時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

119 / 120
金剛の改二丙実装間近ですね。既にケッコンカッコカリやっているのでレベルは問題ないです
エイプリルフールでは無かった!
そうと分かればランカー報酬である35.6cm連装砲改二を入手出来なかった事が悔やまれる
ランカー報酬を貰うために必要な戦果を取得するのに大変なんですよね
……まあ、改装すれば35.6cm連装砲改二を持って来る可能性もあるかもしれませんが……


第119話 同じ存在

「提督……あんな行為して大丈夫なのですか?」

 

「別に俺達の上司でもなければ、指揮下でもない。印象は悪いかも知れないが、同時にあいつらの本性も見えただろう」

 

 次の日、鎮守府では会議が行われた。今後の作戦にてどうするかである。集まったのは長門と陸奥、鳥海と摩耶、赤城と加賀、大淀と矢矧に時雨と夕立である。今までは実戦経験が豊富であった綾波だったが、今では時雨に交代した。古参だからである。時雨は申し訳なさそうに謝ったが、本人は気にはしていない。

 

「皆、唖然としていたわよ」

 

「そうか……寧ろ、テレビが壊されているのか心配だったぞ」

 

 国会中継の件で鎮守府に帰って来て早々、出迎えに来た艦娘から質問攻めにあった。提督は何とかして落ち着かせ寮に戻らせたが

 

テレビ中継されていたのだから、当然艦娘も見ている

 

野党議員の過激な発言には怒っていたが、提督の予想外の対応に唖然としていた

 

だから、大淀はどう反応していいのか、分からない

 

「何であの議員は、露骨に菅野さんという人を毛嫌いしていたんだ?」

 

「何……艦娘くらいで嫌うのなら、他国の人や他所の人種も付き合える訳がない。アイヌですらあの反応だ。こちらが説得しても無駄だ」

 

提督の答えに長門は納得はしない。こういった事は、まず無くならない

 

プライドが高いのか、それとも生理的に嫌うのか?

 

ただ、どちらにしても深海棲艦との戦いを知らない人であるのは間違いない

 

「第二次世界大戦を経験した記憶があるならある程度は分かると思うぞ」

 

「今は人類同士がいがみ合う場合ではないというのに」

 

「深海棲艦との戦いは海上戦がほとんどだからな」

 

深海棲艦は『艦だった頃の世界』と違って日本侵略は考えていない。あくまで海域の占領。一定範囲の小さな島なら上陸は出来るが、広い面積を持つ島は無理だ

 

「まあ、あの一件で親父から怒られたが、想定内だから問題ない」

 

「処罰は?」

 

「反省文だ。もう書いて出した。……本題に入ろう。深海棲艦の動きだ。空襲を行った敵だが、戦艦水鬼は何かをやる」

 

提督の言葉に皆は黙った。反省文を一晩で書いたのも凄いが、今は言わない方がいい

 

「敵は艦隊決戦を挑むのだろうか?」

 

「だとしても驚きはしない。過去に何度もあった。正々堂々とまではいかないが、強力な艦隊を編成して日本から離れた海域に出現する。それも、海上航路に現れる。こちらを誘っているんだよ」

 

長門は期待を込めていたが、提督は苦笑いした。艦隊決戦と聞けば、戦艦の出番はあるからだ

 

「だから、どこに出るか大方予想は出来る」

 

「シーレーンは守らないといけませんが、上からは艦隊を殲滅しろと言って来ています」

 

「……やれるものならとっくにやっている。ただ、艦娘が出来る範囲は限られているのが現状だからな」

 

大淀の指摘に提督頭を掻いた

 

シーレーン防衛は、常に一隻一隻のタンカーや商船に護衛つけてたりはしてない

 

 

 

 やり方は、色々な方法がある。今はどっか特定の国と戦争してて、その国がタンカーを攻撃してくるような状況とは違う

 

 

 

 深海棲艦の艦隊が出現したら、ある地域に警備と深海棲艦対策に当たっているのが現状である

 

派遣も何回かあったとのことだ。時には、ヨーロッパまで遠征したこともあるという

 

「でも、深海棲艦は通商破壊をあまりしないんですね」

 

「……別に日本を滅亡させるためだけ存在している訳でもないからな。縄張りに侵入する相手を無差別に攻撃しているから、こっちが負担になる事には変わりない」

 

 深海棲艦は縄張りを張っている。そのため、深海棲艦が出現しない海域に航路を持っている

 

 しかし、縄張りはいつも同じとは限らない。気まぐれなのか、それとも戦略なのか、海域にちょっかいを出している

 

「何とか航路は確保しているが、油断ならない」

 

「でも、守りながら深海棲艦を殲滅って難しくない?」

 

「……そこが頭の痛いところだ」

 

時雨の指摘に提督は顔をしかめた

 

海域を開放しても、深海棲艦は隙を見て奪い返そうとしている

 

会議は長い間、行われた。今のところは現状維持という方針になった

 

 

 

 

 

今週の秘書艦は時雨である。提督の仕事は沢山あるが、書類整理が多い

 

時雨も提督の仕事を手伝いをし、終わったのは、日が傾いていっていた

 

「お疲れ様」

 

「書類はもう見たくないな」

 

提督は不満そうだが、いつもの事なので気にはしていない

 

テレビではニュースをやっていたが、ある場面を見て時雨は驚いた

 

「提督、博士が映っているよ!」

 

「本当か!……全く、有名人になって」

 

提督の父である博士は海軍中将である。そして、艦娘の生みの親でもある。本人はニュースアナウンサーと対面しており、インタビューを受けていた

 

『……今回は艦娘を産んだという海軍中将をお越しいただきました。降格処分を受けましたが、浦田重工業の反乱の一件で汚名返上になりました。本当に1人で成功させたのですか?』

 

『そうです。当時の私は、何かあるという疑惑と研究を独自でやっていた事もあり、艦娘計画を成功させました。軍でも一部の集団から支援がありました。援助が無ければ浦田重工業の悪行を止める事は出来なかった』

 

博士の回答を聞いて提督と時雨は苦笑いした。本当は違うのだが、あまり本当の事を話すのは不味い。時雨のタイムスリップという事実を世の中に公表してはいけない

 

『元は技官ですが、海外に行って科学者と出会ったりしていたらしいですが、中将の中では、若かった時から艦娘計画という概念は出来上がっていたのですか』

 

『いいえ、当時の私は私の趣味のようなものです。世の中はまだ知らない事がある。思わぬ発見があるかもしれないという事から独自に研究を行った。お蔭でこのような結果に繋がりました』

 

 博士は淡々と答えていた。『超人計画』の由来は博士が長年、試行錯誤に研究で生み出された産物となっている。大昔に深海棲艦が現れ先祖と接触し生まれた技術という事は、公になっていない。と言うより、証拠もないため、噂はあるものの証拠は無きに等しかったためほとんどの者は本気にしなかった。証拠も証言も出鱈目である。提督もあまり本気にしなかった。先祖代々の言い伝えでも本当かどうか分からないのである。浦田重工業が見つけた文献も南方棲戦鬼の砲撃によって失われたため残っていない

 

 唯一の証言は駆逐古鬼と重巡棲姫だけだが、本人は何とも思っていないらしい。少なくとも怨みはないようだ。先の空襲も報復攻撃ではない事ははっきりしている。2人は何処へいるのだろう?

 

『四年前の浦田重工業の反乱についてどうお考えですか?』

 

『実に悲しい出来事だったと言わざるを得ません。日本を発展させた大企業がこんな形になるとは』

 

『浦田重工業がもしあのような事件を起こさなければ、艦娘と浦田重工業は手を結んで深海棲艦と戦っていたでしょうか?』

 

『一時であると考えます。仮にそうだとしても、共通の敵がいたため休戦したに過ぎません。深海棲艦がこの世から完全に駆逐されれば、浦田重工業は艦娘を排除しようとしていた。次の戦いが起こるだけです』

 

 予想外の答えだったのだろう。アナウンサーは、目をぱちくりした。答えは素晴らしい事に成っているという答えを期待していたに違いない

 

 しかし共に戦った仲でも、いざ戦いを終われば友は敵になる事はあり得る事象である。人類の歴史でもよくある事だ

 

だが、アナウンサーはここまで頭が回らなかった

 

『中将は、艦娘が現れた事で社会に大きな影響はあるとお思いですか?数年後、人類と艦娘との間で戦争が起こるのではないかと言う懸念があるという声もありますが』

 

『馬鹿馬鹿しいにも程がある。外国人が日本に来日すれば人類が消滅すると?その者がスパイやテロリストならともかく、彼女達は一般人です。我々は野蛮人ではないのですから』

 

『艦娘や深海棲艦が現れた事で人類の存続が危ぶまれていると言う声もあります』

 

『というと?』

 

『艦娘がどのような存在かは知りませんが、我々人類においても未知の領域です。何か不味い事でも起こるのだろうと思います。デメリットもあるはずです』

 

博士は顎に手をやり沈黙したが、すぐに回答をした

 

『深海棲艦はともかく、艦娘が現れたからと言って人類の存続になるか、は考え過ぎませんか?そもそも、人権というのは何か?君は知っているのか?』

 

『それは――』

 

博士は段々とため口になって来ている。呆れていると言う風に見える

 

『最近、国連はある決議を行った。世界人権宣言というのを。条文では『全ての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である』と。宗教も文明も価値観も人種もバックグラウンドもなにもかも違う人たちが集まり議論し合意した、人類史上類を見ない宣言だ。その中で人類の定義はない。なぜ、いけないのか?そこが気になるのが?』

 

『それでは、中将は人間を作っている事に成ります。これは倫理に反するのでは?命の冒涜ではないかと言われています』

 

『それは一個人の意見かね?『人間の両親の交配により懐胎した母親の胎内で成長し出生した生命体が人間である』という定義を作らないといけないのか?』

 

『そうとは言っていません。ただ、何かしら不味い事でも起きるかも知れないと言いたいのです。奴隷人間の生産という修羅道への転落するかも知れないという意見もあります』

 

『それは知っておる。しかし、それは文明が衰退した時か人類が衰退した時だと私は考える』

 

博士はアナウンサーが困惑した表情をしていたので、再び口を開く

 

『艦娘を差別や区別することを是とする理論的根拠は存在しないと考えています。寧ろ、なぜそうするのか聞いて見たい。艦娘には別の扱いをしてもよいと考えている人は、他の人と同じように考え、人格をもつ人の臓器を無理矢理取ったり、実験体にしたりしてもよいと、本気で考えているのか?人類が多年の努力により克服し、今なお克服するための努力を続けている「差別」。新たな差別を生むことを是とする論理的な根拠を聞いてみたい』

 

『い、いえ……それは……』

 

予想外の答えにアナウンサーはしどろもどろだ。ここまで話すとは思っていなかったのだ

 

『人権や人類の見方は国によって違う。一昔前のアメリカでは公然と差別がおこなわれ、差別立法が当たり前のように成立していた。日本でも、治療法はあるのにハンセン病患者はいわれなく人権を大きく制限されていた。皮肉にも浦田重工業が治療法を持って来たお蔭で解消された。自分の子を虐待し愛情を掛けない家庭もいる。艦娘だけが特別ではない。寧ろ、自分達の歴史を振り返ってみてはどうかね?』

 

『しかし、艦娘は兵器に近い存在なのですよ?暴走したらどう責任を?』

 

『君には子どもはおるかね?私の息子は、反発して家出をした時期があったぞ?しかし、犯罪は犯さずに立派に成長して軍人になったわい。自由意志は誰にも奪えん。これは生命体共通の事例だ。全ての人間が善良な市民ではあるまい?暴走というが、その例えはただの犯罪者ではないかね?普通は警察を呼ぶじゃろう?君には常識が無いのかね?』

 

 博士の呆れ顔にアナウンサーは顔面蒼白していた。暫くしてコマーシャルが流れたが、提督も時雨も唖然として画面を見つめていた

 

「提督の父親って変わらないね」

 

「色んな所から学んで知識を蓄えた為、思いもよらない考えが沸くんだ。だが……全く、職場や家だけでなく、マスメディアの人間まで言うなんてな。話が噛み合わない……いや、そもそも相手の考えが幼稚かも知れんな」

 

提督も呆れ果てていた。天才であるのは確かなのだが

 

 艦娘でも博士の考えや理論を分かる者は明石くらいだ。夕張も何とかついているが、それでも限界がある。そのため工廠には、専門書がずらりと並んでいる

 

海外艦からは、図書館なのか?と間違われたらしい

 

「それはそうと、近い内に大作戦が発令される」

 

「いつなの?」

 

「もう、そろそろだ。ただ……お前はどうなのか?」

 

時雨は提督を見た。大作戦……何だろう?

 

「もう、機密にする必要はないな。フィリピン周辺海域にて深海棲艦の大艦隊が度々、目撃されている。 しかも、敵はそこを拠点としているらしい」

 

フィリピン周辺海域……時雨は息を呑んだ

 

知っている……あの海域の事を……。『艦だった頃の世界』ではあの戦いがあった

 

「レイテ沖海戦……」

 

「向こうではそう呼ぶらしいな。今回の敵は深海棲艦だが」

 

提督は、時雨に聞いた

 

「お前はどうする?」

 

「え?」

 

「お前は再び艤装を装着して戦えるのか?」

 

提督の問いに時雨は直ぐに答えられなかった

 

 軍医からは、戦闘ストレス反応の症状は収まったと言われた。暫くの間はドクターストップがかかっていたが、今は違う

 

 演習や遠征でも無茶な戦闘は行っていない。香取や鹿島も戦闘に出しても問題ないと言われた

 

「提督……僕に命令しないの?」

 

時雨は提督の問いに疑問を持った。命令ではない?

 

「親父も言っていただろ?自由意思は誰にも奪えない、と。今度の大作戦はちょっと訳があってな。参加の有無を聞くことにしたんだ」

 

「それだったら、全員参加しないとなったらどうするの?」

 

「いや、分かるはずだ。フィリピン海域にて、再び戦艦水鬼が確認された。四年前に助けた戦艦棲姫だ。奴はこちらを誘っている。『艦だった頃の世界』の戦場を再現している」

 

時雨は戦艦水鬼が撤退する際に残した言葉を思い出した。戦いの場を用意する、と

 

「お前はどうする?受けて立つか?」

 

「それは……」

 

 

 

提督は時雨の答えを待っていた。彼の頭に、自分の父との話し合いを思い出していた

 

数日前……

 

 国会議事堂の証人喚問へ行く直前、数人の艦娘と博士の会議があった。参加した艦娘は、川内姉妹三人と萩風、扶桑と山城に瑞鶴にアイオワである。502部隊の将校と軍曹も加わっていた。内容は伊勢型戦艦の大改修予定ともう一つ気になる事……

 

「伊勢型戦艦が戦闘空母になる可能性は分かった。……まさか、そのために集めたのか?」

 

「……違う。真剣な話じゃ」

 

父は首を振りながら封筒から写真を出す

 

「深海棲艦において奇妙な現象も起こっておる。『深海鶴棲姫』だったか。あの艦娘……瑞鶴に似ているだろ?」

 

「俺は直接目で見ていないが、キ109の搭乗妖精は写真を取ってくれた。……確かに瑞鶴に似ていると言って来た」

 

時雨達を救うために陸攻を刺し向けた際、敵艦を撮影するようにと伝えたのだ

 

写っていたのは確かに瑞鶴に似た深海棲艦だ

 

「伊勢達に改修案のために試験航海していた途中、奴と出会った。駆逐水鬼と名乗っておったが」

 

博士は写真を机の上に置き、皆に見えるようにした。見たこともない姿形である事から、深海棲艦の姫級だろう

 

しかし、深海棲艦にしては首をかしげるものである。まるで艦娘のように見える

 

「安心しろ。結衣のような存在ではないわい。……遭遇した伊勢日向と鈴谷熊野は交戦し撃沈に成功した。……しかし翌日、海の上に漂流している者がいると通報があって救援に向かった」

 

「……まさか、萩風だった?」

 

冗談だろうと思ったが、父の表情は変わらない

 

「漂流する前の出来事は覚えている?」

 

「いいえ、覚えていません。艦娘の存在も『知っている』だけで、なぜこうなったのか……」

 

しどろもどろに話す萩風。しかし、俺はまさかと思い親父に聞いた

 

「沈めた深海棲艦が艦娘になったのか?……だが、それはまだ分からないと言っていただろ?」

 

 実は深海棲艦が艦娘になって現れたケースは珍しくない。神通と那珂、阿賀野、春雨は東京湾沖で発見された。恐らく、軽巡棲姫らが何らかの方法で艦娘になったという。本人も漂流していた以前の記憶は無かった。しかし、自分達の存在は認識しているという

 

念のために調べたが、特に問題もなかったこともあり、部隊に編入させた

 

「そうじゃ。だが、無視できなくなった。恐らくじゃが、何らかの拍子で艦娘は深海棲艦に、艦娘が深海棲艦になる事もある……常に発動するとは限らん」

 

「ああ。だが、深海棲艦は同じ奴を補充して来る。しかも、そいつを沈めても現れない」

 

 提督も薄々と感づいていた。軽巡棲姫らはなんらかの方法で艦娘になったらしい。だが、決戦が終わって数か月後には軽巡棲鬼や駆逐棲姫は確認されている。沈めると艦娘が出現するような事象は無かった

 

「何か知っているのか?」

 

「あくまで説じゃ。……東京湾での決戦においては結衣が関係していたらしい。8代目が製造した艦娘になる薬品。その影響がテレパシーを通じて軽巡棲姫らに影響を受けたのじゃろう。操っておったからその影響じゃろう」

 

 親父は淡々と説明した。四年前の決戦は衝撃的な事件だったため、神通達の現象は半ばほったらかしの状態だった。しかし、身体の変化は無く、他の艦娘と同様に改装も出来た事から問題ないだろうとのことだ

 

「明石は艦娘が撃沈されたら深海棲艦になるとこっそりと教えられたが、俺は疑問だ。何しろ、深海棲艦化した艦娘はサラトガだけだ。……勿論、撃沈させていない。『失われてた未来』では撃沈した艦娘が深海棲艦した記録は無い」

 

 尤も、浦田重工業や浦田結衣のせいでそれすら許されなかったと言えばそれまでだ。『失われた未来』では結衣は深海棲艦を掌握していたのだから

 

「それに私は沈んでいないのよ。なのに、私とそっくりな深海棲艦がいるなんて」

 

「2年前の作戦で、軽巡棲姫と接触した時は、私の戦い方と似ていました。姉さんは分身ではないかとからかわれました」

 

瑞鶴と神通は口をそろえていた。彼女達も疑問を持っているのだ

 

「俺達はこんな深海棲艦と出会った。……まるで扶桑山城に似ていたぞ」

 

 軍曹はキャンプに現れた深海棲艦を写した写真を見せた。海岸に歩く2人の深海棲艦。深海棲艦特有の角や爪、艤装を除き、外見は扶桑姉妹と瓜二つである。後に海峡夜棲姫と名付けられたとの事だ

 

「扶桑山城が502部隊とあきつ丸をドッキリするために現れたのなら別ですが」

 

「笑えないぞ。生きた心地なんてしなかったからな」

 

軍曹は苦笑していたが、将校は笑わなかった

 

「だが、深海棲艦は艦娘を真似する必要性はあるのか?嫌がらせのためにやる訳ではあるまい」

 

将校の言いたい事は尤もである。なぜ、似せる必要があるのか?

 

「これも説じゃ。だが、根拠はないため本気にしないで貰いたい」

 

「構いません。教えてくれませんか?」

 

神通は頭を下げた。ここで聞かない訳にもいくまい

 

「艦娘の存在は知っておるな。進化の過程だと。そのため、考えている事は同じじゃろう」

 

「というと?」

 

収斂進化(しゅうれんしんか)を知っておるか?」

 

 

 

 収斂進化とは全く別種の生物が、環境の類似性にあわせて、同じような形に進化する現象である。シャチとサメを見れば分かるように進化の過程は違えど、似たような形状をしている。恐竜時代に生きていた魚竜も、外見はイルカやサメに似ている

 

 見た目がそっくりだから近縁種ないし共通の祖先を持つ存在だと思ったら、遺伝子的には全く別の存在であったという事例もある

 

「二人の人間が、時にまったくおなじ発明を思いつくこともある。その事から似ているのだろう」

 

「しかし、サラトガの件はどうなる?」

 

 サラトガはOSSの暴走を止めるためにアイオワと出撃していたが、ビキニ岩礁にてどういう訳か深海棲艦となった。前触れなしである。アイオワも驚いていたのだ。『平行世界』のビキニ岩礁では核実験が行われていたのと関係があるのか?長門、プリンツオイゲン、そして酒匂はそのような事は起こらなかったが……

深海海月姫になった期間のサラトガは何も覚えていないと言う

 

「艦娘の建造技術は深海棲艦を基にしておる。恐らく、核となる元素に影響したのじゃろう。サラトガの場合、本人の記憶を掘り起こされ暴走してしまった」

 

「……」

 

 親父は推測を述べていたが、俺は考えていた。サラトガの件は見てはいない。だが、深海化した吹雪は見た。吹雪自身は覚えていない

 

「人間性を失えば艦娘は深海棲艦になると?」

 

「かどうかはともかく、そうでない場合が気になるのぉ」

 

実際に瑞鶴と深海鶴棲姫は対面し交戦したが、特に変化はない

 

(駆逐古鬼は何の艦娘になったんだ?)

 

 ふと、提督はそんなことを考えていた。人の生活に興味を持ち、8代目の協力も合って人になった

 

(姿形はまるで神風型に似ている)

 

勿論、似ているだけで関連性があるわけでもない

 

しかし……神風が建造された当初、こんなことがあった

 

『待たせたわね、司令官。神風型駆逐艦、一番艦、神風。推参で……』

 

 建造ユニットから出た時、俺の顔を見るな否や固まった。しかも、マジマジと見ていたのだ

 

『どうした?』

 

『すみません……その……何処かでお会いしました?』

 

 神風の最初のやり取りはこれだ。秘書艦であった金剛も明石も工廠妖精も不思議がっていたが……

 

 

 

(いや、まさかな……)

 

 会議の中、提督はこの事を胸にしまった。歴史によると蒙古襲来にて神風が吹いたという

 

その神風というのは台風ではなく……

 

 

 

 

 提督は時雨の答えを聞くまで先日の出来事をちらりとかすめたのはそのような事だった

 

時雨は思った。戦艦水鬼は何らかの方法で太平洋戦争を知っている

 

フィリピン海域に現れたということは……

 

「そうだね…進むしかない。ここで立ち止まっては駄目だ。止まない雨は、ない……ね」

 

 時雨は作戦に参加する決意をした。深海棲艦は未だにいる。誰かがやらないといけない。そして、密かに期待していた。敵が用意した罠かも知れない。しかし、僕たちが決着をつけないといけない。自分達はへこたれるような軟弱者ではないと

 

特にシーレーンを守らないといけない。他の国が守ってくれる訳でもない

 

勿論、シーレーン防衛は、軍の仕事の一環なのだが

 

「そうか……なら、準備しないとな」

 

 

 

 提督は夕食を食べ終えた後、私室に戻った。最近は残業が多くて寝不足だ。周りから寝るよう言われたのだ。指揮官が健康不良だと問題がある

 

 勿論、早く寝る気である。大作戦へ向けて計画を練らないといけない。しかし、ベットに寝る前に彼は机から書類を取り出した

 

 それは彼の父である博士が寄越した論文である。勿論、彼は専門家でもないためそう簡単には分からない。しかし、この論文だけは理解するために彼は膨大な時間を要した

 

 いや、論文に書かれているほとんどは科学的な事象である。問題は、深海棲艦と艦娘についてである

 

『……深海棲艦はどのように誕生したのか分からない。しかし、確かな事は海で不自由もなく生活するために進化したのではないかと考える。つまり、深海棲艦は我々で言う軍団。特に駆逐イ級から空母ヲ級などの下級深海棲艦は人工の兵士とも言える。指揮官は鬼・姫級である事から組織的な存在でもある。深海棲艦もまた……海で戦う者である艦娘とも言える存在。艦娘計画も超人計画も深海棲艦を参考にして生み出された計画である。つまり、深海棲艦と艦娘は〝同じ存在"である。近年において、遺伝子の研究が進んでおり、艦娘と深海棲艦、そして人類に共通の遺伝子情報があるという。だが、深海棲艦も艦娘も人類も生命体。生命体である以上、それぞれに心があり、自我があるのも当然。よって、自我や欲望などの感情が沸くのも自然の摂理である。つまり、世間の一部で言う人類の反逆の懸念は間違っている。人類の歴史でも弾圧されれば反乱が起こるのは当然であり……』

 

 提督は読むのを止めた。これは非公開のものである。戦時中の事もあり今の段階で発表されれば混乱するだろう。特にこの状況では……

 

(親父に『ワシはやるべきことをやっただけだ。お前も好きにしろ』と言われた。この世に正しいものはない。なら、自分の価値観に従って行動すればいいだけ。それも、後になって後悔がないように)

 

 一歩間違えば、折角救った世界は壊れてしまう。いや、平行世界の歴史に足を取られて堂々巡りを繰り返す事になるだろう。深海棲艦がいるのも拘わらず、内紛や虐待などの内ゲバをしていては、何も教訓を得られなかった事に成る。時雨の行動や『失われた未来』の警鐘も無意味となる

 

 時雨……いや、彼女達に本当の事は言えるはずがない。深海棲艦と艦娘が『同じ存在』などと言えない

 

 だが、提督の中では科学的な見解について、納得はしている。人間でも似たような事をしている。遺伝子は同じだろうが、皮膚の色や民族の違いなどの違いだけで差別や紛争などを繰り返していた。ならば、艦娘も深海棲艦も神話に出て来るような特別な存在でば無いのではなかろうかと。一方で、深海棲艦と艦娘が『同じ存在』である事には、納得がいかないでいる

 

 悪魔が元々は天使だったにしろ、忌む存在には違いない*1。だからこそ、この世界にやってきた者を闇へ追放出来るのも彼女達しかいないのだ。一見、矛盾しているかも知れないが、世の中は白黒とはっきり分けない方がいい

 

しかし、これだけは言える

 

 希望を捨てない事。それが艦娘の使命。時雨もその使命のために命懸けでタイムスリップして来たのだ

 

時雨や『失われた未来』の自分達の使命が無駄ではなかったと証明するために……

*1
この場合は堕天使の事を指す。堕天使の中でも有名な元天使といえばルシファー。悪魔サタンである




おまけ
深海鶴棲姫『我は汝 汝は我』

瑞鶴「それは言っちゃダメ(ペルソナのネタ……)!」

劇場版において深海棲艦化は「艦娘は撃沈されると深海棲艦となり、深海棲艦が撃沈されると艦娘になる場合がある」と加賀が説明していました

ただ、深海吹雪と吹雪がばったりと出会ったりと、奇妙な現象も起こるようです

深海棲艦の正体は公式は不明です。艦娘と表裏一体説や乗組員亡霊説などありますが、一番好きな説は水の中で独自に進化した生命体。水中生命体ですね(持論)
だって、怨霊の塊であるなら、夏になると水着でバカンスしてたり新春で着飾ってたりなどとする事はないと思う(違う、そうじゃない)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。