時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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皆さん、こんにちは
ちょっとドタバタして予定より遅れてしまいました
正月でのんびり過ごして来たのが、急に忙しくなったため大変でした

それはそうと今回のイベントは中々強敵でした。甲攻略出来なかった……
掘りも完了。ジョンストンは攻略中に出て来てくれましたが、早波は50周してようやく……

何回、戦艦棲姫と南方棲鬼を殴った事か()

一方、アーケード版では江風や海風などが実装する一方、戦艦レ級も登場
魚雷を大量に打ち込んだり、尻尾から艦載機を吐き出したりとアーケードでも暴れています

北上「あんなに先制魚雷を撃てるなんて」
大和「ブラウザ版よりも厄介なんですけど!」

倒すのに苦労しました



第107話 決着

その日の海は荒れていた。人型とは言え、巨大戦艦の威力が低下する事は無い。よって、双方の間で熾烈な砲撃戦が繰り広げられた

 

「うおおぉぉぉ!」

 

武蔵は51cm主砲を立て続けに発射した。敵である浦田結衣に不覚にも不意打ちを食らってしまった。今度はそのお返しだ。結衣は時雨を追い掛け回す事に執着するあまり、周囲の警戒を怠っていた

 

「武蔵?その姿、どうしたの?」

 

「大和、そんな事はいいから援護してくれ!」

 

大和は戸惑っていたが、武蔵の要請に大和も砲撃戦に参加する。一騎打ち……いや、大和も加わったため1対2である。しかも、互いに援護はない

 

「51cm主砲を手にするとは。だが、そんな小細工は私に通用しない!」

 

互いに巨弾が飛び交い、巨大な水柱が立つ。妨害電波を出しているため、大和武蔵はレーダー射撃は出来ない。観測機もハリアーのお蔭で飛び立てないだろう

 

しかし、大問題があった。H44である結衣は自己修復の能力を持つ。だが、艦載機は別だ。そんな能力はなく、弾薬燃料もスペック通りだ。よって、撃墜される危険性はないが、燃料切れで墜落する事に成る。飛行甲板も破壊された。現在は修復しているが、収容するのに時間が圧倒的に足りない

 

何しろ空母棲姫や赤城加賀の空母を攻撃したり、艦載機を撃ち落したりしたのだ。空戦をした事もあって弾切れ状態である。収容し補給出来たジェット機は半数だ。残りの機体を収容しようにも艦隊決戦をしてる最中だ。危険が大きすぎる

 

「どうした?遠慮はしない!」

 

二連装である51cm主砲が火を吹く。それが3基あるため計6門もある。そんな巨大な砲が近距離で飛んで来るのだから堪らない

 

「チッ!死にぞこないが!」

 

結衣も負けじと撃ち返してくる。レーダー射撃をしているため命中率は結衣の方が上である。しかし、大和も参戦しているため骨が折れる

 

「いくぞ、大和!」

 

「はい!」

 

武蔵の援護要請に大和は答える

 

武蔵の51cm砲と大和の46cm砲が吠える。H44になった浦田結衣も50.8cm砲で撃ちかえす

 

巨大な砲弾が飛び交い、外れた砲弾は巨大な水柱が立つ。命中した砲弾は艤装の一部を破壊する。成り行きとは言え、艦隊決戦が発生した

 

平行世界の太平洋戦争ではほとんど起こらなかった事がこの世界で起こっている。戦艦同士の戦いは熾烈なもので、経験したことがある霧島も近寄れない。中破しながらも立ち上がる戦艦棲姫もである。危なくて近寄れない

 

 

 

(クソ、飛行甲板が破壊されて発着艦が出来ん!)

 

結衣は歯軋りした。ハリアーやYak-38を飛ばしているのに武蔵の接近に気づかなかった。いや、時雨を執着するあまり、警戒を怠った。地対艦ミサイルだけでなく、敵の電子の目を奪うために妨害電波を出せば敵の攻撃は落ちると思い込んでいた。思い込んでしまった。

 

また、武蔵と砲撃戦を展開してるが不味い事が起こっている。射撃能力はこちらが上だが、砲雷撃戦では劣っている

 

ビスマルクを初め、H級戦艦は近接戦闘重視で装甲は均等である。沈みにくいという点ではいいが、飛行甲板までは装甲化されていない

 

というより、空母の飛行甲板はどこも同じだが、戦艦の砲弾に耐えれるよう造られていない。250キロ爆弾に耐えられるよう装甲を220mm並の強度にしたが、戦艦の主砲までは防げない。第二次世界大戦時に各国が航空戦艦のプランを参考にしてイメージしたが、やはり純粋な戦艦とやり合うのは無理がある*1

 

何しろ40cm主砲弾の直撃を耐えるにも、少なくとも300mm以上は必要だとされている

 

 実際に大和の重要区画であるバイタルパートの装甲は360mm。主砲砲塔防盾は650mmある。46cm砲の砲弾に耐えうることを前提とした防御力はこれくらいは必要である

 

 実は結衣の弱点だったりする。飛行甲板は自己修復可能だが、被害の大きさによっては時間がかかる。長口径による射程距離の長さを活かしてアウトレイジする方法だ。例え、不覚にも接近したとしても凌げる方法はある。レーダー射撃でも正確さは第二次世界大戦の船舶でも負けない。弾着観測でも哨戒ヘリを使えば精密さは更に増す

 

 だが、大和が直前まで艤装を外して補給物資の荷物に紛れるなど予想外の事までは対処は出来ない。しかも、接近されれば別だ。接近すればレーダーを頼る必要性なんて無い。光学照準でも可能だから。対艦ミサイルをまだ抱えているハリアーとYak38を大和武蔵に向けて攻撃するよう命じた

 

それしか手は無い*2

 

 

 

武蔵はプロペラがない航空機から発射されるロケットに耐えながら接近した。51cm主砲なんて『艦だった頃の世界』でも製造されていないのだから初めてである。46cm主砲の感覚で撃つ訳には行かない

 

よって、接近する事にした。遠距離攻撃では当たらないからだ。確率論で頼らず直接ぶちのめした方が効果的だ

 

「敵ロケット来ます!」

 

 妖精の報告と同時に轟音と衝撃が襲う。強力なロケットが武蔵を襲うが、武蔵は無視した。10cm連装高角砲改と増設機銃数で撃ち落せる代物ではない。それで撃墜出来れば摩耶がやっている。尤も、彼女は運よく2機も落としたらしいが。51cm砲弾に耐えられる厚さの装甲は流石に纏っていないが、それに近い装甲は纏っている*3

 

(まあ、沈む時は沈む。だが、アイツだけでも道連れにしてやる!)

 

武蔵はミサイルの豪雨に怯む事無く執拗に攻撃して来る結衣に向けて砲撃を開始した。大和も負けじと撃っている

 

双方との間で巨大な水柱が立ち上がった。その中に命中した砲弾もある

 

「これしきの傷!主砲、一斉射だ。薙ぎ払え!」

 

50.8cm主砲弾を数発受け対艦ミサイルを食らっても怯まない武蔵。装甲が予想よりも耐えてくれた

 

妖精が再装填完了したとの報告を聞くと武蔵はブザーも鳴らさずに引き金を引いた。51cm主砲は再び砲声を轟かせた。一斉射撃によって妖精から悲鳴が上がったが、タフだから大丈夫だろう。電波障害があるため、電探による射撃は出来ないが、光学照準でやるしかない

 

砲弾は再び結衣に直撃する。飛行甲板を破壊したため、発艦される恐れはない。後は本体のみだ

 

 

 

武蔵が攻撃態勢を取った、その時だ。無線からけたたましい声が響いた

 

『聞こえるか!?電波障害が消えた!怪物戦艦は何処だ?』

 

「提督?」

 

 武蔵は驚いた。実は武蔵が砲撃した時、偶然にも電子戦装置に命中したのだ。そのため、妨害電波が取り除かれ無線が通じた

 

 武蔵は自身に装備されている21号電探改二を確認した。スコープはクリーンだ。これでこちらもレーダー射撃が出来る*4

 

大和も無線を受信したのだろう。敵の位置を伝えている

 

「フン!海の藻屑にしてやる!」

 

結衣は自身のH44である艤装に自信があった。まだまだ進化は出来るが、今は目の前の敵を倒すのみだ。あの劇薬は一種のドーピングのようなもの。体力の消耗が激しい

 

だが、こちらが圧倒的に有利なのは変わりない。一騎当千可能な力を手にしたから

 

しかし、こちらに向かって来るミサイルを結衣のレーダーに捕らえていた

 

「しつこいぞ!地対艦ミサイルでこのH44改を沈めようだなんて思うな!」

 

ECMは使えないため、チャフとCIWSで対応した。ミサイルの性能が弱い事もあるが、結衣はミサイルを全て撃ち落としてしまった

 

『クソ、もうこちらから援護射撃は出来ない!』

 

「提督よ!もういい!こちらで倒す!」

 

「いい気になるなよ?ちょっと進化したからと言ってこちらが圧倒的有利である事には変わりはない!」

 

結衣と武蔵は砲撃しながら接近していた。戦いは肉弾戦にまで発展した

 

 結衣の拳と武蔵の拳がぶつかり合うと、そこから強烈な衝撃波が発生し大和も後ずさりをするだった

 

 大和と武蔵改二は必死になって戦っている。2人の猛攻を結衣であるH44は応戦した。だが、相手の火力の方が強力だ

 

 

 

 ――本物の化物だ

 

 そう、時雨は心から思った

 

 あの世界最強の大和と武蔵が、本気で戦っているのに、一人の戦艦に押されている。敵の水上打撃能力は強力だ

 

 航空攻撃でも潜水艦による雷撃も嘲笑うかのようにかわされる。鹵獲した現代兵器でも効果がない

 

 いや、元々数が少ないからかもしれない。ディープスロートである空自の一尉がいればどうなるか分からない。何か策でも練ってるはずだし、平行世界の日本の軍隊である自衛隊なら対処出来るかも知れない。浦田重工業がやったように対深海棲艦用の兵器を積めばいいかも知れない。いくら自衛隊でも警備隊長のような人はいないはずだ

 

だが、それは『もしも』の話だ。ワームホールは破壊している

 

怖い。恐ろしい。

 

 時雨は、自分が怯えている事を理解しなくてはならなかった。足は震え、歯がカチカチと鳴る

 

今の自分に何が出来る?

 

 雪風と共に幸運艦などと言われているが、局自分がやっているのは怯えて震える事だけだ。

 

 少しでもいい……大和と武蔵の助けになる、何かがしたい。しかし、自らが持っている兵装では無理だ

 

主砲は豆鉄砲であり、酸素魚雷も尽きてしまった

 

「おい、時雨!」

 

「誰っ!?」 

 

 壮絶な艦隊戦に呆気を取られていたため、我を忘れていた。声と共に肩を叩かれ、つい驚きの声を上げ、身構えてしまう。

 

「ぼうっとするな!……時雨は下がっていろ。もう、あたし達には手に追えない」

 

摩耶は悔しがるように撤退を薦めた。

 

「ダメだ!ここは――」

 

「あいつらの砲を見ただろ!もう駆逐艦や軽巡がどうにかなるレベルの問題では無くなってんだ!……天龍も赤城さんも加賀さんも戦闘不能になった。鳥海が付き添ってくれるから」

 

「ここは危ないです。早く撤退を」

 

 先ほどまで電波障害があった事もあったため、提督は通信が回復する直前に鳥海を差し向けたという。既に3人は鳥海の伝言通り撤退しているらしい。ここに居ても足手まといという

 

「でも……」

 

 時雨は何とか反論しようとしたが、言葉が見つからない。深海棲艦の姫級も長門も金剛も霧島も戦闘不能だ。空母組も潜水艦娘やられる始末だ

 

敵は単体でも強力だ。こちらの数の暴力なんて何ともしない

 

 しかも、下級の深海棲艦も操れるという。東京湾だからかも知れないが、外洋に出たら終わりだ。下級の深海棲艦の艦隊を従えるだろう

 

そうなると戦力差で負けてしまう!浦田重工業が崩壊している今、通常兵器では倒せない!

 

「……ダメだ!何とかしないと!」

 

「バカ言うな!あたしも悔しいけど、敵が強すぎるんだ!提督もそれくらい分かってる!」

 

 実際に戦えない者は撤退していいと連絡があった。電波障害が無くなっても、敵が弱体化する訳がない

 

どうすれば勝てる?

 

 鳥海の話によると武蔵は超人計画である劇薬を使用したらしい。まだ、作れる事には驚いているが、武蔵が超大和型戦艦に近い存在になることには驚いている

 

 しかし……武蔵が進化しようが、結衣には及ばない。結衣には平行世界からの軍事技術をイメージ出来るのか、ジェット機まで進化させている

 

 このまま進化する可能性も出来ないはずだ。鳥海の話だと超人計画による改装は、正規ルートではない。場合によっては艦娘も命を落としかねない

 

武蔵の場合は偶然成功しただけだ。他の艦娘も成功するとは思えない

 

(どうやって……)

 

武蔵と結衣の肉弾戦を呆然と眺めながら時雨は思った

 

艦娘である僕達は、弾圧される運命なのか?

 

 結衣は一人だが、深海棲艦の艦隊を洗脳させ率いることが出来るし、自己修復や自己進化出来る

 

このままでは消耗するだけだ

 

超人計画は悪なのか……?深海棲艦は人に利用され、艦娘は弾圧される存在なのか?

 

 それとも、深海棲艦は世の中を滅ぼすだけの存在なのか?艦娘は後始末するための掃除屋なのか?

 

(僕達は何のために戦っているのだ?)

 

 時雨は座り込んだ。鳥海はしきりに撤退するよう言ってくるが、時雨は無視した。この世界がどのように進んでいくかは知らない。アカシックレコードにもなかった

 

 結衣はH級戦艦を現代化改装している。無理矢理したようだ。艦娘が改ニになってもそんなのは手にしなかった。夕立も改ニになり、火力は上がったが、敵を退ける事が出来ず、未来で沈んでしまった

 

(超人計画がなければ……こんな苦しみなんて……)

 

 時雨は今まで経験した事を思い出した。大半は苦い経験だけだ。楽しい事なんてあまりない

 

超人計画……艦娘計画……進化……改ニの存在……浦田重工業……

 

 

 

様々な事を思い出す中、偶然か頭は冴えていた

 

(改ニになっても未来兵器は積めなかった)

 

(浦田重工業は平行世界の日本を騙して兵器や科学技術を横流しにした)

 

(深海棲艦と艦娘はコインの表と裏)

 

(建造ユニットが未完成の時、深海棲艦化した吹雪が出てきた……)

 

しかし、吹雪はそのような事は覚えていないという。初めて合ったのだと

 

(過去に深海棲艦と提督の先祖は会った)

 

自分でも分からない。なぜ、こんな事を考えているのか?

 

(駆逐古鬼は人に成った……もしかして……艦娘になった……?)

 

鳥海の話だと駆逐古鬼は人に成ったというのを聞いたという。……本当に変わるのか?

 

(深海棲艦は別次元の世界で進化した。艦娘は兵器から進化した……)

 

(僕は改ニになったけど……浦田結衣のような力は手にしていない……)

 

改ニは身体的負担がかかるが、練度が高いとその負担も軽減出来るという。身体的能力と兵装によっては、『艦だった頃の世界』以上の力を手に出来る

 

 しかし、半世紀以上の軍事力を身に纏った事なんてない。瑞鶴も装甲空母になり、カタパルトを保有していたが、平行世界の米海軍の原子力空母のような力は持っていない。平行世界の未来において自衛隊が空母を持っていないからかも知れないが、それならなぜ、結衣は実現出来る?H44であるH級戦艦はペーパープランのはず。ディープスロートも言っている

 

(改装……進化……艦娘は無機物ではなく生命体……)

 

まさか……

 

 時雨は勢いよく立ち上がると岸に向かって全速力で駆け出した。缶が悲鳴をあげる程、全速力を出した

 

「時雨!」

 

鳥海の制止を無視して時雨は駆け出した

 

 

 

「ヘェー。時雨は逃げたな。敵わないと思って逃げたらしいな」

 

武蔵と結衣が取っ組み合いの最中、現場を離れる時雨を見て結衣は嘲笑った

 

 武蔵は結衣を睨んだが、内心は時雨に失望はしていない。敵わないから逃げたのは仕方ないかも知れない。しかし、武蔵はそうは思えなかった

 

(時雨……お前が何をしようとしてるのか知らないが、時間稼ぐはキツいぞ)

 

武蔵は時雨の表情を一瞬だが、見たのだ

 

少なくとも絶望した表情ではなかった。まるで何か思い付いたような……

 

 東京湾の海面を走り、岸に上がった時雨は提督の姿を見や否や、駆け出した。体があちこち痛いが、時雨は無視した

 

ここで倒れたら意味がない!

 

「時雨!無事だったか?」

 

「僕は大丈夫!それよりも聞いて!」

 

 提督は時雨のボロボロに驚きながらも聞いてきたが、時雨は声を掛ける仲間を無視して先ほど閃いた事を一気に話した

 

話が終えた時は全員、顔を見合わせていた

 

「おい、本気か?」

 

「だってそうじゃない?僕は改二だよ!」

 

「どうなんだ?」

 

提督は驚きながらも近くに居た明石に尋ねたが、明石も困惑していた

 

「分かりません……でも、そんなのやっても意味がないと思います。だって、敵である浦田結衣は元々人間なんですよ?」

 

明石はかぶりを振った。時雨の提案には根拠がない

 

「何回も言っていますけど、私は全然覚えていないんですよ!」

 

吹雪も付け加えるように叫んだ

 

「深海棲艦と艦娘に類似点はあるのは分かりますが、流石にこれは――」

 

「いや、確かに一理ある。生命は常に道を探すという点を見ればあり得るかも知れん」

 

不知火も戸惑いを隠せなかったが、彼女の指摘を遮るかのように博士は言った

 

博士は軍曹に支えながらも歩いている。何があったのだろう?そして、隣にいる深海棲艦は?

 

「彼女は?」

 

「心配するな。今は敵じゃない」

 

博士は座り込むと何か考えている。時雨は待った。今の考えが正しいと信じたい。いや、信じるしかない

 

「お前は覚えておるか?製薬方法を?」

 

「……馬鹿ヲ倒スノニ人ニ成ッタ事ガアル深海棲艦ニ頼ムトハ」

 

 駆逐古鬼はため息をつくと小型の注射器を取り出した。そして、腕をまくり上げると注射器を刺し、血を吸い上げていた

 

「な、何を?」

 

「実験材料トカダッタナ。製薬方法ハ知ッテイル。一緒ニ造ッタカラナ」

 

「一緒に造った?」

 

「人間ニ興味ガアッタカラダ。オ前ノ先祖ハ面白イ人ダッタゾ?」

 

 『超人計画』は地球上の生物でも使えるが、やはり超人的な生命体である深海棲艦が一番いいとされる。だが、副作用も大きく並の人間が扱うものではない

 

余談だが博士は昔、海洋生物を元に研究していた。先祖代々から受け継がれてきたものらしい

 

「実験動物に製薬って……昔にそんな技術があるなんて……」

 

 明石は驚きを隠せなかった。昔の人はここまで凄かったのか?

 

「確かにそうかも知れん。じゃが、歴史を遡れば別に不思議でもあるまい。江戸時代では一般大衆ですらアサガオや金魚を交配して楽しんでおった。火薬や電気を扱う技術も遥か昔から存在しておった」

 

 博士は説明した。生活水準やモラルは今よりかは低いが、決してバカではない。どうやら、我々が考える以上に先人の知恵や技術は偉大だったらしい

 

博士は座りながら材料を手に取ったが、機材に触れる直前で倒れ込んだ

 

「博士!」

 

「おい、親父!……全く、血液を大量に抜くからだ!」

 

時雨は博士が疲労で倒れたと思っていたが、実際は違うらしい。何だろう?

 

だが、明石は前に進み出ると博士に力強く言った

 

「大佐、私に製薬方法を教えて下さい!」

 

「ッ!」

 

「分かっています。だけど、私も艦娘です!」

 

 明石は工作艦である。戦闘艦ではないため、戦う事が出来ない。しかし、何か役に立ちたいと思ったらしい

 

「……分かった。やるんだ。『艦娘計画』では欠かせない技術だ。それを転用すれば実現出来る。ワシの言った通りにやるんじゃ」

 

 

 

 武蔵と大和の2人は結衣に全力で戦いを挑んでいた。大和は既に中破しており、戦闘不能になりつつある。だが、撤退する気は全くなかった

 

「ちッ!折角のハリアーを台無しにしやがって!」

 

「黙れ!」

 

結衣の攻撃目標は大和から武蔵へと変わった。大和はあれくらいでいいだろう。だが、武蔵の方が厄介だ。あの装甲……51cm主砲を耐える装甲ではないが、やたら固い

 

「ふっ。この主砲の力、味わうがいいぜ!」

 

51cm連装砲が再び砲火を上げる。九一式徹甲弾が大気を引き裂いて飛んでいく。巨大な砲弾はH44に命中する。既に飛行甲板は使い物にならない。ジェット機も弾薬尽きたため飛んでいるだけである

 

「舐めるな!」

 

 結衣は吠えた。武蔵に向けて砲撃を開始した、既にこちらの射撃能力は低下していた。51cm主砲は威力が高く、自己修復に間に合わない。電子機器は軒並みいかれているため、正確な射撃は出来ない

 

だが、負ける要素は全くない。目視でやってやる

 

それどころかとんでもないものを使ったのだ。副砲にある砲弾を装填すると武蔵に向けて発砲したのだ

 

「つあああ!」

 

武蔵はのけ反った。副砲の砲弾なのに武蔵の装甲を貫通して51cm主砲の1つを破損させた

 

「な、何だ?これは?」

 

予想外の事に武蔵は戸惑う。自慢の装甲が副砲によって貫通したのだ。結衣はそれを見逃さなかった。武蔵に向けて一斉射撃を開始した。超大和型戦艦に近い力を手にした武蔵も50.8cm砲弾を一斉射撃を食らえば無事な訳がない

 

「副砲に劣化ウラン弾を積んだ。貴重な代物だ。兄に黙って調達したからな。お前さえいなければ、苦しまずに済んだものを」

 

結衣の暗い声に武蔵は歯ぎしりした。相手はまだ隠し玉を持っていた

 

劣化ウラン弾……タングステン合金弾よりも高い貫通能力を発揮すると言われている砲弾である。結衣は平行世界のアメリカから奪った。中東の紛争地帯に展開している米軍の戦車を攻撃。砲弾を奪ったのだ。都市から離れていた事も合って目撃者も少ない。その場にいた米兵も皆殺しにした

 

「よくも!ぐぁ!」

 

武蔵はそれでも戦おうとしたが、既に火力は失われている。自慢の51cm主砲はひしゃげている

 

「武蔵。お前の力、そしてお前の戦いぶりを認めよう。しかし、哀しいかな。いくら改装しようが、私には勝てない!」

 

『超人計画』である事に加え未来技術を取り入れた結衣は厄介な存在となった。深海棲艦の能力と強力な兵器の前では勝つのは難しい

 

「礼を言うぞ。私をここまで強くしてくれて。この私はここまで強くなった。外洋に出て姫級を始末し下級の深海棲艦を指揮下に置けば、この世界は私の物だ。生温い兄とは違う世界を創る事が出来る」

 

 相手は武蔵を完全に舐めている。後ろから大和が砲撃しようと身構えたが、結衣は向きを変えずに砲塔を向けただけで砲撃した

 

「そんな……この大和がまた……」

 

大破し膝をつく大和を横目で確認した結衣は鼻で笑うと再び武蔵を見据えた

 

「私の手で直接始末してやろう。これで邪魔者は片付く!」

 

 一歩、一歩と武蔵に近づく。武蔵は身構えるが、既に航行能力はほとんどない。だが、まだ手はある

 

(一門はまだ無事だ。近距離から砲撃してやる!)

 

 しかし、それで致命傷を与えるとは思えない。相手は強い。武蔵は覚悟を決めた時、結衣は歩く足を止めた

 

「え?」

 

 武蔵は息を呑んだ。こちらの思惑がばれたのか?いや、結衣は岸の方向を向けている。彼女の目線の先に何かが近づいている。新たな艦娘だろうか?しかし、その者の姿を確認した武蔵は驚いた。時雨が単体で突進している?

 

「やけくそになったか。元はと言えば、あの小娘のせいで計画が狂った。手加減せずに始末してやる!」

 

ハリアーもYak38も弾薬は尽きている。よって、自身が装備している対艦ミサイルを使う事にした。

 

ミサイルが発射される直前、武蔵は結衣に飛びかかった

 

「させるか!」

 

結衣は50,8cm主砲で仕留めようとするが、武蔵が早かった。武蔵は体当たりすると結衣に滅茶苦茶、殴った。その衝撃でミサイルは時雨とは違う方向に飛んで行ってしまった

 

「姑息な手を!」

 

H44と武蔵との間で取っ組み合いが再び始まった。殴り合いが起こった。51cm砲も近距離で叩き込んだが、お返しに50.8cm砲弾による洗礼を受けた

 

そんな中、何かが結衣に刺さる。結衣は武蔵を投げ飛ばすと、首筋に刺さったものを引き抜いた

 

「これは?」

 

結衣もよく知っている。ふぐ毒を詰め込んで艦娘に毒攻撃した時の注射器だ。ビル内から拾ったのか?

 

「何をバカな事を?私に毒は効かない!」

 

体内に入ったが、容器の中は毒だ。時雨は毒攻撃しようとしている

 

「いいだろう!旧日本軍のように神風特攻のように無駄死にしていろ!」

 

 結衣は砲撃で沈めようとしたが、再び誰かが阻止した。大破状態であった大和と戦艦棲姫だった。怪物艤装は咆哮を上げながら拳を振るい、大和も46cm主砲で応戦しようとする。時雨を沈めまいと攻撃したのだ

 

 結衣も立ち向かった2人の攻撃を迎撃した。砲撃、ミサイル、劣化ウラン弾による副砲攻撃で最後の抵抗を根こそぎ奪った

 

 所詮は近づいて来るのは駆逐艦だ。蚊を殺すくらい簡単な作業だ。今までは運だけで生き残ってきたようなものだ

 

独自に設計したH44が負ける訳がない

 

再び時雨は何かを撃って来た。薬品入りの注射器は艤装に当たらず皮膚に刺さった。しっかりと狙ったのだろう

 

「死ね、時雨!」

 

駆逐艦の主砲の砲撃の後に巨大な主砲の砲撃音が鳴り響く。巨大な水柱が立ち、時雨の姿が消える

 

「時雨!貴様、よくも!」

 

時雨は沈んだ。武蔵は激昂して無理矢理立ち上がる臨戦態勢を取った。だが、武蔵は信じられない光景を目にした

 

「ギャアアァァ!」

 

結衣はおぞましい悲鳴を上げていた。左腕が無くなっている?駆逐艦の主砲で持っていかれたのか?

 

「な、何だ?これは!?」

 

 結衣は何が起こったか分からない。武蔵もだ。何が起きているのか、全く分からない。武蔵の自慢の主砲でもビクともしなかった相手が、駆逐艦の攻撃が効いて悲鳴を上げている?

 

「驚くことはないよ。これも『超人計画』の一環だから」

 

 皆が混乱している時に、その疑問に答える者がいた。武蔵は驚愕した。時雨が生きている!あの砲撃は外れたんだ!ただ、水柱が大きすぎて消えたように見えただけだ

 

「な、何?」

 

結衣は手を抑えながら時雨を睨んだ。結衣の表情は、焦りが浮かんでいる

 

「僕を拷問している時に言ったじゃないか。『深海棲艦の力を人間にも使えないかと試行錯誤に研究していた』って」

 

時雨は淡々と話している

 

「『深海棲艦の力を自身の肉体に取り込み、その力を使って支配しようと企んでいた』……だけど、全員がそうじゃなかった。提督の先祖も危険性を認識していた。そして8代目は、特定の深海棲艦が人になる事が出来る薬を開発した」

 

「……!」

 

 結衣は驚愕した。あれは洗脳するために吹き込んだ嘘だ。確かに駆逐古鬼に対して使用したと書いてあったが

 

……まさか

 

「駆逐古鬼は人間になったんじゃない。艦娘になった。昔はそんな言葉なんて無かった。駆逐古鬼は艦娘になった日から死ぬまでの出来事を覚えていない。建造ユニット初日に深海棲艦化した吹雪が出て来た。解体して建造した際には、そんな事は覚えていなかった。艦娘になるとどういう訳か記憶も肉体も一新されるんだ」

 

 結衣は時雨が何をしたのか分かった。最初の毒攻撃は油断させるため。本当の目的は相手を油断させるため

 

「深海棲艦と艦娘はコインの表裏といったのは、君だよ。僕達は人間ですらないかも知れない。だけど、君も同じ。だから、君を元に戻す。本来なら毒なんてないものだけど」

 

 結衣はギョッとした。空を飛んでいたハリアーとYak-38が木の葉のように落ちていく。いや、結衣の艤装も様子がおかしい

 

艤装は見る見る内に赤く錆び初め、一部は重さに耐え切れず海中に落ちていく

 

「君は劇薬を使った。進化のサイクルを早めたお蔭で深海棲艦でも艦娘でもなくなった。だから、無害に等しい薬でも君にとっては劇薬なんだ。強力な力を手にしたけど、艦娘どころか人間に戻れない」

 

 時雨が思いついたのは、偶然だった。いや、これまでの経験を思い出した事もあるだろう。それとも、アカシックレコードでこういう光景を見たかもしれない。真相はどうでも良かった。敵が弱っているのだから

 

「妙に思ったんだ。君が深海棲艦以上の力を持っていると同時に艦娘に似たような能力まで持っているから。劇薬を使わなかったら、こんな事にならなかっただろうね」

 

 冷たく言う時雨に結衣は怒り狂っていた。『超人計画』は進化のサイクルを早めるもの。究極にまで発達させた生命体は、既に怪物となっていた。そのため、解毒剤ともいえる薬品に対しては拒絶反応を起こしたのだ。そのため、本人の身体だけでなく、艤装まで及んでしまった

 

「もう君は最強ではない。僕の攻撃を食らったら君は死ぬ」

 

時雨が砲塔を向けても結衣は逃げもしない。今は怒り一杯で冷静さを欠けていた

 

「し……時雨ー!」

 

怨念のような怒り声に時雨は怯まない。これで倒せる。確実に倒せる!

 

しかし、彼女は気付かない。時雨も変化している事に

 

*1
実は戦艦・巡洋艦と航空母艦を合体させた艦の計画や研究は何処の国でも行われいてた時期があった。例えば、ドイツの大西洋作戦方航空巡洋艦、イギリスのライオン級改装航空戦艦案、アメリカの航空戦艦試案、ソ連の10581号計画艦など。第2次世界大戦前には、三段飛行甲板時代の赤城に20センチ連装砲でははく36センチ砲乗っけたような「航空戦艦」「戦艦空母」が、各国で構想されていた事も

*2
航空戦艦が伊勢型航空戦艦以外実現出来なかった理由は、排水量の割には戦艦・巡洋艦としては火力が足りない、空母としては搭載機が少なすぎという中途半端な代物なので物にはならないなど多数のデメリットが存在するからである。まあ、あまり掘り下げてしまうと伊勢や日向どころか扶桑山城、最上達まで被害が及ぶためここではこれ以上は言わない。伊勢や日向の航空戦艦も史実では実戦機を搭載して「戦艦空母」として実戦運用されたことは一度もないため実力は不明である(航戦や航巡の艦娘にはナイショだ)

*3
超大和型戦艦の装甲はどうなっているか?実は分からない。というのも当時の資料も残っていないため不明である。一説には51cm主砲弾での耐えられるよう設計する予定だったが、余りにも分厚すぎて一枚板で成形できず、二枚重ねにする……というものである。武蔵改二も装甲値が増えているため、それにちかいような扱いだろう

*4
例えば22号対水上電探では、当初は実戦で使えるレベルではなく、実用化出来たのはレイテ沖海戦直前だったとの事。レイテ沖海戦では、射撃レーダーとしても使用しており、戦艦大和を始め金剛や榛名などがレーダー射撃を実施している




おまけ
提督「あれが武蔵改二の強さ」
不知火「流石、大和型戦艦です」
提督「ああ、これで当面は安心だ」
吹雪「安心って?」
提督「深海棲艦以外の敵とも戦えるって事だ。宇宙人であるプレデターや殺人ロボットであるT-1000にも戦えるから安心だ」
武蔵『提督、私は筋肉モリモリマッチョマンの変態ではないぞ!』

※艦これ漫画において大和は『大和ホテル』と弄られるのに対して武蔵は能筋扱いである。ある漫画だと鉄球を粘土のように削ったり、駆逐艦娘に筋トレをさせたり……

いよいよこの戦いのラストが見えてきました

時雨は結衣の異常な進化に気付きます。自分自身が改二である事もあるのでしょう。お蔭で形勢が逆転出来ました

次回は――

おまけ
Q、世界はどうなっているか?

A、欧州は深海棲艦の猛攻を受けて荒廃、アジアとロシアは内戦勃発、アフリカと中東とオーストラリアは不明

アメリカはどうなっているか?
マグロを食っているジラが上陸しました
ハリウッド版ゴジラが上陸しました
ハリウッド版キングギドラが上陸しました
ハリウッド版ラドンが上陸しました
ゴジラアースが上陸しました
メカゴジラがバーチャル世界から現実世界へ抜け出してきました(レディプレイヤーより)
巨大な宇宙船が飛来して来ました(インディペンデンスデイより)
ロキがやって来ました(マーベルより)
サノスがやって来て今にも指パッチンしそうです

アメリカ「海外に軍隊を派遣している場合じゃねー!」

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