それはそうと、イベントがクリスマス明けに開始
戦力を整えなければ……
そう言えば脚注機能が実装されたのですね。私としてはある意味、助かったりします
大和達が出撃する直前の時
「本当にこれしかないでしょうか?」
「逃げられたら終わりだ。こちらには追跡する力なんてない」
大和の質問に提督は答えた。敵のスピードに対して大和の速度では追いつけない
「霧島にあるものを渡した。これで奴のレーダーにはあれしか映らない」
霧島は息を呑んだ。他の者もそうだが、霧島の任務は重要だ……
「私も全力で走れば追い付く――」
「いや、大和。アイツはそんな生易しい奴ではない。自分よりも強い相手は戦わない。武蔵を無力化したのもそれかも知れない。奴は決してお前の射程距離には入って来ない」
大和は何も言えなかった。無茶して追い付こうと意見をのべたが、相手はレーダーを持っている。レーダーの反射面積を見ればどんな艦か想像は出来る。相手が逃げてしまえば意味がない
現在
「レーダー反応がデカイ。ヤマト型か……また懲りずにやって来たのか」
浦田結衣は呟いた。海岸から何かが近づいて来る。大和型戦艦の火力はバカに出来ない。流石に改装した戦艦ル級改flagshipでもズタズタになるだろう。武蔵を無力化したのもそれだ。あの時、奇襲出来たから接近出来た。まともにやり合う気は、結衣には微塵も無かった
レーダーの探知精度は復旧したとはいえ、電磁パルスのせいで低下している。だが、それでも反応は大きい事から間違いないだろう
近くで大破し力尽きている長門や金剛の反応よりも大きい
「今更、決戦兵器がノコノコと出て来ても私が戦うとでも思っているのか?」
結衣の選択は、時雨を見向きもせずに湾口に向かっていた。逃げる気だ
「待って!」
時雨は追い付こうとしたが、既に速力は落ちている。このままだと逃げられてしまう。金剛も長門も動けず、天龍に至っては息切れして膝をついている
だが、湾口に向かっていた浦田結衣は、突然、進路変更をした
それは先ほど結衣が鳥海達に向けて遠距離砲撃した地点だ。下級の深海棲艦まで攻撃した事から無差別攻撃だろう。深海棲艦の艦隊は艦娘とは違って大半は撃沈してる。姫級である軽巡棲鬼などは沈んではいないものの、気を失って倒れている。艦娘が横たわっている所に人影がいた
そこには龍田がいた。叢雲と漣と五月雨、そして電もいる
いや、そこはいい。増援だったからまだマシかも知れない。しかし、この集団は異様過ぎた。叢雲達が曳航しているものに愕然としていた
「え……龍田さん……何を……」
信じられなかった。普通はあり得ない。何をしているんだ!?
「何でボートに資源を積んで運んでいるんだ!」
龍田達の命令は、大破し力尽きている鳥海達と空母組に補給と高速修復材、そして工廠妖精を積み込んでいた
あくまで緊急用のやり方だ。入渠せずに回復する方法ではあるが、正規のやり方ではない。しかし、龍田達はそれを実行したのだ
潜水艦娘が雷撃してる最中に補給開始したが、時間がかかってしまう。鳥海に高速修復材をかけて回復させている最中に敵がやって来た。異様な戦艦ル級改flagshipが猛スピードでこちらに向かっている
「龍田さん」
漣が敵の接近してるのを知らせた。敵はこちらを狙っている!
「龍田……一体、何を……」
天龍も信じられなかった。遠いが、龍田達の行為は無謀以外、何者でもない。戦場に補給物資を輸送するなんて自殺行為だ
「龍田!どういうつもりだ!」
長門も気づいたらしく、肩を押さえながら無線で叫んだ
しかし、返事は一言だけ
『提督の命令よ』
「何をしてるんだ!相手は資源を食らっただけで回復する化け物なんだ!」
結衣も嗅ぎ付けたらしく、進路を変え龍田の方へ向かっている。不味い、資源を奪う気だ
『敵が来たわ。戦闘開始』
「ま、待て!」
長門は逃げるよう指示を出したが、相手は無線を切った。
結衣は嬉々していた。補給物資が積んだ巨大ボートがある。布で覆われているため中身が見えないが、間違いない
(何故、補給物資を運んだ?)
岸から遠くないとは言え、このやり方は自殺行為だ。負傷してる艦娘を拾うという手段を何故、取らなかったのか?
罠か?それとも、本気で頭がおかしくなったのか?
しかし、無線傍受してる限り、間違いないようだ。大和も後方から来てるが、追い付けないだろう
そんなことを考えながらも結衣は、立ち塞がる水雷戦隊に攻撃を仕掛けた
「あら?ノコノコと来るなんて?死にたいのかしら?」
「自分の事を気にしたらどうだ?」
勿論、主砲は使えない。ボートまで巻き込まれてしまっては意味はない。副砲で片づけてやる
『提督、どういうつもりだ!』
『どうして戦場に資源を輸送したのデース!』
長門と金剛から非難の声が殺到した。当然だ。これでは、栄養満点のディナーを与えているに等しい
『提督、どういうつもりですか!』
『一体、何を考えているんだ!?』
「ど、どうします?」
大淀はおどおどしていた。皆の批判が殺到するのも無理はない
「やはり、伝え――」
「ダメだ!」
大淀の困惑に対して提督はピシャリと言った
「そのための囮だ。龍田も電達も了承してる」
「しかし――」
大淀は抗議しようとした。こんな作戦は捨て艦か何かだ!絶対におかしい!龍田達が沈む可能性だってある!
「大淀、艦娘達は大事な存在であることは知ってる。見捨てもしない。それは約束しよう」
提督は淡々と言っていた。大淀は何か言おうとしてるが、負傷した身体を無理に働かせているため、あちこち痛い
「だが、勝つための手段は無茶しないといけない。何も『必ず死んでこい』とは言っていない。そこを間違えないでほしい」
「……」
「地対艦ミサイルだって残り少ないし、もう手に入らんだろう。辛いことだが、勝つためだ。今のところは上手く言ってる。奴は戦艦大和は遠くにいると思い込んでいる」
提督の作戦は、無茶に等しい。だが、ここまでする必要性はあるのだろうか?
しかし、提督の作戦のやり方に一理ある。異形の戦艦ル級改flagshipの速度は速い。大和が無茶して駆けつけても嘲笑うように逃げるだろう。事実、大和から遠ざかっている
敵は、大和型戦艦と戦わないつもりだ
「しかし、龍譲の式神でああいう使い方は……」
明石は呆れるように言っている。実は出撃する際に龍譲の式神をある方法で使えないかと提督に頼まれた。どうも、空母組の式神や矢が艦載機に変形するのを見て考えたらしい。そこで、龍譲の出撃前に彩雲のチャフ搭載の際に1つだけ予備として取って置いたが
「私の苦労、考えて下さいね。霧島の分も」
「ああ……」
明石は愚痴を言っていた。まさか、こんな事を頼まれるとは思いもしなかったからだ。提督も内心は不安だ。もし、航行中の大和の存在がバレたら、大和は全力で浦田結衣を阻止する。しかし、その場合は骨が折れるだろう。また、仕留められるという保証はない
「親父は何をしているか知らないが、そんなのを待ってる余裕はない」
博士は重要な話があると言う事で駆逐古鬼と武蔵を連れて何処かへ行った。陸軍将校は忠告したが、博士は問題ないという
「指揮官って大変ですね」
「『艦だった頃の世界』の帝国軍人は、優柔不断なのか?それとも、腰抜けなのか?」
「うわ、手厳しい」
明石は呆れると同時に関心していた。一ヶ月前くらいに建造された時の提督とは、雰囲気が違う。初めて会った時は、見た目も会って指揮が出来るのか疑問であったが、今は違う。任せていいと思う。心身ともに成長している。時雨も変わった。初めは悩みを抱えているせいか、無表情が多かったが、作戦発動前の宴の頃には笑顔を見せるようになった
仲間もいるのか、それとも変わったのか?両方だろう
「どうした?」
「いえ、別に。それで、無線の非難はどうします?」
大淀の艤装を通じて無線では、問いただす者と非難する者で分かれていた。大淀も困っているのだろう。車椅子でどう返答すれば迷っている
「大淀、寄越せ。……違う、マイクだ。倒れている艦娘を見捨てる事は出来ない」
『ふざけるな!敵に塩を送ってどうする!……龍田、逃げろ!』
『何、考えてるんや!幾ら何でもおかしいやろ!?』
天龍と龍譲の怒鳴り声が聞こえたが、提督は無視して、スピーカーから流れる非難轟々の嵐をものともせずに双眼鏡を覗いている
「くそ、ダメだ。通じねえ!おい、龍田。逃げろ!」
天龍は足を引きずりながら追いかけようとするが、距離があり過ぎる。長門も金剛も全速力で駆けつけようとするが、大破しているため本来の力が出せない
駆けつける中、空母組から連絡があったが、どれも信じられないという内容ばかりだ
『赤城です。さっきの内容はどういう事です!?』
『時雨、どういう事だよ!?未来では、本当にアイツが提督だったのかよ!?』
混乱、怒り、罵倒が無線で溢れている。時雨も返事に窮してしまった。提督は何を考えているのだろうと
長門は自身の主砲を最大仰角で撃っていたが、相手に当たらない。金剛は35.6cm主砲であるため射程外だ
長門の砲声に混じって、遠雷のような砲声が辺りを鳴り響かせている。巨大な飛翔音と水柱が立ち上がった。遠くで大和が砲撃しているのだ
「大和、いくら射程が長いからと言って遠くにいる敵に当たるとは限らんぞ!」
長門は無線で怒鳴ったが、なぜか大和は返事をしない。如何に巨大な砲でも敵に当たらなければ意味がない。レーダー照準や弾着観測などがなければ、30km彼方の目標に戦艦の砲弾はそうそう当たらない
事実、大和が放った砲弾は全て外している
「大和、応答しろ!」
「なぜ、黙っているのデース!何か言ってくださーい!」
「無線が壊れているのか?……なぜ、大和は全速疾走しない!?」
長門は怒りと焦りで苛立っている。出撃してから一向に好転に転じない
「どうして……」
時雨は提督のやり方に憤りを感じた。なぜ、提督はこんなやり方を?自分達を大切にしてくれるのは嬉しい。しかし、これでは逆効果だ。まして、助けるためとは言え、資源をボートに積んで戦場に運ぶなんて!
龍田達は鳥海や川内達が倒れている地点まで移動すると、早速手当てを開始した。浦田重工業が崩壊した施設から小型ボートを見つけると、ボートに資源を詰め込み、シートで覆い曳航したのだ
提督の命令で負傷した艦娘を治療させる事だ。入渠する暇はないので、応急処置となるが、仕方ない
「大丈夫ですか?」
電は倒れている不知火に駆け寄り手当てを開始した。不知火は意識を取り戻したが、ボートを見て状況を把握。彼女の顔はみるみるうちに青ざめた
「あ、貴方達……何をして……いるの?」
「救助に来たのです」
電は淡々と答えたが、不知火はそれどころではなかった。冗談ではない。救助のためとは言え、これでは格好の的だ!
「あのボート……まさか……」
「資源が積んでいるのです」
「何をしているの……早く逃げなさい!」
不知火は忠告したが、電は言う事を聞かない。それどころか、叢雲も漣も救助活動に専念している
「どうしたの!はや――」
不知火が一段と強く叫ぼうとしたが、砲声と砲弾の着弾音が遠くから聞こえて来る。しかも、何かが高速で近づいてきているのだ
不知火は横たわりながらもこちらに迫ってくる怪物に絶句した
「そんな……」
既に遅い。司令は……司令はどうしたんだ?
浦田結衣は嬉々して龍田達がいる地点に向かった。救助活動のためとは言え、こんな事をしているとは思わなかった。ボートに資源を詰め込んで運ぶとは。ボートはシートで覆われているため中身は、見えない。艦娘がシートを少しだけ剥がして資源を取り出す姿を確認できるくらいである
ここが東京湾だからこそ、出来る業だろう。外洋では無理だ。転覆するし、邪魔なだけだ。初めはあの狂人の息子が考えた罠だと思ったが、無線傍受している限り、その線は薄い。内容も混乱と怒りと息子への抗議で支離滅裂だ
「なるほど……可愛いから手助けしているって訳か。優しさがアダとなったな!」
結衣は資源を奪うために急行する。敵に塩を送るレベルではない。愚かであると
しかし、お宝を前に数人の艦娘が立ち塞がる
「へえ……軽巡と駆逐艦4人が私に歯向かうとは」
「あら、貴方が死にたいと思っているなんて」
龍田は薙刀を構えながら、甘ったるい声で話しかけた。叢雲は槍を構え、漣も電も主砲を戦艦ル級改flagshipに向ける
「龍田、よくも自爆攻撃してくれたな。お前は、そんな減らず口を叩けるのは今の内だ」
「あら、そうかしら~?」
龍田は目にも留まらない速さで接近して薙刀を振り下ろした。龍田が持つ武器は、艤装であっても貫通する能力はある。敵の装甲や能力によりけりだが、相手は化け物になったとは言え、元は人間。切り刻めると思ったらしい
だが、相手はそんな生易しい者ではない。何と、刃を素手で掴んだのだ
「……ッツ!」
「ほう……龍田。余裕な顔をしているが、お前は恐怖を抱いただろう?」
龍田は表情を僅かながら曇らせた。結衣の指摘通り、龍田は敵に恐怖を抱いた。相手が強すぎるとか嫌悪感といったものではない
不気味過ぎた。ビル内で戦った相手とは思えなかったからだ。振り下ろした薙刀も相手は、一歩も動かずに刃を掴んだのだ
「死にたいのは貴方でしょ?」
龍田の合図に叢雲が躍りかかった。叢雲は近距離で魚雷を放とうとするが、それよりも早く結衣は機銃で魚雷を撃ち抜いたのだ
「なっ!」
魚雷の炸薬は、砲弾よりも多い。魚雷は敵艦に大ダメージを与えるものだが、デメリットは何らかの拍子で爆発してしまう。日本の駆逐艦が魚雷発射管に機銃掃射をうけて魚雷が誘爆、沈没したという話もあったという*1
敵を沈めるのに危険物を持ち歩かなければならない。火薬や燃料の引火には気を付けているが、陸奥のように爆発するものは爆発する
叢雲は魚雷が自爆、誘爆したため大破してしまった
「魚雷はダメなのです!」
電は咄嗟にさけんだが、駆逐艦の主砲では戦艦の装甲を撃ち抜けない。逆に副砲で丁寧に撃ち抜かれてしまい、戦闘不能になってしまった
駆逐艦娘と戦闘してる間も、龍田は距離をおいて14cm主砲を叩き込んだが、砲弾は虚しく弾かれるだけだ
結衣が駆逐艦娘を片付けると龍田の方へ体を向けた
「……ッ!」
「やっぱり恐怖してたな」
龍田は無意識に震えている腕に力をいれると、再び接近した
主砲はダメ、魚雷も火力を利用される。ならば、接近して首を切り落とすだけだ
だが、動きは全て読まれ、再び薙刀を捕まれてしまった。それどころか、奪われしまった
「良い武器だな」
結衣は問答無用で奪った薙刀を龍田の腹部へ刺した
「う……うう……」
龍田は何があったのか、理解するのに時間を要した。自分は刺されている。鋭い痛みが身体を蝕み、目が霞む。体に力が入らず、海面に倒れる
「よくやった。無能な上司のおかげでお前は、軍神になれたんだ」
龍田は言い返す事が、出来ない。喋れないからだ
「……まあ、艦娘は簡単には沈まない。だが、そこがいい。沈まない限り、苦しみ続けるのだから」
艦娘には安全装置のようなものがあり、一発で轟沈しないよう設計されている。戦力をそう簡単に失わないようにするための措置だ
しかし、これにはデメリットがある。修復しない限り、永遠にそのままだ。大抵は痛みは和らげてくれるが、限度はある。時雨が受けた拷問や龍田のように刃物によって刺された場合は、永遠に付きまとう
「狂人は艦娘を大切するあまりに、愚かな行為をした」
「龍田ー!クソ、あいつ許さない!」
龍田と結衣の戦闘を見ていた天龍は、叫ばずはいられなかった。龍田が刺されている
全速力で向かっているが、それでも時間はかかる。仮に追い付けたとしても戦える武器がない
金剛も長門も力尽きて脱落した。赤城達も駆けつけたが、空母の能力を奪われてしまっては、どうしようもない
唯一、無傷である摩耶は駆けつけたが、結衣の資源強奪に間に合わない
『提督、お前は本当に何を考えているんだ!』
声が割れんばかりの怒りの声を無線を通じて叫んだが、提督からの返事はない
それどころか、結衣は無線に割り込んで来る始末だ
『時雨。狂人の息子……いや、お前のボスの考えはこの程度か?』
「……ッ!」
『まあ、艦娘が大事なのは分かるが、甘ったるい考えだ。兵站は重要だが、間違ったやり方だな。護衛も少ない。いや、元々そんな能力はお前達になかったか』
結衣の嘲笑い反論が出来ない。兵站……日本軍はシーレーンを軽視したというのが定説になっているが、単に大日本帝国海軍のシーレーン防衛能力はほとんど無かったのである。いや、商船護衛の必要性すべきだという者もいたが、帝国海軍には護衛するための軍艦が無かったからである*2
「何で大和がボートの近くに居ないんだよ!」
天龍は悲痛な声を上げていた。速度差があるとはいえ、随伴が出来るはずだ
天龍と時雨は真っ先に結衣に追いついたが、主砲がこちらに向いていたため動きをやめた
「やれやれ、お前たちがどんなに必死になっても私に勝てない。猿が人間に勝てるか?どんなに策を練っても無駄だ」
天龍はヘナヘナと座り込んだ。もう勝てないと思ってしまった。時雨も資源が入ったボートの周りを見た。龍田と一緒に行動していた電もむら雲や五月雨などが大破し意識を失い横たわっている。そして、龍田は薙刀に串刺しに刺されている。鳥海達と同様に
「五月雨……どうして?」
「提督の……命令だから」
五月雨は未来では、捕虜になって沈んだことを提督は、日記で呼んだはず。なのに、何で出撃させたんだ?
「龍田……さん」
時雨は龍田に駆け寄った。龍田はぐったりとしている。目をうっすら空けていることから意識はあるのだろう
「何でだよ……」
天龍は呟いた。どっちを恨めばいいのか分からない。敵か、それとも提督か?天龍が横たわる龍田に近づき上半身を起こして抱えるように泣いた
結衣が資源に入っているであろうとしているボートに近づいている。空母組も摩耶もこちらに向かっているが、間に合わないだろう。大和は後方だ。とても、間に合わない。如何に強力だろうが、相手は外道な行為を平然とする化け物。お行儀よく出迎えるなんてしない。
結衣は全回復してしまう
提督は何をしているのだろう。時雨は龍田のほうへ見た。なぜ、こんな馬鹿げた任務を龍田は受けたのだろう
(え……?)
時雨は見逃さなかった。龍田の顔を見た。……微かだが、笑っている?
(まさか……)
時雨は提督の行動をもう一度思い返した。未来も現代も提督は提督だ。人の癖が無くなることはない。特に得意分野とするところは……
提督はタイムマシンを作り上げるため、時間稼ぎのために僕達艦娘を戦わせた。敵は未来兵器があるのを知っていて。しかし、提督は指揮を怠った事は一度も無い
捕虜の映像を見せられた時は、彼は怒っていた。完全に捨石とするような人ではない
(提督は無意味な作戦なんて立案しない!まさか、これは!)
龍田も気づいたのだろう。天龍に気づかれないよう時雨だけ顔を向けるとしきりに口を動かしていた
読唇術はあまり得意ではないが、彼女はこういっている!
『さ・く・せ・ん・せ・い・こ・う』
結衣はボートに近づいた。どうやら、本当に資源をボートに積んでいるらしい。シートで覆われているが、形からして山積みのように積んでいるらしい。戦闘不能になった艦娘の応急処置のためだとか
(本当らしいな。騙しにしては演技には感じられなかった)
勿論、警戒はした。ノコノコと補給物資を前線まで運び、現場で修理するなんて聞いた事がない。艦娘は人間の兵士と違って衛生兵は存在しない
いや、工作艦はいるが、貴重な艦娘だ。貴重な艦娘を出す勇気は無かったようだ
無線傍受しているが、内容は息子への非難と戸惑いだった。龍田の自爆にも警戒したが、そんな気配は感じられなかった
あっさりと片付けたが、大破し倒れるまで龍田も駆逐艦娘も必死になって戦っていたのだ。間違いないだろう。罠なら、何かしらアクシデントをするからだ
「補給ワ級を呼び寄せる手間が省けた。さあ、一気に片付けよう」
結衣はボートに近づくとシートを一気に剥がした
シートが結衣の手によって剥がれボートの中身を見た時雨は、驚愕した。いや、天龍もだ。怒りは消え、時雨と同じように驚愕していた
一方、嬉々していた結衣もボートの中から現れた人物を見て目を見開き愕然とした
「何!?」
ボートの中から現れたのは大和だった。時雨は初めて会うが、艤装を見て間違いない。あの主砲の大きさ、艤装の形は忘れもしない
大和型戦艦が勢いよく立ち上がると、艤装を展開し、主砲を全て結衣に向けた。予想外の出来事に流石の結衣も対処出来なかった
「第一、第二、第三主砲!斉射!始めー!」
「馬鹿な!なぜ、貴様がここに!?」
結衣が応戦よりも早く、大和に積まれている巨大な砲が紅蓮の炎をあげた。
鼓膜が破れる程の砲声と爆発音。距離が近いため、衝撃波が倒れている艦娘も含めて時雨と天龍を襲った。ボートは転覆はしなかったものの、あおりを受けて倒れている艦娘と共に流されていく。爆炎が大和に近い
あの巨弾が結衣に直撃したのだ。炎と煙が収まると、大破した戦艦ル級改flagshipが姿を現す
「やった!効いている!」
時雨は歓喜した。九一式徹甲弾の前には、流石の結衣も堪えたらしい。防御力が異常に高い装甲でも、46cm砲弾はやすやすと貫通したのだ
「き、きざま~!よくも、こんな~!」
9発の大和型主砲弾を諸に食らっても反撃しようとしているのだ。無事である48cm主砲が旋回して大和に向く。だが、大和は次弾装填は既にしているらしく、結衣が行動を起こす前に引き金を素早く引いた
「貴方の蛮行を、大和は許しません!次も直撃させます!このまま装甲を撃ち抜かせて頂きます!」
再度、砲声が鳴り響いた。あまりの近距離であるため、回避しようがない。いや、2発は外れたが、4発は直撃。結衣の手前で着水した九一式徹甲弾は水中推進によって命中した
そのため、爆炎だけでなく、巨大な水柱が立った
「バカな……遠くに居た大和は一体?まさか、そんな……ぐあぁぁぁ!」
あまりの衝撃に結衣は、吹っ飛ばされたのだ。着水時には、砲弾や魚雷よりも巨大な水柱が立ったのだ
「大和さん……ずっと隠れていたのデスカ!」
「冗談だろ!艦娘を資源に積んだボートと一緒に隠すなんて!」
「ちょっと待てや!じゃあ、遠くにいる大和は誰や!」
未だに速度が遅く、遠くにいる大和は誰なのか?しかし、結衣が攻撃を受けてから速度を上げた。しかも、まるで、セミの脱皮のように大和の姿がぱっくりと割れたのだ。中から現れたのは、何と霧島だった
「お姉様、ご無事ですか?」
「霧島?これは一体?」
金剛も頭が付いていけず、混乱している。駆けつけて来た大和は、実は霧島だった?
「皆さん、騙してごめんなさい」
「それはいい。どういう事だ?」
長門は霧島と大和を交互に見た。霧島も46cm主砲を付けているが、第一主砲のみだ
「提督の作戦?」
「ええ。そうです」
秘匿するために味方まで騙す作戦を立てるのは、提督しかいない。タイムスリップ作戦でもやったくらいだ
「どういう事ですか?教えて下さい」
「分かりました。でも、その前に補給を」
ようやく現場に到着した空母組は、真っ先に霧島に問いただしたが、霧島は冷静そのものだ
数十分前
「作戦はこうだ。龍田と他の駆逐艦娘は補給物資と工廠妖精を前線に届ける。応急処置だが、ある程度は回復するだろう。小型ボートに詰め込み、曳航していく。小型ボートは502部隊が見つけてくれた」
「待って下さい。敵が勘付かれたら終わりです。敵の手に渡ってしまいます」
霧島達が出撃する前にブリーフィングを行ったが、作戦が逸脱している。何を考えているのだろう
「そうだ。奴にディナーを上げる」
「正気ですか?どういう事です?」
大和は抗議したが、次の言葉に大和は唖然とした
「ボートに載せるのは補給物資と高速修復剤。そして、大和。お前だ。但し、艤装は敵が補給物資に手を付けるまでは外した状態でだ」
「え?」
大和は信じられない顔をした
「補給物資と一緒にボートに乗るって事ですか?」
「そうだ。奴を誘い込む。いくら強かろうが、奴は本物の深海棲艦ではない。資源を少なからず必要とする。奴は腹を空かせている。奪ってまで補給するだろう。それがチャンスだ」
ここまで聞いてようやく、その場にいた艦娘達は提督の作戦の意図に気付いた
「霧島、お前は大和になれ。これを着るんだ。明石が造った変身用スーツだ。こいつを着こむと大和になれる。更にアルミ製だから、レーダーはよく反射する」
「しかし、46cm主砲なんて撃ったことが――」
「命中しなくていい。牽制にもなる」
だが、いくら変身しても見破られるだろう。レーダーで誤魔化しても近寄れば終わりだ。46cm主砲は金剛型戦艦の艤装に搭載する事は可能だ。命中率は大幅に下がる
「浦田結衣は勝てる戦いをしている。しかし、結衣の敵対者が自分よりも強かった場合は、卑怯な手を使って勝っている。武蔵に対してやったようにな」
「それじゃあ……龍田さんと私達の任務って」
叢雲は戸惑いを隠せなかった。この作戦で危険なのは水雷戦隊だ
「――必死になってボートを守るんだ。奴がこちらの作戦を悟られないように」
「天龍ちゃんが怒り狂いそう」
龍田は呟いたが、実際はそれどころではない。大混乱するだろう。時雨も含めて
「ああ。だが、奴は無線傍受できる。俺達をどう思おうが知った事ではない」
仮にこちらの作戦に気づいたら、空母組を回復させ追跡させる。流石に、航空機は船で追いつけるはずだ
「だから、龍田。お前は――」
「大丈夫よ。近づいて来てるなら倒すチャンスじゃない」
龍田は朗らかに言ったが、提督は見逃さなかった。微かだが、龍田は震えている
皆が素早く補給している間、霧島は早口で事情を話したが、誰も口を挟まなかった。聞き終えた頃には、補給は終えていた
「すると、提督はあたし達が激昂するのを承知で実行したのか?」
摩耶は信じられないという風に呆れていた。長門も金剛も同じだ
「提督は未来でもこうなのか?」
「一度だけ実行したことがある」
時雨が真っ先に思い浮かべたのはタイムスリップ作戦だ。真相を一部の艦娘しか伝えず、タイムマシンを『究極の新兵器』と誤魔化して戦わせた
やり方には賛同出来ないが、客観的に見ると間違ってはいない
『聞こえるか?黙って実行して済まなかった』
不意に無線連絡が入った。提督だ
「いいえ。お陰で最悪の事態にならなくて済みました。東京湾から逃げていくという事に」
赤城はてきぱきと答える。ここで提督を非難するよりも任務優先だろう
『あの怪物戦艦はどうなった?』
「流石にあれだけ攻撃を受けたら沈んでいるとは思いますが」
加賀は何気なく呟いたが、時雨は補給すると直ぐに結衣が倒れている地点まで行こうとする
「時雨、どうしたネ?」
「生きてるよ。まだ」
「What?」
金剛は信じられない風に愕然とした
「大和の主砲を諸に受けたんだぞ。いくら何でも――」
「長門さん、あれは生きています!」
大和も時雨に付いていく。時雨の言うとおり結衣は生きていたのだ。瀕死状態ではあるが
「信じられん。負傷者はボートに乗せて岸に帰れ。漣、電、五月雨は曳航しろ」
彼女達は直ぐに実行した。鳥海、龍譲、川内、龍田、吹雪は戻された。大破は応急処置が出来ない。漣達は大破したが、航行に問題はないため、曳航は出来る。不知火は何とか復帰出来たため現場に留まることにした
「龍田の作戦を無駄にはしない!」
天龍も怪物戦艦が倒れている場所へ向かった
「あー……殺す……殺してやる!」
結衣は自分の被害状況を把握していた
48cm主砲損傷、火器管制オフライン、レーダーダウン、艦載機全壊……
深海棲艦仕様の装甲はズタズタになった。このままでは、こちらが撃沈されてしまう。結衣は立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない
(大和の攻撃力……ここまでとは……武蔵に対しては無力化できたと思ったら……)
H級戦艦は元々、日米英の戦艦と違って全体防御方式を取っている。集中防御に比べ装甲厚は薄くなるが、損害を受け難くなるのだ。結衣は、それを実行した。つまり、沈みにくく設計している*3
しかし、これには弱点もある。火薬庫などの急所には、装甲は厚くない。一長一短ではあるが、こちらにはレーダーがある。だが、あの息子の策略によって再び食らってしまった
「頭痛がする……身体の修復が出来ない……私がここまで……ここまでやられるなんて」
結衣がもがいている時、誰かがやって来た。あの大和だ。傘を持ち、巨大な艤装を身に纏ってこちらに向かってくる
優美な容姿をしてるにも拘わらず、こちらに向けられる視線は冷たかった
「武蔵にした行為を私は許さない。いえ、他の仲間に手をかけた事も」
「……」
大和の主砲は全てこちらに向けられている
「シートの隙間から貴方の戦い方を見ていました。貴方は存在してはならない。いえ、生かしてはならないと確信しました」
(こいつ……)
最早、こいつらは逮捕等と言うことをしないだろう。隣には時雨もいる
「観念しろ。もし投降するなら、お前の最適な場所へ連れてってやる。マリアナ海溝までな」
長門も復活しており、こちらを睨んでいる。もう、無理だろう。こいつらは本気だ
普通なら絶望して自暴自棄になるだろう。自殺するかも知れない
「…………フフフ……ハハハッ……」
だが、結衣が取った行動は笑いだ。小さく笑い声をあげる。だがその声は除々に大きくなり、高笑いしたのだ。気がおかしくなったのか?
「アーッハッハッハッハッハッハッハッハ!」
「な、何だ?こいつ?」
強気である摩耶もこの時はゾッとして後ずさりをした。いや、天龍も赤城達も同様だ。大和と長門は怯まなかったが、表情を僅かに変えただけだ
本当に気がおかしくなったのか?躊躇してしまったために、結衣の手にはあるものを持っていた
「良いだろう!ここまで追い詰めた事に!だがな、これで勝ったと思うな!本来なら使いたく無かったが、もう自分の命がどうなろうと知ったことではない!」
結衣が持っていたのは、注射器だった。しかも、自分に向けている!毒針ではない!502部隊の軍医によるとフグ毒は、即死するような毒ではないと説明した!
「大和さん!攻撃を!まだやる気だ!」
時雨は叫んだ。結衣は降伏なんてしない。今思えば、敵は降伏なんてしたことがあるだろうか?
浦田社長は最期まで降伏しなかった。負けを全く認めない。しかも、敵は注射器を隠し持っていた。毒薬なら艦娘に向けている。自殺かも知れないが、時雨は直感で否定した
自殺する人ではない!
「てっー!」
大和だけでなく、他の艦娘も砲撃を開始。駆逐艦と軽巡は魚雷を全て発射した
結衣がいた地点には、大爆発と巨大な水柱を起こした。爆煙と炎、そして水しぶきで視界は不良だ
やった……これで終わった
やったか?
感想で装甲による記載ありがとうございます。ただ、それぞれに建造目的があり、それぞれに特徴があるため比較は難しいです
とは言え、大和型戦艦に搭載されている主砲の威力は
『撃ち出される46cm砲弾の破壊力は2万メートルの距離では厚さ55cmの垂直鋼板、または厚さ19cmの水平甲板を貫通することが出来た』
『太平洋戦争 日本の秘密兵器 海軍編』より
とあります。まあ、46cm主砲の前には装甲纏っても意味は無きに等しいです。敵(結衣)もそこはよく分かっていたらしく(48cm主砲持っているので)奇襲で武蔵を無力化したという
軍艦はガンダムのモビルスーツの装甲ようには行きません。鋼鉄の咆哮?あれはああいう世界です
今年中にもう1回は更新したいのですが、私情の関係のため無理かもしれないので一応言っておきます。よいお年を