時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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来月下旬にイベントがあるみたいですね
今年の年末は大変だ……


第101話 共闘

 時雨は天龍と共闘しながら軽巡棲姫を相手に戦っている。砲撃戦を展開して何とか持ちこたえている。時雨は相手の砲撃を躱しながら、的確に当てている。しかし、経験が少ない天龍は息切れをしていた。相手の砲は6インチであるため、一撃による撃沈はないが、ダメージは大きい。既に2発も食らっており、天龍は中破している

 

「天龍さん!」

 

「大丈夫だ!こんな所でやられる天龍じゃねぇ!」

 

 攻撃を受け膝をついている天龍。威勢はいいものの、肩を押さえ頭から血を流している。経験の差はどうしても埋められない。いや、周りも同じようなものだ。鳥海や川内は奮闘しているものの、軽巡棲鬼と駆逐棲姫による猛攻に押されている。数は減ってはいるが、軽巡棲鬼と駆逐棲姫が手強い。特に空母ヲ級が厄介だ。絶えず航空攻撃して来るため、それも警戒しないといけない。吹雪も不知火も中破に陥っている。そして、何よりもほとんどの者は疲弊している。初実戦のため、仕方ないかも知れない

 

「クソ……こんな所でくたばってたまるかよ」

 

 天龍は小声で吐き捨てるように呟いたが、中々好転しない。長門と金剛は戦艦ル級改flagshipと戦っているが、2対1にも拘わらず、長門と金剛が苦戦している。あの巨大な主砲と正確な射撃能力がネックらしい。助けに生きたいが、下級である深海棲艦が邪魔だ。軽巡棲姫が身構えると同時に突進して来た

 

「貴方ノ……帰リ道ハ……無イノ……」

 

 軽巡棲姫が突進する。時雨は天龍を庇うように蹲っている天龍の前に躍り出る。相手は砲を構えながら突進して来る。時雨も直ぐに砲戦準備に入った。魚雷も発射する事も考えないといけない

 

戦艦ル級改flagship用として温存していたが、このままでは天龍がやられてしまう

 

「時雨、俺に構うな!」

 

「ダメだ!折角、仲間に会ったんだ!天竜さんは沈んではいけない!」

 

 天龍は逃げるようきつく言ったが、時雨は拒否した。未来の戦争で天龍は、性格は変わってしまった。そんな事はさせない!

 

 軽巡棲姫が主砲を発射する直前、木枯らしのような音が聞こえた。次の瞬間、軽巡棲姫が爆発した

 

「砲撃!誰が?」

 

軽巡棲姫は撃沈しなかったものの、中破してしまった。軽巡棲姫は距離を取りどこから攻撃して来たか、辺りを見渡した

 

「あの爆発は戦艦の主砲……誰が?」

 

 時雨も素早く辺りを見渡した。金剛と長門ではない。霧島は養生中であり、武蔵もまだ復活していない

 

では、誰か?

 

時雨は主砲を発射した相手を見て唖然とした。予想もしていていなかったからだ

 

「全ク、貴様等ト裏切リ者ガ共倒レスレバイイモノヲ、面倒クサイ事態ヲ引キ起コスナンテ」

 

「え……ええ?」

 

天龍も時雨と同様に唖然とした。しかし、天龍の場合は、小刻みに震えている。相手が放つ威圧感と殺気によって

 

「何で……何で戦艦棲姫が?」

 

 

 

「何で?」

 

時雨は困惑した。ワームホールを開通しに行った戦艦棲姫がこちらに向かっていた。何しに来たのか?

 

時雨は身構えたが、戦艦棲姫は呆れるように横目で睨んだ

 

「ソウ身構エルナ、時雨。用ガアルノハ、裏切リ者ダケダ」

 

時雨は戦艦棲姫が何を言ってるのか、分からなかった。何故、ここにいるのか?

 

 不意に砲声と爆発音が止んだ。浦田結衣が攻撃を中断したらしい。長門も金剛も唖然としている。鳥海と川内は困惑し、不知火は肩で息をしながら戦艦棲姫を凝視していた

 

「な、何で……?」

 

吹雪は呟いたが、そんな所を浦田結衣が叫んだ

 

「ヘー。生キテいたのか?何しに、来たんだ?」

 

嘲笑う戦艦ル級改flagshipだが、戦艦棲姫は冷たい目で浦田結衣を見つめていた

 

「何故、裏切ッタ?」

 

「裏切る?裏切ったつもりはないわ」

 

 浦田結衣は荒い息をしている長門と中破しながらも困惑をしている金剛を他所に戦艦棲姫を見た。浦田結衣は小破どころか、かすり傷もついていない。あれだけ、撃ち込んだのにピンピンしている

 

自己修復能力が高いのか、それとも装甲が厚いのか?

 

「裏切った覚えはない。ただ、お前は私の提案を一蹴した。それだけだ」

 

 嘲笑う浦田結衣に戦艦棲姫はため息をついた。時雨は双方を交互に見た。浦田結衣は深海棲艦化してるとは言え、人間だ。深海棲艦である戦艦棲姫はどう思っているのだろう

 

「ハァ……ナラ、沈ミナサイ!」

 

 戦艦棲姫はため息をついてが、それも束の間。命令と共に怪物艤装に取り付けられた砲塔全てが火を噴いた。浦田結衣はすぐに回避し応戦したが、照準を合わせていなかったのだろう。砲弾は明後日の方向に飛んでいき、別の場所で巨大な水柱が上がった

 

「どういうつもりだ?」

 

 戦艦ル級改flagshipは睨んだが、戦艦棲姫は時雨に目を向けた。天龍は慌てたが、それよりも早く戦艦棲姫は口を開いた

 

「人間ハ身勝手ダナ。コレダカラ関リタクナカッタガ、オ前ヲ産ンダノハ私ダ。ダカラ沈ム邪魔ハスルナ」

 

「「え?」」

 

天龍は啞然としたが、時雨は分かっていた。戦艦棲姫もケリをつけにきたのだ

 

「私ハ奴ヲ倒ス。タダ、力ヲ振リ回シ自分勝手ナ世界ヲ創ロウト言ウナラ、深海棲艦ガ許サナイ」

 

「フン。人間や艦娘が嫌いではなかったのか?」

 

互いに冷笑し睨み合っているが、結衣は目は笑っていない

 

「お前達は……私達を助けるために――」

 

「ソレハモット、アリ得ナイナ。人類ガ産ミ出シタ人形ナンゾト馴レ合ウ程、落チブレテイナイ」

 

「に、人形って…酷い言い方ネ」

 

 攻撃の手が止み、その隙に駆けつけた長門と金剛は唖然としていた。はじめてみる深海棲艦のボスの決断に長門は期待を込めて聞いたが、あっさりと返された

 

金剛も戦艦棲姫の指摘に不満だった。自分達を人形と罵るなんて

 

「私達ハオ前達ヲ駆逐スル。貴様等ト仲良クスルナゾ論外ダ。ダガ、馴レ合イハ無クテモ共闘ハアリ得ル」

 

「共闘…」

 

 時雨は呟いた。共闘……それは互いにの者が友好的でないにしても同じ敵を相手にするというもの。僅かな望みであるが、艦娘と深海棲艦が互いに手を取り合う事が出来ればと思う事がある。しかし、現実は非情である。深海棲艦は人間を嫌っている。絶滅させる意図は無いが、関わることを極端に嫌っている

 

「何であんた達まで嫌われなきゃならないんだよ!」

 

「肌の色や民族くらいで、いがみ合う人間が、私達である深海棲艦と仲良く成れる訳ないじゃない、だからでしょ?」

 

 戦艦棲姫が言うよりも先に時雨は天龍の疑問に答えた。あっさりと、しかも危ない答えを口にしたことにより全員がギョッとした。戦艦棲姫は眉をひそめたが

 

「貴様……ドコデソンナ言葉ヲ?」

 

「そんな事は後だ。僕だって仲間を守るために戦う。君もそうでしょ?」

 

「随分ト上カラ目線ダナ、小娘。マア、イイ。ソノ心意気ニ褒メテヤル」

 

 長門たちは啞然とした。時雨が深海棲姫と話し合っている。友人のように話しているんではない。張り合っているのだ

 

「サア、オ前達ハドウスル?小娘ト私ハ戦ウ選択ヲシタ。オ前達ハ?」

 

「分かった。一時休戦だ」

 

「飲ミ込ミガ早クテ助カル」

 

 長門は戦艦棲姫を睨みながらも返事をした。選択肢はない。今の自分達では敵を倒せない

 

「感動的だな。『敵の敵は味方』という奴か?そう言った王子は自らの臣民に裏切られて、斬首されたのを知らないのか?」

 

「ソンナ呑気ナ事ヲ言ッテル場合カ?」

 

「ああ、艦載機がこちらに向かってる。お前の仲間か?だが、探知範囲内には、下級の深海棲艦は護衛要塞以外はいない。ボスが単体に挑むのか?」

 

「操ラレテルノガオチダ。ソレニ2人ダケデ十分」

 

戦艦棲姫は笑ったが、内心は違った。本当はもっとなぶり殺したかった。だが、テレパシーを使って洗脳と言う厄介な能力のお蔭で接近できない。空母棲鬼が南方棲戦鬼の艦載機の生き残りを回収して分析した結果、ある事が分かった。そのため、接近できたのだが、こちらに不利なのは変わりない。仲間は置いてきた。港湾棲姫は回復しておらず、北方棲姫が面倒を見ている。離島棲鬼は彼女達の護衛だ。仲間は呼び寄せたが、補給の事もあり、時間がかかる

 

 一方、浦田結衣は既に把握していた。イージス仕様の軽巡ツ級から送られるデータを確認した。多数の機体が来ている

 

「ミサイル、全て撃テ!」

 

相手が誰だか分かる。昔、戦艦棲姫自身が言っていた仲間の事を。恐らく、空母棲鬼だ!

 

 

 浦田結衣の推測通り、東京湾の湾口にて空母棲鬼が航行していた。彼女は浦田結衣の能力を観察していた。恐らく、テレパシーで戦艦棲姫を洗脳したらしいが、鬼や姫だけ操るためのある行動をしていることに気がついた。あの女、鬼や姫だけには触れてから操っている。下級の深海棲艦なら一定範囲にいれば、あいつらの意のままだ。姫や鬼がいなければ範囲外に出ても問題はない。しかし姫や鬼がいるため、範囲外から出さないだろう。干渉されて正気に戻る可能性がある。つまり、触れなければ問題ないと言うことだ

 

 推測だが、恐らく高確率で当たっているだろう。でなければ、南方棲戦鬼は浦田結衣の支配下に置かれているはずだ。まだ、大型艦を操れる能力がないと言うことだ

 

しかし、時間の問題だろう

 

「何度デモ…何度デモ…沈ンデイケ……!」

 

 指先から艦載機を多数召喚させると鈴の戦艦ル級改flagshipに向けて飛ばした。狙いは、裏切り戦艦ル級改flagshipではなく、あの厄介な軽巡ツ級と空母ヲ級である

 

 艦戦と艦爆と艦攻を多数繰り出した空母棲鬼。搭載の数は空母ヲ級よりも多い。空母ヲ級は浦田結衣の指示に従って艦載機を発艦、迎撃した。イージス仕様の軽巡ツ級も艦対空ミサイルを発射して撃墜した。だが、どんなに落としてもやって来る。150機近く繰り出したらしい。物量で推し量る気だ

 

 誤爆を懸念して距離を置き、遠距離から撃ってくる長門達の砲弾や航空攻撃に対して浦田結衣と空母ヲ級、そしてイージス仕様の軽巡ツ級は回避行動したが、全てかわせるものではない。空母ヲ級は艦載機を繰り出したが、全く歯が立たない。空母棲姫の艦載機の方が強力だ。瞬く間に全て撃ち落された。対空ミサイルを使って撃ち落したが、相手は全く怯まない。空母組の艦娘とは違う猛攻。流石の浦田結衣も苦戦した

 

浦田結衣はF5Uを発艦させて迎撃する事を諦めた。敵の数が多過ぎる事もあるが、艦載機が貴重なのだ。元々、戦艦を無理矢理、航空機を乗せたためでもある。それは数が少ない。相手に航空戦力はないのなら別だが、今は違う。如何にF5Uが強かろうと、数に押されてしまう。一航戦である空母組の艦載機に勝てたのは、運動能力と強力な武装のお蔭である。しかし、空母棲鬼の艦載機は、艦娘の……いや、人間の兵器である空母運用とは異なる方法で戦っている。戦力不合理という概念がないのか、多数撃ち落しても引き下がろうともしない。これでは分が悪い。それなら、対空砲火を打ち上げた方が得だ

 

 苛烈な対空砲火をくぐり抜けた空母棲鬼の艦載機は戦艦ル級改flagshipには目を暮れずに空母ヲ級とイージス仕様の軽巡ツ級に殺到した

 

「ソンナ兵器デ引キ下ガル私デハナイ。敵機直上……急降下!」

 

 艦載機が多数落とされても空母棲鬼は全く引き下がらない。消耗率8割だが、撤退の指示は出していない。普通の海軍軍人なら唖然としているだろう。消耗すれば後が無くなり、今後の作戦に大きく影響する。航空兵力は寄せ集めのようにはいかない

 

 しかし、それは人間の考え方や運用方法だ。深海棲艦が使う艦載機なぞ艦娘とは違う方法で補充が出来るし、それよりも彼女に引き下がるという概念はない。倫理でもなく、単純な戦い方である

 

 空母ヲ級は雷撃と急降下爆撃を多数受けて大破。イージス仕様の軽巡ツ級は、単装速射砲とCIWSで応戦したが、数が多過ぎて全て迎撃しきれない。爆撃を受けて沈みはしなかったものの、大破してしまった。元々、イージス艦は装甲なんてない。強力な迎撃能力があるため、不必要な装甲は外している。逆に言うと、弾薬が尽きるとただの高性能レーダー艦となてしまう。犠牲は払ったものの、厄介な防空艦と空母ヲ級を空母棲鬼は仕留めたのだ。後の下級の深海棲艦は寄せ集めだ。こちらが下さなくても艦娘が倒してくれるだろう

 

 

 

「チッ!あの野郎」

 

 浦田結衣は、虎の子である軽巡ツ級を見て舌打ちした。自前の艦載機であるF5Uを温存しておいて正解だと思った。仮に出しても貴重な艦載機が消耗するだけである。それなら、別の方法でやるしかない

 

 彼女は軽巡ツ級の現戦力を見る。レーダーダウン、イージスシステム喪失、艦対空ミサイルであるシースパロー及びスタンダードミサイル残存なし。ECM装置喪失。対潜ロケットであるアスロックはあるが、対潜ヘリであるSH-60は爆撃で破壊されたため使えなくなった。対艦ミサイルと127mm単装速射砲は無事だが、火器管制がイカれているため精密性に問題がある

 

空母ヲ級は中破してしまい、ぐったりとしている。もう、こいつは戦力にもならない

 

(仲間なのに容赦しない……成る程、戦艦棲姫の言うとおり、人間の思考能力とは違うようだ)

 

 浦田結衣は戦艦棲姫の戦い方に感服した。艦娘ならそんな事はしないだろう。人質になろうが、友軍である仲間を見捨てたりはしない。しかし、深海棲艦は容赦しない。どうも、下級の深海棲艦は量産出来るせいか、それともどんな相手だろうが仲間を盾にしても屈しないというスタンスなのか?しかし、姫や鬼級は違うらしく仲間意識があるらしい。気にはなるが、どうせ話してくれないだろう

 

いづれにしても、浦田結衣にしてはどうでも良かった

 

「よくもエアカバーであるヲ破してくれたな!ダガ、お前ノ仲間ノ空母モ道連レダ!死ニヤガレ!」

 

 実は対空戦闘の際に結衣はこっそりとF5Uフライングパンケーキを発艦させた。空母ヲ級の艦載機と一緒にどさくさに紛れていたのだ。勿論、迎撃のためではない。敵の空母を探るためである。飛んできた方向を探った所、空母棲鬼の位置を確認した。空母棲鬼の艦載機によって迎撃されてしまったが、位置さえ分かればこっちのものだ

 

「ツ級、ハープーン全発射だ!こっちも発射する!」

 

「不味い!連絡して逃げるよう言って!」

 

浦田結衣が何をしているのか分かった。しかし、いつからだろう?浦田結衣である戦艦ル級改flagshipがミサイルを搭載し発射する姿は初めて見た。未来の戦争でさえも搭載していない。イージス仕様の軽巡ツ級とジェット機搭載の空母ヲ級がたくさんいたため、不要だと判断したのだろう。時雨がタイムスリップしたお陰で今のままでは不味いと判断したらしい。深海棲艦のボスである空母を沈める気だ

 

 しかし、未来の世界ならともかく、現在の状況だと現代兵器の事を知ってるのは時雨だけだ。現代兵器の装備をしていた戦艦アイオワはいない。しかも、隠し持っていたらしく、戦艦棲姫は『何を言ってるんだ?』とばかりに呆れていた。戦艦棲姫は現代兵器の恐ろしさなんてしらないのも無理もない。コンクリート詰めにされたため、目撃すらしていないのだ

 

 そうしている間も、大破した軽巡ツ級から8発と戦艦ル級改flagshipから放たれる1発の対艦ミサイルであるハープーンが発射された

 

「ナッ!空母棲鬼、逃ゲロ!奴ノ攻撃ガオ前ノ方ヘ行ッタゾ!」

 

 ようやく、危険性を理解したらしく戦艦棲鬼は仲間に緊急連絡をした。しかし、残念ながら通信を受け取った空母棲鬼は内容が分からなかった。これだけ遠く離れた距離をどうやって攻撃するのか?

 

 だが、遠くから何かが高速でこちらに接近するのを確認すると回避行動に移った。ロケットのようなものが近づいている……

 

 空母棲鬼は逃げようとしたが、ミサイル防御である防空艦は存在しない。対空砲火で防げるものではない

 

 そのため、計9発の対艦ミサイルを諸に受けてしまった。対艦ミサイル1発だけでは沈みはしないが、流石に多数受けてしまったらタダでは済まない。爆発炎上し、空母棲鬼は炎に包まれてしまった

 

そんな状況でも彼女は悲鳴を上げたりしなかった

 

「コレデ勝ッタト……思ッテイルノカ?カワイイナァ……」

 

余裕を持ったかのような言葉を最後に空母棲鬼は撃沈してしまった。まるで、後悔はないというふうに……

 

 

 

 仲間から空母棲鬼の撃沈を聞いて戦艦棲姫は突進した。長門達も続くが、金剛はともかく、長門は低速なので遅れる事となった。

 

「どいて!」

 

 執拗に邪魔する軽巡棲姫に魚雷攻撃をして大破させ航行不能にしたことに成功した時雨は、後ろを振り返らずに突進した

 

 天龍が何か言ってるが、制止だろう。しかし、時雨は無視した。今はアイツを倒さないといけない

 

今は戦艦棲姫と戦艦ル級改flagshipとの間で壮絶な砲撃戦が繰り広げられていた

 

「空母棲鬼トソノ仲間ノ仇ダ!」

 

「 お前を相手スル気ハナイ。サッサト失セロ!」

 

 掛け声と共に浦田結衣は一斉射撃を行った。浦田結衣の命中率は高く、流石の戦艦棲姫も全て食らったら撃沈していただろう。しかし、随伴していた護衛要塞達が盾となって立ち阻んだ。大爆発が起き、巨大な火の玉が出現したが、収まった時は何も無かった。巨大な砲弾は、後が残らない程、木端微塵に吹き飛ばしたのだ

 

「これで盾は無くなったな」

 

「貴様モナ!」

 

 両者との間で高速で移動しながら砲撃戦を繰り広げる。金剛も煽られる形で支援砲撃しているが、相手は巧みに躱している。それどころか、厄介な事が起きた

 

浦田結衣は3機の航空機を放ったのだ

 

円盤航空機(F5U)2機だが、戦闘機だ。爆撃仕様の円盤航空機は発艦していない。よって、こちらは大した脅威ではない。もう1機に問題があった。それは、SH-60という対潜ヘリだ

 

「空母ヲ級がいなくても、制空権は私の物だ!」

 

 

 

「不味い!天龍さん、アレを撃ち落して!」

 

「え?でも、あんなのを撃ち落しても――」

 

「いいから撃ち落して!敵は見せびらかすために飛ばしているんじゃない!」

 

時雨の必死の言葉に天龍は引き下がった。軽巡なのに駆逐艦に引っ張られてるような気がしたからだ

 

 普段なら天龍もプライドがあり、口論になっているだろう。しかし、時雨から放つ殺気と威圧に天龍は、拒否出来なかった

 

(時雨……お前はどんな戦いを?)

 

 時雨は一瞥すると浦田結衣に突進する。天龍も後を追うように動き出したが、数秒後、戦艦ル級改flagshipが何をしたのか初めて分かった

 

「まさか……弾着観測のための艦載機なのか!」

 

 

 

 戦艦棲姫は距離を取った。浦田結衣は戦艦棲姫を触れようと突進するが、戦艦棲姫は紙一重で躱して砲で反撃した

 

「ドウシタ?逃げ回ってないで殴り倒したらどうだ?」

 

「洗脳サレタクナイカラナ。貴様、鬼ト姫級ダケハ手デ触レナイト操レナイラシイナ」

 

「理解していたのか、私の能力を。これで2人目という訳か。どうして、お前達はそんなに知能があって賢いんだ?」

 

 会話を聞くことによるとどうやら浦田結衣は、鬼や姫だけは手で触れなければ効果はないようだ。軽巡棲姫などは捕らえられてから操られたのだ

 

 南方棲戦鬼も浦田結衣に掴まりそうになった事があったらしい。しかし、南方棲戦鬼は浦田結衣の行動に不審がり、最後まで抵抗した。結局は沈める事に成ったが

 

「まあ、いい。レーダー射撃だけでは中々当たらん。しかし、気が変わった。全員、一気にスクラップにしてやる!」

 

 戦艦ル級改flagshipは砲のそれぞれを遠くで戦っている艦娘達に向けた。川内達は下級の深海棲艦の艦隊と戦っていた。現在のところは善戦しており、敵の残存は残り重巡リ級2、軽巡ホ級1,駆逐イ級1、となった。軽巡棲鬼も小破しており、駆逐棲鬼も中破している。だが、鳥海も川内も損害は軽微であるものの、連続で戦っていたため疲弊している。吹雪も不知火も弾薬が減っているのか、後方に下がっている。初実戦なのに、ここまでやれるのは正直言って奇跡と言っていい

 

 南方棲戦鬼が武装放棄を命じたお蔭か、それとも武蔵の件で全員必死になって戦っているのか。だが、悪魔は彼女達に砲を向けた

 

「消えろ、この虫けらが!」

 

「川内さん、鳥海さん逃げて!!」

 

 浦田結衣の掛け声と時雨が川内達に無線で怒鳴ったのが同時だった。次の瞬間、巨大な砲は火を吹き、辺りを轟かせた

 

 

 

 鳥海も川内も吹雪も不知火は、何が起きたかを理解する暇がなかった。敵の砲撃と雷撃を躱して、己の主砲と魚雷を叩き込む。多数の深海棲艦の艦隊に対して効率良く当て、かつ、敵の攻撃を確実に躱す。数がこちらよりも多いため、苦戦するだろうと思われたが、意外と善戦したのだ。敵の武装が貧相だったのだ。苦戦したのは途中で参戦した軽巡棲鬼と駆逐棲鬼であったが、川内と鳥海の連携により押し返す事が出来た。どうも、洗脳を解くには戦艦ル級改flagshipをどうにかしないといけないらしく、戦艦棲姫がいても変化は無し。撃沈は無理でも無力化は出来る

 

 しかし、あと少しという所で、無線から怒鳴り声が鳴り響いた。誰か分からなかったが、木枯らしのような音が多数したと思ったら、自分達は殴られたような衝撃を受け火だるまになっていた

 

艤装が破壊され、服が焼け、身体は吹き飛ばされた。

 

「まさか……こんな……」

 

 辛うじて意識を保つことが出来た不知火は、自分がどうなっていたか把握していた。今は海面に倒れているらしい。艤装の損傷も酷く、攻撃どころか航行が出来ない。頭から出血しているのだろう。生温かいものが、流れるのを感じ取った。視界に映っていたのは、火の海だった。炎の中で二つの影が見えた。軽巡棲鬼が炎で焼かれ悶えている。鳥海もいたが、気絶しているらしく倒れたまま身動きしていない。川内も吹雪も同じだろう

 

「なぜ……どうやって遠距離から……正確に当てれ――」

 

 戦艦の遠距離攻撃は、中々あたるものではない。長門達も一航戦の航空攻撃の間、必死に遠距離攻撃したが、戦艦ル級改flagshipに命中していない。だが、相手はそれをやってのけた。偶然ではない。しかも、深海棲艦や艦娘関係なしに攻撃したのだ

 

不知火は、何が起こったのか分からないまま力尽きてしまった

 

 

 

「グッ!」

 

 先程の攻撃でダメージを受けたのは遠くで戦闘を行った集団ではない。戦艦棲姫もだ。全砲門が遠距離攻撃に使われた訳では無い。たった一砲門だけ戦艦棲姫に向けられていた

 

 レーダー射撃であるため命中率は高い。しかも、48cm主砲だ。流石の戦艦棲姫もダメージを負ってしまった

 

「おや、どうした?具合でも悪いのか?」

 

「貴様、何ヲシタ?」

 

「教えるほど親切心なんてない」

 

 実は浦田結衣が飛ばしたSH-60は対潜警戒のために飛ばした物では無い。弾着観測のために飛ばしたのだ

 

 SH-60は長門達が持つ水上機と違って高性能なレーダーを積んでいる。トリッキーな動きで長門達が放つ対空砲火を躱しながら観測データを浦田結衣に流していたのだ。そのため、遠距離攻撃でもより精度が高い砲撃が可能になった

 

「さあ、戦艦棲姫。私と一緒に世界を乗っ取ろう」

 

「……オ前ナンゾニ……」

 

 抵抗する戦艦棲姫だが、更に48cm主砲を立て続けて食らって大破してしまった。怪物艤装も身動き取れず、力尽きて倒れてしまった。浦田結衣は沈まない程度の手加減をしている事から洗脳して仲間にするのは明白だ。首を掴まれ宙を浮く戦艦棲姫は抵抗したが、やはり時間の問題である

 

「チッ、抵抗しやがって」

 

 悪態を尽きながらも暴れる戦艦棲姫の洗脳の作業の間、何者かが邪魔をした。立て続けてに主砲を受けていたが、威力を察するに相手は時雨だ

 

「結衣!お前を殺してでも止める!」

 

 時雨は主砲を乱射しているが、何とほとんど戦艦ル級改flagshipに命中しているのだ。しかも、的確にレーダーアンテナを攻撃している

 

「時雨、よくやるネ!」

 

「中々やるな」

 

金剛も長門も負けてはいない。特に金剛は中破しても射撃はしている。命中はしなくても牽制にもなるため浦田結衣は、戦艦棲姫を手放すしかなかった

 

「お前は人間ではなく、化け物だ!だから殺しても後悔はしない!」

 

「いい根性だ。砲撃の腕も威勢も認めよう。だが、消えるのは貴様だ、時雨!」

 

 戦艦ル級改flagshipのキャニスターから一発のロケットが発射された。それが何なのか、時雨でも分かった。ハープーンミサイルは時雨が反射的に回避行動を取る時雨を捕らえていた

 

 時雨がいた所から水柱が立ち上がった。戦艦による主砲の着弾時の爆発とは違うが、水しぶきが収まった時には時雨は消えていた

 

「爆発の規模が小さいのが気になるが、レーダーで敵影喪失を確認した。海底で寝ぼけな、小娘!」

 

「そんな……テメー!」

 

今の場面を見た天龍は14cm主砲を放ったが、お返しに48cm主砲の洗練を受けた。天龍は一瞬で大破に陥り、金剛も奮闘したが、自分が撃った主砲が相手に効果がほとんどない

 

「Shit!あの装甲、何で出来ているのデース!?」

 

「答える必要はない」

 

 金剛に向けて対艦ミサイルを発射して動きを鈍らせると、浦田結衣は急接近。金剛を殴り倒した

 

「確か太平洋戦争で色々な任務を請け負っていたな。だが、強敵である戦艦と戦った事が無いだろ!」

 

「グッ!」

 

浦田結衣は金剛を片足で踏みつけながら話す

 

「安心しろ、恐怖を味わせてから沈めてやるから」

 

「金剛を離せ!」

 

長門は吠えたが、相手は嘲笑うだけだ

 

「攻撃するならして見ろ」

 

「分かった!やってやるよ!」

 

 長門が口を開く直前、誰かが先に言った。長門は目を見開いた。声に聞き覚えがあった。それもそのはずだ。さっきミサイル攻撃で沈んだはずだった

 

 浦田結衣も長門以上に驚愕した。何しろ、突然、レーダーから反応が現れた。それは後方に現れて急激に突進して来る。しかも、それは……

 

「何!?まさか!」

 

「地獄から戻っていたよ、結衣!」

 

 浦田結衣の目に映っていたのは、時雨が動かなくなったハープーンミサイルを持ちながらこちらに突進する姿だった。これには、海面で蹲っている金剛も荒い息をして肩を押さえている天龍も驚愕した

 

 何しろ、攻撃を食らって撃沈したはずなのに、まるで生き返ったかのように突然海面から現れ、しかも無傷のまま突進している

 

これを見て驚くな、という方が無理である

 

 我に返った結衣は、迎撃しようとしたが、時雨は大胆な事を行った。何と探照灯を戦艦ル級改flagshipに向けて照射。昼間ではほとんど意味はないが、双方の距離は近い。時雨は探照灯を目くらましに使ったのだ

 

「目が!」

 

「残念だったね、使えるかも知れないと思って隠し持っていたんだ!痛いのを食らわせてやるよ!」

 

 時雨は手に持っていたミサイルを装甲が薄いであろう場所に突き刺した。流石の結衣もこれには堪えた。薄いとはいえ、ミサイルが装甲を突き破って身体に刺さったのだから

 

「ぐあぁぁ!貴様、よくも!」

 

 直ぐに態勢を楯無48cm主砲を向けたが、時雨はそれよりも早く突き刺したミサイルに目がけて砲撃を放った。近距離であるため、照準は容易だ。砲弾はミサイルに命中。爆発を起こした

 

 結衣が怯んだ隙を長門も天龍も見逃さなかった。天龍は金剛を救い出すと共に、砲撃を実施。長門も一斉射撃で攻撃を繰り返す

 

 だが、相手は攻撃を受け続けながら移動を開始。主砲をぐったりしている金剛と運び出している天龍を同時に攻撃した。そして、時雨に対しては副砲であるPzH2000で狙撃。回避出来なかったのか、時雨は砲撃を諸に受けて中破に陥った。だが、海面から高速で移動するスクリュー音を結衣は聞こえていた

 

 時雨は回避に間に合わず、受けたために動かなかったのではない。魚雷を発射するために回避しなかった。酸素魚雷による雷撃は日本海軍のお家芸であると言われている。近距離であると同時に波状で発射しているため、浦田結衣でも回避が難しい

 

4発中2発を食らってしまい、航行能力に影響が出てしまった

 

「はぁ……はぁ……」

 

時雨は息を荒げ、怪我を負っているものの、結衣を睨んでいた。結衣も睨み返す

 

「忘れていたよ、貴様は幸運艦だったな。不発するとはな」

 

「僕は経験済みだから驚くことは無いよ」

 

 あの時放った対艦ミサイルは不発だったらしい。実は、ミサイルや砲弾などが不発というのは珍しくない。前例も数え切れないほどたくさんある。確率論だが、時雨が受けたミサイルは不発という訳だ

 

 恐らく、ミサイルの衝撃で水中に入った事を利用して艤装をワザと外して海中に潜んでいたらしい。そして時を待って艤装を装着。艤装を付けた艦娘は強制的に浮上する事に成る。時雨は中破であるが、航行可能だ

 

「だが、これだけ攻撃したとしてもかすり傷程度だ」

 

「レーダーの目は潰した」

 

「ああ。だが、レーダーも私の艤装に馴染んだため、自己修復は出来る。深海棲艦の援軍なんぞに期待するな。無駄なあがきは止めろ」

 

 どうやら、未来の兵器であるレーダーは、深海棲艦の艤装として馴染んだらしい。エネルギー源は不明だが、当分の間は破壊出来そうにもない。深海棲艦の増援も期待出来そうもない。戦艦棲姫は戦えるらしいが、大破しており戦闘を継続できるかどうかは不明だ。その代わり、浦田結衣が率いていた艦隊を無力化に成功し、敵は結衣自身だ

 

しかし、時雨は絶望もせず、不適の笑みを浮かべていた

 

「撃墜したヘリも?」

 

「貴様……兵器だけでなく、幸運まで使って戦うとは……」

 

「自衛隊から兵器を盗んだ集団に言われたくないよ。君達の兵器じゃない」

 

 時雨は雪風に次ぐ幸運艦である。敵の事情や成り行きのケースがあるが、それでも幸運艦である事には間違いない

 

しかし、幸運もこれまでのようだ。弾薬は僅か、そして燃料残量も少ない。艤装も中破しており、戦闘能力を発揮出来なさそうだ

 

「フフフ……確かにな。さあ、覚悟はいいか?」

 

 時雨に向けて砲を向けようとすら浦田結衣。時雨は歯を食いしばった。絶体絶命なのは変わりない

 

しかし、彼女の攻撃を邪魔をし、時雨を守るものがまだいた。それは長門だった

 




おまけ
長門「深海棲艦から艦娘は人形と言われるし、敵からは標的艦と言われるし、全く何なんだ?」
時雨「深海棲艦と仲良くなれそうにないね」
長門「提督、我々の艦娘は一体、何なんだ?」
提督「それは……」
天龍「そう言えば、軍艦に命吹き込むならなんでデザインは女性姿なんだ?コマンドーみたいに筋肉ムキムキのボディなら戦いに有利なはずだ。これで流石のブラック提督も迂闊に手を出さないだろう」
吹雪「いや、それはちょっと……あれかも……」
電「ロボットもいいのです。T-800みたいな」
鳥海「サイボーグでもいいような?」
川内「えー?機械よりもニンジャスレイヤーみたいにダークヒーローにしようよ!」
武蔵「それ、お前がなりたいだけだろ」
あれこれ口にする艦娘。しかし、提督は既に答えを持っていた
提督「あー、とりあえずはっきり言っておこう。なぜ、艦娘は常に女性なのか?それはだな――」
一同「ゴクッ」
提督「これは人類の趣味だ。諦めろ」

「・・・・・」

時雨「……そ、そうなんだ。人類の趣味なら仕方ないね」
叢雲「一回、人類は滅びた方がいいんじゃない?」
龍譲「身も蓋もない答えやな」

戦艦棲姫「私達ガ女性デアル理由ハ?」
空母棲姫「敵ヲ油断サセルタメダ」

遂に深海棲艦と艦娘が共闘。深海棲艦は距離を置きながら戦おうとします
東京湾、大変な事に成っていますね

艦娘はなぜ女性なのか?それは人類の趣味です(多分)
なのでこの責任は創造主である博士です
博士「違うじゃろ!」
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