは言え、一人であそこまで戦うとは思わなかった

 

「あー、五月雨。すまん。俺の我儘につき合わされて」

 

「そんな事はないです。護衛任務と補給要員として頑張りましたから」

 

 提督の謝罪に五月雨は慌てて言った。五月雨は博士から彼を護衛するよう命じた。残存部隊がいるため、護衛は必要だ。彼は普通の人間だ。銃弾一発当たれば致命的だろう

 

……とは言え、ほとんどの敵はあきつ丸が片付けたのだが

 

「戦車砲食らって何で小破なんだ?」

 

「不思議でありますか?」

 

「いや、俺はもう何も言わない」

 

疑問を疑問で返された提督はため息をついた。兎に角、あの兵器を探さなくては……

 

 

 

 

 

「お前の目的はこれか」

 

「ああ、まだ健在で良かった」

 

 軍曹は提督の意図が分かった。投降した残存部隊から情報を聞き出した一同は、ある場所に向かった。そこは浦田重工業が保有する軍用車両の駐車場だった。ほとんど南方棲戦鬼の砲撃によって破壊されたが、運よく生き残っていた車両が3台あった

 

「よし、こいつを運び込むぞ。誰か運転してくれ」

 

「待ってくれ。トラック運転手はそんなにいる訳ないだろ?」

 

軍曹は部下に命じたが、誰もが困惑した。提督が欲していた兵器は、トラックであるため運転する者は少ない。戦車長は指摘したが、将校はこう提案した

 

「ならば、戦車の操縦士に任せればいい。頼めるか?」

 

「そりゃ、俺達の部下はトラックを運転できるが、人数が少ない。第一、俺達の戦車を運転する人間だっているだろうが。それを――」

 

 戦車長は途中で途切れた。何やら熱心な視線を感じたからである。恐る恐る振り向くとあきつ丸が目をキラキラさせながら戦車長に向けている。戦闘妖精達も同様だ

 

「……お前、トラックの運転できるだろう?」

 

「戦車しか運転出来ないのであります!」

 

「はぁ……好きにしろ」

 

 戦車長は頭を抱えながらそう命じた。あきつ丸が残存部隊を掃討し、貴重な戦車を守ってくれたのは確かだ

 

「提督、この兵器って使ったことあります?」

 

兵器を運搬する作業にかかる中、五月雨は提督に聞いていたが、帰って来た返事に五月雨は驚いた。初めてならなぜ、これを運ぶのか?

 

「簡単な事だ。化物戦艦を沈めるのに手段なんて選んでいる暇はない」

 

 

 

 

 

戦闘を終え、港に着いた一団。港では、人と荷物が増えていた

 

「親父、武蔵は?」

 

「ダメじゃ。奴は大量の毒を注入しおったから出撃は無理じゃ」

 

武蔵の顔色は未だに悪い。艤装は外され簡易毛布に横たわる武蔵に誰かが看病をしていた。ポニーテールをし、セーラー服のような服装をした女性だ

 

「抜けるまで待つしかあるまい」

 

「冗談……じゃない!あいつ……この武蔵によくも!」

 

「無理するな。普通ならとっくに死んでるわい!」

 

武蔵は博士の言葉を無視し動こうとしている。しかし、ふぐ毒のせいで立つことが出来ない。這って海に向かおうとする武蔵に近くに居た女性が取り押さえた

 

「ダメです!博士の言う通りに横にならないと!」

 

「離してくれ、大和!こんな屈辱、耐えられない!」

 

 艤装を外しても武蔵は力強い。弱っていても提督では抑えられない。しかし、大和と呼ばれる女性は、難なく抑えているのだ。博士の呼びかけに明石は鎮静剤を持ってくると暴れる武蔵に注射を行った

 

「ところで君は?」

 

「失礼しました」

 

女性は武蔵が大人しくなったのを確認すると不動の姿勢をして敬礼を行った

 

「大和型戦艦、一番艦、大和です」

 

「え?えー!」

 

大和の敬礼に提督は驚愕した。確かに見たことも無い女性がいたのだから、艦娘だろうと予測していたが、大和型戦艦だったとは……

 

そう言えば武蔵が大和って言っていたが、あの大和だったとは

 

「艤装はどうした?」

 

「明石に預けてもらっています」

 

「そうか……じゃなくて!な、何で?資源は――」

 

「お前さんが変な兵器を探している間、元帥と連絡取って必要な物資を持ってくるよう頼んだからじゃ」

 

博士は淡々と説明した

 

 

 

提督達が兵器を探している間、博士は無線で臨時司令部にいる元帥と連絡を取った。状況を聞いた元帥は直ぐに必要物資を手配したのだ

 

まだ被害に合っていない倉庫や貯蔵施設から、ありったけの物資をかき集めると爆撃機である深山に詰め込んで送り込んだ。着陸する暇は無いので、落下傘による投下で行われた。博士は明石と共に再び建造ユニットを稼働を実施

 

大和と伊号潜水艦である艦娘が建造されたとの事だ。今までの説明を聞いた彼は、周りを見渡した。502部隊の軍医と明石は負傷した艦娘に必死に看護していた

 

赤城と加賀、そして摩耶も無事帰還したらしく、補給を行っていた

 

 

 

「伊58と伊168は鳥海達の援護するよう出撃させた」

 

「させた?よく応じたな」

 

「まるゆだけでは心細いし、アイツに勝てると思っておるのか?」

 

 博士の指摘に提督は何も言えない。確かにまるゆだけでは心細い。だが、建造された彼女達を見れなかった

 

提督は今までの状況を整理すると早速、行動に移った

 

「大和、戦えるか?」

 

「え……まさか、出撃ですか!」

 

大和が感嘆の声を上げた。出撃するのが嬉しくてたまらないらしい。何があったのか、知らないが

 

「どうした?」

 

「この大和を使って頂けるなんて!武蔵の敵討ちも出来ます!大和も本当に嬉しいです!」

 

 提督は大和が顔をキラキラさせている事に首を傾げた。普通なら怒りに満ちているはずのだが

 

 感情を上手い事、コントロールしているのか?それとも、出撃する事が本当に嬉しいのか?提督は困惑したが、まさかと思い、思い切って聞いた

 

「おい、親父。まさか、今の状況を説明していないのか!?」

 

「……スマン。ワシも軍医も明石の手伝いに精一杯でな。ゴーヤには友軍支援で行け、と言っただけで」

 

「……なんて事だ」

 

提督は頭を抱えたが、ここで押し問答しても意味がない

 

「大和、今から話す事をよく聞け!」

 

提督は淡々と現在の状況を簡潔明瞭に話し始めた。目を輝かせた大和は、次第に顔から消え、話し終えても呆然としていた

 

「武蔵は深海棲艦にやられたって!」

 

「正確には違う」

 

状況を理解した大和は、怒りで身体が震えていた。まさかここまで酷い状況とは!

 

「赤城、加賀……出撃出来るか?」

 

「おいおい、少しは気を遣えよ!」

 

提督の問いに、近くに居た摩耶は抗議した。自分達は先ほどまで戦ったのだ。まだ、整備が終わっていない。しかし、赤城と摩耶は摩耶とは違う答えをした

 

「艦載機の補充は済ませました。艤装に問題がありますが、無視できます」

 

「こちらも同様です」

 

「編成は?」

 

摩耶が呆気にとられる間も両者の間でやり取りが行われている

 

「艦攻による攻撃を重視で行う予定です」

 

「ダメだ。重い魚雷だと格好の的だ。全て艦爆にしろ。但し艦戦を多く積め。制空権は取らないとだめだ。無力化、もしくは時雨達の援護をするんだ」

 

「分かりました」

 

赤城は艦載機を素早く整理する。彼女に従えている妖精も黙々と作業に取り掛かる

 

「加賀、あの円盤航空機を倒せるか?」

 

「大丈夫です。ちょっと驚きはしましたが、円盤航空機の動きは覚えました」

 

提督の質問に加賀は、提督に向けて真っ直ぐ見つめると力強く返事した。妖精搭乗員も同様だ。降りる気はないようだ

 

「いつでも出撃出来ます。ご命令を」

 

「ちょ、ちょっと待てよ。提督、あたし達を酷使させ過ぎだ!赤城も加賀も疲れているぜ?さっき帰ったばっかりだ。奴を後から追跡し――」

 

しかし、摩耶はその後の言葉が出なかった。睨まれたからだ。空母組の赤城と加賀が、摩耶を睨んでいる。提督は2人に目をやったが、再び摩耶を見た

 

「摩耶、今はそうも言ってられない。逃がす?そんな事は考えていない!時雨も長門も戦っているのに、弱音を吐くな!」

 

「長門さんはともかく、時雨は改二なんだよ!あたし達より経験が豊富なんだ!」

 

「そうだ、確かに時雨は強い。しかし、ここで負けたら時雨は立ち直れないだろう。未来は変えられないと悟った時、アイツは壊れてしまう」

 

実はその兆候は何度かあった。時雨が刑務所で拷問された時、提督と創造主が自分達に勝利をもたらすものだと。だから、非道な拷問に対して奇跡的に耐え抜いた。その後の無人機と戦闘ヘリとの戦いもやってのけた。だが、岐阜基地に逃れられたとき、時雨の前で弱音を吐いてしまった。そのお蔭で時雨は……

 

「だから、戦力がある限り戦う。資源も時間も有限。長門達が敗れる可能性が高い。散々、振り回されたが、もう容赦はしない。だから、摩耶。これだけは言う」

 

提督は力強く言った

 

「弾も燃料もくれてやる!その代わり、敵を倒せ!それだけだ」

 

摩耶はポカンとした。てっきり罵倒されるか、艦娘に責任転嫁させられると思っていたが……

 

「摩耶さん、私のお気遣い感謝します。しかし、私達は一航戦の誇りがあるのです」

 

「ここは譲れません。まして、航空戦艦の艦載機によって敗れるなんて……思い出しただけで頭にきました」

 

 赤城と加賀は既に戦う気でいる。どうやら、浦田結衣が放たれた艦載機によって、彼女達の闘志に火がつけたようだ。加賀は顔に出していないが、内心ははらわたが煮えくり返っているようだ

 

 たかが航空戦艦に搭載されている少数の艦載機に多数の空母艦載機が敗れるなんて空母組から見れば面目丸潰れである

 

「い、いや。そんなつもりで言った訳じゃ……」

 

摩耶は慌てて言ったが、幸い提督は気にするような人ではないらしい

 

「奴の動きを封じたいが、方法が限られている。相手が東京湾から出れば、補給艦である補給ワ級を呼び寄せる。大量にな。それに対してこちらの武器弾薬は有限。この一回の海戦分しかない」

 

「そりゃ、そうだけど……」

 

摩耶は困惑した。皆、やる気だ。負傷した艦娘も立ち直って出撃準備する気でいる

 

「だけど……どうやって倒すんだ?」

 

「手っ取り早いのは大和が持つ主砲弾を多く食らわせる事だ。奴はH級戦艦をモデルにしている。46cm主砲弾を食らえば流石のアイツでもタダでは済まないだろう」

 

ここまで聞いた大和は海に向かおうとした。己が出撃するのだから

 

「待て、勝手に行こうとするな。奴はあんな巨艦でも30ノット以上も出す高速戦艦だ。お前の姿を確認したら、奴は逃げるぞ。恐らく、正々堂々と戦いはしないだろう」

 

「しかし!」

 

「聞いてくれ。ここからは正念場だ。赤城、加賀やれるな?摩耶と一緒に出撃だ。沖合に出たら、指示があるまで待機だ。気付かれる以外はな」

 

赤城と加賀は頷くと直ぐに出撃した。摩耶は赤城と加賀の後を追うように出撃する

 

「親父、EMP兵器は?」

 

「飛行場にて待機しておるわい」

 

「飛ばすよう命じてくれ。あの兵器を使う」

 

その時、明石は会話を聞いていたのだろう。作業の手を止め、口を挟んだ

 

「待って下さい。イージス仕様の軽巡ツ級はともかく……レーダーを破壊しても相手は強力な艦砲を持っているんですよ?」

 

「命中率を下げられるかも知れない。何もしないよりかはマシだろ」

 

電磁パルスは電子機器のみを破壊できる。レーダーや火器管制システムを破壊出来るかも知れない

 

自分の父が無線連絡している隙に提督は、龍田に近寄った

 

「龍田、ちょっといいか?」

 

「な~に、提督?」

 

 龍田は甘ったるい声で聞き返した。あちこち包帯を巻かれ痛々しいが、彼女は笑顔だ。但し、目は笑っていないが

 

「怪我の養生中で悪いが、頼みたい事がある」

 

 提督は龍田にある作戦を説明した。それは戦艦ル級改flagsipを高確率で倒せる手段だった。しかし、リスクが高い。龍田は提督が話している間、口を挟まなかった。説明が終わっても龍田は、黙ったままだが、ようやく口を開いた

 

「提督、本当にそれしかないの?」

 

「機雷のようなものがあればいいのだが、手元にないし、数が揃えるのに時間を要す。浦田結衣は狂っているが、強さは本物だ。従来の戦術では勝つことは難しい」

 

「意地悪で聞いていないわ。最初は提督の案には反対だったけど、今は違う」

 

フフフといたずらに笑う龍田。提督に呆れているように見えるが、内心ではないだろう。龍田の右手には、修復して貰った薙刀を手に持っていたが、握っている手に力が入っているのを提督は見たからだ

 

「分かった。準備が出来次第、出撃する。俺は鹵獲した地対艦ミサイルの発射準備に入る」

 

提督は龍田との会話を終えると、鹵獲した地対艦ミサイルに向かった

 

使うのは初めてだが、未来の記録に合った地対艦ミサイルが、抵抗を続ける武装集団から奪う事に成功した

 

後は使うタイミングだ

 

 




大和型戦艦の一番艦、大和登場

早速、出撃しようとするが……

M134ミニガンは重量的にも反動的にも、人間一人で抱えて発砲するなど到底不可能なシロモノ
しかし、逆を言えば人外で力持ちであれば『いい』はず
ターミネーターのT-800やバイオハザードのネメシスは反動や重量をものともせず射撃出来たので艦娘も可能()のはず!

ガトリング砲は連射力、火力ともにすさまじい武器。防空兵器であるCIWSは(M61バルカン砲)にも使われている
ジパングにおいてドーントレス一機をろくに落とせない描写があるが、恐らく訓練弾混ざっていたのでしょう
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。