時雨の特殊任務   作:雷電Ⅱ

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第15話 過去の提督の決断

ありのままの事を話そう

 

 俺は『あいつ』によって人生を狂わされた。深海棲艦とやらが出現したお蔭で人類は敗北を続けていた。いや、これには語弊が生じる。今のところは帝国海軍と米海軍が謎の侵略者に対して撃破しようとしたが返り討ちにあった。一個艦隊丸々全滅し、海には『駆逐イ級』とやらが人食いサメのようにウヨウヨいる状況だ。ザコだが、こちらの兵器が通用しない。本来ならこれを早急に対処しようと国は動くはずだが、一向に改善される見通しは無い。マスコミは心配無用とばかり強調し、国連がアメリカ軍を主とした多国籍軍で深海棲艦を撃破するような内容ばかりだった。人類団結の証として多数の軍艦が出港するテレビの姿は毎日のように映し出された。まあ、この世界はそんな所だろう。謎の生命体が現れても人類は平穏である

 

 なぜ深海棲艦の話と俺が関係しているかと言えば疑問に思うだろう。実は大いに関係がある。『あいつ』は深海棲艦について研究していたからだ。再び、疑問に思うだろう。深海棲艦が出現したのは1ヶ月前だ。それなのに、『あいつ』は数年前からそのことについて研究していた

 

 深海棲艦が現れる数か月前……いや、トラック島とハワイが奪われ世界に激震が走った日よりも前の話だ。俺は『あいつ』に出会いに行った。昔からよく知っているはずだが、上手く行っていない。完全に見捨てなかったのは、クズではなかっただけ。それだけだ。そんなある日、『あいつ』が自宅の部屋に興味本位で入った事がある。『あいつ』は国の何かの研究をしていたらしいが、その中で論文と写真を見つけた。写真を見た時、俺はゾッとした。何しろそこに写っているのは巨大な砲塔やタコのようなものを被っている黒い女だった。初めは、海外のハロウィンの変わった衣装か映画の撮影に使う衣装だと思ったが、論文には機密の文字と論文にはこの人物の危険性について書かれていたため悪ふざけではないと思った。論文の内容はよく分からなかったが、この国……いや、世界に危機が迫って来るような記述だった。筆跡も『あいつ』の文字だった。これを見た時、俺は『あいつ』が何をしていたのか分かった。それと同時に、この国の嘘が見えた瞬間だった

 

 しばらくして、俺が無断で研究部屋に入った事がばれた。写真付きで。どうやって発覚したかは分からない。あの時、人はいないはず。透明人間でも雇ったのか?結局、口論となり仲が良くなることはなかった。そして、深海棲艦が現れトラック島が奪われた数日後のあの日を忘れた事はない。テレビで『あいつ』が何を研究していた事を。大本営の兵器開発にて『あいつ』が政府高官と軍のトップに対して『艦娘計画』を推し進めた事が明らかになった。しかも、新聞の見出しが『大本営に恥をかかせるために推し進めようとした欠陥計画』と何と人をバカにした記事だった

 

 『艦娘計画』がどんなものかは大まかに理解はしている。しかし、これで謎の生命体である深海棲艦に立ち向かえるのか疑問に思ってしまうものだった。実際に、マスコミはこんなやり方で深海棲艦を倒すやり方は正気ではないと強調した。一方で、大本営は浦田重工業が最新鋭兵器の開発に成功したイージス艦と呼ばれる最新鋭兵器を採用する事に決定した。マスコミも浦田重工業を称える一方、『あいつ』を徹底的に叩いた。俺も被害にあった。学校では四面楚歌。友人も交流がなくなり、陰口を叩かれる。陰湿ないじめも何度かあった。初めは怒ったが、いつまでも手を招いている訳にはいかない。かと言って自暴自棄になっても最悪の結果しか生まないため、何かしら対策するしかない。悪知恵というか、逃げるというか地味な生活を送る事にした。何も気にせず、誰とも話さず黙々と将来のために考える毎日。人が沢山居るのに、孤独とは皮肉なものだ。神は時々、皮肉を用意しているらしい。尤も、俺は神なんて本気で信じた事は無かったが

 

……『あいつ』はやはりクズだった。とんだ疫病神がいたせいで、俺の人生は貧乏くじを引いたものだ。そう思われていたが……

 

 この後は語る必要はないだろう。時雨という少女が俺の前に現れた。少女が未来は滅ぶとかそういう話はどうでも良かった。衝撃だったことは、時雨は艦娘だったという事だ。俺がおかしくなったのか……時雨は海の上をスケートのように走り、おまけに駆逐イ級3つを軽々と倒したのだ。あまりの衝撃で俺は、どうやってアパートまで帰ったのか覚えていない。気がついた時には自室で頭を抱えていた。そんな時、台所から旨そうな匂いが漂った。我に返って立ち上がり台所に急ぐ。あの少女、勝手に食事作っている!

 

 

 

 時雨は素早く艤装を外してギリーケースの中に押し込めると、フラフラと歩く提督を追いかけていった。時雨が提督に話しかけても反応せずにアパートに戻る姿は心配よりも笑いそうになる。時雨や他の艦娘達が見たこともないショックを受けた提督の姿。その姿が新鮮で声を掛けないで観察していた。提督は部屋に戻ると畳に座り込み背は壁にもたれながら頭を抱えていた。時雨は提督が正気に戻るまで待っていたが、中々正気に戻らない。しかし夕方になったため、提督のために夕食を作る事にした。食事当番をした事があるため、鳳翔や伊良湖たちには及ばないものの、料理は出来る。冷蔵庫から勝手に持ち出して料理を始めたが、料理の最中に提督が慌てて入ってきた

 

「あ、提督。正気に戻ったんだね」

 

「戻ったじゃねーよ!何、人の冷蔵庫を漁って勝手に料理作ってんだ?」

 

提督は呆れるように言っていたが、初対面の時みたいに怒ってはいない。と言う事は……

 

「提督!ようやく僕の話を信じたんだね!」

 

「はあ……途方もない話だが……あんな光景を見せられたら信じるしかないな。まさか、誰も倒せなかった駆逐イ級を簡単に倒すとは」

 

色々あって疲れたのか提督はため息をついた。もう時雨に突っかかる事もなくなった

 

「お前は……本当に艦娘なのか?」

 

「うん。提督……過去の君をサポートするよう言われたんだ」

 

時雨は嬉しかった。過去の人でもあっても、提督は提督だ。こうして再び会えたのだから

 

「未来の俺が?すると俺は本当に海軍に入るのか?」

 

「うん。でも、提督も面白いね。僕が深海棲艦を倒した時の顔……提督もあんな顔をするなんて初めて見た」

 

「悪かったな。誰だってお前が海に立って、しかも深海棲艦を倒すのを見たら驚愕するぞ」

 

 提督はこう言ってはいるが、自分達がいた世界では当たり前の事だ。艦娘はまだ存在していないのだから、提督の反応は間違ってはいないかも知れない

 

「もう少ししたら出来るよ。待ってて」

 

 

 

 小さなテーブルに時雨は料理を並べ、2人は食べる。と言っても簡単な料理だ。野菜炒めと味噌汁とご飯。今の提督は、大学生であるから仕方ない

 

「上手いな」

 

「本当!」

 

「ああ、本当だ。それで……俺に何をして欲しいんだ?未来の俺がお前を寄越したとしても、俺は学生だ。軍人ではない。やれる事は限られている」

 

喜ぶのもつかの間、最大の問題が待っていた。まずは過去の提督を説得する事に成功したが、今度は『創造主』について話さないといけない。知っているのは提督だけだ。下手すると、振り出しに戻ってしまう

 

「提督、頼むからさっきみたいに怒らないで。提督に何があったのか知らない。話してもなかったから。ただ時間は限られているんだ。だから、単刀直入に言うよ。僕達を造ったくれた『創造主』。『艦娘計画』を立ち上げた人に会いたんだ」

 

提督は食べる動作を止め、険しい顔になったが、すぐさま顔を横に振った

 

「いや、ダメだ。俺は『あいつ』が未だに――」

 

「提督!頼むよ!」

 

時雨は焦った。焦りは禁物だが、どうしても感情的になってしまう。落ち着いていられなかった。時間は僅かだ

 

「お前には分からないだろう。あいつが何をしたかなんて――」

 

「提督の過去よりも人類の未来の方が一大事だよ!深海棲艦との戦いに敗れ……僕以外は……僕以外の艦娘は沈んでいったんだ!提督も、未来の提督も死んだんだ!」

 

時雨の必死の訴えに提督は青ざめた

 

「俺も死ぬのか?」

 

「見た訳じゃない!でも僕が送り出す直前に深海棲艦が雪崩れ込むのを見たんだ!提督も他の艦娘も僕を守るために命を落として行ったんだ!」

 

 時雨は、次第に涙声になっていた。ここまで来て信用されないなんて、過去の提督は何てバカなんだろう。何を躊躇しているのだろう。証拠も見せたじゃないか!?学生とは言え、反発し過ぎだ。何でこっちの願いを聞き入れて貰えなんだ!時雨はふと思い出すとギリーケースを開け、ある物を引っ張り出し提督に渡した

 

「これは……?」

 

「提督が書いたノートと青葉さんが撮った写真、そして秋雲が描いた絵だよ。頼むから僕を『創造主』に連れていって!」

 

 提督はノートを何気に開いたが、途端に険しい顔つきになった。時折、何かつぶやいていたが、熱心に読み始めた。何が書かれてあるかは時雨は知らないが、戦闘記録か何かだろう。廊下で待っていた間の時は、ギリーケースの中のノートは読む気にもなれなかった。ただ提督に会いたいという気持ちが強かったため、未来の提督が残したノートを読む気力はなかったからだ。提督は食べ終わってもひたすらノートを読んでいた。後片付けをし、シャワーを借りて浴び終わっても提督はひたすらノートを読み没頭していた。時雨が声をかけたが、もう寝ろと言われた

 

(やっぱり、提督を説得させるのは難しいかも)

 

 人を信用させることは難しい。どんなに正論を振りかざしても相手に伝わらなければ意味がない。ただ反発するだけだ。提督が時雨を信じたのは艦娘である事だ。それ以上の事は出来なかった

 

(僕は、ここにいても大丈夫なのかな…)

 

 

 

 

 

 どれくらい時間が経ったのだろう。ふと目を覚めると部屋に提督がいない。提督の名を読んでも返事がなかった。遠くから音が聞こえる

 

……爆発音とジェット機の轟音が……

 

(そんな……)

 

 時雨は慌てて艤装を持ちだしアパートを出ると、声を失った。街が燃えているのだ。炎が夜を照らし、煙は月を覆っている。あのジェット機が飛び回り、街を無差別に爆撃している。海の方向からミサイルが飛翔し、遥か遠くの街へ物凄いスピードで飛んでいく

 

「嘘……何で……。まだこんな事は起こらない……はず……」

 

 時雨はうわごとのように呻いた。何が起こったのか分からなかった。確かなのは、深海棲艦が最新鋭兵器を我が物とし、世界中の国々を攻撃している。しかし、まだそんな日は来ていない。……来ていないはずだ!

 

「見ツケタ」

 

ゾクっとした声が聞こえた。時雨が振り返るよりも早く、強い力が時雨を押し倒し床に押さえつけられた。時雨は見た。あの戦艦ル級改flagshipだ!

 

「な、何で――」

 

「コノ時代マデ追ッテ来タンダ。部下ヲ連レテ」

 

時雨は奈落の闇に突き落とされたような気持ちになった。まさかタイムマシンが奪われたのか!?それとも、復元されてしまったのか!?

 

疑問が渦巻く中、砲塔がこちらを向いた

 

「終ワリダ」

 

「あああ…うわああぁぁぁ!」

 

時雨が悲鳴を上げた。もう終わりだ。任務は失敗した。未来の提督の足掻きも水の泡となった。もうあいつらに勝てない。姉妹や仲間達を奪ったという怒りや復讐心よりも恐怖と絶望が時雨を覆い尽くした。そんな中、何処からか頭の中で強い声が響いた

 

 

 

「あああ…うわああぁぁぁ!」

 

「おい、しっかりしろ!夜中に大声出したら近所迷惑だ!」

 

時雨は目が覚め、勢いよく起き上がった。息は荒く、体中冷や汗が流れていた

 

「提督、早く逃げないと!あいつが!深海棲艦がこの時代まで追ってきた!」

 

「落ち着け!まだ世界は崩壊していない!!」

 

肩を抑えられ、落ち着かせようとする提督。なぜ彼はこんなにも呑気に自分を気にしているのだろう!聞こえないのか、あの爆音……

 

「あれ?夢?」

 

爆音も爆発音も聞こえない。それどころか、戦艦ル級改flagshipも見当たらない。逃げる事に成功したとは思えない

 

「ああ、夢だ。もう大丈夫だ。暫くは安全だ」

 

「え?」

 

「お前の話を完全に信じなくてすまなかった。さっきまでは『あいつ』からの悪戯だと思った」

 

 時雨は見た。彼の顔に浮かんでいる表情は厳しいものではなく、柔らかく優しいものであった。微かではあるが、提督の面影が見えたような気がした。人を信じないという感じには全く見えず、時雨を真っすぐ見つめている

 

「明日、連れて行ってやる。事態は深刻だと言う事は認識した。ただ期待はするなよ」

 

時雨は涙を流した。ようやく……ようやく彼は現状を認識した。あのノートは過去の提督を説得出来る事が書かれているのだろう。そうでなければ、時雨に心配し優しく接する事はしない

 

知らぬ間に、時雨の口からはぽつぽつと言葉が零れていた

 

「このままいくと……深海棲艦が強くなっていく。一時は押し返したけど」

 

「ああ」

 

「僕達は戦ったけど、敵は最新鋭兵器を装備して僕達の仲間は次々と沈められた」

 

「ああ」

 

「提督が……未来の提督が過去を変えるために僕をここに寄越して……僕のために命を落として……提督も仲間も」

 

「分かってる。『あいつ』が狂人ではなかったと」

 

 不意に時雨の視界を覆った。提督は時雨の体を優しく抱き寄せた。過去の人間だろうが、提督は提督だった。最初は微かに漏れるだけだった声は次第に嗚咽となり、嗚咽はやがて号泣に変わっていった。大声を上げて泣きじゃくる時雨を、提督はただ黙って抱きしめていた

 

 




没シーン
提督「ところで、どんな悪夢を見た?」
時雨「深海棲艦が世界を破壊する夢だった」
提督「なるほど、審判の日か」
時雨「それから深海棲艦の戦艦ル級改flagshipが現れて僕を襲ったんだ。僕の攻撃では、倒せなくて」
提督「未来の液体型の殺人ロボットか。よし、サイバーダイン社に行って、スカイネットが生まれる前に倒すぞ」
時雨「提督、作品が違う」


 余談ですが、私は艦これとアズレン併用でやっています。しかし、アズレンも今は手に入れていない娘(赤城など)を建造&手に入れるための単純な作業ゲーに。なぜこうなったかと言うと、アズレンは撃沈要素もなければ大破中破要素もない。簡単であるため、かえってサクサクと攻略してやり切ってしまい、既にアズレン放置気味に…。今ではアズレンそっちのけで、秋イベの備えと大型建造で武蔵を手に入れるのために艦これの資源集めをやっている私です。涼月は絶対に手に入れたいので
 アズレンの中には、艦これと似たシステムが所々あるため、あまりハマらなかったという事もあるかも知れない。またレア度が高い艦より、レベルが高い低レア艦の方が強力であるため、かえってレア艦欲しいという意欲があまり沸かなかったのもあるかも……(私個人が経験した感想であるため、あまり真に受けないように)
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